ハイチ国家警察のレオン・シャルル長官は、大統領暗殺の首謀者の一人としてクリスティアン・エマニュエル・サノン(Christian Emmanuel Sannon)を逮捕したと発表した。11日の夕方での会見でのことだった。ハイチ人のサノンは20年ほどフロリダに住んでいる63歳の医学博士である。
サノンはCTU(Counter Terrorist Unit Federal Academy LCC)という警備会社を通じて、コロンビア人26人とハイチ系アメリカ人2人の傭兵を雇ったとされている。最初は自らの護身のために傭兵を雇ったらしいのだが、いつしか大統領の座を奪うための大統領暗殺を命じるようになったらしい。彼自身もトップの座を狙って6月に自家用機でハイチに入国していた。なお、傭兵たちが大統領を暗殺した後、最初に電話をかけてきた人物がサノンだったようだ。
サノンは20年以上にわたり、タンパベイエリアから南フロリダあたりでビジネスを展開している。その分野は薬品、不動産、天然ガスなど多岐にわたっている。公的な記録ではフロリダ州内でも10数件のビジネスを登録しているものの、現在そのほとんどの活動を停止していて、
2013年にはタンパで連邦破産法を申請しているが、破産申請書には、ハイチのタバラにある教会「タバラ・エバンジェリカル・タバナクル」の牧師、非政府組織「オーガニゼーション・ローマ・ハイチ」の会長、「ラジオ・テレ・バスコ」の会長として記載されていた。一方の裁判記録にはハイチとドミニカ共和国で活動する医師とあった。
1956年にジャクメルで生まれ、ニューヨークで生物学を学んだ後、ドミニカ共和国に留学しました。サノンは元々タンパ近郊ブランドンに家を持っていた。ただ破産申請前にこの家は既に差し押さえになっていた。自身曰くこの家は当時14万ドル以上の価値があったという。破産の記録によると、年収6万ドルに対し、合計40万ドル以上の借金があった。破産中、サノンは住所をブランドンからハリウッド、そしてボイントンビーチへと変更していた。
今回雇われていた傭兵の中には月に3,000ドルの報酬を得て、1月からハイチで生活していた人物もいる。破産を申請したこともあるサノンが、どのようにしてこれほどのお金を工面することができたのか、さらに高額な資金が必要となろう大統領暗殺という陰謀の背後に他には誰がいるのかはまだ解決されていない。
当局は暗殺を実行したコロンビア人をリクルートしたCTUセキュリティと調整したのはサノンであるものの、首謀者を彼一人とは思っていない。それもあり、首謀者や資金提供者を探すために、ハイチのトップビジネスマンや野党の政治家たちの尋問を行っている。
ベドフォード・クロード(Bed-Ford Claude)検察官の署名入りの召喚状により実業家のジャン・マリー・ボルベ(Jean Marie Vorbe)、ディミトリ・ボルベ(Dimitri Vorbe)、レジナルド・ブーロス(Réginald Boulos)、元上院議員のスティーブン・ブノワ(Steven Benoît)、ユリ・ラトルテュー(Youri Latortue)は捜査の証拠を提出するよう言われていて、12日月曜日にポルトープランスの裁判所に出頭する予定だ。
ボルベ夫妻はSogenerという電力会社を経営していますが、モイーズ政権下で契約が解除され、発電所が国有化された。ラトルトゥはハイチの元上院議長で、故大統領の政敵である。ブーロスは、食料品店や自動車販売店などを経営しているが、過去2年間に3人の米国政治活動家を雇い、反ハイチ政府思想を持つ米国人を集めていた。2020年1月にも同氏は連邦議会議員にモイーズによる独裁の新時代が始まったことを書簡を通じ伝えている。先週もワシントンの活動家アート・エストピナン(Art Estopinan)を雇っていて、エストピナンは提出書類の中で、ブーロスがハイチ大統領選へ出馬意欲について触れていた。そんなブノワは、ラジオ局Magik9を通じモイーズは自身の警護部隊に殺されたものであると非難している。
サノンを逮捕後、警察が彼の自宅を捜索したところ6丁のライフル、9mmの銃、20発の弾丸のカートリッジ、4つのドミニカ共和国のナンバープレートを含む武器と弾薬の隠し場所があった。
米国関係者は既に事件への関与を自白しているジェームズ・ソラージュ(James Solages)とジョセフ・ヴィンセント(Joseph Vincent)を加え3名となった。
このような緊迫した状態にある中、米国ジョー・バイデン大統領は緊張を和らげるために、ハイチの暫定政府からの支援要請を認め、日曜日に米国政府関係者の代表団をハイチに派遣し、警備と捜査の支援を開始した。
警察当局はビジネスマン、政治家以外にも暗殺時大統領のセキュリティを担当していたディミトリ・ヘラール(Dimitri Hérard)とジャン・ラギエル シビル(Jean Laguel Civil)も調査している。
2011年8月19日YouTobeを通じてサノンはハイチ政治の腐敗について語っている。彼自身YouTobeチャネルを持っているものの、ここでは本人以外のチャネルから紹介したい。
ハイチ大統領暗殺事件に関するその他記事はこちらから。
参考資料:
1. Haiti officials arrest doctor as doubts grow over story of assassination
2. Haitian doctor with close ties to Florida is arrested and accused of being a leader in plot to assassinate Haitian President Jovenel Moïse
3. Haitian doctor with Florida connections arrested as a leader in Moïse assassination plot
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