2025年9月23日、ニューヨークの国連本部で開催された第80回国連総会において、ラテンアメリカの指導者たちはアメリカ合衆国の外交政策やイスラエルによるガザ攻撃を厳しく批判した。彼らは多国間主義の重要性を訴え、戦争拡大の危険性を警告し、人権侵害を告発した。
チリのガブリエル・ボリッチ(Gabriel Boric)大統領は最も強い調子で演説し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相を「ガザでのジェノサイド(大量虐殺)」の責任者として国際裁判にかけるべきだと要求した。ボリッチ大統領は、「本日、中東ではただパレスチナ人であるという理由だけで何千人もの命が失われている。これはかつて、ユダヤ人であるという理由だけで命を奪われた何百万という人々と同様である」と述べ、「強者の論理」への厳しい拒否を示した。彼によれば、それはウクライナ危機のような事例もまた「殺人の正当化」へとつながると警告した。
ボリッチは「ガザは人類の危機である」と述べ、数千人のパレスチナ人が命を落としたこの惨劇を第二次世界大戦のホロコーストに例えた。彼は復讐ではなく正義を求めており、ネタニヤフら責任者がルワンダやバルカン半島の戦争犯罪と同様に国際的に裁かれることを強調した。さらにボリッチは、他の国際紛争にも言及し、イランへの爆撃やウクライナ侵攻を非難。国際法の尊重は「文明の進歩」であり、常に守られるべきだと訴えた。
さらに、ボリッチ大統領は次のように述べた:
「私はベンヤミン・ネタニヤフ首相とその家族がミサイルで粉砕される姿を見たいのではない。私が望むのは、パレスチナ民族に対するジェノサイドの責任者として、ネタニヤフが国際司法の場に立つ姿である。」
Hoy, desde la testera de la Asamblea General de Naciones Unidas, más que hablar de cifras, condenas y exigencias, hablamos de humanidad: Cuando en Gaza, debajo de los escombros yacen niños y niñas, hay dolor genuino en Chile. Y uno de los problemas que enfrentamos con esto, es… pic.twitter.com/kNzyTsZXlV
— Gabriel Boric Font (@GabrielBoric) September 23, 2025
ボリッチ大統領は、2024年9月25日に国連総会の壇上に立った際にも「私はハマス(Hamas)のテロか、ネタニヤフ率いるイスラエルの大量虐殺的かつジェノサイド行為のどちらかを選ぶことを拒否する。野蛮な行為の間で選択を強いられる理由はない。私は人道を選ぶ」と述べ、また、「人権に関する二重基準」と呼ばれる問題を厳しく批判した。
ニューヨークで開催された国際連合総会の年次会合に参加したボリッチは、国際社会の一部が人権侵害を行う敵対者を非難する一方で、味方とみなされる国が行動を起こした場合には「目をそらすか曖昧な態度を取る」と批判した。「チリから、人権における二重基準に対して反旗を翻す」と彼は述べた。
チリ大統領は、人権は常に尊重されるべきであり、その尊重は政府の政治的立場にかかわらず求められるべきであると強調し、こう述べていた。「そして、ガザで殺害されたパレスチナ自治区(Palestinian Territories)の若い女性、祖国からの移住を余儀なくされたベネズエラの労働者、ロシアに誘拐されたウクライナの子ども、ニカラグアで沈黙を強いられた反対派、あるいはアフガニスタンで女性であることだけを理由に学校から追放された女性たちは、何よりもまず人間である」と述べた。
Es un tremendo honor anunciar que Chile nominará a la ex Presidenta Michelle Bachelet Jeria como candidata a Secretaria General de Naciones Unidas, una mujer ampliamente conocida y respetada en el ámbito global, con una biografía profundamente coherente con los valores de esta… pic.twitter.com/JlpqYNE5Gr
— Gabriel Boric Font (@GabrielBoric) September 23, 2025
ガブリエル・ボリッチは、2025年9月23日にニューヨークの国際連合本部で開催された「民主主義の擁護と極端主義への闘い」をテーマとする会議においても、同様の考えを表明している。その会議でボリッチ大統領は、人権侵害は「現職の独裁者や大統領が誰であるかによって判断されるべきではない」と強調し、例として「イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフであろうと、ベネズエラのニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro)であろうと、ニカラグアのダニエル・オルテガ(Daniel Ortega)であろうと、ロシアのウラジミル・プーチン(Vladímir Putin)であろうと変わらない」と述べた。
2025年の大統領演説でもボリッチは人道的原則と人権の尊重を訴え、「ガザは人道の危機である。よって、それは世界的危機でもある」と述べた。「瓦礫の下に埋もれているのが子どもたちであるならば、その痛みは我が国・チリにおいても本物であり、それは世界中の多くの国々において共有されている」と語った。
中東の暴力については、「多くの場合、痛みは憎しみを生む。しかし我々は憎しみに打ち勝ち、憎しみの欲求を正義への希求に変えなければならない」と強調した。
チリとパレスチナの関係は深く、20世紀からのパレスチナ移民を通じてチリには約50万人のパレスチナ系コミュニティが存在し、中東以外では最大のアラブ系移民社会となっている。チリは2011年にパレスチナを国家として承認し、ユネスコ加盟も支持している。
また、2023年11月以降、チリはテルアビブ(Tel Aviv)にあるイスラエル大使館の大使を引き揚げ、イスラエルに大使を派遣していないが、外交関係の格下げは行っていない。
ガブリエル・ボリッチ大統領は、演説の一部で数時間前に国連総会で発言したアメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領(Donald Trump)に直接反論した。ボリッチはトランプが気候変動問題を否定し、多国間主義を軽視し、虚偽の情報を流布していると非難し、「私は多様な意見を尊重する。しかし、虚偽を語る者の無礼さには立ち向かう。証拠もなく『ワクチンが自閉症を引き起こす』などと主張してはならない。それは意見ではなく嘘であり、嘘とは戦わなければならない」と述べ、会場から拍手喝采を受けた。
さらにボリッチ大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻についても厳しく批判し、「強者の論理、この理屈は最終的には殺人の正当化である」と強調した。「ウクライナのような主権国家を侵略し、その後に既成事実に基づく交渉を押しつけるのは正当ではない」と語った。
また、ボリッチは世界的な課題の一つとして偽情報との闘いにも言及し、「我々は狡猾さにも、暴力にも、無関心にも屈してはならない。私は多様な意見を尊重しなければならないが、虚偽を語る者に対しては毅然と立ち向かう。ましてや、その人物がそれを自覚している場合はなおさらである」と述べた。
またこの文脈において地球温暖化に関して、トランプが同日早くに語った「気候変動の予測は誤っていた。なぜなら、それらは愚か者たちによってなされたからだ」と述べたことに対し、間接的に反論する形で、「気候変動を否定する者は嘘をついているのだ」と断言した。これについて、チリ外相アルベルト・ファン・クラベレン(Alberto Van Klaveren)は、「これは気候変動否認論(negacionismo climático)に対する言及であり、現政権だけでなくチリとして一貫して保持してきた立場である」と述べた。さらに同外相は、「私は大統領の発言を解釈する立場にはない。大統領は言うべきことを言ったのであり、それについて私から詳細な説明を加えるべきではない」と付け加えた。
ボリッチ大統領は、国際連合の強化および民主主義、人権、社会正義、公平性、気候変動対策における国際協力の推進の重要性についても強調した。また演説の中で、国連のトップに女性が就くべき時だと力説し、チリ全土がミシェル・バチェレ(Michelle Bachelet)元大統領の国連事務総長候補としての立候補を支持していると明言した。バチェレはその場で感謝の意を表し、「光栄である」と述べ、引き続き多国間主義にコミットする姿勢を示した。ボリッチ大統領は、バチェレの国家元首としての経験や保健・防衛大臣、国連女性機関の長、人権高等弁務官としての活動を称賛し、彼女の経歴が国連の価値を体現していると強調した。
国連総会における他のラ米諸国による発言
ガブリエル・ボリック大統領、ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領(Luiz Inácio Lula da Silva)、グスタボ・ペトロ大統領(Gustavo Petro)、およびディナ・ボルアルテ大統領(Dina Boluarte)の演説は異なる主題を扱ったが、いくつかの核心的な点で一致した。それは、一方的な制裁への拒否、ガザにおけるイスラエル国の攻撃に対する非難、そして国際法の尊重を求める声であった。
4人の大統領は、多国間主義が世界的な危機を解決するための基本的な手段であることを強調し、国際連合が安保理(United Nations Security Council)における拒否権を持つ国々による決定の阻止を防ぐために強化されるべきだと述べた。
ボリック大統領のネタニヤフを国際裁判にかける提案と、ペトロ大統領のパレスチナ解放軍の結成を目指す構想は、その日の最も大胆な主張であった。これらの発言は、グローバル・サウス(南半球の諸国)の一部から支持を受けた一方、アメリカ合衆国およびその同盟国の代表団は批判の最中に会場を退出した。
ペルー
ペルー共和国の大統領ディナ・ボルアルテは、2025年9月に開催された第80回国際連合総会において、国連改革の必要性を訴えた。新たな世界的脅威に対応し、意思決定の停滞を回避するために、「世界は国連を弱体化させるのではなく、むしろ強化すべきである」と強調した。また、ボルアルテ大統領は、次期国連事務総長はラテンアメリカ出身であるべきとの見解も示し、これはチリ共和国のガブリエル・ボリッチ大統領が表明したミシェル・バチェレ元大統領への支持とも合致するものである。
さらに演説では、全体主義(totalitarismo)の再出現について警鐘を鳴らし、各国の内政への干渉に対して強く警戒するよう国際社会に呼びかけた。この発言は、近年のアメリカ合衆国やイスラエルによる軍事行動に対する間接的な批判と広く受け止められている。ボルアルテは、「いかなる状況下においても、国家による侵略や市民の大量殺害は許されるものではない」と断言している。
同時に、ペルー国内における自らの政権については「制度的安定が保たれており、権力分立が完全に尊重されている」と述べ、国内外の批判に対して防御的な姿勢を見せた。
演説の締めくくりでは、「憎悪のイデオロギー(ideología del odio)」が早期に対処されなければ、新たなジェノサイドを招きかねないと警告し、国際社会に対してその予防と対応の重要性を訴えた。
ブラジル
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、ワシントンの外交政策を批判する各国首脳の流れに加わり、アメリカ合衆国が自国に課した一連の制裁措置を「容認できない」と断じた。ルラ大統領は演説の中で、ブラジルの司法制度と政府高官に対してドナルド・トランプ政権が導入した制裁措置、すなわち裁判官やその家族へのビザ制限や金融制裁を「一方的な攻撃」であると非難し、「我々の民主主義と主権は交渉の対象ではない」と述べている。
また、2023年の国家クーデター未遂事件に関して、元大統領ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)が27年の禁錮刑を言い渡されたことについて、ルラ大統領は「ブラジルの司法は独立しており、その判断は尊重されるべきである」と主張し、国内の法秩序を擁護した。アメリカが「グローバル・マグニツキー法(Global Magnitsky Act)」を根拠に発動した制裁措置に関しては、「ブラジルの司法権への直接的な干渉であり、国家主権の侵害である」と述べ、強い懸念を示した。現在、アメリカ政府はブラジル高官に対し金融資産の凍結、ビザ発給の制限を実施し、さらに一部のブラジル製品には50%に及ぶ高関税が課されている。
トランプ政権側は、ブラジルの裁判所が「政治的動機に基づいた偏向的な判断を下している」として批判しているが、ルラ政権はこれを全面的に否定している。ルラ大統領は「多国間主義(multilateralismo)」および「国際法の尊重」が、国家間の紛争解決における基本原則であると改めて表明したうえで、次のように述べた。「一方的な措置は、アメリカ大陸における二大民主主義国家間に前例のない外交的危機を引き起こしている。こうした行動を国際秩序の常態として受け入れるわけにはいかない」。
ルラ政権は、こうした制裁の正常化が将来的に他国への干渉や国際的緊張の常態化につながると警鐘を鳴らしている。国家主権と民主的制度の尊重こそが、国際社会における持続可能な秩序の礎であるというのが、ブラジル政府の一貫した立場である。
コロンビア
コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は、来年8月の任期満了を前に、国際連合で最後となるとされる演説を行った。この演説では、アメリカ合衆国およびイスラエルに対する強い非難が目立った。
ペトロ大統領は、拒否権なしの国連総会を選出する制度を設け、パレスチナの解放を実現すべきだという提案を行った。彼にとって、外交は「その役割を終えている」ものであり、ガザでのジェノサイドは直ちに停止されなければならないとの見解を示した。
さらに、ペトロ大統領はアメリカ合衆国および北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization:NATO)が民主主義を殺し、世界的規模で全体主義を復活させていると直接非難した。また、外交プロトコルを無視する形で、ドナルド・トランプ大統領を含む米国政府関係者への刑事訴追を要求するとともに、カリブ海域での麻薬対策作戦中に若者が死亡した責任を追及した。ペトロは、「彼らは麻薬密売人ではなく、単なるラテンアメリカの貧しい若者であった」と述べ、麻薬取引の真の受益者は世界の大金融センターに存在していると主張した。またペトロ大統領は、米国の移民政策を「弾圧的」であると断じ、移民を犯罪者扱いすべきではないと強調した。彼の見解によれば、移民の流出は戦争、経済封鎖、返済不能な債務などに起因しており、南半球諸国の貧困化の直接的結果である。
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参考資料:
1. Boric en la ONU: No quiero ver a Netanyahu destrozado por un misil, sino enfrentando a un tribunal
2. “Me niego a elegir entre el terrorismo de Hamás o la conducta genocida del Israel de Netanyahu”: el duro discurso de Boric en la ONU contra la guerra en Gaza y la crisis política en Venezuela
3. ONU: líderes de América Latina critican “totalitarismo” de EE. UU. y guerra de Israel en Gaza
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