エクアドル:ノボア家と関係する麻薬関連企業は「マトリョーシカ型」の複雑な企業構造を持つ

(Photo: Radio Pichincha)

2025年3月27日から28日にかけて、エクアドル・グアヤス県のDPワールド・ポソルハ港(DP World Posorja)で、ブラスティ(Blasti S.A.)名義のコンテナ内から約2.6トンのコカインが押収された。押収されたコカインはコーヒー豆に偽装され、GPS追跡装置も取り付けられていた。捜査当局の調査により、ブラスティを中心とする多層的な企業構造が明らかになった。この構造は、ロシアの入れ子人形「マトリョーシカ」のように、複数の企業と株主によって形成されている。また、当局はコンテナの「複製(クローン化)」がブラスティ社構内で行われた可能性を指摘している。

 

今回の事件は、ブラスティが単なる倉庫・保管会社ではなく、複数の関連会社を組み合わせた多層的な企業ネットワークの一部として機能していることを示している。このネットワークは最終的に、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領の親族らと結びつく構造を持つとされている。

事件発覚後、ブラスティの現場職員である監督者および警備員4名と、輸送会社エセストランス(Sstrans S.A.)に関連する2名の計6名が司法手続きにかけられた。エセストランスは、エクアドル国内で貨物輸送や物流サービスを提供する企業である。現在、被告6名には定期的な出頭を義務付ける代替措置が取られており、審理および予備審問は複数回延期された末、最終的に2026年2月6日に実施される予定である。

Photo: Blasti

 

ブラスティの会社概要

会社名:Blasti S.A.
所在地:エクアドル・グアヤキル(Guayaquil)
設立日:1996年8月15日(営業開始は9月19日)
法人番号:RUC 0991364277001

事業内容
ブラスティは主に運輸関連の支援サービスを手がける企業で、貨物の物流、保管、輸送に関する各種サービスを提供している。創業以来、通関サービスや倉庫管理、果物などの物流取り扱いを展開してきたとされる。2024年時点での従業員数は約100名と推定されている。

EMIS

 

マトリョーシカの構造

ブラスティの経営権は、表面的にはゼネラルマネージャーのアルバロ・イグナシオ・ギベルノー・ベッカーと会長のシルカ・サンチェス(Silka Sánchez)が握っている。後者はエクアドル元大統領で現大統領ダニエル・ノボアの父アルバロ・ノボア(Álvaro Noboa)の親しい友人であり代理人でもある。

しかし、株式構成を分析すると、同社には第一層として機能する三つの企業が存在することが判明する。

  • 一時保管倉庫ボダルメット(Bodalmet S.A.)
  • ペトロマル・エスメラルダス(Petromar Esmeraldas S.A.)
    ※ここでもギベルノーが会長を務める
  • ファイナンシエラ・スッド・アメリカ(Financiera Sud América LTD.)
    ※バミューダ諸島の法律下で設立され、タックスヘイブン(租税回避地)の要素を持つ

次に、物流や財務管理を担う第二層の法人が浮かび上がる。代表的な企業は、マテルバナーノ(Materbanano S.A.)沿岸梱包会社エンパカル・デル・リトラル(Empacadora del Litoral Empacar S.A.)である。この層では、経営陣の名前が繰り返し登場する。財務管理はラファエル・クエスタ・アルバレス(Rafael Cuesta Álvarez)が担当し、その他の管理職にはラファエル・ガジャルド・フローレス(Rafael Gallardo Flores)やマリオ・ガジャルド・フローレス(Mario Gallardo Flores)が名を連ねている。

この複雑な企業構造の最も内側の層、すなわち最終的な受益者と考えられる部分には、ダニエル・ノボア大統領に近い人物やその家族の名前が登場する。その一例が、イサベル・ノボア・ポントン(Isabel Noboa Pontón)である。大統領の伯母にあたる彼女は、ペトロマル・エスメラルダス、マテルバナーノ、沿岸梱包会社エンパカル・デル・リトラルの株主として名を連ねている。

ペトロマル・エスメラルダスの株主には、イサベル・ノボア以外にもチリ出身のアルバロ・ギベルノー(Álvaro Guivernau)が会長を務めている。ギベルノーは、ノボア家の輸出企業であるノボアS.A.(Noboa S.A.)のゼネラルマネージャーも兼任し、同家の企業グループであるノボア・トレーディング(Noboa Trading)の会長も務めている人物である。また、国民民主行動(ADN)所属議員で、国会第一副議長を務めるミシェル・マンチェーノ(Mishel Mancheno)の夫でもある。

さらに、この最内層にはイスイドロ・ロメロ・ノボア(Isidro Romero Noboa)、メリッサ・ロメロ・ノボア(Melissa Romero Noboa)、カサンドラ・シクレ・ノボア(Casandra Sicre Noboa)、ナスタッシア・シクレ・ノボア(Nastassia Sicre Noboa)も含まれ、同様に株主として確認されている。また、海外に登記された企業もこの層に存在し、代表例としてランフランコ・ホールディングス(Lanfranco Holdings S.A.)やフルーツ・シッパーズ・リミテッド(Fruit Shippers Limited)が挙げられる。

Photo: Radio Pichincha

 

ブラスティは、財務および経営体制において大規模な変革を経験しており、その集大成が2025年9月に実現した。この時点で、資本の大幅な増額と外国資本の導入が行われた。会社の文書によると、臨時株主総会では満場一致で、ブラスティの払い込み資本を合計2,500,800米ドルに引き上げることが決議された。この資本増強は債権相殺の仕組みを通じて実施され、バミューダ諸島に登記されたファイナンシエラ・スッド・アメリカが株式の99.968%を取得し、筆頭株主として参入した。さらに、近代化の一環としてブラスティは、定款から授権資本の規定を削除し、より堅固で直接的な財務構造を反映させることを決定した。

 

ギベルノーと農業関連企業の関わり

ブラスティのゼネラルマネージャーを務めるアルバロ・イグナシオ・ギベルノー・ベッカーは、同時に、アグロインドゥストリアス・サン・エステバン(Agroindustrias San Esteban)の現会長でもある。アグロインドゥストリアス・サン・エステバンは2024年、教育省(Ministerio de Educación)が実施した学校給食用の朝食提供に関する3件の契約で注目を集めた。契約総額は1億549万8,000米ドルに上り、契約先はエクアドル食品飲料会社(Corporación Ecuatoriana de Alimentos y Bebidas:CORPABE)であった。

当時のCORPABEの株主構成は、エル・オルデーニョ(El Ordeño)が99%で農業用機械・設備卸売を主な事業とする企業インスムオス・イ・セルビシオス・パラ・エル・アグロ・インセラグロ(Insumos y Servicios Para el Agro Inseragro S.A.:INSERAGRO)が0.001%を保有していた。インセラグロの主要株主もエル・オルデーニョであった。

また、ダニエル・ノボア大統領の伯母であるイサベル・ノボア・ポントンは、アグロインドゥストリアス・サン・エステバンの株式を保有しており、この企業はエル・オルデーニョの株主の一つでもあった。しかし、契約に関する疑問が生じたことを受け、株式構成に変動が生じる。2024年7月5日、アグロインドゥストリアス・サン・エステバンは保有株式をインセラグロに売却し、同社はエル・オルデーニョの株主グループから外れた。

 

ブラスティ、押収コンテナの複製疑惑と被告の役割

エクアドル警察の報告書(No. 2025032810123593404)によると、押収されたコンテナの複製(クローン化)はブラスティの敷地内で行われた可能性がある。報告書では、同一番号のコンテナが異なる時間帯に2つ入庫していたことが確認されているという。

被告と担当役割

検察当局(Fiscalía General del Estado)は、当初逮捕された4名に対して正式に起訴状を提出した。対象は以下の通りである。

  • ペッター・セデーニョ・ラミーリャ(Petter Cedeño Lamilla)
  • ジョナサン・サンタナ・サンティリャン(Jonathan Santana Santillán)
  • エリック・スロアガ・カラスコ(Erick Zuloaga Carrasco)
  • カルロス・フリオ・バルガス・メヒア(Carlos Julio Vargas Mejía)

その後、ジミー・サンペドロ・サンカン(Jimmy Sampedro Sancán)ジョナサン・サンペドロ・サンカン(Jonathan Sampedro Sancán)も事件に関連付けられた。

国会議員フアン・アンドレス・ゴンサレス(Juan Andrés González)による報告では、被告らにはそれぞれ物流関連の特定の役割が割り当てられていた。「各被告は、港への車両運行、ブラスティ社内でのコンテナ検査、ゲートでの出入管理、社内物流などの特定機能を担当していた」とされる。

初公判と拘置命令

初公判では、プレジャス刑事総合裁判所(Unidad Judicial Multicompetente Penal de Playas)のアンドレス・バスコネス・アラルコン(Andrés Vásconez Alarcón)裁判官が、最初の4名に対し麻薬大量取引罪に該当するとして拘置命令(予防拘禁)を言い渡した。

今回の事件は、押収コンテナの操作や複製が企業構内で組織的に行われていたことを示すものであり、ブラスティの多層的な企業構造とあわせて、司法の監視下で調査が継続している。

 

ブラスティ事件、異例の遅延を伴う裁判

ブラスティに関連する麻薬事件は、現行犯として迅速に処理されることを前提に開始されたにもかかわらず、裁判手続きは著しい遅延を伴っている。

2025年4月22日、裁判を担当する判事は、当初勾留されていたペッター・セデーニョ・ラミージャ(Petter Cedeño Lamilla)、エリック・スロアガ・カラスコ(Erick Zuloaga Carrasco)、カルロス・フリオ・バルガス・メヒア(Carlos Julio Vargas Mejía)の3名について、勾留を解除し、国外退去禁止および定期的出頭義務に置き換える決定を下した。この判断は、大規模麻薬取引事件としては「異例」とされている。

この裁判の進行について、国会議員フアン・アンドレス・ゴンザレス(Juan Andrés González)は厳しく批判している。「現行犯処理として開始された刑事手続きにおいて、今回のような異例かつ不当な遅延が生じていることは、この種の例外的手続きの性質と全く両立しない」と述べた。

現在、審理および予備審問は複数回延期され、最終的に2026年2月6日に予定されている。なお、押収された薬物は2025年5月16日、カヤンベ(Cayambe)県において、マルコ・サラザル・アギーレ(Marco Salazar Aguirre)判事の命令に基づき、司法手続きに従って破棄された。

Imagen: Radio Pichincha

 

ノボア・トレーディング社のバナナコンテナにおけるコカイン問題

ノボア家の企業であるノボア・トレーディングは、NGO「汚職・組織犯罪告発プロジェクト(Proyecto de denuncia de la corrupción y el crimen organizado)」の調査により注目を集めた。

調査によれば、バルカン半島の麻薬密売者とされる人物が、暗号化通信アプリ「Sky ECC」のチャットで、2020年末から2021年初めにかけて、グアヤキル発のノボア・トレーディングのバナナコンテナにコカインを積載する独占的アクセス権を持っていたと主張していたことが明らかになった。これらのメッセージは2021年2月に送信され、クロアチア検察の機密文書に記録されている。

さらに調査では、ノボア・トレーディングが他の事件にも関与している可能性が示されている。コロンビアの雑誌『Raya』は、2020年から2022年の間に、グアヤキルで同社のコンテナ3件から約700キログラムのコカインが押収されたと報じている。

会社登記によれば、ランフランコ・ホールディングス(Lanfranco Holdings S.A.)がノボア・トレーディングの株式の51%を保有している。さらに、パンドラ・ペーパーズ(Pandora Papers)の流出資料によると、ダニエル・ノボアとその兄ジョン・ノボア(John Noboa)が、ランフランコ・ホールディングスの実質的な所有者であるとされる。

Imagen: Radio Pichincha

 

2025年3月23日には、次期大統領選の決選投票を控えた公開討論会で、当時の候補者ルイサ・ゴンザレス(Luisa González)が、ノボア・トレーディング社および押収された3件のコカイン貨物についてダニエル・ノボアに質問した。これに対しダニエル・ノボアは次のように否定している。「私はこの会社の所有者ではない。しかし、家族のメンバーがこの会社に関与している。ノボア・トレーディングはすべての事件で捜査に協力しており、検察にも説明済みである。このことにより、同社の職員がいかなる違法行為に関与していたわけではない。」

#DanielNoboa

 

参考資料:

1. Blasti, la empresa donde se halló droga y se relaciona con la familia Noboa, es un laberinto corporativo de “muñecas matrioskas”
2. 2,6 toneladas de cocaína halladas en un contenedor revelaría una estructura que liga a la familia Noboa con el narcotráfico
3. BLASTI S.A. (ECUADOR)

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

error: Content is protected !!