(Photo:Mº Medio Ambiente Brasil)
第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(The 30th session of the Conference of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change:COP30)の議長であるブラジルのコレア・ド・ラゴ(Correa Do Lago)は、全世界の政府に対しエネルギーシステムから化石燃料を排除するよう呼びかけている。一方で、ブラジルの環境庁は国営石油会社ペトロブラス(Petrobras)に、アマゾン川近くの環境感受性の高い油田での掘削を許可するという矛盾が生じている。
COP30は11月にブラジル・ベレン市で開催されており、その運営は“トロイカ”体制に基づいて実施されている。トロイカ体制とは、ロシア語で「三頭立ての馬車」を意味し、転じて3者が協力して指導・運営にあたる体制を指す。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国会議では、過去2回の開催国が連携して会議運営を進める仕組みとなっており、開催国ブラジルとともに前2回の開催国であるアゼルバイジャン(COP29)、アラブ首長国連邦(COP28)が協力している。この体制は、会議の継続性・一貫性を確保し、議論や交渉の流れをスムーズにすることを目的としている。
片手で化石燃料を掘削しながら、もう片方の手で世界の政府に「行動と野心」を求め、「もはや将来のリスクではなく、世界的緊急事態である気候危機に対処せよ」と呼びかける。この状況を、英国のジャーナリストでClimate Homeディレクターのエド・キング(Ed King)は「非常に皮肉なことだ」と評している。
このレトリックと現実の間の隔たりは、近年のCOPへの信頼と信用を蝕んでいる。2023年には、化石燃料輸出で潤う国アラブ首長国連邦で交渉が行われ、当時のCOP議長はアブダビ国営石油会社(Abu Dhabi National Oil Company:ADNOC)の総裁であったスルタン・アル・ジャベル(Sultan Al Jaber)であった。2024年には開催地がアゼルバイジャンの首都バクーに移り、同国は次の10年間でガス生産を最大3分の1増加させる計画を示している。大統領イルハム・アリエフ(Ilham Aliyev)の言葉では「神の贈り物」である。
そのバトンを受け取ったのがブラジルである。一見すると、この南米国家はこれらの露骨な矛盾から免れているかに見える。ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領(Luiz Inácio Lula da Silva)は、環境保護、特に森林破壊対策を政権の優先課題に据え、ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)政権下の4年間の否認主義と遅滞政策に終止符を打った。しかし、よく見ると、ブラジルもこうした矛盾から逃れてはいない。
今年5月末、ブラジル環境・再生可能天然資源院(Instituto Brasileiro do Meio Ambiente e dos Recursos Naturais Renováveis:Ibama)は、アマゾン川河口の環境感受性の極めて高い地域での掘削を国営石油会社ペトロブラスに許可するという物議を醸す決定を下した。この決定は、同庁の29名の技術者がライセンスの不許可を勧告する意見書を提出していたにもかかわらず採択されたものである。
掘削対象のブロックは、ロ(Lo)自治体の沿岸から160キロ離れた場所に位置している。注目すべきは、2023年にブラジル環境庁がアマパ州オヤポケ(Oiapoque)での同様のペトロブラスによる申請を却下していた点である。「これはアマゾン地域の経済的に貧しい地域であり、石油開発が繁栄と豊かさの保証として売り込まれている」と、この案件を長く追ってきたブラジル人ジャーナリスト、ラファエル・モロ・マルティンス(Rafael Moro Martins)とクラウディア・アントゥネス(Claudia Antunes)は説明している。
「掘れ、ベイビー、掘れ!」
この許可が正式に発表される数日前、ペトロブラスの総裁マグダ・シャンブリアル(Magda Chambriard)は、米国ヒューストンで開催されたオフショア技術会議に参加した。この会議には、世界中のほぼすべての石油会社の代表者が集まった。
ブラジル紙『Valor Econômico』が入手した映像では、彼女が聴衆の中にいたアマパ州知事に向かって、ドナルド・トランプ(Donald Trump)の有名なフレーズ「drill, baby, drill」を皮肉交じりに口にする場面が映っている。「掘削のライセンスを取得すれば、とても良い驚きが待っていると信じている。アマパに伝えたいのは、『掘れ、ベイビー、掘れ!』だ」。この発言に対して、会場全体から拍手喝采が起こった。
ブラジルの気候変動シンクタンク、タラノア研究所(Instituto Talanoa)の代表ナタリー・ウンタステル(Natalie Unterstell)は、「『掘れ、ベイビー』というレトリックは、業界リーダーや短期的視野の政治家を慰めるかもしれない。しかし、歴史は彼らを、1.5℃目標を葬った者として記憶するだろう」と指摘している。
さらなるレトリック
ブラジル外務省気候・エネルギー・環境担当次官であり、COP30議長のアンドレ・コレア・ド・ラゴは、6月16日から26日までドイツ・ボンで開催される国連気候変動枠組条約に向けて、国際社会に宛てた3通目の書簡を発表した。
政府がさらなる石油掘削を許可した決定を無視して、コレアは意思決定者に対して「エネルギーシステムから化石燃料を、公正かつ秩序立った形で、平等に撤廃する」よう呼びかけている。書簡の中で、彼は「世界の再生可能エネルギー能力を3倍にし、世界平均のエネルギー効率向上率を2倍にし、化石燃料を放棄するために、互いに支え合い、協力して前進する必要がある」と訴えている。
さらにコレアは「これらの相互に関連した目標を達成するには、単なる約束以上のものが必要であり、私たちの考え方の変革が求められる」と認め、「システム思考こそ、協力の指数関数的拡大、移行の公正、成功の持続可能性の鍵である」と強調した。
書簡の別の箇所では、COP議長は「気候への野心を人々の日常の現実と結びつける」こと、そして「緩和・適応政策において大胆な意思決定を行う」ことを呼びかけている。最後に、コレアは、ブラジルでの森林破壊と石油掘削の影響を最も受ける先住民や地域社会を、「世代を超えた知識」と「自然への配慮」を理由に、気候変動への世界的対応における「重要な同盟者」と位置づけている。
さらにコレアは「これらの相互に関連した目標を達成するには、単なる約束以上のものが必要であり、私たちの考え方の変革が求められる」と認め、「システム思考こそ、協力の指数関数的拡大、移行の公正、成功の持続可能性の鍵である」と強調した。
書簡の別の箇所では、COP議長は「気候への野心を人々の日常の現実と結びつける」こと、そして「緩和・適応政策において大胆な意思決定を行う」ことを呼びかけている。最後に、コレアは、ブラジルでの森林破壊と石油掘削の影響を最も受ける先住民や地域社会を、「世代を超えた知識」と「自然への配慮」を理由に、気候変動への世界的対応における「重要な同盟者」と位置づけた。
アマパ州では、ペトロブラスが石油を採掘する予定の地域に、カリプナ(Karipuna)、ワイアピ(Waiapi)、カアポル(Ka’apor)の3つの先住民コミュニティが暮らしている。これらの部族が持つ「世代を超えた知識」は、化石燃料産業、鉱業、森林破壊によってアマゾンが危険にさらされていることを示している。
#COP30 #Petrobras #LuladaSilva
参考資料:

No Comments