(Photo:La República)
国立統計情報院(Instituto Nacional de Estadística e Informática :INEI)および犯罪統計委員会(Comité Estadístico Interinstitucional de la Criminalidad:CEIC)の責任者であるガスパル・モラン・フローレス(Gaspar Morán Flores)は記者会見で、2025年における全国の殺人発生率が10.7であったと発表した。この数値は前年を上回るものであり、国民の体感とも一致しているという。彼の発表によると殺人発生率は、2022年が8.6、2023年が9.3、2024年が10.1と推移しており、2025年にはさらに更新された。
この状況について、元内務大臣のクルーバー・アリアガ(Cluber Aliaga)は、これらの数字は反省を促すものであると指摘した。アリアガは、ペルーでは歴史的に人口10万人あたり4件から7件の殺人が発生していたが、数年前に一桁台を突破して以降、状況が劇的に変化したと説明している。また専門家らも、政府が治安対策を実施してきたにもかかわらず、殺人発生率が過去の記録を超える水準に達している点について、警鐘を鳴らしている。

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四半期データを根拠とする政府説明に専門家から批判
ガスパル・モラン・フローレスは、治安対策に対する擁護として、四半期ごとの分析では殺人発生率が減少していると説明している。モランによると、2024年の第4四半期における殺人発生率は2.6であったのに対し、2025年の同期間は2.5に低下した。
しかし、この説明に対しては慎重な見方も示されている。元内務大臣のクルーバー・アリアガは、モラン長官が発表した統計は警察(Policía Nacional del Perú:PNP)から提供されたデータに基づいており、情報収集の過程に偏りや制限が存在する可能性があると警告した。アリアガは、四半期単位の一時的な数値だけでは、年間を通じた殺人発生率の増加傾向を評価する上で意味を持たないとの認識を示している。
さらに、データ分析の専門家であるフアン・カルバハル(Juan Carbajal)は、ホセ・ヘリ(José Jerí)政権下で発表された犯罪統計委員会(CEIC)の数字について、偏っているだけでなく、市民を「騙す」目的で示されたものだと強く批判した。カルバハルは、全国平均のみが提示され、地域別のデータが欠如していることが、「犯罪が減少している」という誤った印象を生み出していると指摘している。
「彼らが行ったことは、統計で人々を騙すことだ。各地域(県)ごとの結果は示さず、全国の絶対的な数字だけを示している。国の他の地域で犯罪率が非常に低いことが、全国的な犯罪率を引き下げる要因となっている。政府はデータを歪め、文脈を無視し、偏向させたのだ」とカルバハルは『ラ・レプブリカ』紙のインタビューで語った。
犯罪統計委員会発表統計の信頼性に相次ぐ疑問
フアン・カルバハルは、犯罪統計委員会(CEIC)が公表したデータについて、正確でもなければ、最新でもない可能性があると指摘している。カルバハルによれば、CEICは2021年以降データを公開していない。それにもかかわらず今回過去の情報含め開示されている。「政府が発表した数字は正確とは言えず、データや下位集計が更新されるにつれて、数値が増加する可能性がある」とカルバハルは述べ、現時点の数字を確定的なものとして扱うことに警鐘を鳴らした。
同様の懸念は、刑事法の弁護士であり講師でもあるマルコス・ガルバン(Marcos Galván)からも示されている。ガルバンは、政府が公表した統計を「予備的な数字、概算、あるいは単なる構築に過ぎない」と表現し、今回の報告書が、過去に犯罪統計委員会(CEIC)が発表してきた報告書の水準に達していないと指摘した。
ガルバンによると、犯罪統計委員会(CEIC)はこれまでに5~6回の報告書を発表しており、2012年から2021年までの報告では、必ず技術報告書や作業文書が添付されていた。そこでは方法論や用語が明確に定義され、数値を対比・検証する手順も示されていたという。また、当時は少なくとも7~8か月をかけてデータが整理・公表されていた。しかし今回については、「透明性や技術的基準が欠けており、予備的あるいは概算の数字が提示された」とガルバンは説明している。さらに、ガルバンは、今回発表された数値が、すでに公開されている国家死亡登録システム(Sistema Nacional de Defunciones:SINADEF)、犯罪・被害届の統合システム(Sistema de Denuncias Policiales:SIDPOL)、検察庁(Ministerio Público)のデータと一致していない点にも言及した。
「4年が経過して、今年報告された数字を見てほしい。2025年の殺人件数は人口10万人あたり3,675件とされ、犯罪統計委員会(CEIC)の数字は国家死亡登録システムがこれまで報告してきた数値を大きく上回っている。警察(Policía Nacional del PerúPNP)が以前に記録していた数字よりも高い」と述べ、数値の乖離を問題視した。
恐喝に関する統計についても、同様の不整合が確認されている。2023年1月22日、政府は2025年の恐喝の届け出件数を26,585件と発表したが、犯罪・被害届の統合システム(SIDPOL)では25,196件、検察庁(Ministerio Público)では27,029件とされている。この点についてカルバハルは、「検察庁と犯罪・被害届の統合システム(SIDPOL)の間で2,000件以上の差がある」と述べ、「私たちは誰を信じるべきなのか」「どの機関を信頼すべきなのか」という疑問を投げかけた。各機関の登録データにズレがある現状を踏まえ、統計を一元的に可視化する単一の機関の必要性を強調している。
ガルバンはまた、方法論の説明や数値検証を欠いたまま報告書を提示することは、結論を導き出す上で有害になり得ると警告した。特に、国民の治安に対する認識を誤った方向に導く可能性があるとしている。
今回の会見では、2024年と2025年の最終四半期を比較し、「殺人率が減少した」との結論が示されたが、ガルバンはこれも無効だと断じた。「計算方法に問題がある以上、有効な結論とは言えない。大統領や警察庁長官は、恐喝の届け出が減ったことをもって、恐喝の発生率が減少したと解釈しているが、その見解には何の根拠もない」と述べている。
元内務大臣のクルーバー・アリアガも、今回のデータ発表について「少し急ぎすぎている」との認識を示した。技術的基準に基づいておらず、裏付けとなる方法論も示されていないため、「監査ができず、データは最終的なものではない」と指摘する。
アリアガはさらに、「今回示された内容は、国民が本当に求めていた情報ではない」と述べ、例えば、2025年10月時点でリマの交通業者や運輸会社が何件の恐喝被害を受け、2026年1月時点でどれだけ改善されたのかといった、具体的で実態に即した情報こそが必要だったとの考えを示した。

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発表された犯罪の多い地域
国家統計情報研究所(INEI)の会長が発表した2025年の犯罪統計によると、全国の殺人発生率は人口10万人あたり10.7件に達し、前年の数値を上回った。地域別では、マドレ・デ・ディオス(Madre de Dios)が24.6件で最も高く、続いてカヤオ県(Provincia Constitucional del Callao)が次いで23.6件、リマ地域(Región Lima)23.1件、トンベス(Tumbes)20.6件、プノ(Puno)14.8件であった。これらの地域は、恐喝や違法鉱業に関連する犯罪が多発しているとされる。
モラン・フローレスは新たな国家治安計画において、違法鉱業に加え恐喝を「違法経済」として取り上げる必要があると指摘した。特にラ・ビクトリア地区(Distrito de La Victoria)のガマルラ地域(Zona de Gamarrra)では、駐車料金や屋台販売に対する恐喝が行われ、当局の関与も疑われるという。恐喝は規模や蓄積力が大きく、政治と結びついた腐敗にも関連していると述べた。
犯罪件数については、2025年の恐喝届け出件数は26,585件で、2024年の22,361件から増加した。一方、四半期ごとの分析では、第4四半期における恐喝の届け出件数は5,494件で、前年同期間の6,279件と比較して減少した。盗難事件は2025年に62,844件で2024年の112,574件から減少し、第4四半期では14,615件と前年同期の19,713件より減少した。誘拐事件も同様に、2025年の1,587件が2024年の1,685件から減少し、第4四半期では375件で前年同期の455件を下回った。
市民の治安に対する認識については、安心感を持つ割合が2024年の86%から2025年には83.9%に減少し、犯罪被害の割合は27.1%から25.2%へと減少した。一方で、自宅周辺や近隣での夜間の治安認識は、2024年の56.6%から2025年には57.9%に増加しており、市民の体感と統計との間に乖離が見られる。
恐怖から通報しない可能性
統計学者カルバハルは、恐喝や窃盗などの犯罪に関する届け出件数の減少について疑問を呈した。ヘリ大統領は自身の政権下で恐喝の届け出が減少したと述べたが、カルバハルは、この数字が必ずしも犯罪の発生減少を意味するものではなく、市民が恐怖から通報しなかった可能性もあると警告した。
「2025年の11月と12月に恐喝の届け出件数が急激に減少したことは、現在の現実と矛盾している。恐喝は依然として続いており、減少を示すものではない。実際には、市民が通報を恐れるか、何も起こらないと感じて通報しなくなった可能性がある」とカルバハルは述べ、さらに検察庁が「通報のブラックリスト」を発表したことにも触れた。
こうした状況を踏まえ、カルバハルは大統領の発表に反論し、「減少はどこにあるのか?統計的に見れば、減少ではなく波のような変動があり、明確な減少の兆しは見られない」と強調した。一方でヘリ大統領は、達成された結果は十分ではないと認めつつも、「ポジティブだ」と述べた。
犯罪に対する戦略は個別対応が必要
刑事法学および犯罪政策の専門家アンヘル・ガスパルは、政府が今後提出する国家治安計画について、より実務的な内容が求められると指摘している。ガスパルは、計画の更新にあたっては地域ごとのアプローチに加え、市民参加や監視の仕組みを組み込む必要があると述べ、市区町村単位で設置される地区委員会の関与を例示した。この計画は国家の治安システムと連動し、地方レベルで実施されるべきだと強調している。
元内務大臣クラバー・アリアガは、チクラヨ(Chiclayo)での経験に基づき、犯罪との戦いには各犯罪に応じた戦略が必要であり、すべての問題を一律に扱うべきではないと指摘した。「例えば、組織的な誘拐や殺し屋に関わる者は殺人を厭わないが、詐欺師は殺さない。詐欺師は、あなたが得をすると思わせて騙すだけだ。犯罪者はそれぞれ異なる暴力性や攻撃性、資源を持っている」とアリアガは述べた。
また、アリアガは緊急事態宣言の実施結果について報告がなされていないことを問題視した。この措置は市民の基本的権利を制限するものであり、秩序と平和、治安の回復が求められる。「制限は、秩序と平和が回復される限り容認されるべきだ。つまり、1ヶ月や2ヶ月の間、自由が制限されても受け入れられる。しかし、正常化が達成されなければ、それは恣意的で不必要、タイミングが悪く、無効な措置だったということになる。そして、それこそが私たちに明確に示された事実だ」とアリアガは強調した。
2026年の殺人件数
警察庁長官オスカル・アリオラ(Óscar Arriola)は、2026年の初めの21日間における全国の殺人件数を発表した。報告によると、全国で145件の殺人が発生しており、2025年の同期間の163件と比べて11.4%減少、2023年・2024年の158件と比べると9.15%の減少となる。アリオラはこの減少について、「警察官の士気を高く保ち、日々の戦いで戦闘的であることを示している」と説明した。
また、恐喝に関する届け出件数も報告され、2026年は589件で、2024年の1,066件から50.6%の減少が見られるという。
カルバハルはこの数字に対しても疑問を呈している。そもそも、全国の数字だけでは実態を正確に把握できないからである。特にリマ市では、2025年の最初の21日間に中央・北・南地域で61件の殺人が報告されていたのに対し、2026年には77件に増加している。カヤオでは13件で、前年の17件から減少したものの、リマとカヤオを合わせると、2026年の最初の21日間で90件の殺人が発生しており、2025年の78件を上回る。

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カルバハルはさらに、「2026年1月の1日当たり平均殺人件数は6.9件(ほぼ7件)で、2025年12月の6.3件、11月の6.0件よりも高い。このままのペースが続けば、年間200件以上の殺人が発生する可能性があり、2025年9月・10月と同様の状況になるだろう」と警告した。
参考資料:
1. Tasa de homicidios a nivel nacional sube a 10.7 en 2025
2. Las cifras irreales de José Jerí: estadística sobre seguridad ciudadana está sesgada
3. Ejecutivo presentó balance sobre casos de homicidio y sicariato en el país: ¿qué dicen especialistas?

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