アルゼンチン:世界初、環境保全のためにサケ養殖を禁止する

アルゼンチンのティエラ・デル・フエゴ(Tierra del Fuego)州議会は水曜日、環境破壊を防ぐことを目的とし領内での工業的規模のサケの養殖を禁止する法律を可決した。これは世界初の法律で、養殖プロジェクトのスタート前に、環境悪化リスクを取り除くことができたという珍しい事例でもある。その観点から見ても歴史的な決定となる。

ここではその目的を天然資源、遺伝資源、湖沼・海洋生態系の保護、保全、保護を確実にすることで、違反者には養殖施設(既存のもの、仮設含む)の閉鎖、没収、罰金の支払いなどの制裁を課している。

この法案はMovimiento Popular Fueguino(MOPOF)党のパブロ・ビジェガス(Pablo Villegas)議員が提出したもので、2018年3月ノルウェーとの間で締結された “Proyecto de Acuicultura Nacional” においてビーグル水道へのサケ養殖場設置案が出てきたことをきっかけとしている。フエゴ島の人々や環境団体、科学者などはチリでなされた過ちがこの土地でも繰り返され、パタゴニアの環境に悪影響を及ぼすのではないかと懸念していた。一方の政府は地理的条件が似ているチリでは年間79万トン以上のサーモンを生産していること、また、アジアの急速なる需要拡大に応じることを目的にこのプロジェクト推進を行うとしていた。

チリとアルゼンチンの間に位置する全長240kmのビーグル水道には、イルカやクジラ、ペンギンの群れが生息しており、世界中の観光客を魅了している自然豊かなエリアです。

https://twitter.com/PabloVillegas19/status/1410644668187123712

 

グリーンピースによると、隣国チリを事例に取り、そこでのサーモンの輸出は経済的インパクトが2番目に大きいものの養殖従事者21,000人(人口1,800万人)の所得が高いわけでも、養殖を実施している自治体自体が社会的・経済的発展でも優位なわけでもないとしてきた。一方で、養殖によるインパクトは大きく、専門家によると、サケは南方の生態系環境には異質な種であり、サケの養殖は海洋環境に劇的な不均衡をもたらし、その地域にもともと存在しないウイルス、寄生虫、細菌の病気を発生させ、その駆逐のための抗生物質の使用は、環境取り返しのつかないインパクトを与えるとしている。

事実、ノルウェーに次ぐ世界第2位のサーモン生産国である隣国チリでは、この工業的生産によって多大なるインパクトを受けた。2016年には世界第3位のサーモン養殖・加工・販売会社セルマック(Cermaq)社がチリの養殖場で大量の抗生物質(ノルウェーの養殖サーモン1トン当たり500倍以上の量)を使用していたことがグリーンピースにも指摘されてているし、同年には腐敗したサケ5,000トンの海への投棄が歴史上最も深刻な社会的・環境的危機を引き起こした。漁業関係者が職を失うことはもちろんのこと、何百もの動物(魚、鳥、哺乳類)が死んだ。この破棄はチリ政府が国内外の法律に違反して許可したものだった。その他にも2007年7月25日にもアトランティックサーモンの検体からISA(感染性鮭血症)ウイルスが検出され、また、2018年7月5日にもチリ南部カルブコのマリンハーベスト(Marine Harvest)の殖オリから、抗生物質を用いて治療をしていた46万3,000匹を含むサーモン50万匹から80万匹が養殖魚が逃げ出しているなど問題が多い。

チリとアルゼンチンの間に位置する全長240kmのビーグル水道には、イルカやクジラ、ペンギンの群れが生息しており、世界中の観光客を魅了している自然豊かなエリアだ。

https://twitter.com/GreenpeaceArg/status/1410298522998652938

 

なおこの法案が可決されるに至っては、先述の通り多くのメンバーが携わっているが、生態系をともにするチリによる協力もあった。これは2019年に、ビーグル水道(チリ側)のプエルト・ウィリアムズ設置されたサケ檻を違法とする判決を下すために有名シェフや先住民族のヤガン・コミュニティとともに、アルゼンチンが協力したことによる。

 

参考資料:

1. グリーンピース、チリの豊かな海をサーモン養殖場から守る署名開始 三菱商事、ノルウェーサーモンの500倍以上の抗生物質をチリで使用
2. Argentina: la industria del salmón se instala en las prístinas aguas de la Patagonia
3. Fuga de salmones en Calbuco: Empresa responsable arriesga su concesión y multa de hasta $143 millones
4. EL POLÉMICO SALMÓN INVASOR – CORE
5. Histórico: Argentina se convirtió en el primer país del mundo en prohibir la cría de salmones
6. Salmon farming outlawed in Tierra del Fuego
7. Salmon farming in the Beagle Channel enters troubled waters

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