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ペルー大統領選2021:左翼ゲリラ、住民殺戮か

ペルー大統領選における決選投票まであと2週間。そんな中また痛ましい事件が起きた。5月24日、ペルー中部VRAEM(※)にあるサンミゲル・デル・エネ(San Miguel del Ene)で住民が殺された。その数は増え16人にも及ぶ。なおその中には1歳、3歳児をも含み、16人の死体はピチャリ検察が搬送するという。当局の発表によるとバーで起きたこの事件の実行犯はこの土地に残る左翼ゲリラ センデロ・ルミノソの残党の仕業とした。

1980年代〜90年代、政府はこのアマゾン地帯に本拠地を持つ左翼ゲリラセンデロ・ルミノソの壊滅にはしった。結果、2012年ワリャガ川流域のグループはほぼ壊滅、2015年1月同地域でグループの再建を試みた活動家逮捕。2013年8月と2015年8月にはアプリマク川・エネ川流域の一派も幹部2人を失い、戦闘員を指揮するコマンダー2人も逮捕された。

各リーダーを失った1990年代後半からはホセ司令こと、ビクトル・キスペ・パロミノ(Victor Quispe Palomino)がペルー武装共産党(Militarizado Partido Comunista del Perú:MPCP)として、この地域の組織を引き継いだ。ジャングルのコアとなるビズカタン(Vizcatán)にはオペレーションセンターがあり、そこには100人から200人ものメンバーがいると考えられている。 また、この土地は麻薬マフィアとの繋がりも強く、資金提供の可能性も指摘されている。  

そもそもこの地は南米1のコカの葉の産地である。ペルーから毎年輸出される411トンもに及ぶコカインの約70%がこの地で作られ、主に米国、ヨーロッパ、ブラジルへ輸出されている。このためコカインの利権を狙ったマフィア、武装集団などの抗争が絶えず暴力が蔓延している。密林に囲まれたこの土地はかなりの広範囲であること、特定のルートを知っている人だけが移動可能で、地理的にもアクセスしにくく、ゆえに政府によって忘れられ、無視されてきた問題のある地域だった。

政府も代替作物生産のための提案はするものの、結局輸送手段等を考えた際には競争力もなく、受け入れ難い。故に販売が簡単で、かつ収益性が高くいコカの葉栽培に戻ってしまうという悪循環だ。

先述の通り軍はこの虐殺をセンデロ・ルミノソ、ひいてはMPCPによる “社会浄化” によるものだとしている。犯罪現場で見つかったビラには “VRAEMとペルーの悪しき生活、寄生虫、腐敗した人々の巣窟を浄化する” と記載があったし、さらには6月6日に行われる大統領選挙へのボイコットの呼びかけがあったからだ。そこにはこう付け加えられている。”選挙にはいくな。行っても白票だ”、”ケイコ・フジモリを支持したものは裏切り者であり、VRAEMの殺人者であり、ペルーの殺人者である” と。

軍が指摘するようにこれは本当に左翼ゲリラによる行いなのか、と疑問を投げつけるものもいる。というのも、虐殺の目撃者と生存者によると、その手口がいつもとは違うのだ。証言によると、3人の男性が胸にライフルを抱え現場に侵入。その後一言もものを発することなく銃を撃ち始めたという。自称MPCPのメンバーは通常軍服や黒い衣装を着用しているが一方でこの日は民間人が一般的に着るような着衣を身に纏っていたという。また、大統領選挙直前にセンデロ・ルミノソが攻撃したことは過去にもあったものの、最近の標的は軍隊と警察であり、民間人を狙った例も見ないという。なお、センデロ・ルミノソたちからの犯行声明はない。 

選挙キャンペーンを通じテロ、暴力、麻薬密売収束のための行動を約束しているカスティージョとケイコ。ともに虐殺を大きく避難しながらも、ケイコは「だから左翼ゲリラと繋がっているカスティージョに投票するな」とネガティブキャンペーンにこの事象を利用するだろうし、これはケイコを大統領にしたい保守層や右翼が仕組んだ陰謀だとカスティージョはしていくのかもしれない。

ケイコはカスティージョと左翼ゲリラとを結びつけた演説を幾度となくしており、その度にカスティージョはそれを否定している。なお、この地に残っているMPCPなどのグループは、自称センデロ・ルミノソの残党ではあるが、当のセンデロ・ルミノソ側はMPCPなどを認識しておらず、また、指揮系統からも遠いとされていることも付け加えておこう。

 

 

今回だけでなく暴力や麻薬の抗争を通じて多くの人が亡くなっている。選挙ありきではなく、被害者家族、社会が抱える問題と真に向き合い、一刻も早くより良いペルーを作っていって欲しい、そう強く願う。

※VRAEMはアプリマック・エネ・マンタロ川沿いの渓谷(El Valle de los Ríos Apurímac, Ene y Mantaro)の略称。別名ドラッグバレーとも呼ばれる。
映画 “パブロ・エスコバルの遺産” を一気見するでも述べているように、現在
コカ葉の生産世界一はペルーとなっている。

 

参考資料:

1. Perú: cómo es el Vraem, el “valle de la droga” en el que ocurrió la masacre de 16 personas atribuida a Sendero Luminoso
2. Suben a 16 las víctimas de la masacre en Perú atribuida a Sendero Luminoso
3. Policía de Perú confirma masacre en Vizcatán del Ene
4. Un grupo narcoterrorista asesina a 16 personas en el principal valle cocalero de Perú
5. Peru Massacre Highlights Desperation of Weakened Shining Path Rebels

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