ハイチの警察は、ジョベネル・モイーズ(Jovenel Moïse)の暗殺に関与したとされるレイナルド・コーヴィントン(Reynaldo Corvington)とギルバート・ドラゴン(Gilbert Dragon)を逮捕した。ドラゴンはディミトリ・ヘラール(Dimitri Hérard)の側近でアリスティド(Aristide)元大統領への反乱軍のリーダーであり、現在はマネーロンダリングの罪を認めて米国の刑務所に収監されているガイ・フィリップ(Guy Philippe)の右腕だったとされている。これで逮捕者は23名となった。
当局の発表によるとレイナルド・コーヴィントンは1982年から民間警備会社を経営していて、自宅捜索をしたところ、12ミリライフル8丁、M1カービン、AR-15ライフル、ピストル9丁、ショットガン5丁が見つかった。また、複数の弾倉、破片手榴弾3個、車両1台も押収された。
ドラゴンは暗殺を実行するために車をレンタルし、傭兵との会合を調整し、機材の代金を支払った。ドラゴンの自宅からも、12ミリカートリッジ数本、AR-15ライフル、9ミリピストル2丁、防弾チョッキ2着が発見された。
暗殺の首謀者とされる人物と、国際的なネットワークの責任者たちはサント・ドミンゴのホテルでの暗殺計画を練ったという。具体的には主犯格であるクリスチャン・エマニュエル・サノン(Christian Emmanuel Sanon)のほかに、テロを実行したとされるコロンビア人傭兵を雇った疑いのあるCTUセキュリティ社の取締役でフロリダ在住のベネズエラ人のアントニオ・エマニュエル・イントリアゴ・バレラ(Antonio Emmanuel Intriago Valera)、今回のオペレーションに資金を提供したWorldwide Capital Lending Groupの責任者であるウォルター・ベインテミラ(Walter Veintemilla)、元上院議員ジョン・ジョエル・ジョセフ(John Joël Joseph)、ジャックメル(南)の市長マーキー・ケッサ(Marky Kessa)、コロンビア人傭兵とともに逮捕され、CTUセキュリティとのつながりが疑われているジェームズ・ソラージュ(James Solages)の6人が参加していたという。これらの人物がホテルに集まっていたことは写真で証明されている。
主犯格のクリスチャン・エマニュエル・サノンは米国在住の医師で、ハイチの政界では全く知られておらず、当局の説明によると、モイーズを暗殺することで国家元首の座を奪おうとしていた。
当局はさらにホテルの会議に参加した4人のハイチ系アメリカ人を対象とした捜索・逮捕令状を発行している。元上院議員のジョン・ジョエル・ジョセフは、グループの会計責任者として、傭兵との会合を調整したり、車のレンタルや材料費の支払いなどをした疑いがある。
政府の反汚職部門の元職員であるジョセフ・フェリックス・バディオ(Joseph Felix Badio)は、現地での作戦の調整役、ロジスティクスの責任者として告発されている。そもそも彼は5月に不特定多数の倫理規則に著しく違反したことを理由で解雇されており、告訴状が提出されていた。この事件においては特に作戦に使われた大統領の家の近くに彼が家を借りていたことや、コマンドが使用したとされる車のナンバープレートやDEAのロゴを偽造したことを指摘している。
2015年に米国で麻薬密売の罪で有罪判決を受けたロドルフ・ジャール(Rodolphe Jaar)は、この作戦をコーディネートした罪に問われていて、暗殺の3日前に傭兵を接待したとされている。ジャアは2013年、ハイチを経由してコロンビアとベネズエラのコカインを米国に輸入することを共謀した罪でフロリダ州で起訴されていて罪を認めた彼は、4年の懲役を言い渡されていた。
実業家のゴードン・フェニル・デシル(Gordon Phenil Desir)も指名手配されており、傭兵同士の会合を調整したり、車のレンタルや材料費の支払いを担当したとされている。
これで23人の容疑者を逮捕したこととなるが(これ以外にも3名は警察との戦闘で死亡)、これ以外にもコロンビア人3名とハイチ人1名が現在も逃亡中という。逃亡中の犯人を6人とするメディアもある。
また当局は国立宮殿総合警備隊(Unité de Sécurité Générale du Palais National :USGPN)のディミトリ・ヘラール主任指揮官を含む4人の警察官の身柄を拘束した。ディミトリ・ヘラールを勾留した正確な理由はわかっていない。ただ、大統領が殺害されて以来、ハイチの人々は、犯人と大統領の警備担当者が一発も撃ち合っていないことを疑問視している。その点から国立宮殿の一般警備隊長であるヘラールと、大統領の警備担当者であるジャン・ラグエル・シビルは、今週、検察庁に召喚されたが、拘束されていることからまだ聴取はされていない。これ以外にも24人の警察官が予防措置をとっている。
大統領暗殺事件に関連してハイチ国家警察に拘束されたコロンビア人の一部が、「米軍の訓練・教育プログラム」に参加していたことを、米国防総省の報道官は認めている。ケン・ホフマン(ken Hoffman)中佐によれば、この情報は訓練データベースの見直し中に明らかになったもので、いつ、どこでその訓練が行われたかは明らかにしていない。 ホフマン中佐は、「我々の調査は継続中であり、現時点では追加の詳細はありません」と述べた。国防総省によると、米国防総省は毎年、南米、中米、カリブ海地域の軍人を数千人規模で訓練していて、この訓練は “人権の尊重、法の支配の遵守、民主的に選出された文民指導者に従属する軍隊 “に焦点を当てているという。
ハイチの首都ポルトープランスでは、ジョベネル・モイーズ大統領の暗殺事件から1週間が経過し、ガソリン不足による不安感から、散発的な抗議活動が行われている。
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参考資料:
1. Assassinat de Jovenel Moïse : son chef de la sécurité serait détenu
2. U.S. military once trained Colombians implicated in Haiti assassination plot, Pentagon says
3. El magnicidio de Haití se planeó en un hotel dominicano, según la Policía
4. Aumenta a 23 cifra de arrestados por magnicidio en Haití
5. Assassinat de Jovenel Moïse : 23 suspects arrêtés, 4 policiers en isolement
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