昆虫食が現在、注目を集めている。これは、世界的に差し迫る食糧難への対策として国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization:FAO)が提唱したことも一因であろうが、何よりも畜産に比べて収穫までに必要な資源(土地、水、餌など)や時間が少ない一方で、得られる栄養素価が圧倒的に高いことによる。現在、多く語られているサステイナビリティの観点から見ても、極めて理にかなって食材ともいえるだろう。
日本最大級の昆虫食・昆虫雑貨通販サイトを運営するバグズファームによると、コオロギの養殖における温室効果ガスの排出量は、牛と比較して1/2800、必要な農地は1/15、飼料は1/6、水に至っては1/22000である。
「他国では昆虫を食べるのか」「気持ち悪い」などと批判的眼差しを向けたり、日本文化との隔たりを訴える人々もいるだろう。しかし、中野ブロードウェイや、街中でその自動販売機が見られるように、近年は極めて商業的なコンテキストにおいて昆虫食が展開されている。販売価格は高めに設定されているが、それは物珍しさに惹かれた購買を狙ったものであろう。
もっとも、日本においても一部地域では昆虫が伝統食として食べられてきた歴史がある。私自身も幼少期に、お土産としてもらったイナゴの佃煮を好んで食していたし、学生時代に訪れた長野では、川遊びの最中に捕まえたマゴタロウの素揚げが、小腹を満たすのに重宝した。ちなみに、この風変わりな名前の昆虫の正体は、ヘビトンボの幼虫とのことである。蜂の子もまた、長野ではよく知られた食材である。
昆虫食は、アジア29か国、南北アメリカ23か国、アフリカ36か国において確認されており、合計で1,400種にも及ぶ昆虫が食用とされている。主に食べられているのは幼虫や蛹であるが、成虫や卵も対象となる。
「見た目」のグロテスクさを排除し、その食材が何者であるのかを説明されない限りにおいて、むしろ誰もが気にせず食べることができるであろう食材、それが昆虫なのではないかと思っている。ベトナムで食したサソリは、特筆するほどの味もなかったし(一方パリパリして食感は良い)、メキシコの市場で頻繁に出会う塩味の効いたチャプリネスは、ビールのつまみにも最適だった。
昆虫は栄養価が高い。
Wikipediaによれば、昆虫の血液に含まれるタンパク質(アミノ酸)は、哺乳動物の肉のタンパク質とアミノ酸構成が似ている。また、昆虫の血糖はトレハロースであり、栄養価が高いとされる。昆虫の脂肪は、現代人が日常的に摂取している植物油に近い性質を持ち、さらに、ヒトに必要とされる大半のビタミンや各種ミネラルも含まれていることもまた解明されている。加熱処理によって雑菌などの衛生面の問題も解消されるため、食品としての摂取にも問題は発生しないとされている。
カミキリムシの幼虫──いわゆる「鉄砲虫」「ゴトウムシ」と呼ばれるもの──の味は格別で、「マグロのトロ」に例えられるほどである。マグロもまた、乱獲などにより生態系への影響が懸念されている存在であるから、仮にこれら昆虫を安定的に養殖できるようになれば、持続可能な食の未来が見えてくる可能性もある。
近年では、コオロギを用いたラーメンがいくつかの店舗で提供されるようになってきた。コオロギは高タンパク質であるだけでなく、鉄分、カルシウム、亜鉛、ビタミンB12、必須アミノ酸であるBCAA、オメガ3脂肪酸、キチンなどの成分も豊富に含んでおり、非常に栄養価の高い食材である。
なお、コオロギはラーメン以外にも活用されている。たとえば、良品計画はコオロギ入りのせんべいを販売しており、敷島製パンもコオロギパウダーを使用したパンを開発するなど、昆虫食の商業化は着実に進展している。
コオロギラーメン
おうちでコオロギラーメン(冷凍)
ANTCICADAオンラインストア
HP:https://antcicada.stores.jp
2種類のコオロギでとったスープに、コオロギを発酵させてつくったコオロギ醤油、特製のコオロギ油、コオロギ練り込み麺とその名の通り、コオロギづくし。一杯に使われるコオロギは約100匹。
2人前 2200円、4人前 4200円、10人前 10000円
※トッピングコオロギの有無も選べる
実店舗ANTCICADAではラーメンだけでなく、予約することでコース料理も食べられる。
〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町 2-4-6(03-6881-0412)予約はこちらから。
こおろぎラーメン【しょうゆ】(干しめん)
バグズファームオンラインストア
HP:https://bugsfarm.jp/noodles/
コオロギパウダーは魚粉のような風味と独特の大地の香りがする。しょうゆベースのスープは奥行きが出て複雑な味わいを醸し出す。一杯分の麺に約30匹、スープ一袋には約20匹の粉末コオロギが含まれているという。ご賞味あれ。
2人前 1袋(200g)¥ 780、2人前 1袋(200g)x 12袋 ¥ 9,360、
2人前 1袋(200g)x 36袋 ¥ 28,080
参考資料:
1. “蜂の子” とは
2. 昆虫食=ゲテモノなんて言わないで!1kg6000円で売れることもある「ざざ虫漁」に潜入してきた
3. 食料問題を解決?昆虫食
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