[GKによるコラム]公務員を守り、表現の自由を脅かすエクアドルの法改正案とは何なのか

(Image:Karla Cabrera)

国民民主行動(Acción Democrática Nacional:ADN)の国会議員カミラ・レオン(Camila León)は、包括的刑法(Código Orgánico Integral Penal:COIP)第396条の改正法案を提出した。この条文は、刑法上の表現の自由に関わる規定で、提出にあたりレオンは「自由な報道なくして民主主義は成り立たない」と述べている。

現行の第396条では、他者の信用を傷つける目的で、ソーシャルメディアや報道機関、その他のプラットフォーム上で暴力的・攻撃的・敵対的な表現を行った場合、15日から30日の懲役刑が科される可能性がある。

アンドレス・カスティジョ(Andrés Castillo)、ロサ・トーレス(Rosa Torres)、バレンティナ・センテノ(Valentina Centeno)を含む、国民民主行動(ADN)所属の14人の国会議員の署名により支持されている改正法案では、公共の利益に関わる問題について、その表現が正当な言論の自由の行使であるのか、公務員に対する批判にあたるのかを裁判官が判断できる項目を新たに設けることが提案されている。

 

市民団体は、この改革案が公務員を保護する内容になっているとして警鐘を鳴らしている。これに対し、国民民主行動(ADN)のカミラ・レオンは1月26日、カルロス・ベラ(Carlos Vera)とのインタビューで、「人々が自由に意見を表明できるようにし、とりわけ私たち公務員が批判に対してより広い寛容さを持つことが目的だ。それが動機であり、自由である」と述べた。しかし、この提案はレオンの発言とは矛盾しているとの批判もある。表現の自由と報道の自由を擁護する人々は、これが「記者を威嚇するための道具」になり得ると警告している。

エクアドル新聞編集者協会(Asociación Ecuatoriana de Editores de Periódicos:AEDEP)の元会長、フランシスコ・ロチャ(Francisco Rocha)は、この提案を「本来なら廃止されるべき現行条文の露骨な悪用」と批判し、「メディアを脅し、汚職事件が表に出るのを防ぐために権力を守ろうとする意図」を示していると指摘する。

また、市民と開発財団(Fundación Ciudadanía y Desarrollo:FCD)の代表マウリシオ・アラルコン(Mauricio Alarcón)も、「まったく筋が通っていない」と述べ、この法案は、裁判官が表現を主観的に評価して刑事罰を科す可能性を開くものだと警告する。

実際、包括的刑法(COIP)第369条はすでに記者を処罰するために用いられてきた。報道の自由を守る団体フンダメディオス(Fundamedios)によると、エクアドルのグアランダ出身の記者ジョナサン・ケサダ(Jonathan Quezada)は、2024年に司法での汚職疑惑を調査していた最中、「信用失墜または名誉毀損」を理由に有罪判決を受けている。

報道活動を守る財団、記者たちの鎖なき活動(Periodistas sin Cadenas)は、この改革案について「表現の自由に対する刑罰化を強化する可能性がある」と指摘している。

 

国会議員カミラ・レオンは、この法案がエクアドルにおける表現の自由を保障し、記者が「権力によるものを含め、汚職を自由に告発できる」ようにするための「国際基準」に沿ったものだと主張している。法案の背景説明では、表現の自由は世界人権宣言に明記された重要な人権であり、同宣言は1948年に国際連合総会によって採択されたことが強調されている。さらにレオンの提案では、米州人権裁判所の見解を引用し、刑法は真に重大な行為に対してのみ、かつ最後の手段として用いられるべきだとしている。不快、強い表現、あるいは批判的であるという理由だけで刑務所に送られるべきではないという考え方だ。

しかし、フンダメディオス(Fundamedios)の代表セサル・リカウルテ(César Ricaurte)は、「適切な知識を持っていない、あるいは表現の自由をそれほど重要な権利だと考えていない裁判官が、国際基準を適用しないことがある」と指摘する。リカウルテは、十分な訓練を受けていない裁判官にそのような権限を与えることは、否定的な結果を招きかねないと警告している。

 

法案には、裁判官が「適合性、必要性、比例性」という原則に基づく「比例性テスト」を適用しなければならないとする一般規定も含まれている。これは、表現の自由のような基本的権利を制限する国家の措置が憲法上正当であるかを評価するため、裁判官や裁判所が用いる手法である。

しかし、フンダメディオス(Fundamedios)の代表セサル・リカウルテは、「これが表現の自由の保護や保障につながるとは考えていない」と述べ、改革案が可決された場合には「大きな危険」が潜んでいると警告する。

さらに、市民と開発財団(FCD)の代表マウリシオ・アラルコンによれば、独立性に乏しく「権力に従属している」と批判される司法制度の下では、そのリスクは一層深刻になるという。司法制度の最高統治機関である司法評議会(Consejo de la Judicatura)の議長マリオ・ゴドイ(Mario Godoy)は、司法判断に影響を与える目的で職員に圧力をかけたとして弾劾裁判に直面している。

こうした状況下では、最終的な利益は公務員側に帰することになると、エクアドル新聞編集者協会(AEDEP)の元会長フランシスコ・ロチャ(Francisco Rocha)は説明する。「彼らが望んでいるのは、事実を知っていても私たちが告発しないことだ」と付け加えた。

 

この懸念は、決して遠い仮定ではない。近年、政府中枢や自治体における重大な汚職の可能性を、調査報道が相次いで明らかにしているからである。

その一例として、ラ・リベルタ市(La Libertad)の市長フランシスコ・タマリス(Francisco Tamariz)に関係するとされる土地売却の失敗事案があり、記者アンドレス・ロペス(Andrés López)が報じた。

また、司法評議会議長マリオ・ゴドイ(Mario Godoy)に近いとされる職員が、セルビア人麻薬密売人に有利な判決を出すよう、汚職担当裁判官カルロス・セラーノ(Carlos Serrano)に圧力をかけた疑惑もある。この件は、ニュースメディア「プリミシアス(Primicias)」に掲載されたコラムを通じて明らかになった。

エクアドル新聞編集者協会(AEDEP)の元会長フランシスコ・ロチャは、「公務員は一般に、職務を引き受ける時点で公の場に立つことを受け入れている。つまり、自らの行為が良くも悪くも世論の評価を受けることを受け入れているのであり、とりわけ不正の兆候がある場合にはなおさらである」と付け加えている。

 

このような改革が導入されていれば、公務員が関与する汚職事件を明らかにしてきた調査報道の多くは、表に出ることがなくなる可能性が高い。

例えば、ロンドンにあるエクアドル大使館が公費を用いて、ウィキリークス(WikiLeaks)創設者ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)に付与された亡命の記念日を祝っていたことを暴いた調査報道がある。アサンジは同大使館に身を寄せていた人物である。また、メディアGKが発表した「子どもを殺し屋として訓練していた警察官」と題するルポルタージュも、その一例だ。

さらに、ラファエル・コレア(Rafael Correa)政権下で展開されていた汚職ネットワークを暴いた調査報道も、発表されなかった可能性がある。この報道は、すでに解党した与党連合「アリアンサ・パイス(Alianza PAIS)」の選挙運動が、企業からの賄賂によって違法に資金提供されていたことを明らかにし、その見返りとして公共契約が与えられていたことを示している。賄賂を提供した企業には、オデブレヒト(Odebrecht)も含まれていた。この調査報道は検察による捜査へと発展し、当初は「アロス・ベルデ(Arroz Verde)」、その後「ソボルノス2012–2016(Sobornos 2012–2016)」として知られる事件となった。この事件でラファエル・コレアは収賄罪で有罪判決を受けている。

 

根拠を欠く動機なのか

この提案を正当化するため、法案では米州人権委員会(Comisión Interamericana de Derechos Humanos:CIDH)の表現の自由に関する特別報告官事務所および国連の特別報告官が示した情報を引用している。両者は2018年10月にエクアドルを訪問し、同国における表現の自由の状況を評価した。訪問の際、エクアドルでは記者が烙印を押され、迫害されており、情報を伝える権利よりも刑事手続きが沈黙を強いる手段として用いられていることが確認された。

法案はさらに、ラファエル・コレア政権下の2007年から2017年にかけて、当局者に関する発言を理由に記者や市民が司法の対象となり、結果として自己検閲の空気が生まれたと指摘している。その象徴的事例として、日刊紙「エル・ウニベルソ(El Universo)」の事件が挙げられている。

2011年2月、当時「エル・ウニベルソ」の論説編集者であったエミリオ・パラシオ(Emilio Palacio)は、「嘘にノー(No a las mentiras)」と題する記事を発表し、2010年9月の警察反乱(30S)における当時の大統領ラファエル・コレアの対応を批判した。その後、コレアはパラシオおよび同紙の幹部らを名誉毀損で告訴した。エクアドルの司法は、パラシオと同紙の幹部3人に対し、大統領の「名誉」を侵害したとして、懲役3年および高額な損害賠償の支払いを命じる有罪判決を下している。

 

米州人権委員会(CIDH)は、ラファエル・コレア政権下の記者や市民に対する一連の訴追が表現の自由を侵害したと判断し、事件を米州人権裁判所に付託した。同裁判所は、公務員の名誉を守る目的に照らしても、科された刑事および民事制裁は不必要かつ過度であり、表現の自由の権利が侵害されたとの判断を示している。

しかし、法案に記されたこれらの前提や経緯は、今回の提案内容と矛盾しているようにも見える。

国民民主行動(ADN)の国会議員カミラ・レオンは、ラジオ局RTPのインタビューで、第396条について「これまでの政権下で、記者や報道関係者が追及され、嫌がらせや脅迫を受けることを可能にしてきた空白が存在する。改革によってそれを防ぎたい」と説明した。レオンは法案提出前に「記者団体」と協議したとも述べた。しかし、インタビュアーのラモン・ソネンホルスネル(Ramón Sonnenholzner)が具体的な団体名を尋ねたところ、レオンは名前を明かす権限がないと回答した。これに対しソネンホルスネルは「ちゃんと事前に説明や協議をしたのか。していればその相手を言ってほしい」と詰め寄ったが、レオンは「協議は確かに行われた」と繰り返した。ソネンホルスネルはさらに「市民を欺かないでほしい」と応じた。

エクアドル新聞編集者協会(AEDEP)の元会長フランシスコ・ロチャによれば、彼が話をしたいずれの記者団体も、この法案について把握していなかったという。さらに、エクアドル全国記者連盟(Federación Nacional de Periodistas del Ecuador:FENAPE)は、この改革案に強い懸念を表明し、憲法上の権利を侵害するとして、国会運営評議会(Consejo de Administración Legislativa:CAL)に法案を審議対象として認定しないよう求めている。

1月27日時点で、この提案は技術分析部門に送られ、検討が行われている。その後、国会運営評議会(CAL)で審査され、国会本会議において77票の賛成を得て承認される必要がある。

 

表現の自由に対する真の保障とは何か

2019年、米州人権委員会(CIDH)の表現の自由に関する特別報告官事務所と国際連合の特別報告官は、包括的刑法(COIP)第396条について、「極めて曖昧かつ不明確な規定であり、その結果として口頭による表現に否定できない萎縮効果と抑制効果を生み出している」と指摘した。そのため、両者はエクアドル政府に対し、この規定を廃止するよう求めている。

市民と開発財団(FCD)の代表マウリシオ・アラルコンによれば、米州人権システムの基準では、いかなる形の表現や意見も刑罰の対象とされるべきではない。「長期の自由剝奪であれ、現在のように15日から30日であれ、問題は同じだ」と述べる。アラルコンは、名誉に対する権利は個人の自由に優越するものではないと指摘する。

米州人権基準は名誉の保護自体は認めつつも、いかなる請求も刑務所に収監する刑事制裁ではなく、賠償請求などの民事手続きで行われるべきだとしている。「エクアドルの刑法が規定する内容を進化させたいのであれば、唯一の選択肢はあらゆる形の表現や意見を非犯罪化することだ」とアラルコンは付け加える。

この改革案は、報道機関や記者がさまざまな形で検閲に直面している状況を背景に提出された。例えば、日刊紙「エクスプレソ(Expreso)」は、編集方針を曲げるよう圧力を受け、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)政権から攻撃されてきた。同紙は政府に対して最も批判的なメディアの一つである。

また、記者ジゼラ・バヨナ(Gisella Bayona)は、政府系メディアであるTCテレビジョン(TC Televisión)を退職した。バヨナは自身のSNSで政府を批判しており、退職時にはインスタグラムで「なぜか知りたいですか?」と投稿し、解雇の理由を暗示した。バヨナは動画で、「沈黙することは私にとって選択肢ではない。記者としてだけでなく、人間としても、意見を述べることを恐れて生きるのは正常ではなく、健康的でもない」と語った。また、「人々が発言を恐れる国は病んだ国であり、社会も病んでいる。声を追い詰めるのではなく、耳を傾けることでしか治らない」と述べている。

エクアドル新聞編集者協会(AEDEP)の元会長フランシスコ・ロチャは、この改革案が、コレア政権下で批判を圧迫・処罰するために使われた「通信法(Ley de Comunicación)」と同様の道具になり得ると指摘する。「言論封鎖法」とも呼べる性質を持つ可能性があるという。

エクアドルで報道活動を守る財団、記者たちの鎖(Fundación Periodistas Sin Cadenas)によれば、1月1日から26日までの間、メディアや記者に対する攻撃が日常的に発生している。サンタ・エレナ(Santa Elena)では、地元当局に関わるとされる名義貸しや土地売買の疑惑を報じた記者に対して、2件の殺害予告があった。

GKは1月26日、国会議員カミラ・レオンへのインタビューを依頼したが、記事の締め切り時点で実現していない。また、法案を支持した国会議員アンドレス・カスティージョも、この件についてコメントを控えた。

#表現の自由

 

参考資料:

1. ¿Qué dice la reforma que blinda a servidores públicos y amenaza la libertad de expresión?

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

error: Content is protected !!