エクアドル:経済緊急法案、地方自治と資源政策への影響に懸念残るも国民議会で審議開始

(Photo: Asamblea Nacional)

ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)政権が提出した2本の経済分野の緊急法案が、批判と懸念の声が相次ぐ中、国民議会で審議に入る。地方自治体の自立性を損なう恐れや、環境規制の緩和、さらにはエネルギー分野の民営化につながる可能性があるとして、野党や議会内の批判的勢力から強い疑問が示されている。

国民議会(Asamblea Nacional)の経済開発委員会は、与党所属のバレンティナ・センテノ(Valentina Centeno)委員長のもと、2月3日に会合を開き、これら2件の緊急法案の審査を正式に開始する予定である。法案は2月1日、立法行政評議会(Consejo de Administración Legislativa:CAL)によって審議対象として承認され、同委員会に付託された。

国民議会は現在、行政府から提出された2本の経済緊急法案の分析に向けた準備を進めているが、立法手続きの初期段階から、すでに野党や議会内の批判的セクターによる強い反発に直面している。

審議対象となる法案の一つは、鉱業およびエネルギーという戦略的部門の強化を目的とするものである。もう一つは、有機領土組織・自治・分権化法(Código Orgánico de Organización Territorial, Autonomía y Descentralización:Cootad)の改正案であり、政府は、地方分権自治政府(Gobiernos Autónomos Descentralizados:GAD)の歳出の持続可能性を確保することが目的だと説明している。

これらの法案はいずれも「経済分野の緊急案件」に指定されている。このため、国民議会は提出から30日以内に、可決、修正、または否決のいずれかの判断を下すことが法的に義務づけられている。審議の行方は、地方自治のあり方や資源管理政策をめぐる今後の政治的議論に大きな影響を与えるとみられている。

 

地方分権自治政府の自立性と制裁規定に疑問

市民革命運動(Revolución Ciudadana:RC)会派のアナ・エレラ(Ana Herrera)議員は、有機領土組織・自治・分権化法(Código Orgánico de Organización Territorial, Autonomía y Descentralización:COOTAD)改正案について、中央政府が地方分権自治政府(Gobiernos Autónomos Descentralizados、GAD)に対して抱える債務を軽減するため、財政負担を地方側に転嫁する意図が潜んでいる可能性があると警告した。有機領土組織・自治・分権化法(COOTAD)は、県や市町村などの地方分権自治政府の権限、財政運営、中央政府との関係を定めた基本法であり、エクアドルにおける地方自治の制度設計を支える中核的な法律である。

エレラ議員は、この有機領土組織・自治・分権化法の改正が、市町村や県政府の行政的・財政的自立性を脅かしかねないと指摘する。「私たちが懸念しているのは、地方分権自治政府の自立性を奪い、中央政府の“付属物”にしてしまおうとする意図である」と述べた。

改正案では、地方分権自治政府の予算の少なくとも70%を投資、維持管理、インフラ更新に充て、残る30%を経常支出とすることが求められている。エレーラ議員は、この配分原則自体はすでに現行の有機領土組織・自治・分権化法にも盛り込まれていると認めたうえで、問題は制裁の仕組みにあると強調した。「基準を満たさなかった場合に予算を削減するという内容だが、それは不適切な執行を行った職員を処罰するものではなく、結果的に市民を罰することになる」と批判した。是正措置は、資金を不適切に扱った当局者個人に向けられるべきであり、自治体そのものや住民が受ける公共サービスに影響を及ぼすべきではないとの立場を示した。

同様の観点から、パチャキティク(Pachakutik)所属のマリアナ・ユンバイ(Mariana Yumbay)議員も、地方分権自治政府に財政規律を求める前に、中央政府が地方分権自治政府に対する未払い債務を清算し、資金が直接かつ適時に地方へ届く制度を確立する必要があると訴えた。

 

鉱業・エネルギー分野:環境規制緩和と民営化への警鐘

鉱業およびエネルギー制度を改正する法案をめぐっても、議会内では批判が強まっている。市民革命運動(RC)会派のアナ・エレラ議員は、改正案によって環境管理が弱体化する恐れがあるとして、強い懸念を表明した。エレラ議員によれば、改正案には、現在義務付けられている環境許可を、環境省による単なる行政認可に置き換える内容が含まれているという。これは、重要な管理上の「歯止め」を外すものであり、環境保護の実効性を損なう危険があると指摘した。同議員は、こうした変更が、オロン(Olón)やキムサコチャ(Quimsacocha)など、長年にわたり社会的対立を引き起こしてきた鉱山プロジェクトの再燃につながりかねないと警告した。また、プロヘン(Progen)やATMのように、現在も世論の監視下にある案件において、不処罰を招く可能性があるとも述べた。

パチャキティク(Pachakutik)所属のマリアナ・ユンバイ(Mariana Yumbay)議員も、この法案に対して批判的な立場を示している。ユンバイ議員は、この法案は戦略的分野に対する新たな公共政策を構築するものではなく、民間資本を優遇するために設計された改革だと断じた。

「法案のタイトルの時点で、立法技術上の問題と政治的な欺瞞が存在している」と述べ、法案の構成そのものに疑問を投げかけた。

さらにユンバイ議員は、この提案が、事前・自由・十分な情報に基づく協議の権利を保障しておらず、その実質を空洞化させるものだと警告した。影響を受ける地域社会が実質的な意思決定を行える保証がないまま、領土の占有や鉱業インフラの建設を容易にするため、重要な法規を改正しようとしている点を問題視した。

エネルギー分野についても、ユンバイ議員は、法案第25条第1項が、最長30年に及ぶコンセッションによって戦略的な公共サービスを民間部門に委ねることを可能にすると指摘した。これは、憲法および2025年11月に示された国民の意思に反する、事実上の民営化に当たるとの見解を示した。

 

与党は法案を擁護

与党・国民民主行動(Acción Democrática Nacional:ADN)からは、ナタリー・ファリナンゴ(Nathaly Farinango)議員が、提出された2本の法案を擁護する立場を示した。

地方分権自治政府(GAD)に関する改革について、ファリナンゴ議員は、経常支出よりも公共事業や公共サービスへの投資を優先させるために不可欠だと主張した。そのうえで、審議の場において、市民の安全対策に地方政府が予算を充てられるようにするなどの修正案を提案する意向を示した。

また、鉱業およびエネルギー分野を対象とする法案については、委任やコンセッションを通じて、国家の財政状況の改善につながるとの認識を示した。一方で、これらの改革を進めるにあたっては、委員会での審議において、専門家の出席を含む技術的な検討と、幅広い議論が必要になるとの考えも示している。

 

ノボア、外遊の目的や同行者は不明のままアラブ首長国連邦に向け出発

エクアドル大統領のダニエル・ノボアは、登壇者として名前が公表されていたにもかかわらず、ドバイ(Dubai)で開催される世界政府サミットにおいて講演を行わないことが明らかになった。

 

ノボア大統領は2026年2月2日午後4時前、ポルトガルを経由してアラブ首長国連邦に到着した。しかし、今回の外遊の目的や同行者については明らかにされていない。大統領府の公式ウェブサイトでも、予定表には内容の記載がない空白の枠のみが表示されており、公式日程は非公開である。

 

出発の数時間前にあたる1月31日(土)、ノボア大統領は国内におり、サンタ・エレナ(Santa Elena)県サリナス(Salinas)で行われたイベントに出席していた。大統領は公的資金を用いて中東への移動許可を受けているが、同行者については大統領令第297号において「行政総局(Secretaría General de la Administración Pública)の管轄事項」として従来通りの表現が用いられている。

Photo:Radio Pichincha

 

ラジオ・ピチンチャ(Radio Pichincha)によれば、今回の外遊は、ノボア大統領の任期中における同国訪問としては3回目である。この訪問は、エクアドルとアラブ首長国連邦の間で昨年12月に署名された投資協定について、憲法裁判所が現在審査を行っている最中に実施された。また、数日前にはノボア大統領が在アラブ首長国連邦エクアドル大使フェリペ・リバデネイラ(Felipe Ribadeneira)に対し、二国間協定に関する正誤表への署名を承認していたことも報告されている。文書には「形式上および表記上の誤り」があったとしている。

今回の国際出張について、公式には日程の詳細は公表されていないものの、ノボア大統領の名前は、2月3日から5日にかけてドバイで開催される世界政府サミットの参加者一覧に記載されている。ドバイは、アラブ首長国連邦を構成する7つの首長国の一つである。

前日まで、ノボア大統領は同サミットで講演を行う登壇者として掲載されていたが、その後、外務省は公式チャットを通じて、ノボア大統領に代わり外相ガブリエラ・ソンメルフェルト(Gabriela Sommerfeld)が登壇することを発表した。本来予定されていた講演テーマは「貿易と経済の未来」であった。

専門家が指摘する情報非公開の問題

政治学者のパウル・ピント(Paúl Pinto)は、情報公開・公的情報へのアクセスに関する有機法(Ley Orgánica de Transparencia y Acceso a la Información Pública:Lotaip)は、安全保障上の理由で機密指定された場合を除き、すべての情報は公開されるべきだと定めていると指摘。その上でピントは、「推測できるのは、大統領が独自の日程で行動しており、そのため活動内容を公表したくないということだ」と述べた。

一方、社会学者のクリスティアン・アルテアガ(Christian Arteaga)は、「現在の状況は、国際的な日程管理のあり方について、完全な理解不足を露呈している」と指摘し、大統領の日程非公開が国内外での情報透明性に影響を与える可能性を懸念している。

ノボア大統領の国外滞在期間は、2026年2月1日から5日までである。

#DanielNoboa #経済緊急法案

 

参考資料:

1. Leyes urgentes de Noboa arrancan entre críticas por riesgos a la autonomía de los GAD, flexibilización ambiental y apertura a la privatización energética
2. Noboa viaja 14.000 kilómetros hacia Emiratos Árabes Unidos para no dar ninguna conferencia

 

 

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

error: Content is protected !!