米国は腐敗した中米政府高官・元高官の入国を禁止する

2020年下院外交委員会議長のエリオット・エンゲル(Eliot Engel)下院議員によって提出された法案をもとに制定された米国北三角強化関与法第353条に基づき、米国務省は中米3カ国の大統領や議員で特定条件を満たす50人以上を通称エンゲルリストに載せることを認定、それらの人間は即時入国禁止となった。

https://twitter.com/_elfaro_/status/1410770320441610240

エンゲルは米国における地域・治安の安定には北部三角地帯諸国(グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル)の経済の安定が必要で、それには持続的な進展が欠かせないと考えている。この地帯では民主主義の力が弱まっているにもかかわらず、蔓延する汚職が発展への大きな足枷となっている。

蔓延する汚職は高いコストを伴っており、エルサルバドルだけでも年間15億ドルが汚職によって失われていると言われている。米国への麻薬密売を原動力とする組織犯罪も多発しており、この3カ国だけでもGDPの3%以上が組織犯罪によって失われた。

 

この3カ国自身も過去形含め腐敗と戦おうとしている。

グアテマラは国際的な汚職防止機関である国連支援の「グアテマラ不処罰国際委員会(Comisión Internacional contra la Impunidad en Guatemala:CICIG)」を設立し、エフライン・リオス・モント(José Efraín Ríos Montt)元大統領やオットー・ペレス・モリーナ(Otto Fernando Pérez Molina)元大統領をはじめとする300人以上の政府関係者に有罪を課した。ホンジュラスでも2016年に米州機構(OEA)が支援する「ホンジュラスにおける汚職・不処罰との戦いを支援するミッション(Mission to Support the Fight against Corruption and Impunity in Honduras:MACCIH)」を受け入れた。エルサルバドルは、ナイーブ・ブケレ(Nayib Bukele )大統領が選挙公約を果たし、2019年に「エルサルバドルにおける不処罰に反対する国際委員会(The International Commission against Impunity in El Salvador:CICIES)」という汚職防止イニシアチブを創設、CICIESに大きな自治権を与えるべく新法を審議中だ。

 

彼らの汚職防止の取り組みを支援するために、2020年12月27日、米国議会は米国北三角強化関与法第353条(汚職・反民主主義行為者リストとして知られる)を制定した。エンゲルが提唱していた法は以下2つの要素で構成されている。

(1)エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスの汚職・非民主的行為者のリストを公表し、米国への入国を拒否することを義務付ける(中米ではこれを「エンゲルリスト」と呼ぶようになった)

(2)国務長官とアメリカ合衆国国際開発庁(United States Agency for International Development:USAID)長官が、北三角地帯の繁栄、汚職対策、民主的ガバナンスの強化、市民の安全保障の向上、非正規移民の抑制に向けた取り組みについて、5年間の戦略を作成することを義務付ける。

 

そしてこの度(1)のエンゲルリストが公開されたというわけだ。このリストにはホンジュラスの元大統領ホセ・ポルフィリオ・”ペペ”・ロボ・ソーサ(Porfirio Lobo Sosa)やその夫人など10数名の現役議員が含まれている。その一方でニューヨークの米検察当局が麻薬密売人からの賄賂で政界進出の資金を得ていた疑いがあると睨んでいる現大統領フアン・オルランド・エルナンデス(Juan Orlando Hernández)は含まれていない。これは同大統領が正式に起訴されていないことにもよろう。ちなみに彼の兄である元連邦議員のフアン・アントニオ・”トニー”・ヘルナンデス(Juan Orlando Hernández Alvarado)は、3月にニューヨークで終身刑の判決を受けている。

なお、カロリーナ・レシノス(Carolina Barrientos Recinos)のように大統領府長官のように未だナイブ・ブケレ大統領府にいるものも掲載されいている。彼女は「個人的な利益のために公的資金を悪用して実質的な汚職に従事した」、「マネーロンダリングのスキームに参加した」とされている。

 

エンゲルリストに載った人間は、即座にアメリカにアクセスするためのビザを失う。中米における汚職を撲滅させるには長くて、複雑で、継続的な戦いが必要だ。だからこそ、エンゲルリストのようなものを用いながら、個人的な利益のために権力を乱用するアクターに対して行動を起こすことも求められる。

米カマラ・ハリス(Kamala Devi Harris)副大統領はエンゲルリストの公表より前の5月27日、3カ国の持続可能な経済発展に関し、企業や民間団体にアクションを求める声明を発表。マイクロソフトやマスターカード、ネスプレッソ等の12団体が自主的なコミットメントを発表している。5月7日にもメキシコのロペス・オブラドール(Andrés Manuel López Obrador)大統領とオンラインで会談し、3カ国の経済問題などに対処する「戦略的パートナーシップ」の構築を約束している。

このリストに記載された人物のことを調べただけでも、何本ブログがかけてしまうのだろう・・・とさえ思える。

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参考資料:

1. Estados Unidos publica lista de funcionarios corruptos centroamericanos
2. Lista Engel: Esta es la lista de corruptos de Guatemala difundida por Estados Unidos
3. Honduras | Ocho diputados señalados en lista Engel buscan reelección en elecciones de noviembre
4. FACT SHEET: Vice President Harris Launches a Call to Action to the Private Sector to Deepen Investment in the Northern Triangle
5. Engel U.S.-Northern Triangle Enhanced Engagement Act Passes Congress
6. Publicación de la Lista de la Sección 353 de Actores Corruptos y Anti Democráticos

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