ドゥケが取ったのは力での押さえ込みだった(コロンビア)

コロンビア最大の労働組合によって呼び掛けられ始まったデモ行進は、貧困に陥ることを懸念した中流階級の人々も加わり4月28日から始まった。それは今回新たに提出された税制改革に端を発する。

2016年マヌエル・サントス(Juan Manuel Santos Calderón)大統領とFARCは平和協定を結んだ。その中では国の古臭い経済構造の改革とともに、不平等の改善がうたわれた。5年経つ今、少しでも社会は良くなっただろうか。その答えが今回のデモで見て取れるように思う。

国民はCOVID-19 が猛威を振るう中、立ち上がった。いや、立ち上がざるを得なかったというのが正しいのかもしれない。

なぜなら新たに振り出された改革は数多くいる中流階級の生活を苦しめ、更なる格差を生むように見えたからである。つまり、単に税制度の変更に “NO” を言いたかったのではなく、全くよくなる気配がない日常に対して、そして歪な社会構造や不平等なシステムを否定し、過去から蓄積された不満を政府にぶつけたかったのではなかろうか。

そして、そんな国民の声に対してイヴァン・ドゥケ(Iván Duque Márquez)大統領が出した答えは市民に対する軍事行動だった。

 

メディアを通じて報道されるのはいつも、軍や警官による暴力と制圧されるデモ隊の映像だ。一部グループが暴徒化し当局と衝突しているのは事実だ。ボゴタでは派出所(El Comando de Atención Inmediata :CAI )が襲撃され火がつけられたし、破壊された店舗、略奪行為も発生している。これらだけをみていると、政府による治安維持という名の下の軍隊派遣は成り立つようにも見えてしまう。ただ、注意してみなければならないのは、その全てがデモ関係者によって行われているかは不明で、政治的意図を持って「誰か」に実行された可能性もありうるということ(※)と、平和的(※)にデモを行なっている国民にまでも銃口が平然と向けられていることだ。

”Nos están matando en Colombia”というフレーズを掲げながらデモをしていたヨガインストラクターのルーカス・ビジャ(Lucás Villa)は頭に8発の銃弾を浴び意識不明状態だ。座り込みや踊りながら抗議しているだけの人間だった。

その彼の行為を抑制するのに、本当に8発もの銃弾は必要だったのだろうか。そもそも「8発」も「頭」に打ち込むなど狂気の沙汰で、見せしめ目的、もしくは何らかの恨みがあったのではとすら思えてします。これは明らかなる人権侵害であり、暴力を伴う異常行動であり、殺戮行為としか捉えることができない。

 

政府は身体的暴力以外でも国民を苦しめる。上述の通り、今回のデモのきっかけは4月15日に提出された持続可能な連帯に関する法律(※)(Ley de Solidaridad Sostenible)に記載された税制改正である。これはCOVID-19のパンデミックによって失った損失を補填し、経済を活性化させるための資金源、さらには貧困層に属する人々の支援プログラムの実行を目的としている。少し詳しく見ていくこととする。

改正案のポイントは付加価値税、個人所得税、法人税の3種類だ。付加価値税については、食品およびそれらの生産ラインに含まれる品目の税率は引き上げないとしながらも、一般に日用品として扱われそうなもの(牛肉、魚、鶏肉、牛乳、チーズ、生理用品など)は除外とされている。これら除外品に対する課税はもちろんのこと、ガソリン・軽油に対する課税は5%から19%となる。物資輸送に必要なそれら燃料が増税されれば、その増税分が公共サービスや市民生活に結果として還元される可能性が高い。また、個人所得税もその課税対象が2024年まで段階的に引き上げられる予定で、具体的には年間所得額が2022年は5,000万ペソ以上、2023年は3,500万ペソ以上、2024年は3,000万ペソ以上が課税対象となる。年間3,000万ペソは月収7.5万円に相当する。

 

混乱させることを承知でもう少し細かく書こう。コロンビアは階級社会となっていて、6階層に分かれる。

  1. Bajo-Bajo
    • Los pobres que no tienen como vivir bien
  2. Bajo
    • Los que no tienen mucho pero consiguen
  3. Medio-Bajo
    • Los que tienen su empleo pero no reciben buen dinero
  4. Medio
    • Los que trabajan y tiene con que vivir
  5. Medio-Alto
    • Los que tienen su dinero y tienen dinero de sobra para sus gustos
  6. Alto
    • Los ricos, millonarios y multimillonarios

 

これまでの税制においては階級が高い人(Medio-Alto/Alto)は、より低い階級の人の生活を支えるために公共サービスに対して20%の税金を支払っていた。一方今回の改正ではその制度は撤廃され、階級Medio以上の人々が付加価値税(電気代や水道代など)を19%支払うこととなる。金持ちに対する課税が減ったこと、逆に中級レベルの人々の生活を圧迫するような仕組みになることがわかるだろう。ゆえに今回のデモ行進に中流階級も賛同したというわけだ。

なお税制改正によって得られる歳入は23兆4,000億ペソ(約7,020億円、1ペソ=約0.03円)としている。

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政府は5月3日税制改定の修正を発表した。それでも抗議活動が終わらないのには訳がある。国民が要求しているのは、税金に関するそれだけではないからだ。格差の是正(貧困の解消)や医療へのアクセス・教育制度の改善、さらには今回のような当局による暴力の中止を強く求めている。

 

コロンビアにおけるこの事態を経て、国連をはじめヨーロッパ各地でも暴力に反対する声明を出したり、連帯を求める動きが強まっている。なぜならこれは対岸の火事ではないからだ。不平等との戦い、より良い未来建設のための行動であり、民主主義を守るための戦いなのだから。

ただし、国民側ももし暴力的行動に出ようとする者がいれば、国民自身で制御すべきである。なぜなら、暴力を使えば、政府による攻撃の口実となるし、誰もまともに話を聞いてくれないからである。一刻も早く平和的解決を強く願う。

 

当初の法案を提出したアルベルト・カラスキジャ(Alberto Carrasquilla Barrera)財務相は辞任した。抗議活動に関する写真はこちらから。
前大統領アルバロ・ウリベ(Álvaro Uribe Vélez)は引き続き政府による軍や警察の動員を支持していることも付け加えておこう。(彼が軍事行動を起こさせたとも言われている。)

 

※政府は左翼ゲリラや麻薬組織の後押しを受けた武装集団が紛れ込み、デモを混乱させていると主張している。
※デモ全てが暴力的なものではなく、その多くは鍋を叩きながらの行進だったり、プレート、旗を持って友人と参加するなど、平和裡にも行われている。

いつもながらのことではありますが、政治に詳しいわけでもコロンビアの専門家でもなく、さらにスペイン語が上手いわけでもないので、情報が間違っている可能性もあります。その点ご了承ください。

 

参考資料:

1. Reforma tributaria 2021: Los alimentos que se pondrían más caros si amplían el IVA
2. Tributaria: estos son los impuestos que irían en la segunda reforma
3. “Nos están matando en Colombia”: el grito de un estudiante antes de caer abatido por disparos durante las protestas
4. ¿Está usted entre los que más aportaría por la reforma tributaria?
5. Protestas en Colombia: por qué el choque entre manifestantes y policías es tan profundo (y cómo los CAI se convirtieron en un símbolo de lucha)

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