ハイチ大統領暗殺事件:容疑者4人射殺と2人拘束について

ハイチ国家警察のレオン・チャールズ(León Charles)長官は、7日20時15分(現地時間)、暗殺に関与した2人の傭兵の逮捕を発表。それと共に4人を銃殺したと告げた。当局はさらに犯人と思われる人物の捜索を続けていると付け加えた。この間、3人が人質になったというが、解放に成功したという。未だ銃撃戦も続いており、警察長官は「彼らは殺されるか、捕まるかだ」のどちらかだと述べた。

この犯人についても、いろいろな意見が出ているようだ。スペイン語と英語を話す傭兵によるものとする考えがある一方で、少なくともハイチ人もいるだろうことが指摘されている。それは大統領官邸へ向かった車両がハイチのそれだったことに夜からだ。また、そもそも多国語を堪能に話せるハイチ人だって多くいるから、実行犯自体もハイチ人であることを否定はできないとする説もある。ちなみに外国人であるならば、ベネズエラやコロンビアの人間ではないかと言う示唆もあるほどだ。いずれにしても未だ捜査中である。

 

いずれにしても、大統領が住んでいた住宅の近隣住民が撮影したと思われる複数の動画によると、 “DEA operation, everyone back up and stand down” とメガホンでアメリカ訛りのある英語を話す声が聞こえ、重武装した男たちが路上にいる様子が映し出されていることが確認できる。動画には防弾チョッキを着て大型の武器を持った少なくとも5人の襲撃者が映っていて、襲撃中大統領の家の外で見張りをしているように見える。

 

時間を追って、それ以前ハイチで何が起きたかをみていこう。

17時20分
閣僚会議終了後、クロード・ジョセフ暫定首相は、Jovenel Moïseの暗殺に対して、ハイチで15日間の喪に服すことを決定。この措置は7月8日から22日まで実施される。

14時30分
国連安全保障理事会は、ハイチの状況に対処するため、木曜日に会合を開きます。

14時10分
鑑識チームがPetion Ville地区の大統領私邸で証拠収集。住居の外壁に銃弾の跡を見つける。

13時30分
ドミニカ共和国民間航空委員会(JAC)は、決議No.144-2021を発行し、ハイチ共和国を発着する航空便の運航を停止。

 

13時00分
カリブ共同体(カリコム)は、ハイチ大統領暗殺を受け緊急会議を招集

12時30分
カリコムに情報が入ってきていない。ドミニカの報道機関からの情報を待ち。

12時00分
サントドミンゴのハイチ大使館によると、大統領夫人のマルティーヌ・モイーズは、国外で治療を受けることになった

11時30分
モイーズ大統領の後任として最高裁判所長官のルネ・シルベストル氏が就任する予定だったが、先日COVID-19の合併症で6月に他界したため、大統領の後任がわかっていない。モイーズ暗殺の前日に任命された次期首相のアリエル・ヘンリーが代行するにも、2020年1月にモイーズが解散させた議会が機能しておらず、議会承認ができない状態。葬儀は水曜日予定。ヘンリーも行方不明という説がある。

11時10分
ハイチのスミス・オーギュスタン駐ドミニカ共和国大使は、ファーストレディの安否を確認。死亡してないが非常に危険な状況にある。彼女とその子供たちは保護されている。

10時30分
モイーズの私邸がある付近に大きな軍事装置があると報告あり。在ドミニカ共和国のハイチ大使館によると銃撃によるファーストレディは生存。

10時00分
暫定首相は戒厳令と臨時閣僚会議を招集。

08時12分
隣国ドミニカ共和国のルイス・アビナダー大統領は、ハイチとの4つの国境を閉鎖。同地域の監視体制の強化指示も行う。

07時30分
大統領夫人のマルティーヌ・モイーズ氏は銃撃で負傷し、病院で治療を受けている。※この時夫人は亡くなったと報道されていましたが、これは後々否定された。

 07時13分
ハイチ当局が首都の国際空港の閉鎖を命じる。

 

国がどんな状態にあったとしても暴力が何かを解決する手段になるはずがない。そしてそのようなことがあっては決してならない。上述の通り、犯人を皆血眼になって探している。影の首謀者がいたのか、この6名以外にも犯人はいるかなどだ。

ハイチはここ最近全く情勢が落ち着いていない。首都ポルトープランスの一部地域では銃撃や放火などの暴力沙汰が相次いでおり、援助団体によると1万人超の市民が自宅から避難したり、危険な地域に取り残されたりする事態となっている。国連人道問題調整事務所によると、暴力の元となっているのは推定95組の武装犯罪組織で、これらが犯罪行為や縄張りをめぐる争いを繰り返しているという。攻撃の的は地元警察、障害のある人々が暮らすキャンプや一般市民などで、住宅のある区域に火を放っている。またここ数ヶ月は誘拐事件が多発している。一部情報ではこれらの犯罪はモイーズと関係があると思われるギャングがによるものもあるという噂もある。

 

このような状況下を脱するべく米国に亡命しようと考える人々がいる一方で、米大統領ジョー・バイデンは「コロナウイルスの蔓延を防ぐために(title 48)」という名目で亡命希望者たちを強制送還便に乗せ続けている。なおこれらの国外退去者は一旦収容した後もCOVID-19の検査をされることなく母国に戻ることになり、その行為はハイチにパンデミックをもたらす可能性もある。ハイチではCOVID-19の感染症対策が全くなされておらず、この地域で唯一未だに一人もワクチン接種を受けることができないでいる。これがこの国の現状だ。

ハイチの国家移住局(Haiti’s Office of National Migration:ONM)の責任者であるジャン・ネゴ・ボヌール・デルバ(Jean Négot Bonheur Delva)は、バイデンが大統領になってからこれらの人々が非常に高い確率で国外追放されていることを指摘する。と言うのも、以前は月に2便だった強制送還便が2021年2月に入ってからは、15便ほどに増えている事による。

一部報道では大統領暗殺に際して武装集団が大統領の寝室に戦いもせずに入り込めたことにも驚いたと指摘する。なぜなら大統領の護衛と侵入者が争ったという話が出てきていないからだ。ますます混迷を極める状況だが、一刻も早く解決に向かっていって欲しいものである。

 

ハイチ大統領暗殺事件に関するその他記事はこちらから。

参考資料:

1. Minuto a minuto: Magnicidio en Haití
2. Minuto a minuto: Asesinan al presidente de Haití, Jovenel Moïse
3. Haiti President’s Alleged Assassins Caught on Video Posing as DEA Agents
4. Haiti’s President Was Assassinated, and No One Knows Who’s In Charge
5. Biden’s ICE Is Deporting Hundreds of Haitians While the Country Is in Chaos

 

 

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