エクアドル:歴史的判決から1年、依然としてフルカワは被害者への責務を果たしていない

11月21日で、エクアドル憲法裁判所(Corte Constitucional)が歴史的判決第1072-21-JP/24号を下してから1年が経過する。この判決は、342名のアバカ労働者および労働者女性に有利なものであり、その権利回復の過程における根本的な画期点を成したことは疑いない。

しかしながら、古川拓殖の現地法人であるフルカワ・プランタシオネス・デル・エクアドル株式会社(Furukawa Plantaciones del Ecuador, S.A.)が50年以上にわたって彼らを奴隷化した生活条件を生み出した状況は、何ら変わっていない。

フルカワは、判決を履行するどころか、この1年間にわたり、自らが奴隷化した人々に対する継続的な中傷キャンペーンを展開してきた。さらに、判決によって自社が被ったとされる「損害」によって自分たちが被害者であるかのように振る舞っている。

フルカワは現在も操業を続けており、2019年以降、自社の給与名簿に残っている労働者の権利を侵害し続けている。そして、判決不履行の正当化のためにこれらの労働者を利用している。というのも、同社は裁判所に対して「判決を履行すれば、正式雇用の労働者たちが影響を受ける」と主張しているからである。――もちろん、それは虚偽である。

これは驚くべきことではない。奴隷制廃止の歴史を振り返ると、奴隷に自由をもたらすためには、国家は奴隷所有者に補償金を支払わなければならなかったことがわかる。奴隷所有者の財産および所有権は、国家が全ての人間の自由と尊厳を認める決定によって侵害されることは許されなかったのである。奴隷所有者は、常に経済的権力を行使し、「失うものを最小限にする」方法を見つけ出してきた。

10月末にサント・ドミンゴ(Santo Domingo)の複数のメディアは、これらの労働者が数か月にわたり給与を受け取っていないと訴えて行った抗議デモを報じた。

 

2025年11月7日、国連人権高等弁務官事務所(Office of the High Commissioner for Human Rights:OHCHR)は、エクアドルの市民社会団体である「フルカワ・ヌンカ・マス連帯委員会(Comité de Solidaridad “Furukawa Nunca Más”)」と会合を行った。同団体は、同国のアバカ(abacá)プランテーションにおける現代的形態の奴隷制の被害者の権利を擁護する団体である。

この会合は11月5日にオンラインで実施され、南アメリカにおける国連人権高等弁務官事務所代表であるヤン・ヤラブ(Jan Jarab)が出席した。会合の目的は、隷属および強制労働の被害者の現状に関する情報を収集するとともに、被害者の権利促進のための協力の選択肢を模索することであった。

議論された主なテーマは、エクアドル憲法裁判所の判決「1072-21-JP/24」の不履行に関するものであった。この判決は、同国における歴史的な画期的決定であり、「農奴制(servitud de la gleba)」の存在を奴隷制に類似する慣行として認めている。会合では、被害者が依然として不安定な状況下で生活を続けていること、および判決を履行していない責任企業の不処罰状態、とりわけ補償に関する部分について議論が行われた。

 

1072-21-JP/24

憲法裁判所はフルカワ・プランタシオネス・デル・エクアドル株式会社が50年以上にわたってその農園において「農奴制」と呼ばれる奴隷制に類似した慣行を維持していたという事件について審査したもの。

フルカワは、この「農奴制」の枠組みの中で、さまざまな契約形態を利用し、この慣行に見せかけの合法性を与えようとした。2011年から2019年にかけては、極度に脆弱な状況にある人々との間で賃貸契約(contratos de arrendamiento)を締結し、これを用いていた。

この制度は、契約者を農園内のキャンプに居住させ、アバカの収穫をフルカワの利益のために行わせるというものであったが、農園内にあるこれらのキャンプには、電気、水道、基本的な衛生施設、教育および保健サービスへのアクセスなど存在しなかった。

憲法裁判所による判決は、フルカワが自社農園のアバカ労働者(abacaleros)および賃借人(arrendatarios)に対して奴隷制の禁止を侵害し、その人間的尊厳を一歳無視したことを宣言している。裁判所はフルカワの行為に対する包括的な救済措置として、同社に対し、物的損害および精神的損害に対する経済的補償金の支払いと、公開謝罪を命じた。さらに判決は、訴えられた公的機関が「農奴制」に対して予防および保護の措置を講じる義務を怠ったことも宣言している。裁判所は、2018年以前に労働省(Ministerio del Trabajo)および保健省(Ministerio de Salud)はアバカ労働者および賃借人の置かれた状況を把握し、何らかの措置を取るべきであったにもかかわらず、2018年以降にこれらの公的機関が採った措置は不十分であったと判断した。

包括的救済措置として、裁判所は、「農奴制」を助長した構造的原因に対処し克服するための省庁間公共政策(política pública interinstitucional)の創設を命じた。この政策の主たる責任は、経済的・社会的包摂省(MIES)および労働省(Ministerio del Trabajo)が担うこととされた。この省庁間公共政策に加え、裁判所は次の措置を命じている。

  • 公開謝罪
  • 企業の不処罰を防止し、奴隷制類似の慣行および国内に存在する他の不安定な農業労働形態を根絶するための法改正
  • アバカ労働者および賃借人に影響を与えた「農奴制」に関するドキュメンタリーの制作
  • 事件の記憶を継承するための芸術的表現の創出
  • フルカワの被害者を追悼する記念日制定
  • 判決の広報・周知

 

今回の会合の中で話し合われたのは、2024年12月に言い渡された憲法裁判所の判決の履行を確保するためのフォローアップと、アドボカシーに関する提案である。国連人権高等弁務官事務所は、企業側が補償金の支払いを98年かけて行うという提案を示したことに対して憤りを表明し、補償が被害者のもとに緊急に届く必要性を強調している。

会合の締めくくりにおいて、ヤン・ヤラブは、被害者の権利を確保するために国家の関連機関との対話を維持するという事務所のコミットメントを改めて確認した。この会合は、南アメリカにおける国連人権高等弁務官事務所が進めている、アフリカ系住民およびアフリカ系コミュニティの人々の権利促進と保護のための活動の継続である。

#古川拓殖 #奴隷制 #FurukawaNuncaMás 

 

参考資料:

1. Ecuador: Oficina se reunió con agrupación de defensa de derechos de víctimas de formas contemporáneas de esclavitud
2. A Un Año De La Sentencia Histórica, La Justicia Sigue En Deuda Con Las Víctimas De Furukawa

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