ワクチン「Soberana02」の子どもへの臨床試験始まる

先日こちらのブログを通じてカリブ海の島キューバでCOVID-19に対するラワクチン候補Abdalaの有効性の情報を提供した。そこから数日もたたないうちに今度はソベラナ02の臨床実験に関する情報が出てきたのでお伝えすることとしよう。

そもそもキューバではCOVID-19向けの候補となりうるワクチンを5種類開発している。つまり前回報告のAbdala、ここで紹介するソベラナ02(Soberana 02)、ソベラナ01(Soberana 01)、ソベラナ・プルス(Soberana Plus)、そしてマンビサ(Manvisa)が存在する。ちなみにソベラナとマンビサ(鼻腔用ワクチン)は、19世紀にスペインの植民地主義者と戦ったゲリラにちなんで名付けられた。

 

フィンレイ研究所(Instituto Finlay de Vacunas:IFV)で開発されたソベラナと名のつく3つのワクチンの違いから見ていこう。

ソベラナ01:
非共役ワクチン(※)。アジュバントとして髄膜炎血清型Bの外膜小胞と水酸化アルミニウムというキューバが安全性を十分に経験しているプラットフォームを採用。

ソベラナ02:
共役ワクチン。水酸化アルミニウムをアジュバントとし、破傷風トキソイドキャリアワクチンとして使用。キューバにおいてはすでに数十年の経験を持つプラットフォームで安全性も実証済み。

ソベラナ・プルス:
ソベラナ01の改良型だが小胞を使用していない。ソベラナ02の補強投与として利用される。

 

本ブログはソベラナ02が子どもに対しても臨床試験を開始したということを伝えるものだが、子どもへの適用の前に成人への臨床試験計画がどんなものだったかを見てみよう。

<<成人対象の臨床試験>>

第I相試験   :19〜59歳 40人
第Ⅱ相試験  :19〜80歳 910人
第Ⅲ相試験:(1)19〜80歳   44,010人(2021年3月5日〜5月末)
        試験は65歳未満、65歳以上リスク要因なし、65歳以上リスク要因ありの3つのグループに分け実施
         (2)19〜80歳 150,000人の介入試験(2021年3月23日〜5月28日)

 

2021年4月14日時点で臨床試験の結果は以下の通り。

第I相では2度目の接種後、被験者の84%が血漿にCOVID-19に対する抗体が含まれていたことを確認。摂取回数を3回に増やすと、被験者の100%がレスポンダーとなり、90%が中和抗体応答を示した。別の言葉で説明すれば、SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)に対する抗体が検出されたことに加え、被験者の90%が持つ抗体が試験管内のウィルスの細胞侵入を中和することができた(この段階で最も必要とされた反応)。さらに被験者の60〜75%がT細胞の優位な反応を示し、これはウィルスによる免疫反応を強化することを示している。第Ⅱ相では被験者の81%が2回目接種後に反応し(76%が中和抗体保有)、96%が3回目接種後に反応した。第Ⅲ相の試験はキューバ化学が直面する最も複雑な試験とされる。理由はサンプルサイズや、手順、運用方法を複雑化させたものであること、さらには、感染が流行している中で試験をしなくてはならないからだ。もちろんキューバにおいては、このために医療従事者や搬送業者の研修や認定を徹底的に実施している。

6月19日国営バイオ製薬企業ビオ・クーバ・ファルマ(BioCubaFarma)はソベラナ02は、3回の投与のうち2回だけの投与で62%の有効性を示したと発表。また、同日フィンレイ・ワクチン研究所を訪れたディアス・カネル(Miguel Mario Díaz-Canel)大統領はキューバ政府としてプロジェクトに必要な資金のすべてを投入することができなかったものの「1100万人以上のキューバ人と、世界中の何百万人もの人々、特に他のワクチンにアクセスできない最貧層の人々にとって良い結果」であるし「完全に気分を高揚させるものであり」「解放的な結果」だとして、関係者を激励した。

 

そして迎えること6月27日、「ソベラナ小児研究(Soberana-Pediatría)」プロジェクトのもと3歳から11歳の子ども25名が首都のフアン・マヌエル・マルケス小児病院(Hospital Pediátrico Juan Manuel Márquez)でソベラナ02の初回接種を受けた。

12歳から18歳の青年での初回接種試験は完了し、接種の24時間後、48時間後、72時間後、そして1週間後に追跡調査を行い安全性が証明されている。この臨床試験では3歳から18歳までの青年350名の接種が予定されており、第1段階の人数は50名、第2段階は300名が接種を行う。これらの試験は厳格な倫理規定、優れた臨床実践を遵守し、保護者や法定後見人のインフォームド・コンセントを経て接種可能となる。

 

<<子ども向けの臨床試験>>

第I/Ⅱ相試験:
第I相の終了を待ってから次のフェーズに入るのではなく、1つのステージが他のステージに重なるように、段階的に行わう。

第I相での連続性:
被験者の中でも最も最年長なグループ12歳から18歳の青年25名から開始。最初の投与から7日後に、安全性の観点から臨床評価を行い、臨床パラメータに変化がないことを確認。安全性が確認できれば3~11歳の子ども25人に接種を行う。

オープン:
プラセボを使用することなく、すべての子どもたちにワクチン候補を投与する。あらゆる観点から結果を分析、なんらかの変化が見られれば詳細分析を行う。

多施設:
異なる医療機関での実施を予定。第I相は、Juan Manuel Márquez病院のみだが、第Ⅱ相は接種場所をプライマリー・ヘルス・ケアに拡大する。

異種混合方式:
ソベラナ02を2回、ソベラナ・プラスを1回接種する

第I相試験においてワクチン接種との因果関係が認められる重篤な有害事象が1%以下であることが現時点で確認されている。そのためワクチンの投与は安全であると考えられる。なお第Ⅱ相では免疫反応(IGG抗RBD特異抗体濃度が初期測定値の4倍以上)を示した被験者の割合は50%以上になると予想される。

キューバにおいても有効性のチェックや新薬の緊急使用検討・認可は独立した委員会によってなされる。医療認可機関であるCECMED(Autoridad Reguladora de Medicamentos, Equipos y Dispositivos Médicos de la República de Cuba)はペドロ・クーリ熱帯医学研究所、分子免疫学センターおよびキューバ公衆衛生省の臨床医、疫学者、統計学者で構成されている。

 

なお、ソベラナ02ワクチンはCOVID-19のオリジナル株だけでなく、現在ハバナで流行している複数の株に対しても有効であること、また2、3週間以内に3回接種後の効果が出てくることを示唆した。子どもにおいては無症状が最も多いが、幼い子どもは保有ウイルス量も多く、スーパースプレッダーになりやすいという事例もある。またそれへの感染は死に至る乳児性多系統炎症症候群につながる可能性があるとも報告されている。そのため、子どもたちに対しても予防接種をしてくことが必要だとキューバでは考えられている。

 

6月29日時点、約100万6,300人のキューバ人がSARS-CoV-2の感染阻止のためにワクチン候補であるソベラナ02とアブダラの3回接種を完了していると公衆衛生省が公式サイトで報告している。

https://twitter.com/MINSAPCuba/status/1409895217768116226

 

なお、臨床試験と称しワクチンの提供がなされているものの、あくまで臨床試験の域を出ていない。というのもアブダラについては遺伝子工学・バイオテクノロジー研究センター(Centro de Ingeniería Genética y Biotecnología:CIGB)が先週キューバの医薬品規制当局に書類を送り、緊急承認を求めているものの現時点では承認されていない事による。

なお、このような状況下においてアブダラもソベラナ02もCOVID-19の感染拡大が広がるベネズエラにワクチンを送っている。汎米保健機構(Organización Panamericana de Salud、本部ワシントンDC)によるとどの国においてもワクチンの使用においてはWHOの承認を必要とせず、各国の主権的な決定にもって実行できる。とは言え、ワクチンの有効性が規制機関によっても検証されておらず、査読付きの科学雑誌にも掲載されておらず、かつ、国際的または地域的な保健機関によっても承認されていないものをベネズエラ国民が接種するのはいかがなものか、という真っ当な意見も出ていることは確かだ。

ワクチンを目的とした観光をもキューバが目指していくのであれば、是非国際機関などからも評価を受けお墨付きをもらってほしいものである。それがあれば、ぜひ私もキューバで、とすら思うほどだ。

彼らは米国からの封鎖、その国が及ぼす間接的な封鎖で困窮していることは確かなのだ。アブダラもソベラナ02も受けられないとするならば、ベネズエラは、世界はベネズエラの国民をどう救うのかということについても真剣に考えてほしい。

※共役ワクチンは、単一の抗原または同じ微生物の2つ以上の株に対して免疫するために開発されるもの。

 

<<7月9日追記>>

ソベラナ02ワクチンを2回とソベラナ・プルスを摂取した人への有効性は91.2%であるとキューバ保健省は発表した。

 

参考資料:

1. Hoy comenzará el ensayo clínico Soberana-Pediatría en niños de entre tres y 11 años(+Video)
2. ¿Cómo se desarrollará la fase I/II del ensayo clínico con Soberana 02 en poblaciones pediátricas a partir de hoy? (+Video)
3. Soberana 02 demuestra su eficacia (+Video)
4. Más de un millón de cubanos han recibido tres dosis de los candidatos vacunales contra la COVID-19
5. Inicia en La Habana vacunación a primeros voluntarios del ensayo clínico en pacientes pediátricos, con Soberana 02
6. Coronavirus: las dudas que despierta la vacuna cubana Abdala con la que comenzaron a inmunizar a la población en Venezuela
7. Candidatos vacunales cubanos Soberana logran 91,2 % de eficacia

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