(Photo:@France24_es)
エクアドルにおいて、国家による暴力の激化が深刻な局面を迎えている。抗議行動中の銃撃、人権侵害、報道機関への威嚇が相次ぎ、警察および軍隊に対する非難が高まっている。抗議の震源地となっているのは国内北部の先住民族グループであり、彼らは2025年10月1日、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)政権との間で「一時休戦(tregua temporal)」を宣言した。
抗議は2025年9月22日に始まり、10月1日までに143件の人権侵害、63名の逮捕、92名の負傷、11名の一時行方不明、1名の死亡が記録されている。死亡したのは、アンデス地方の先住民族リーダーであるエフライン・フエレス(Efraín Fuerez、46歳)で、イムバブラ(Imbabura)県における軍の鎮圧作戦中に銃撃されたとされる。
人権侵害の記録は、エクアドル人権連合(Alianza por los Derechos Humanos de Ecuador)によって集計されている。この連合は14の団体で構成され、2019年10月の全国ストライキ時にも国家による暴力を文書化した実績を持つ。彼らは、抗議者、報道関係者、人道支援者、人権監視者すべてが依然として危険にさらされていると警告している。
最新の報告によれば、文書化された人権侵害のうち70%は軍隊(Fuerzas Armadas)および国家警察(Policía Nacional)によるもので、その半数以上がインバブラ県で発生している。また、キト(Quito)では30件、コトパクシ(Cotopaxi)県では10件の事例が確認されている。
報道への攻撃も激しさを増している。記者らは石や棍棒による暴行、警察による催涙ガスの使用、強制排除などを受けており、先住民族系メディアの放送停止、取材機材の破壊、記者の排除といった事例も報告されている。特にFundamediosは、拘束、催涙ガスの噴霧、放送停止命令などを「表現の自由への攻撃」として強く非難している。
2025年9月30日の夜には、アスアイ(Azuay)県の先住民族・農民団体である連合先住民族・農民組織(Federación de Organizaciones Indígenas y Campesinas del Azuay:FOA)が、国家警察および軍による「過度な武装弾圧(represión armada desproporcionada)」および「恣意的な逮捕(detenciones arbitrarias)」を非難した。女性や高齢者を含む住民が帰宅途中に暴力的に包囲・阻止され、少なくとも6名が令状なしに逮捕されたとされる。そのうちの1名である64歳の男性は、顔および頭部に重傷を負った。
政府はこうした非難に対し反論を展開している。国防大臣ジアン・カルロ・ロフレド(Gian Carlo Lofrreddo)は、軍および警察側でも12名の負傷と17名の拘束が発生したと発表し、拘束された軍人の一部をすでに釈放したと述べた。軍関係者は、石の投擲によって顔面骨折や聴力喪失などの重傷を負ったと主張している。
国際社会からも反応が寄せられている。国際連合のアントニオ・グテーレス事務総長は、エクアドルで最近発生した抗議活動における暴力の激化について「深い懸念」を表明した。「抗議活動に関連して1名のデモ参加者が死亡したことを受け、グテーレス事務総長は深く憂慮している」と、国連事務総長報道官ファルハン・ハク(Farhan Haq)は2025年10月1日(火)、ニューヨークでの記者会見において述べた。
国内では、立法議会(Asamblea Nacional)が治安部隊と抗議者との衝突をめぐる調査を開始しており、与党主導の安全保障委員会と、政府からの独立性を掲げる監督委員会との間で対立が生じている。
全国先住民族連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)は、国会訪問の際にエフライン・フエレスの死を「国家犯罪(crimen de Estado)」と断じ、すべての弾圧と刑事訴追の即時停止、被害コミュニティとの対話を政府に強く要求した。
また、北部シエラ地方のキチュア民族連合(Federación de los Pueblos Kichwa de la Sierra Norte del Ecuador)に属する複数の先住民族グループは、政府との対話の意思を表明しつつも、抗議行動の一時停止を決定した。ただし、ストライキそのものは継続する方針である。彼らは以下の要求を掲げている。
- 先住民族の集団的権利(derechos colectivos)の尊重
- 政府との合意履行(cumplimiento de compromisos)
- 国内外監視者(observadores nacionales e internacionales)の対話参加
- 抗議参加者、指導者、社会運動への刑事訴追と抑圧の即時停止
エフライン・フエレスの地元であるコタカチ(Cotacachi)では、軍部が追悼のために現地入りし、ろうそくを灯し、遺族に謝罪の言葉を述べたと報じられている。現地で撮影された映像では、兵士が拡声器を使い「我々はエフラインの死を遺憾に思う。彼への責任を問う者が存在しなければならない」と語る姿が映っていた。

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