エクアドル:2025年史上最悪の治安状況、殺人件数は9,000件に迫る見通し

(Photo:API)

エクアドルでは、2025年が同国史上で最も暴力的な年となる見通しである。国家警察(Policía Nacional)によれば、2025年の殺人件数は少なくとも9,000件に達する見込みだ。この見通しについて、国家警察長官のパブロ・ダビラ(Pablo Dávila)は、ラジオ・ビヒア(Radio Vigía)のインタビューで明らかにした。ダビラは、当初は殺人件数が1万1,000件を超えると予測していたが、その後の治安対策によって数字は下方修正されたと説明している。

ダビラによると、2025年12月19日時点で全国の殺人件数は8,847件に達した。これは、2024年12月26日時点の6,818件を大きく上回る数であり、最終的に約7,000件で終わった2024年をすでに超えている。さらに、これまで最も暴力的とされてきた2023年の記録も更新した。

2025年には社会的影響の大きい犯罪が相次いだ。グアヤキル(Guayaquil)では、サッカークラブのバルセロナSC(Barcelona SC)に所属する選手マリオ・ピネイダ(Mario Pineida)が殺害されたほか、海岸道路での児童死亡事件、マナビ(Manabí)県の工房で7人が死亡した虐殺事件、サント・ドミンゴ(Santo Domingo)で妊婦を含む4人が犠牲となった複数殺害事件などが発生している。

エクアドルにおける年別暴力殺人件数

 

こうした深刻な治安状況を受け、警察は2025年5月以降、新たな治安戦略を各地で実施してきた。その一つが、大規模治安作戦「アポロ作戦(Apolo)」である。グアヤキル、ドゥラン(Durán)、サンボロンドン(Samborondón)から成るゾーン8では、同作戦がすでに34回実施されている。

これら3自治体だけで、2025年の暴力的死亡者数は3,000人に迫っている。特にヌエバ・プロスペリナ(Nueva Prosperina)とドゥランでは、殺人件数がそれぞれ601件、533件に達し、国内で最も危険な地区となっている。

 

エクアドルで暴力が増加している背景について、元情報機関職員で治安専門家のクレベル・カリオン(Kléber Carrión)は、2025年に犯罪組織の分裂が進んだことが大きな要因であると指摘する。明確な指導者が不在となり、組織内部の統制が崩れたことが、暴力の拡大につながっているという。

具体例として、ロス・ティゲロネス(Los Tiguerones)およびロス・ロボス(Los Lobos)の最高幹部がすでに拘束され、現在はスペインにおいて引き渡し手続き中であることが挙げられる。さらに、ロス・チョネロス(Los Choneros)のボスであるホセ・アドルフォ・マシアス・ビジャマル(José Adolfo Macías Villamar、通称フィト(Fito))も再逮捕され、米国での刑事訴追に直面している。ロス・アギラス(Los Águilas)の幹部であるロランド・フェデリコ・ゴメス・キンデ(Rolando Federico Gómez Quinde、通称フェデ(Fede)についても同様である。

カリオンによれば、指揮系統や行動規範を欠いた犯罪組織は細分化を続け、縄張りを巡る争いを激化させている。「分裂が続く限り問題は増える。彼らは地域の覇権や独占を求めて抗争を繰り返し、その結末は殺し合いになる」と警鐘を鳴らす。

このような状況から、カリオンは2026年も暴力が再び増加する可能性が高いとみている。国家による犯罪組織への対応は、依然として十分な比例性を欠いているとの見方を示した。

犯罪組織の分裂は、グアヤス(Guayas)、マナビ(Manabí)、エル・オロ(El Oro)、ロス・リオス(Los Ríos)、アスアイ(Azuay)、エスメラルダス(Esmeraldas)などで顕著となっており、これらの地域では2024年と比べて殺人件数が増加している。主な対立軸は、麻薬取引の支配をめぐるロス・ロボスとロス・チョネロスの抗争であり、ロス・ティゲロネスも、通称ネグロ・ウィリー(Negro Willy)ことウィリアン・ホフレ・アルシバル・バウティスタ(Willian Joffre Alcívar Bautista)の逮捕後に内部分裂を経験している。

ロス・ロボスはエル・オロ県でも分裂し、違法採掘ビジネスの大部分を掌握している。一方、マナビ県ではロス・ペペス(Los Pepes)と新興組織G-20に分かれ、ロス・チョネロスとの抗争を激化させている。

同様の見解は、武力紛争の発生地点と事象を分析する「武力紛争位置・事象データ・プロジェクト(Armed Conflict Location & Event Data Project:ACLED)」の報告書でも示されている。同プロジェクトによれば、2025年には人口の70%以上が何らかの形で暴力にさらされており、2021年以降、約40万人が国内避難を余儀なくされている。

 

最近の事例としては、2025年3月、グアヤキルのソシオ・ビビエンダ(Socio Vivienda)地区で発生した虐殺事件が挙げられる。この事件では22人が死亡し、その後、住民の大規模な移動が発生した。同様の住民避難は、フロル・デ・バスティオン(Flor de Bastión)など他の地域でも確認されている。

武装紛争位置・事件データ・プロジェクト(ACLED)の報告書によれば、暴力の激化は主にロス・ロボスとロス・チョネロスの抗争によるものである。ロス・チョネロスは、かつて国内で最も強力な犯罪組織であったが、ロス・ロボスはその弱体化を突き、麻薬取引や金の輸出にとって戦略的な地域を掌握してきた。同報告書は、殺人件数増加の第二の要因として、犯罪組織の分裂を挙げている。こうした分裂は、2025年に発生した殺人事件の42%に関与しているとされる。

さらに、エクアドルが地域的な麻薬取引において重要性を増していること、ならびに犯罪組織の越境的なつながりが強化されている点も、状況を複雑化させている。同報告書は、「エクアドルはますます戦略的な積み替え拠点となりつつあり、国内の犯罪組織は地域全体、さらには国外へとネットワークを拡大している」と指摘している。

また、コロンビアの犯罪組織がエクアドル国内で影響力を拡大していることにも警鐘を鳴らしている。そのため、政府が刑務所の統制を回復し、マフィアに支配された地域社会に恒常的な治安プレゼンスを確立しなければ、2026年には暴力がさらに拡大し、すでに例が見られるボリバル(Bolívar)県やコトパクシ(Cotopaxi)県のように、他県へも波及する可能性が高いとしている。

武装紛争位置・事件データ・プロジェクト(ACLED)は、2026年に向けて犯罪組織間の抗争が沈静化する兆しは見られず、むしろ内部抗争が増加する可能性があると分析している。これに加え、選挙時期の接近が、政治関係者を標的とした暴力を引き起こす恐れもあるという。

一方で、内務大臣のジョン・リンベルグ(John Riemberg)などの当局者は、組織犯罪との闘いを継続していると公に表明している。直近では、2025年12月24日に実施された治安作戦において、12人が拘束された。

なお、2025年には、超法規的処刑および権限逸脱に関する告発が230件報告されている。

#LosTiguerones #LosLobos #LosÁguilas #Fito

 

参考資料:

1. 2025 cerrará con al menos 9 000 asesinatos en Ecuador, según la Policía

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