キューバの規制緩和とリーダーのあり方

キューバではCOVID-19の影響とそれをパンデミック化させないような取り組みをとってきた。例えばそれは1年以上に渡る自宅待機であったり、子どもたちの学校の閉鎖などであった。その策はある程度うまく働いていたように見えた。その一方で日に日に強力になるウイルスはこの1週間は感染者数の爆増を招いた。これは国産ワクチン「アブダラ(ABDALA)」や「ソベラナ02(SOBERANA 02)」の有効性が90%以上あったという発表がなされて以降のことだ。

家に閉じこもっていた間、キューバの人々は苦労した。構造改革は思うような結果が出ておらず、米国による経済封鎖も継続し、インフレが500%も起きた。インフレは通貨の統一や統一為替レートの導入を背景に当初より見込まれいた。それは300%ほどを予定していたが、モノの供給を伴わない賃金の拡大はそのインフレ率をさらに200%も増加させ、ついには500%とも言われるほどになった。モノ不足は闇市場やコレロスの活動を活発化させ、生活必需品は見る間に高騰していった。古い機器メンテナンスしながら生産していかねばならないエネルギーも効率も悪く、その不足は停電を頻繁に引き起こす状態となっていた。

COVID-19は2020年、約5000万ドルの特別支出をさせた。一方での世界中における渡航制限は収入源の観光業を無きものとし、結果外貨獲得はゼロレベルとなった。2021年、外貨収入は前年度比▲55%で、50億円ドルは必要とされる外貨準備金も2022年度には63億円になってしまうとされている。経済成長も2020年度6-7%を見込むも、結果としては▲11%と驚く結果となった。米国による人身売買関係国リストへの掲載も、キューバ医師団の派遣と外貨獲得を困難にさせている。

困窮している人々を救うための「人道的回廊」を政府が拒否していると言うネガティブ・キャンペーン(※)、さらには海外からのソーシャルメディアを使った情報操作が後押しをし、人々の心に溜まったガスがついに爆発した。それが7月11日である。海外からの影響もありながら、でも、それだけでもないことも明白だった。

比較は憚れつつも、他のラテンアメリカ諸国のデモに比べれば、そこでのデモは比較的平和的であったと言われている。それでもデモを通じて1人の死亡と負傷者を排出してしまった。推計100~170人(人権団体調査)もの逮捕者の多くは25歳から37歳の若者が中心で、公共の混乱、暴行、侮辱、強盗、損害賠償などの罪だという。

 

7月12日、デモ鎮圧に向け60年前の革命家たちが立ち上がった。ラウル・カストロ(Raul Castro、90歳)前第1書記は11日、共産党政治局の会議に、ホセ・ラモン・マチャド(José Ramón Machado Ventura、 90歳)元第2書記は中部のサンタクララ市に、ラミロ・バルデス(Ramiro Valdés、89歳)革命司令官は東部のサンティアゴに降り立った。彼らが革命支持派の先頭に立ち国民にメッセージを出さなければならなかったのは事態の深刻さ故だった。

キューバ政府は7月14日、抗議行動を受け現状の共有と新たな施策を発表した。円卓会議で語られた修正・改善点のいくつかを見ていくこととしよう。

 

電力不足への対策
電力システムの安定化を保証する。安定的に500メガワットを生産していくためには当初はバックアップに停止している機械を修理・起動させる。

パンデミックへの対策
パンデミック対策として8月末までに人口の約60%に対しCOVID-19の予防接種を完了させる。7月12日現在7,618,028回の投与が行われたが、その内訳は予防薬の3回接種者は1,926,776人、2回接種者は2,617,942人と1回以上接種した人の数は3,073,310人となっている。成人へのワクチン接種後の9月には3歳から18歳までのすべての子どもたちへの集団接種も開始する。

生活必需品・医療品の欠乏への対策
食料品、トイレタリー、医薬品の輸入を例外的に許可する。COVID-19の影響もあり病院、薬局ともに医薬品が不足している。国産の薬品は365種類(基本的に必要としている薬剤は619種類)あるものの外貨不足、原材料不足、そして世界的な薬の需要で在庫が確保できていない。薬剤価格の高騰も手が届きづらく、また国庫を圧迫する原因となっている。特に降圧剤、抗生物質、鎮痛剤、避妊剤、ビタミン剤、口内炎用製品が不足している。そのため、医薬品の海外から持ち込みを無関税とし、輸入が禁止されているものを除き10キログラムまでの非商業的な持ち込みを認める。ちなみに7月19日から年末12月31日までは例外的に旅客を使ってこの島にやってくる人の食品、トイレタリー、医薬品の持ち込みも輸入価格の制限なく関税をかけずに許可する(※)。ただし限度額は航空会社規定に基づく。なお持ち込む製品については、他の身の回りの荷物と区別されていなければならず、食品の場合は植物検疫措置に適合していなければならない。

物資支援策
正式に住所登録がなされていない人は食料配給手帳がなく、必需品が手に入らないのが現状だ。30万人ほど対象者はおり、その多くが首都圏に住んでいるという。これらの人々の生活を少しでも楽にすることを目的とし、生活必需物資をフードバスケットとして定義、支給し、毎月購入できるようにする。

企業経営への柔軟性と自律性の付与
国営企業、民間企業ともに給与支払いにおける賃金表の利用義務の撤廃する。各自自律性を持った経営ができるように推進するとともに、国営企業の効率化を促進する。貢献度に応じたした報酬システムも組み入れる。国営企業の果たすべき役割を促進させるため国営零細・中小企業にダイナミズム、能力、柔軟性を与える。

 

今回のデモを振り返りミゲル・ディアスカネル大統領は政府の物資不足への対応や特定の分野の放置などの欠点を認め「私たちは暴動から学ばなければならない。行動できるように、問題を克服し、再発を防ぎ、状況を変革できるように、問題を批判的に分析しなければならない。」と述べ、より良い社会を目指すためのアクションを早々に提示した。

 

ある程度比較的平和に進んだデモと政府対応だが、やはりどうしても言っておかねばならないことがある。それは、米国のようにすぐに武力を持ち出すような国にキューバにはなってほしくないということだ。それをしてしまえば米国と同レベルになってしまう。世界には当たり前のように色々な思想を持った人がいる。その中には現在の国の姿に不満を持っている人もいるだろう。それはキューバだけの話ではない。どのような外部の力が外から働いているにせよ、国民に対する言論の自由への制限を含めた弾圧は批判されるべきだし、そもそもそのような行為はキューバの評価を下げてします。キューバを愛する人々をがっかりさせないためにも、社会をよりよくするためにも、穏便に、そして多様な民衆の声を聞き、時代にあった方針を出していってほしい。間違いなく他国の人々も、そんなキューバを応援しているのだから。

キューバ政府による規制緩和や早急なる方針立ては、緊迫した状態に置かれたことの表れであったと思う。それでも国の状態を現地に赴き見て、国民と対話、分析し、少しでも良くなるようにと迅速なるアクションを取っていることは大いに評価点ではなかろうか。民主主義の仮面を被りながらも国民の声に全く耳を傾けることなく、さも問題がないようなことばかり言う、そして自身の汚点を国民のせいにする人々が世界に多くいる中、自らの政府の過ちを国民の前で認めたことも評価に値する。特に「独裁的」と揶揄されるリーダーにとって、自己批判するのには困難が伴っただろうことも想像にかたくない。

 

COVID-19のせいにして、今までできなかった政策のドラスティックな変更や規制の緩和を「お互いに」できないものか、そんなことを思っていたら、米国が珍しくワクチン供給について言及した。キューバが欲しいのは注射針やワクチン生成のための原料なのではないかとも思うし、相手が米国ゆえどうしても何らかの画策が裏に潜んでいるのではないかと考えてしまうが「新型ウイルスのせいで仕方なしに」という枕詞をつけ、受け入れてみても悪くないのではないか。そんなことを思った。なお、経済封鎖を米国が解いたわけではないことは付け加えておく。

※カジョ・ココおよびバラデロ(Varadero)を経由して到着する旅行者の場合、COVID-19で施行されている衛生上の措置に基づき、スーツケース1個までの持ち込みとなる。

 

参考資料:

1. Gobierno anuncia nuevas medidas y analiza situación actual en Cuba (+ Video)
2. Raúl Castro reaparece para contrarrestar la protesta popular
3. Biden says U.S. prepared to send vaccines to Cuba but not ease policy on remittances
4. El presidente de Cuba dice que el gobierno tiene cierta culpa por las protestas
5. Cuba’s President Has Made A Rare Mea Culpa, Admitting To Failures That Fueled Unrest
6. Intervención en Mesa Redonda (14/07/2021)

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