ハイチ大統領暗殺事件:実行犯にコロンビアの退役軍人

ハイチ大統領の暗殺は28名のパーティーによるものだと言うことがわかってきた。コロンビアの退役軍人(少なくとも6名)を中心とした殺し屋集団はコロンビア国籍26名、ハイチ出身のアメリカ国籍2名で構成された。

容疑者3名は射殺され、8名が逃亡中、アメリカ人2名を含む17名が逮捕された。射殺されたのは当初4名という発表だった。(先日のブログはこちら)射殺されたのは一部情報で7名いるという発表もある。

ペジェラン5番地の自宅で十数発の銃弾を浴び暗殺されたジョヴェネル・モイス大統領は、青色のズボンと白い血のついたシャツを着て、口を開け、左目をえぐられて、仰向けに倒れていたという。また、6台以上の車と多くの装備を備えた完全なコマンドは大統領の執務室や寝室は荒らされ略奪もしていった。

未だ情報が錯綜している状態であるが、実行犯については情報が出てきつつある。

ペーション・ヴィル(Petion-Ville)のピンシナ通りで無残な姿で見つかったマウリシオ・ハビエル・ロメオ・メディナとドゥベルニー・カパドール・ジラルドはコロンビア人だ。

コロンビアからの傭兵4人は犯行1ヶ月前の6月4日にコロンビアを出発、ドミニカ共和国へ向かった。飛んだ。6月6日にはドミニカ共和国を経由してハイチに到着た。コロンビアの諜報機関によるとグループのメンバーは途中ドミニカ共和国の人気観光スポットでポーズを取り、その姿をソーシャルメディアに投稿したという。4人はみんな同じブーツを履いていた。

ハイチ系アメリカ人の容疑者ジェームズ・ソラージュ(James Solages、35歳)とジョセフ・ヴィンセント(Joseph Vincent、55歳)は自身を翻訳者だと語っている。自身の任務は捜査判事の令状執行の一環でジョヴェネル・モイス(Jovenel Moïse)大統領を逮捕することだとした。殺害することではなかったと述べた。雇い主についてジェームズ・ソラージュは、インターネットでこの仕事を見つけたと答えた。ジェームス・ソラージュは、ハイチに来て1ヶ月になるという。ペーション・ヴィルに住んでいる。ジョセフ・ヴィンセントは、ハイチに来て6ヶ月。フレール(Frères)に住んでいたという。ジェームス・ソラージュ曰く、傭兵たちはハイチに3ヶ月ほど滞在していた。なお、ソラージュはハイチのカナダ大使館でボディガードをしていたという報道もある。

 

今回の容疑者逮捕、更なる調査においては海外からの支援も欠かせない。

少なくとも6人もの自国民退役軍人がコマンドの一部となったコロンビア政府は、ハイチの調査活動を支援することを約束している。一方の米国国務省は、自国の国民が拘束されたかどうかは確認できないとしている。

逮捕に当たっては台湾政府の協力もあった。と言うのも、7月8日の朝、ハイチ警察が容疑者追跡のために大使館に入ることを迅速に許可したことによる。8日木曜日の早朝、大使館の警備員が武装した容疑者のグループを発見し、ハイチ政府に通報してくれたのだ。大使館自体は暗殺事件を受けて安全対策のために閉鎖され、職員は自宅で仕事をしていたと言う。逮捕された17人の傭兵のうち11人が台湾大使館に逃げ込んでいた。

逮捕に当たっては市民も貢献した。貢献という言葉が適当かはわからないが、怒りに満ちた市民が犯人探し回った。その結果茂みに隠れていた犯人を追い詰めた。こうして犯人は捕まった。市民が火をつけた容疑者の車3台には証拠品も残されたいたはずだった。

無事だった逃走車両からは9ミリ拳銃2丁を含む銃器5丁、5.56ミリカートリッジ、ジョヴェネル・モイス大統領宅の監視カメラのサーバー、ジョヴェネル・モイス夫妻名義のBNC小切手帳、約20個のバッグ、斧、ワイヤーカッター、衣類、食料、お金、20ドル紙幣109枚、100ドル紙幣100枚の束。100米ドル札99枚、100米ドル札100枚、50米ドル札100枚、防弾チョッキに入った100米ドル札32枚、レンタカーのナンバープレート2枚、7月6日にエイビス社と交わしたレンタカー契約書、多くの携帯電話などが見つかった。略奪における戦利品とともに用意周到さが窺える内容だ。

なお、大統領の盟友マガリー・ハビタント(Magalie Habitant)夫人が、傭兵がいたトマシン(Thomassin)の家の所有者だったとする情報も出ており、彼女自身は関係をキッパリと否定している。

首都では警察の作戦を見守るために、怒りに満ちた群衆が集まっている。一部暴徒化し車が放火されたり、容疑者が拘束されている警察署の外には人々が集まっている。どんなに、退陣を求められていた大統領とはいえ、その殺害はハイチをあまりにもバカにする行為だからだ。

襲撃を計画した人物やその動機はまだ明らかになっていない。ただし、ハイチのクロード・ジョセフ(Claude Joseph)暫定首相は、元大統領が国内の汚職と戦っていたために狙われたのではないかとBBCに語った。

先にも述べた通り、暗殺事件でハイチの責任者をめぐった混乱が生じている。大統領の後任を憲法では、最高裁判所長官としているがCOVID-19の死去で不在。その後、首相が指揮を執るべきだとされたものの、大統領死去前日に新首相として任命されたアリエル・ヘンリー(Ariel Henry)はまだ宣誓していない。

ヘンリーは、自分が主導権を握るべきであり、「クロード・ジョセフは首相ではなく、私の政府の一員だ」と主張しているが上述の通り、正しく認められた状態ではないし、国連もジョセフが選挙が行われるまで政権を維持すべきだとしている。ジョセフ暫定首相は、ヘンリーの発言に困惑しながらも、自身がこのポジションに長居するつもりはないこと、さらに選挙で代表となるべき人物は選ばれるべきであり、権力争いではなくハイチを前進させるよう努めるべきだとした。彼自身は大統領選には立候補しないと言う。

若干対立しているように見えてはいるものの、クロード・ジョセフとアリエル・ヘンリーとは常に連絡を取り合っているという。

 

ハイチ大統領暗殺事件に関するその他記事はこちらから。

参考資料:

1. Assassinat de Jovenel Moïse: 15 colombiens et 2 américains interpellés
2. Assassinat du président: 11 des 17 mercenaires arrêtés par la PNH s’étaient réfugiés à l’ambassade de Taïwan
3. Jovenel Moïse: Foreign hit squad killed Haiti’s president, police say
4. Assassinat de Jovenel Moïse: la traque des mercenaires permet de constituer des éléments du puzzle…
5. Haiti police say 26 Colombians, two US-Haitians took part in Jovenel Moïse assassination
6. « Claude Joseph n’est pas Premier ministre, il fait partie de mon gouvernement », affirme Ariel Henry

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