ハイチ:大統領ジョブネル・モイーズ、武装集団に暗殺される

(photo:Gobierno Danilo Medina

 

衝撃的なニュースが飛び込んできた。9月に大統領選を迎えるハイチで、現ジョブネル・モイーズ(Jovenel Moïse)が殺害されたというものだ。大統領夫人マルティーヌ・モイーズ(Martine Moïse)も複数回撃たれ治療を受けている。

クロード・ジョセフ(Claude Joseph)暫定首相は大統領の死について7月7日午前1時頃、首都ポルトー・プランス(Port-au-Prince)郊外にある大統領の自宅をスペイン語、英語を話し、高度な訓練を受けて重武装した正体不明の集団が襲撃、国家元首が暗殺されたと語った。声明では大統領の殺害方法については明らかにしていない。なおこの国ではフランス語とハイチ語(クレオール言語)が公用語となっていることから、犯行は外国人によるものの可能性もある。匿名の人が「地震が起きたのかと思った。あまりにもたくさんの銃声がしたから」と語ったことを思うと、その悲惨さ、大胆さを計り知ることができる。

 

ハイチは2016年のハリケーン マシュー(Matthew)に加え、2010年に発生した大地震で壊滅的な被害を受けた。地震以来何十億ドル資金がを投じ復興支援をしているにもかかわらず、国は未だ再建されていない。人口の約60%が1日2米ドル以下の生活を送っており、食料や燃料の不足からインフレが深刻化していて、世界で最も貧しい国のひとつとなっている。政府は最も基本的なサービスさえ提供することができていない。昨今では暴力が横行し、武装ギャングが街を支配し、礼拝中の小学生や教会の牧師までもが誘拐されてしまう、そんな国になってしまった。

ここ数ヶ月、モイーズの解任を求めるデモが街頭で行われていた。モイーズは2015年の大統領として選ばれたがその後不正が発覚、2016年の選挙で再度当選、2017年2月に就任した。反対運動参加者は大統領の任期は選出された時点から始まるという憲法の規定を理由に、彼は2021年2月7日に退陣すべきだと主張していた。また、モイーズは、4年間で7人の首相を交代させるなどの強権ぶりにも異論が出たいた。

バナナ輸出業者から政治家に転身したこの大統領の殺害について首相は「凶悪で非人道的な野蛮な行為」と批判、大統領は暗殺されたが、犯人は彼の考えを暗殺することはできないと述べ、国民に冷静な対応を求めている。

ドミニカ共和国は、ハイチと共有しているイスパニョーラ島の国境を閉鎖すると発表、米国大使館も、ハイチの治安悪化を受け7日水曜日にそれを閉鎖すると発表した。同大使館は6月30日、同国における人権侵害、報道の自由への攻撃を非難、政府に対しても武装組織への対処を求めていた。

 

殺害された大統領は事件直前の6日、2017年の政権発足以来、6人目の首相に脳外科医のアリエル・ヘンリー(Ariel Henry※)を指名。ヘンリーは「国家の重要な勢力を含む開かれた政府を形成し、治安問題を解決し、総選挙と国民投票の実現のためにCEPを支援しなければならない」としていた。また同日、カリブ共同体(Caribbean Community:CARICOM)首脳会議に遠隔参加していた。

 

※アリエル・ヘンリーはミシェル・マルテリー政権時代(2011年~2016年)に内務・労働・社会問題大臣を務めていて、4月中旬に就任したクロード・ジョセフの後任。

 

ハイチ大統領暗殺事件に関するその他記事はこちらから。

参考資料:

1. Haitian President Jovenel Moise assassinated in his home
2. COMMUNIQUE – 42ND REGULAR MEETING OF CARICOM HEADS OF GOVERNMENT
3. Haiti: Jovenel Moïse Appoints Ariel Henry as New Prime Minister

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