ボルソナロ政権とワクチン汚職

(foto by Jeso Carneiro

ワクチン汚職。早かれ遅かれこのようなことが起きる事は誰もが想像していたのではなかろうか。場所がブラジルとか、その他の国とか、そこはわからない。ただ、どこの国においても極めてありうる話だった。

COVID-19のパンデミックは、世界中を暗くした。一方でのワクチンの登場は、我々に希望をもたらした。ウイルス根絶のための救世主との一体化は数年前の世界に舞い戻れることを意味し、昔のように羽目を外し騒ぎまくることができるかの如くマスメディアは報道した。そして、それは希少なワクチンへの加熱競争を助長させた。

皆が切望するものの裏には、必ずと言っていいほど悪が存在する。極めて残念なことだが、アダムとイブの頃からそうであり、これが人間のサガというものなのだろう。

 

内部告発で明らかになったボルソナロ政府をとりまく贈収賄疑惑。それは77.8%の有効性を持つというインド製のワクチン コバクシン(Covaxin)、76%の有効性があると言うアストラゼネカ コビシールド(Covishield )と関係がある。

まずはあまり報道されていないアストラゼネカから見ていこう。コビシールドの販売店ダバティ・メディカル・サプライ(Davati Medical Supply、本社テキサス州)社代表ルイス・パウロ・ドミンゲッティ・ペレイラ(Luiz Paulo Dominguetti Pereira)の供述よると、同ワクチンの販売にあたって保健省のロベルト・フェレイラ・ディアス(Roberto Ferreira Dias)物流部長から2月25日にまず賄賂を要求された。ブラジリアのショッピングセンターにあるレストラン ヴァスト(Vasto)での夕食会でのことだったという。賄賂の額はワクチン1本(15.50米ドル)あたり1米ドルで、同社は免疫剤4億回分の販売を同省庁と交渉しようとしていたというから、その額は4億ドルに及ぶ。ドミンゲッティによりこの事象が明るみに出たことは、保健省におけるロベルト・ダリアスの解任を意味した。アストラゼネカは政府との取引のために仲介者を置いていることを否定しているが、ダバティ・メディカル・サプライとの交渉、さらに賄賂の申し出は、解任された職員が保健省に購入手続きの迅速化を依頼したことを示す電子メールからも裏付けられた。ロベルト・フェレイラ・ディアスはリカルド・バロス(Ricardo José Magalhães Barros)から任命された人物だが、この任命者の名前は覚えておいてほしい。

アストラゼネカワクチンに関してはこの他にもスキャンダルがある。7月2日の報道によると1,532の自治体でアストラゼネカ社の期限切れの25,935回分が適用されていた(6月19日時点)。ここでも登場してくるのは、リカルド・バロスである。実は彼の選挙拠点マリンガ・パラナ市が期限切れワクチンの接種者が最も多くなっている。理由はわからぬが、その数は3,536人だったという(すべてのケースで初回接種)。

FOLHA DE S.PAULOは未発表情報とした上で、有効期限が切れた対象の8ロット中4ロットがインドの血清研究所から輸入され、残りの半分はPAHO(Pan American Health Organization)から輸入されたものだったとしている。ワクチン自体は有効期限前の1月から3月にかけて各地域に配布されたが、利用時点では期限が切れていた。古いものでは3月29日、新しいものでは6月4日までが有効だったという。

 

コバクシンについても見ていこう。ここでもまたバロスが登場する。この事件は保健省で医療品輸入担当をしていたリカルド・ミランダ(Luis Ricardo Miranda)がインドの会社から受け取った請求書に疑いをもた事から始まる。そこには見覚えのないマディソン・バイオテック社(Madison Biotech、シンガポール本社)に対して初回出荷分4,500万ドルの前払いをするよう記載があった。怪しく思ったリカルド・ミランダは輸入許可を承認しなかったが、その結果、ボルソナロの最側近の一人であるエドゥアルド・パズエロ(Eduardo Pazuello)元厚生大臣の補佐官アレックス・ライアル・マリーニョ(Alex Lial Marinho)から圧力をかけられた。彼は本事象につき弟で下院議員のルイス・ミランダ(Luis Miranda)に共有、兄弟2人は3月20日にボルソナロと会い契約不正についてアラートを上げたという。報告を受けたボルソナロは2人に疑惑調査のために警察に連絡することを約束したが、3ヶ月以上放置している。

シンガポールの企業の存在もそうだが、それ以外にもバラット・バイオテック(Bharat Biotech)との契約書においては不一致が見つかっている。例えばそれは支払い金額、支払い方法、投与回数、仲介会社などだ。議会調査委員会(Comissão Parlamentar de Inquérito:CPI)に提出されたバラット・バイオテック社と同省との間の電子メールによると、当初の見積価格は1.34米ドル/回とあったにも関わらず、その後の契約交渉では15米ドル/回に引き上げられている。実際に契約で合意された価格も当初の見積もりよりもはるかに高く、ブラジル外務省の複数の文書でもその差は1,000%にも上ることが見て取れた。上述の通り、これにもまたバロスが関与しており、彼は保健省によるインドのワクチンの購入が妨げられないようにするかわりに賄賂を要求したようだ。

ボルソナロは細かい内容については信頼関係のもと各大臣に任せていると言うが、それが本当だったとしても、報告があった上で放置していたのであれば、倫理規定違反などで訴追されることとなる。個人的な利益のために、公務員の義務として必要な行動を遅らせたり、控えたりした可能性があるからだ。なお、ボルソナロ自身は、本契約は未だ履行されていないし、お金も動いていない、そしてそもそもこの事案は政権の天敵によるでっち上げたのだと主張している。

28日月曜日、CPIの副会長であるランドルフ・ロドリゲス(Randolfe Rodrigues)は、ファビアノ・コンタラート(Fabiano Contarato)上院議員、ホルヘ・カジュル(Jorge Kajuru)上院議員とともに、ミランダ兄弟の申し立てに基づき、ボルソナロに対する刑事捜査を開始するよう最高裁判所に要請、検事総長も国家元首に対する捜査に賛成した。この事象も受け、マルセロ・クイロガ(Marcelo Queiroga)保健相は疑惑が晴れるまではと、バラット・バイオテックの仲介者であるプレシサ・メディカメントス(Precisa Medicamentos)との間にあった2000万回分のワクチン購入の中断を発表した。連邦会計検査院長であるワグネル・ロサリオも何も不正が見つからないことを確信しているという言葉とともに、10日以内に調査結果を出したいと述べた。

なおブラジルではコバクシンの利用自体、Anvisa(Agência Nacional de Vigilância Sanitária)から正式承認をされていない。その理由はワクチンを製造しているハイデラバードの工場がGMP(Good Manufacturing Practice)の要件を満たしていないためである。GMPは医薬品メーカーがワクチンの緊急使用の認可を受けるための前提条件となっている。

 

ブラジルは世界で2番目に死者を出している国だ。その数は52万人を越す。もちろん上記2つの事案については未だ調査中であり、疑惑の域をでない。ただし、煙のないところに火は立たないという諺もあるくらいだし、白なのであれば、物流部長が解任されていることにも違和感を覚える。

ちなみにCOVID-19に便乗した不可思議な行動はパナマでも起きている。コルティソ政権も2020年、COVID-19の重篤患者のためと称して古くて状態の悪い人工呼吸器を53台、230万ドルという高額したというものだ。

パンデミックで多くの人が苦しみ、命を落としている中、自らの利益のみを追求する人々。誰の期待を受け、何の使命を持ち本職についているのか全く理解できていないようだ。なお、両国においては、これらの態度に対して国民は嫌悪感を示しているとともに、デモという形で国民の声を伝えている。パンデミック対策としてできることの一つに蜜を作らないことがあげられようが、政府の対応がゆえに蜜を作ってしまうのは不義理でならない。

参考資料

1. Brazil-Bharat Biotech’s $324 million contract suspended: What went wrong in the Covaxin deal
2. After Covaxin, AstraZeneca in trouble in Brazil; Bolsonaro govt asked for bribe for per dose, claims report
3. ‘Um dólar por dose’: Luiz Paulo Dominguetti reafirma à CPI ter recebido pedido de propina por vacina
4. $1 a shot: Bribery allegations threaten Bolsonaro
5. Brazil’s ‘Covaxingate’ Investigation Closes in on Bolsonaro and Bharat Biotech

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA