ドキュメンタリー作品:アルゼンチンにおける最悪の医療悲劇『汚染フェンタニル:医療的大虐殺』

(Photo:LA NACION)

ドキュメンタリー『汚染フェンタニル:医療的大虐殺(Fentanilo Contaminado: Una masacre sanitaria)』の物語は、子ども、母親、あるいは兄弟を失うという死の淵に立たされた人々――その理解不能な絶望を探求へと変え、さらにその探求を闘いへと昇華させた男たちと女たち――を通して語られる。物語はまた、ある病院の語りとも言える。そこでは、肺炎の集団発生を発見したある医療チームが、その原因を追跡していくうちに汚染された医薬品にまでたどり着く。医療チームの貢献は、より大きな流行を阻止するための警告への可能性へとつながるが、その病院――そして他の医療機関――は、遺族たちに対して何が起こったのかという真実を沈黙によって封じた。

この物語は、汚染されたフェンタニル事件に絡み、多くの裏側を持つ。この物語の重要な人物の一人に、かつて従業員の一人に火をつけるという事件を起こし、有罪判決を受けて刑務所に入った男がいる。彼は出所後、低価格の八百屋を開業し、そこから一躍有名となった。彼はその後、製薬業界に進出し、パンデミック時にはロシア製スプトニク(Sputnik)ワクチンの交渉にも関与する実業家となった。この点で、この事件の全体像を語る上で重要な存在である。また、この物語は、怠慢、無能、あるいは腐敗により悲劇を繰り返す国家およびその監督機関の姿を通じても語ることができる。

30万回分のフェンタニル(Fentanilo)が汚染された事件――モルヒネの100倍、ヘロインの50倍の効力を持つ合成オピオイド――は、これら多様な視点から描かれるべきものであり、最終的にはすべて「医療的大虐殺」という重大な結論に収束するのである。

 

アリエル・ガルシア・フルファロの逮捕

2021年8月20日、アリエル・ガルシア・フルファロ(Ariel García Furfaro)は逮捕された。現時点で、汚染された医薬品の投与に関連して確認された死者数は124名にのぼる。しかし、犠牲者の正確な数は依然として確定しておらず、調査は継続中である。

連邦裁判官エルネスト・クレプラック(Ernesto Kreplak)は、製薬会社ラマヨSA(Laboratorios Ramallo SA)およびHLBファルマ・グループSA(HLB Pharma Group SA)に所属する経営陣、技術者、従業員ら14名を起訴した。これらの企業で製造・流通された医薬品には、少なくとも2種類の細菌が含まれており、そのうちの一つは抗生物質に対して多剤耐性を持っていた。本件の司法捜査はいまだ継続中であり、被告人らは起訴の取り消しを求めて控訴している。

 

「何かが起きている」――家族が感じた異変の兆候

「何かが起きている」――カルラ・マイノ(Carla Maino)は、父親が入院していた間、そう繰り返し口にしていた。「何かが多すぎる。何かが足りない。」

彼女の不安は大きく、父親につなげられたすべての点滴やカテーテルについて、医師に一つずつ確認してもらうよう頼んだ。もしかすると、どこかに結び目があって――「絞扼(こうやく)」だと彼女は何度も言った――それが治療の効果を妨げているのかもしれないと彼女は感じていた。

カルラの父親、ミゲル・マイノ(Miguel Maino)はクレブシエラ菌(Klebsiella)による感染症を患っていた。カルラはこの菌を知っていた。以前、新生児の娘が同じ菌に感染したことがあったからだ。免疫がまだ発達途中の娘は抗生物質に反応したが、父親は反応しなかった。

ミゲル・マイノは、2025年3月27日にロサリオ・イタリア病院(Hospital Italiano de Rosario)で予定手術を受けることになっていた。

その病院の待合室で、カルラはバネサ・ビルチェス(Vanesa Vilches)と出会った。日を追うごとに、週を重ねるごとに、彼女たちは面会時間や医師からの説明の読み上げで顔を合わせるようになった。最初は視線を交わすだけの、遠くからの共感だった。そのうち、ぽつりとした言葉が交わされるようになる――「調子はどう?」「回復してる?」「何て言われた?」と。

Photo:Leo Galletto

時期は2025年の3月から4月にかけてである。カラとバネサは同い年――39歳――であり、どちらも父親が集中治療室に入院していた。二人の父親は退職後で、どちらもロサリオ・イタリア病院(Hospital Italiano de Rosario)で計画的な手術を受けるために入院していた。緊急ではなく、死を予感させるような要素もなかった。だが、事態は次第に狂っていった。二人の父親はともに術後に合併症を起こし、再手術を受けた。そしてどちらも一時は回復に向かったが、再び容体が悪化した。発熱、肺炎、効果の出ない治療。「院内感染だ」と医師たちは説明した。カルラ・マイノの父親は、入院から20日後の2025年4月17日に亡くなった。

「カルラのパパが亡くなったあとだった」と、バネサ・ビルチェスは語る。「ある日、姉と一緒に集中治療室で待っていたとき、カルラがこう言ったの。『気づいてる? ここから生きて出てきた人、2か月近く誰も見てない』って。そして初めて思ったの。『うちのパパ、出てこられるのかな?』って。」バネサの父親は2025年4月28日に亡くなった。彼は同年2月25日に胆石の手術を受けていた。

 

裁判官エルネスト・クレプラック(Ernesto Kreplak)の決定文401ページには、製薬ラボの経営者アリエル・ガルシア・フルファロ(Ariel García Furfaro)、弟のディエゴ(Diego García Furfaro)、そして母親のニルダ・フルファロ(Nilda Furfaro)に対し、医薬品の成分を故意に改ざんした罪で予防拘禁付きの起訴処分が下されたことが記されている。この決定文には、アルゼンチンの医療史上ほとんど例のないほど深刻な事実が詳細に綴られている。

 

司法当局によると、この事件に類似する最も近い前例は1992年に遡る。この年、プロポリス入りのシロップやキャンディの摂取によって25名が死亡した事件が発生し、製品の品質を管理・監督する国家機関の必要性が明確になった。

この悲劇を受けて、国家による監督体制の欠如を補うため、医薬品・食品・医療技術国家庁(Administración Nacional de Medicamentos, Alimentos y Tecnología Médica:ANMAT)が創設された。

 

ラルストニア・ピケッティイ感染の発見と警告

2025年4月15日、ラ・プラタ・イタリア病院(Hospital Italiano de La Plata)の内部報告で注目すべき情報が明らかになった。入院患者の中で、非常に稀な細菌であるラルストニア・ピケッティイ(Ralstonia pickettii)の陽性例が3件確認されたのだ。

当初、医療スタッフは検査ミスの可能性を検討した。検体採取の経緯を調査した結果、3件の検査は別々の3人の技師がそれぞれ担当しており、異なる人物が同一の誤りを繰り返す可能性は極めて低いと判断された。よって、人的ミスは否定された。さらに、医療チームは薬剤の瓶や容器、試験管などの器具を再確認し、患者のカテーテルやチューブが感染源でないことも直接訪問して確かめた。

Poto: Hernán Foulliet

 

ラ・プラタ・イタリア病院は、感染源調査を通じてこの問題に対して最初に警告を発した医療機関である。疑いの目は注射や点滴などに使用される液体成分へと移った。この細菌は通常、水溶性の溶液内で「生存」することが知られているためである。医療チームは、静脈内(IV)投与された薬剤――つまり血流に直接注入される薬――の分析を開始した。新たな感染例が報告されるたびに、感染源の可能性はますます明確になっていった。共通していたのは、「フェンタニル」の使用であった。

ラ・プラタ・イタリア病院はさらなる検証を重ねたうえで、2025年5月2日および5日に医薬品・食品・医療技術国家庁(ANMAT)に報告を行った。しかし、同庁が最初の警告を発したのは、それから3日後の5月8日であった。さらに5日後の5月13日、ANMATはHLBファルマ(HLB Pharma)およびラマジョ製薬(Laboratorios Ramallo)の製品に対し、全国規模での販売・流通・使用の禁止を命じた。あわせて両社の事業所を閉鎖し、ラ・プラタ連邦裁判所第3法廷(Juzgado Federal N°3 de La Plata)に対して刑事告発を行ったのである。

 

それからこのニュースは広く知られるようになった。それまでに、死者は15人に上っていた。だが、感染したアンプルの数や所在、何人に投与されたかはまだ判明していなかった。被害者は全国に及ぶ可能性があったのである。

アリエル・ガルシア・フルファロ

 

問題となった製薬会社の背後にいる人物として、特にアリエル・ガルシア・フルファロの名前が際立っている。彼の犯罪歴は2002年に遡る。従業員に対してアルコールをかけて火をつけるという故意の殺人未遂(単純殺人未遂)で7年の懲役刑を言い渡されたのだ。

刑務所では法学を学び、弁護士資格を取得あいt。釈放後は父親が経営していた八百屋で働き、家業を拡大した。ブエノスアイレス市で、低価格の野菜や果物を提供する店として知られるようになった。

しかし彼の野望はそれにとどまらず、経験も知識もないまま製薬業界に進出。複数の製薬会社やドラッグストアを含む企業群を築き上げた。

 

製薬工場の爆発と崩壊

HLBファルマやラマジョ製薬の前には、別の事件があった。ロサリオ南部にある製薬会社、アポロ製薬(Laboratorio Apolo)の事件である。2016年には工場で爆発事故が発生し、5人が重傷を負った。アリエル・ガルシア・フルファロは同社の取締役会の一員であった。

さらに、同社は「へネラル・ロドリゲス(General Rodríguez)の三重殺人事件」にも関連して捜査されている。この事件は、メキシコのカルテルへのエフェドリン(efedrina)密輸に関与しているとされている。

ロサリオ南部にあるアポロ製薬の爆発と崩壊

 

「おそらく彼はそこで経験を積んだのだろう。そして現在、問題になっているのはフェンタニルであり、エフェドリンではない」と、グラシエラ・オカニャ(Graciela Ocaña)は語る。彼女はブエノスアイレス市議会議員であり、かつてアルゼンチン共和国の保健大臣を務めた人物である。

オカニャによれば、ガルシア・フルファロはロシア製ワクチン「スプートニクV(Sputnik V)」のアルゼンチン導入に関与した人物でもある。暴力事件の経歴や投獄歴があり、エフェドリン事件に関わった関係者ともつながりがある。こうした人物が、パンデミックの最中にワクチン不足が深刻化する中でワクチン調達に関わっていたという。

元政府高官は疑問を投げかける。「彼にはどれほどの力があったのか? ガルシア・フルファロは、どのような経緯であの地位にまで上り詰めたのか」と。

 

カルラ・マイノは歯科医である。ロサリオ(Rosario)にある自身の診療所で仕事をしながら、通常は音楽だけを流すラジオをつけている。ニュースを聞くことはない。ドリルの音や麻酔、吸引器、患者の血圧、そしてアルゼンチンの時事問題を混ぜるのは良くないと思っているからである。しかし7月初旬のある日、いつものラジオの電波が悪くなり、別の周波数に切り替えた。診療の合間に、一つのフレーズが耳に入った。それは「ラ・プラタ・イタリア病院(Hospital Italiano de La Plata)… 多数の死者… クレブシエラ菌(Klebsiella)による感染… フェンタニル(Fentanilo)」という言葉だった。ラ・プラタの医療機関とロサリオ・イタリア病院(Hospital Italiano de Rosario)は独立した機関であるが、そこで起きた出来事の話はカルラの経験と類似していた。

可能な限り早く、彼女は兄に電話をかけた。

「こんな話を聞いたの…」と彼女は言った。「死者、感染、フェンタニル…」

兄は戸惑い、この話を早く終わらせたいと思った。しかし彼女はむしろ、その話を掘り下げて真相を追求したかった。

「それって関係があると思う? 本当かもしれない?」と兄は尋ねた。

すると「確信している」と彼女は答えた。

68歳のミゲル・マイノ(Photo:Leo Galletto)

 

翌朝、カルラ・マイノは病院へ赴き、父親の診療記録を請求した。すぐに記録を入手し、ネットで情報を調べ始めた。最近のニュースで、ロサリオ・イタリア病院(Hospital Italiano de Rosario)が患者に汚染されたフェンタニルが使用されていたことを認めたことを知ったためである。父の担当医に連絡を取った彼女は病院に呼ばれた。

「担当医は、父にフェンタニルが投与されていたことを確認し、父が感染した細菌がアンプル内の細菌と一致していること、そして診療記録が連邦刑事事件の証拠となっていることを伝えた。その後『私たちだけなのか?』、『いや、私たちだけなんてことはない。それに、(このことを)ほかの人がこれを知らないなんて不公平だ』と思った」とカルラは語る。そして彼女は「ヴァネサのことを思い出して連絡を取った」。

同時に、カルラは兄とともにラ・プラタ(La Plata)の被害者家族を探していた。リンクトイン(LinkedIn)で、事件の被害者第1号とされる18歳のレナト・ニコリニ(Renato Nicolini)の母親、ソレダッド・フランセセ(Soledad Francese)を見つけた。ソレダッドは、多くの人と同様に、息子に汚染された薬が投与されていた事実を知らなかった。別の患者の家族が、2人の看護師が「30番ベッドの子ども、レナトが陽性だった」と話すのを聞いて初めて知ったのである。ソレダッド・フランセセはマイノ兄妹を導き、何をすべきか、誰に話すべきか、どのように動くべきかを教えた。カルラはその後、ヴァネサにも同じことを伝え、ヴァネサは父もまた汚染薬を投与されていたことを確認した。二人は協力して他の被害者家族を支援し始めた。

 

 

「この闘いは私たちの親たちに敬意を表するものだ」

ラ・プラタとロサリオは、被害者の多い2大都市であり、3番目に多いのはコルドバ州都である。被害者家族たちは、親族の死に疑問がある場合に提出すべき書類のガイドラインを作成した。また、InstagramのアカウントやWhatsAppのグループを開設した。そこには、被害者や家族から以下のようなメッセージが次々と寄せられた。

 

「父の診療記録は渡されたが、フェンタニルの製造番号とロット番号を求めている。診療記録には記載されておらず、回答がない。どうすればよいか。」「助けが必要だ。完全に途方に暮れて混乱しており、痛みでまともに考えられない。どうすればいいかわからない。」「30日間、集中治療室の廊下に何時間もいた。毎日、家族が亡くなった親族のために泣いているのを目撃した。多くの人が亡くなったのに、診療所はそれに気づかなかった、または気づきたくなかった。」

「兄と私は情報に非常に早くアクセスできた。しかし、多くのケースではそうではないことを私たちは知っている」。「今なお多くの家族は何も知らない。病院の医療スタッフとの会議で、『なぜなのか?』と尋ねたところ、彼らは法的な手続きのために捜査秘密を守らなければならないと説明した。しかし、実際には第一に家族の知る権利を奪い、第二に正義を求める活動の当事者となる権利を奪っていると思う」とカルラ・マイノは語る。

 

エクトル・ビルチェス 74歳(Photo:Familia Vilches)

 

汚染されたフェンタニルのロットは2024年12月18日にラマヨ製薬株式会社で製造され、2025年1月4日および6日にHLBファーマ・グループ株式会社によって市場に出された。

汚染アンプルの追跡はほとんど手作業に近い作業であった。追跡可能なシステムは存在せず、電子記録もデータベースもなかった。裁判所は全国の病院ごとに情報を求めた。関係当局は185の医療機関に問い合わせ、フェンタニルの納品書および販売請求書のルートを追跡した。感染拡大の特定から2か月後の7月になって、ようやく薬剤の全回収が発表された。

 

元アルゼンチン共和国保健大臣(exministra de Salud de la Nación)でブエノスアイレス市議会議員のグラシエラ・オカニャは本件を断言する。

Photo: Juan Novelli

 

「この悲劇は防げたに違いない。もし監視が機能していれば、ラボの経営者の過去の経歴が調査されていれば」と指摘する。「ANMATには200件以上の不正に関する案件が存在していた。公務員制度の実態は誰もが知っている。私も医薬品マフィアを告発した際にそれを経験した。全ては案件から始まる。一つのケース、一つの瓶、十瓶、あるいはロット。しかし、その断片を組み合わせて調査すると、その背後に腐敗の構造が見えてくる。真相解明への政治的意志が欠如しているのだ。なぜなら、ANMATや公的機関は何をしているのか?案件を処理するだけである。何かが起きても『案件はある』と言えるが、全体を見通す者はいない。それが欠けている。マリオ・ルゴネス(Mario Lugones)保健大臣はまだ適切な決断を下していない。ANMATの介入を決定すべきである。」

 

2025年5月18日、アルゼンチン国立医薬品・食品・医療機器監督局(下ANMAT)が関与ラボの活動を禁止してからわずか5日後、アリエル・ガルシア・フルファロ、彼の弟ディエゴ・ガルシア・フルファロ、および製薬工場の総支配人ハビエル・マルティン・チュクラン(Javier Martín Tchukrán)は、証拠隠滅の計画を実行に移すために集まった。

 

連邦裁判官エルネスト・クレプラック(Ernesto Kreplak)が回収した映像には、彼らが証拠を操作する計画を立てる様子が記録されている。彼らはアンプルをオートクレーブ滅菌することを決めた。オートクレーブ滅菌は細菌を殺す手法であるが、同時に証拠も消去されるためである。また、サーバー内の全てのメッセージを削除する方針も固めた。「すべて消した。情報は一切残っていない」とチュクランは語っている。

 

汚染されたフェンタニルは、ラマヨ製薬株式会社で製造された。

同じ会話の中では、微生物学者アドリアナ・イウディカ(Adriana Iudica)の名前も挙げられている。彼女は汚染ロットの検体の一つで微生物の増殖を検出していたが、偽陽性と判断して再検査を行わなかった。また、発見を警告しなかったことも認めている。

司法記録によれば、証拠隠滅は常態化していた。隠蔽はカメラだけでなく携帯電話内のやりとりにも露呈している。従業員間のチャットには何百ものメッセージが残されており、その中で簡潔かつ決定的な一言がすべてを物語っている。「フェンタニルがアウトだった」。

 

汚染されたフェンタニル事件は二つの側面を持つ。一つはラボと、それによって健康被害を受けた数百人の人々に関わるものであり、もう一つは医療用フェンタニルが麻薬取引へ転用された可能性に関わるものである。

現時点におけるアルゼンチンの状況は、アメリカ合衆国で蔓延している消費の疫病とは程遠いものである。国内での大規模な生産や密輸の痕跡は見られない。しかしながら、違法流通への逸脱(ダイバージョン)は確認されている。すなわち、医療用流通経路から外れた薬物が闇市場に再登場しているのである。

「我々の推測では、小規模ながら増加傾向にあるレクリエーショナル(娯楽的)消費者の市場が存在し、彼らがこの物質を求め、かつ法的市場からアンプルを逸脱させている」と、アルゼンチン国家安全保障省麻薬対策副秘書官マルティン・ヴェリエル(Martín Verrier)は説明する。同省の担当者によれば、法的市場からの逸脱が発生する経路は主に次の通りである。「多くの場合は病院の薬局、あるいは直接この物質にアクセスできる麻酔科医が関与している。また他の場合には、処方箋に基づいてアンプルを販売する薬局もある」。

 

アルゼンチン国会(Congreso de la Nación Argentina)においては、与党「共和制革新プロジェクト(Propuesta Republicana:PRO)」所属の議員シルヴァナ・ジュディチ(Silvana Giudici)が、アリエル・ガルシア・フルファロに関連するフェンタニルの密輸疑惑を最初に警告した。また、彼女は調査委員会の設置を推進し、実現させた。「我々は被害者およびその家族に対して正義を果たさなければならないが、それと同時に、本件が麻薬密輸ルートとつながっている可能性にも注目すべきである」と彼女は述べている。

かつて国家通信庁(Ente Nacional de Comunicaciones:ENACOM)の元局長である彼女は、医療用フェンタニルの生産の背後には「極めて明白な」何かが起きている兆候があると指摘する。その例として、アリエル・ガルシア・フルファロが国際的なパートナーと共にパラグアイ共和国のラボを開設するために締結した合意を挙げている。具体的には、三国国境地帯(Triple Frontera)に位置するシウダ・デル・エステ(Ciudad del Este)に関するものである。さらに、公式な検査もなく焼却されたとされる純フェンタニル5キログラムの「消失」についても言及している。

「私は、ガルシア・フルファロが首謀者ではないと考えている。彼の上にはさらに大きな存在がいる。彼のつながりはどこまで及ぶのか。政治家だけなのか、それとも越境犯罪組織か、麻薬カルテルなのか。我々はまだその実態を知らない」と彼女は述べている。

 

 

作品名:  Fentanilo Contaminado: Una masacre sanitaria
企画:   Valeria Cavallo
取材・制作:María Belén Etchenique、Juan Mascardi
インタビュー:Andrés Klipphan、María Belén Etchenique、Juan Mascardi
脚本:   María Belén Etchenique、Andrés Klipphan
監督:   Juan Novelli、Gastón Taylor、Leo Galletto
映像編集: Leonardo Senderovsky、María Florencia Montenegro、Leonardo Martín
協力:   Universidad Abierta Interamericana、Familia de Maino, Vilches, Francese

他の映画作品等の情報はこちらから。

 

参考資料:

1. Fentanilo mortal, el documental: la peor tragedia sanitaria de la Argentina
2. “Unidos por el dolor”: familiares de los fallecidos por el fentanilo adulterado marcharon por primera vez para pedir justicia

 

 

 

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