エクアドル:サッカーの危機、未払賃金と制裁がシーズンを揺るがす

(Photo:Radio Pichincha)

2025年のエクアドルサッカーシーズンは、深刻な経済危機に見舞われている。スーペルリーガ女子リーグ(Superliga Femenina)のようなプロリーグ・セリエA およびB(LigaPro Serie A y B)に所属する多くの選手たちが、給与遅配やFIFAへの申立て、さらには制裁を訴えている。

2025年8月4日、クラブ・エル・ナシオナル(El Nacional)は、エクアドル社会保障機関(Instituto Ecuatoriano de Seguridad Social:IESS)に対し、75万ドルを超える負債があることを通知された。キトを本拠地とする同クラブは、選手やスタッフへの給与遅延も抱えており、クラブ内部で財政面の警戒が高まっている。

2025年9月8日、デポルティボ・クエンカ(Deportivo Cuenca)の選手たちは記者会見を開き、クラブが2か月分の給与を未払いにしていることを明らかにした。クラブ経営陣は解決を約束したものの、組織側が沈黙する中、選手たちはこの状況を公にすることを決断した。

2025年10月2日には、エメレク(Emelec)の選手たちが3か月から8か月分の給与未払いを訴えた。選手団は声明で以下のように表明した。「残念ながら、3、5、7、8か月分の未払いが存在している。私たちは約束が履行されるまで、トレーニングを行わないことを決定した。」このトレーニング停止はメディアに大きな衝撃を与え、「エレクトリコ(eléctrico)」の愛称で知られるクラブ内部の危機を露呈させた。

2025年10月10日、デルフィンSC(Delfín Sporting Club)も問題を抱えるクラブのリストに加わった。選手とスタッフは、2025年の給与、賞金、契約上の約束が支払われていないことを訴え、トレーニングおよび合宿を停止した。同月中旬には、FIFAから未払い金を理由に4つのエクアドルのクラブが制裁を受けていることが確認されている。対象となったクラブは以下の通りである:

  • リガ・デ・キト(Liga de Quito)
  • バルセロナSC(Barcelona SC)
  • エメレク(Emelec)
  • デポルティーボ・クエンカ(Deportivo Cuenca)

 

これらの制裁により、各クラブは未払い債務を清算するか、あるいは債権者と合意に至るまで、新規選手の登録が認められていない。デポルティボ・クエンカについては、元フォワードのパブロ・マニン(Pablo Magnin)への未払いが、直近の制裁の原因となっている。現時点では追加の懲戒処分は科されていないが、各クラブは2026年シーズン開始前に支払いを完了しなければならない。

女子サッカーにおいても状況は変わらない。2025年10月13日、エメレク女子チームの選手たちは、ジョージ・キャプウェル・スタジアム(George Capwell)前にて、遅延している給与の支払いを求める抗議活動を行った。「数か月にわたり給与が支払われていない」と選手たちは述べ、経営陣から明確な回答が得られていないことを訴えた。女子チームの紛争は、現在ストライキ中の男子チームの問題に加わる形で拡大している。また、バルセロナSC(Barcelona SC)をはじめとする他クラブの女子選手たちも、3〜4か月分の未払いがあると報告しているが、報復を恐れて声を上げられずにいるという。

 

元ニャニャス(Ñañas)所属のアナ・カリージョ(Ana Carrillo)は、前年の給与がいまだに支払われていないとSNS上で公に告発し、この問題が毎シーズン繰り返される構造的なものであることを明らかにしている。スーペルリーガ・フェメニーナ(Superliga Femenina)は、不安定さの影響を最も強く受けているものの一つである。男子サッカーとは異なり、女子リーグのシーズンは数か月しか継続せず、多くの女子選手は残りの期間を無収入の状態で過ごしている。この問題は毎年繰り返し指摘されているものの、根本的な解決には至っておらず、エクアドルサッカーにおける財政的および運営上の脆弱性を浮き彫りにしている。

「私たちは給料を得る手段を見つけなければならない。代替手段を探さなければならない。そうしなければ、どうやって食べていけばよいのか、生き延びていけるのか。私はサッカーが好きだからプレーしているが、給料をもらうために懇願しなければならないのは不公平である。試合が中断されたり、シーズンが停止されたりすると、生活のために必死にやりくりしなければならない。それは決して簡単なことではない。私たちは選手としてプレーしているだけでなく、生きるためにも闘っているのだ」と選手は語る。

2025年は、エクアドルサッカーにおける経済危機が単発的な出来事ではなく、未払い、制裁、不適切な経営が連鎖する構造的な問題であることを示している。選手たちが求めているのは、ごく基本的な要求にすぎない。それは、自らの仕事に対する敬意と、正当な権利の尊重である。

#サッカー

 

参考資料:

1. Crisis en el fútbol ecuatoriano: sueldos impagos y sanciones marcan la temporada

 

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