映画 “Selva Trágica” は何を語ってくれるのか

1920年代、メキシコとベリーズのジャングルで、ガムを取り続けるメキシコ人労働者グループ。突然、ベリーズから若く美しい女性は複雑で気難しい集団の中に混沌を生み出す。この女性は誰なのか。なんのためにこんなところにいるのか。自分たちの敵なのか。男たちの様々な憶測を呼ぶ。そして彼女の周りで一人、また一人と命が失われていく。

女性がいなければ目撃しなかっただろう彼らの行動を見つめ、土地への侵略者、自然の恵みの搾取者に対して警告を与える自然を目の当たりにする。

言葉を全く発しないこの女性は自然の化身だったのかもしれない、そう思わせる作品だ。マヤの民話と融合した不思議な感覚を覚える。

なお監督のオライゾは「蛇の群れ」「Zama」などを通じ南米の植民地物語を説いている。彼女は国や文化、民間伝承、現実と過去との行き来を一つの作品を通じて行う。Selva Trágicaでもまたその技法を発揮しており、描かれる労働者とともに我々もまたもやもやとした感覚に包まれる。そんな作品だ。

 

メキシコ人監督ユレネ・オライソラ(Yulene Olaizola)が映画作成におけるエピソードを教えてくれた。

 

映画の主人公を務めたインディラ・アンドリューウィン(Indira Rubie Andrewin)のインタビュー。彼女自身もジャングルで育ち、主人公とかぶるところがあるという。女性が男性社会で生きるとはどういうことなのか。初めての映画出演で、初めてのベスト・アクトレスはのノミネート。

 

チクレの原料となるサポジラ(Manilkara zapota、Chicle)は、ユカタン半島の一部やニカラグアなどの熱帯雨林に自生する樹木。チコレロ(チクレを取る人)はサポジラの樹皮に鋭いマチェテでジグザグに切り込みを入れ、その切り込みから白く粘り気のあるラテックス(チクレと呼ばれる)を取る。白い樹液の抽出方法は今でも極めて伝統的な手法に基づく。それを消費する文化はコロンブスよりずっと前からこの土地においては存在していた。単純作業にみえるものの、ガムの収穫期である雨季の木々は体内に多くの水分を吸収しているし、ブーツのフックと腰に巻いたロープだけで高さ40メートルの木に登っていくのはやはり危険も伴うし、熟練も必要だ。

 

19世紀後半、アメリカ人のジェームス・アダムスは、メキシコの元大統領サンタ・アナがガチクレを噛んでいるのを見たのをきっかけに、香料や砂糖を加えた形でチューインガムが開発され米国市場に投入されるようになったという。

1994年までチクレは、石油、鉱物、硫黄などと並ぶメキシコの戦略的製品で2回に及ぶ世界大戦でも戦場の兵士たちがそれを欲していたとされるほどだ。その重要性はメキシコ湾における海上輸送に潜水艦が配備されるほどで、米国の加工工場に無事をれが到着することがどれほどのことだったかが窺い知れる。

いつしかガムの原料はチクレからコストや噛み心地の調整が可能な松の樹液由来のエステルガム、合成樹脂である酢酸ビニル樹脂やポリイソブチレンにとってかわり、その存在もあまり知られなくなっていた。そんな中、歴史の見直しやサステイナビリティの観点でジャングルの生態系に関する研究が進んだり、さらにはオーガニックなものを好む消費者の登場で、今一度チクレが脚光を浴びるようになっている。

 

参考文献:

1. ‘Tragic Jungle’ (‘Selva Trágica’): Film Review | NYFF 2020
2. Chicleros de la selva de México y su relación con el árbol del chicozapote
3. El chicle, una golosina de México para el mundo
4. El chicle: un “invento” mexicano

 

作品情報:

名前:  SELVA TRÁGICA
制作:  Malacosa Cine, Manny Films, Zoología Fantástica, Contravía Films, Varios Lobos
制作国: Mexico, France, Colombia
監督:  Yulene Olaizola
時間:  1h 36min 
ジャンル:Drama, Mystery 

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