(Photo:Fundación Oso Andino)
モロナ・サンティアゴ(Morona Santiago)県セビジャ・ドン・ボスコ(Sevilla Don Bosco)市チリアパ・アマゾナス(Chiriapa Amazonas)共同体で、アンデスグマとしても知られるメガネグマ(oso de anteojos / Tremarctos ornatus)の死骸が発見された。
環境・エネルギー省(Ministerio de Ambiente y Energía)は、市民からの通報およびSNSで拡散された画像やコメントを通じてこの事実を把握し、直ちに調査プロトコルを発動した。同省は12月6日(土)、環境・自然犯罪捜査国家ユニット(Unidad Nacional de Investigación de Delitos Contra el Ambiente y la Naturaleza:UNIDCAN)と連携し、正式な調査を開始したと発表した。
技術チームは現場に赴き、直接情報を収集した。現場では予備的な検視が行われ、証拠の採取や、死亡原因および可能な責任者を特定するための鑑識手続きが開始された。さらに、当局は市民が自主的に提供した写真資料も収集しており、技術者たちはそれを本件の裏付け資料として分析している。
南米に生息する唯一のクマであり、エクアドル・アンデス地域の象徴的な哺乳類として知られているメガネグマは、エクアドル国内で絶滅の危険性が非常に高い。エクアドル哺乳類レッドリスト(Libro Rojo de Mamíferos del Ecuador)では「絶滅危惧」と記載され、国際自然保護連合(Unión Internacional para la Conservación de la Naturaleza:UICN)では「危急(Vulnerable)」に分類されている。メガネグマを含む生態系は、森林伐採や森林の分断化、違法な狩猟によって脆弱化しており、こうした行為はメガネグマへの脅威をさらに加速させている。
環境・エネルギー省は、メガネグマのこの度の死去を受け、統合刑法典(Código Orgánico Integral Penal)で脅威にさらされている種が保護されていることを指摘した。同典第247条では、保護動物を狩猟、運搬、または商業利用した者に対し、1〜3年の禁錮刑を科すことを定めている。さらに同省は、市民がこうした犯罪を通報することで生物多様性の保全を強化できるとして、改めて協力を呼びかけた。
📌[COMUNICADO OFICIAL]
— Ministerio de Ambiente y Energía (@EcuadorMAE) December 6, 2025
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エクアドルでメガネグマを保護することの難しさ
毎年2月21日に祝われる国際クマ保護デー(Día Internacional para la Protección de los Osos)は、南米にのみ生息し、この地域で唯一のクマ種であるメガネグマの保全の重要性を人々に思い起こさせることを目的としている。エクアドルでは、メガネグマは「絶滅危惧」とされ、推定約2,000頭が国内15県に分布しているとされる。
キト・サンフランシスコ大学(Universidad San Francisco de Quito:USFQ)肉食動物生態学・保全研究室の准研究員サンティアゴ・モリナ(Santiago Molina)によれば、ピチンチャ(Pichincha)県、特に首都圏(Distrito Metropolitano)であるキト(Quito)はクマ保全の重要地点である。首都の東部、西部、さらには渓谷にまでクマの記録があるためである。
USFQは水資源保全基金(Fondo para la Protección del Agua:FONAG)、コンドル・アンディノ財団(Fundación Cóndor Andino)、ホコトコ保全財団(Fundación de Conservación Jocotoco)と共同で、キト東部のパラモ(高山草原)における研究を進めている。段階的に開始されいた研究では2021年2月時点で25,000ヘクタールの調査地域に設置された30台のカメラにより、成長段階の異なる15頭以上のクマが記録された。この調査地域の特徴として、年間を通してクマを観察できる可能性があるという。
都市近郊ゆえの利点とリスク
モリナは次のように述べている。「私たちキト市民はクマ保全において基本的な役割を果たしている。しかし、クマが近くに住んでいることに気づいていない。」もし人々が積極的に関われば、それはクマ保全にとって大きな利点となる。しかし、適切な管理がなければ、都市近郊におけるクマの存在は脅威にもなり得る。
初期データによると、都市に近く、牧畜が支配的な地域では、クマの生息地が破壊され、また、人間と野生生物との対立が増えているという。この脅威はピチンチャ(Pichincha)県北西部でも見られ、ここには研究が進んでいるクマの個体群が存在している。記録では約65頭が確認されている。
コミュニティと連携した対立軽減策
モリナは、アンデス生態地域持続可能開発コンソーシアム(Consorcio para el Desarrollo Sostenible de la Ecorregión Andina:CONDESAN)と共に、ユングイジャ(Yunguilla)地域のコミュニティと協力し、クマと人間の家畜との対立を回避するプロジェクトを進めている。すでに最初の農場が選定されており、今後の取り組みが進んでいる。
現在、主要な構想の一つは、約200頭のクマが生息していると考えられる新たな生態系回廊の創設である。この「コタカチ–ピチンチャ–イリニサ(Cotacachi–Pichincha–Ilinizas)回廊」は、20万ヘクタール以上の広大な面積をカバーし、インバブラ(Imbabura)、ピチンチャ、コトパクシ(Cotopaxi)、サント・ドミンゴ・デ・ロス・ツァチラス(Santo Domingo de los Tsáchilas)の4県を巻き込んでいる。この回廊の創設は、クマの生息地を確保し、また、地域住民とクマとの対立を軽減するための重要なステップとなる。
インバブラ州での取り組み
インバブラ県政府保全研究部門の生物学者、および大型哺乳動物保護(Big Mammals Conservation)の科学ディレクターであるアンドレス・ラグナ(Andrés Laguna)は、クマ保護のためには「景観レベルでの取り組み」が必要だと述べている。
インバブラ県には120頭のクマが生息していることが知られているが、残りの50%の地域については未評価の状態である。インバブラでは、写真トラップや衛星追跡、クマの食料となる植物種の回復、そして環境教育が進められている。
牧畜との対立 ― 全国10県で被害
持続可能な牧畜管理の推進は、現在の主要な焦点の一つである。クマが生息する15県のうち、10県で家畜への攻撃が記録されている。ラグナによれば、インバブラでは5か所が特定されており、それぞれ別の個体によるものと考えられている。アグアカティジョ(aguacatillo)のような植物種を回復させることは、クマが他の地元資源に食料を求めてしまうのを避ける方法の一つである。
ラグナは、大型哺乳動物保護財団の科学ディレクターでもあるが、インバブラ県では、カメラトラップ、衛星追跡、クマの食物として重要な植物種の回復、環境教育活動といった取り組みが進められていると述べている。
参考資料:
1. Ministerio de Ambiente y Energía investiga la muerte de un oso de anteojos en la Amazonía
2. Proteger al oso de anteojos, una difícil tarea en Ecuador

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