映画 “Habanastation” から見るリアルなキューバ

5月1日(※)の行進中に迷子になったマイト(Mayito)。誤って乗ったバスに連れて行かれたのはPlazade la Revoluciónの近くのラ・ティンタ(LaTinta/架空の地区)だった。そこはマイトが住んでいるミラマルとは全く違う別の顔を持ったキューバだった。見知らぬ土地で戸惑うマイト、偶然にしても学校の友人カルロス(Carlos)に遭遇する。マイトのアドベンチャーはここから始まる。

マイトの父親は音楽家で外貨収入がある。家は豪華だし新作のプレイステーションだって買ってもらえる。一方のカルロスは経済水準の低い地区ラ・ティンタで祖母と一緒に住んでいる。母親は亡くなり、父親は投獄されている。そう、二人はキューバの都市部において両極端にいる。

この作品のすごいところは半世紀の間、経済格差はない、人々はすべて平等だとしてきたキューバ社会主義におけるいわゆるタブーをテーマにしたことだ。

監督のイアン・パドロン(Ian Padrón)はリアルなキューバ人生活の表現とともに、少年たちの友情にもフォーカスをしている。バックグラウンドが違っても、仲良くなれるのだ。ともに力を合わせれば問題の解決はできるのだ。

社会主義と聞くと常に虐げられ、発言も自由にできず、不憫で仕方ないという人もいるだろう。キューバもまた持つものと持たざる者との間で格差も広がり、他のラテンアメリカ諸国のように分断が生じてしまうだろうと心配する人たちもいるだろう。そんな不安に対してイアンは「キューバは高い文化水準を形成できていることもあり、他のラテンアメリカとは異なる」し、また、撮影現場となった地域を例に挙げながら社会的立場が違う人々(エンジニアと医師など)も同じ土地に住んで生活していること、すべての子どもたちが同じ学校に通い、同じ教師から授業を受けていることを挙げ、それらの点から見ても他の国々とは違うと説明したと言う。

確かにそう。キューバにおける教育は平等だ。お揃いの制服で同じ教育を受けることができる。学校が近くになく通うのが難しい子には寄宿舎も提供される。そこでは必要な医療も提供されたりと、まさに革命政府が長年大切にしてきたものがリアルに実行されている。

映画の話に戻そう。親が迎えに車での6時間半で彼らは共同作業を通じ友情を深める。例えば壊れたプレイステーションを直すためにビン拾いをし交渉したり、自転車の空気入れをしたり、敵対している少年から凧を取り返すなどと言った行為を通じてだ。課題解決に向けた協力・連帯は結果を導くと言うメッセージを彼らを通じて見ることができると監督は言いたいのかもしれない。

個人的にはマイトを探しにいく先生がもどかしくもあり、キューバあるあるで面白い。と言うのも、ラティンタまでの道のりは思ったより時間がかかるからだ。ビシタクシー(自転車タクシー)は遅いし、コレクティーボ(シェアタクシー)も人が集まらなければ発車しない。これは私も何度も経験していることだが、急いでいる時ほど、待っている時間が長く感じることはない。

この作品は世に出回るまでに5年の間検閲状態にあったという。長い時間を要したが結果としてキューバ国内でも上演されることとなった。なお、記録的大ヒットを叩き出し、上演から21日間で300の劇場で上演され、推定聴衆は約100万人に及ぶという。耳が慣れるまでちょっと聞き取りづらいが、キューバを知るための一つとしてみてほしい。

ちなみに論文(※)によると、主人公の名前「マイト」はビデオゲームキャラクターのスーパーマリオ(※)、「カルロス」はキューバを代表する野球選手カルロス・アルベルト・タバレス・パディージャ(Carlos Alberto Tabares Padilla)から来ているという。マリオはアメリカからの影響力を表し、一方のカルロスにはキューバ野球チームの服を保有させることで「ハバナ」人らしさを象徴しているという。

(※)5月1日はメーデーとともにキューバ社会主義宣言で重要な日である。
(※)論文:Habanastation dir. by Ian Padrón (review)/ Iliana Rosales-Figueroa/ Johns Hopkins University Press
(※)スーパーマリオの名は米国法人Nintendo of Americaの社員から来ている。

 

その他キューバの社会格差や教育に関して知るためのソースは以下の通り。

1. “Construir la diferencia en condiciones de igualdad: tres películas cubanas”. A contracorriente, North Carolina State University, vol. 12, nº 2 (2015), pp. 272-306.
2. キューバ共和国憲法 : 解説と全訳 Constitucion de la Republica de Cuba. 吉田 稔
3. El internado, nueva versión en la Sierra Maestra
4. Habanastation

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA