ブータンにいた時、なんだかとてもリラックスした日々を過ごすことができた。何がそうさせたのかはよく分からなかったけれど、そこには多くの笑顔と温かいもてなしの心があったと記憶している。そしてそこでは、時がゆっくりと流れていた。
ブータンの人々のライフスタイルは我々のものと比べると随分とシンプルであるように見えた。無駄なものはなく、そして彼らの身の回りにあるものはとても大切に扱われていた。彼らにとっては、家畜も家族の一員であったし、幸せを運び込む宝でさえあった。地域社会の人々は互いに敬いそして助け合っていきているし、これらの人生観は国家政策であるGNH(国民総幸福量)の基礎となっているのである。なお、GNHにおいては、継承されたきた文化を大切にし、自然と調和し、そして持続的で公正な社会経済の形成などが目指されているのが特徴だ。
なぜこんなことを大げさに取り上げるのか、と思うかもしれな。でも私は思うのである。彼らのライフスタイルからこそ、我々は幸せな人生を気づくためのヒントを得られるのではないかと。
我々の生きる消費社会においては、余剰なものがしばしば人々を疲弊させ、それらは容易に破棄される。一方ガラクタに包まれていないと不安を覚えてしまうとジレンマがある。そう、まるで所有するものが、資産の少ない人よりも幸せで、偉いかのような幻想に襲われる。他人への無関心さは社会に対しギスギスした関係を持ち込み、様々なストレスを生み出している。更には、このような生活を送っていると、自分たちの人生において何が最も大切なのかということすらすぐに忘れてしまうのである。
急ぎすぎなくったっていい。急いでいては見えないものもきっとたくさんある。
ブータンの人々の考えをヒントに、我々は現代社会においてできた歪みから発生する問題を解決することはできないだろうか。そして充実した人生を送ることはできないだろうか。
ブータンへの旅は、社会の本質について色々と考えさせてくれるきっかけを与えてくれたのだった。
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