歴史的かつ緊迫した一日となった2025年10月10日(木)の深夜、ペルー共和国議会(Congreso de la República)は、ディナ・ボルアルテ・セガラ(Dina Boluarte Zegarra)大統領の「恒久的な道徳的無能力(incapacidad moral permanente)」を理由に、124票の賛成多数で罷免(vacancia)を承認した。投票結果は、法律で定められている必要票数(87票)を大きく上回るものであり、行政府とその政治的支え手との間に決定的な決裂が生じたことを意味する。これにより、総選挙の6か月前に2022年12月7日に始まった2年10か月に及ぶボルアルテによる政権は終焉を迎えることとなった。
VACANCIA APROBADA 🚨 Congreso de la República aprueba la vacancia de la presidenta de la república, Dina Boluarte Zegarra.
— Congreso del Perú 🇵🇪 (@congresoperu) October 10, 2025
En consecuencia, se aplicará la sucesión establecida en la Constitución Política del Perú. pic.twitter.com/TPp35V0SOX
ペルー共和国議会は、道徳的永久欠格を理由にディナ・ボルアルテ大統領を罷免し、これにより憲法第115条に基づく大統領継承が発動された。第一副大統領および第二副大統領の職がいずれも空位であったため、憲法第115条(artículo 115 de la Constitución)に基づき、国会議長(presidente del Congreso)で政党「ソモス・ペルー(Somos Perú)」所属のホセ・ヘリ・オレ(José Jerí Oré)が直ちに国家元首の任を引き継ぐこととなった。
ホセ・ヘリ・オレは、2016年以降に始まったペルーの政治危機以来、わずか9年で7人目の大統領となる。大統領に就任するにあたり、国家和解と市民の安全に重点を置いた移行政府を率いることを約束し、2026年4月に予定されている総選挙まで職務を遂行することを誓約した。これにより、ペルー国会は新たな政治的移行期に入り、また、今後は、大統領継承および早期総選挙の実施に向けたスケジュールの決定が期待される。
なお、ヘリ・オレが就任する直前、議長団(Mesa Directiva)に対する不信任決議案(moción de censura)が提出されたが、この決議案は可決に必要な票数を得られなかった。
En cumplimiento con lo establecido en el artículo 115 de la Constitución Política, el titular del Parlamento, José Jerí Oré, juró como presidente de la República. pic.twitter.com/jMDe1tTzX6
— Congreso del Perú 🇵🇪 (@congresoperu) October 10, 2025
10日の夜における国会本会議では、大統領ディナ・ボルアルテに対する4件の罷免動議(moción de vacancia)について夜遅くまで審議された。これは、北部および南部地域を中心に広がる殺し屋、恐喝、暴力犯罪の波を抑えられなかったという近年の都市暴力の危機を受けて、複数の会派が推進した4件の罷免動議を背景とするものである。ボルアルテ大統領は国会での弁明を求められていたが、自身も代理人も出席しなかった。
調査報道メディア「オホ・プブリコ(Ojo Público)」によれば、主要な保守系会派は、2023年1月から2024年4月までに提出された7件のボルアルテ罷免動議に対し、賛成票を投じるどころか、反対または棄権していた。これには「ロレックス事件(caso Rolex)」「整形手術」「抗議デモにおける死者」に関する検察の捜査も含まれていた。しかし今回は、政治的力関係が完全に変化したと言える。今回これまで大統領を支持していた会派――フエルサ・ポプラル(Fuerza Popular)、アリアンサ・パラ・エル・プログレソ(Alianza para el Progreso)、レノバシオン・ポプラル(Renovación Popular)、ポデモス・ペルー(Podemos Perú)、アバンサ・パイス(Avanza País)、アクシオン・ポプラル(Acción Popular)、およびソモス・ペルー(Somos Perú)――が支持を撤回し、議会の11会派がボルアルテ大統領の罷免を支持した。罷免動議はそれぞれ議員スセル・パレデス(Susel Paredes)、ノルマ・ヤロウ(Norma Yarrow)、エリアス・バラス(Elías Varas)、パシオン・ダビラ(Pasión Dávila)によって提案され、すべての動議は個別に採決された。
中でも、動議第19769号(Moción de orden del día 19769)は、ディナ・ボルアルテ大統領を「道徳的に不適格」とみなし、その罷免を求める内容であり、113票の賛成により承認された。可決された動議文書によれば、ボルアルテ大統領は犯罪抑止に向けた効果的な措置も明確な公共政策も講じなかったとされ、その行為は「不作為」であり「国民に否認された」ものとされた。「恐喝、殺し屋、犯罪の状況は危機的水準に達している」と、本会議で採択された文書は述べている。これらの採決の後、国会は同日午後11時30分に大統領を召喚し、弁明を行うよう要請する決定を下した。
ディナ・ボルアルテは、国会による罷免を受けた後の「国民へのメッセージ」で、議会が121票をもって自身の罷免を承認した決定を強く批判した。彼女は「私は大統領の任命を国会(ペルー共和国議会)から受けたが、その同じ機関が今日、私の罷免に賛成票を投じた」と述べ、立法府の矛盾を指摘し、この措置が政治的および社会的に及ぼす影響を警告した。「私は、2022年12月7日に勇気をもって憲法上の大統領職を継承した女性である。これはクーデター後の憲法上の継承であり、私はペルー共和国議会から名誉をもって大統領の大統領綬帯(大統領バンド)を授与された。同じ議会が本日、大統領の罷免を承認し、これはわが国の民主主義の安定に重大な影響を及ぼす」と彼女は述べた。ボルアルテは国民の団結と協力を訴え続けたという。しかしその支持率は3%未満に落ち込んでおり、国の一部からは彼女の政権が本当に民主主義の安定や汚職撲滅の透明性を実現しているのか疑問視され続けていた。「私は常に団結を呼びかけ、共に働き、わが国のために闘うことを訴えてきた。このような状況下において、私は自分自身のことを考えたことはなく、むしろ民主的安定と腐敗のない政府のもとでの成長を享受すべき、3,400万人以上のペルー国民のことを思っている」とディナ・ボルアルテは述べた。
なお、一部の国々におけるボルアルテ大統領の政治亡命申請の噂を受け、フントス・ポル・エル・ペルー(Juntos por el Perú)所属の議員エリアス・バラス(Elías Varas)は、44カ国の大使館に書簡を送り、大統領への亡命許可を控えるよう要請した。
一方、レノバシオン・ポプラル(Renovación Popular)所属の国会議員パトリシア・チリノス(Patricia Chirinos)は、エクアドル共和国(República del Ecuador)大使ガロ・イェペス(Galo Yépez)およびブラジル連邦共和国(República Federativa del Brasil)大使クレメンテ・バエナ(Clemente Baena)に対し、大統領への亡命申請を拒否するよう要請した。これに対し、ボルアルテ大統領の弁護士ファン・カルロス・ポルトガル(Juan Carlos Portugal)は、大統領が他国への亡命を計画していることや大統領職の辞任を検討していることを否定した。
ホセ・ヘリとは誰か
ホセ・ヘリ・オレの政権運営は、国会内の支配的勢力との政治的結びつきと、複数の論争を伴ってきた。これには検察当局による捜査も関与している。議会活動においては、2022年12月、ペドロ・カスティージョ(Pedro Castillo)大統領に対する大統領罷免に賛成票を投じた。その後は、現行の行政府を支持する姿勢を示し、ディナ・ボルアルテ大統領に対する検察調査の打ち切りを支持した議員の一人と見なされている。
個人および刑事面において、ヘリは重大な捜査の対象となってきた。2025年1月には、ペルー最高家族検察庁(Fiscalía Suprema de Familia)が、2024年12月に発生した社交的な集まりにおける強姦容疑について、ヘリ氏および別の男性を訴追するための予備的手続きを開始した。議員本人はこれらの告発を断固として否定したが、捜査に協力する意思を表明した。所属政党であるソモス・ペルー(Somos Perú)は、捜査が継続している間、彼の党籍を停止することを発表していた。しかし、2025年8月13日、国務検察官(Fiscal de la Nación)トマス・アラディノ・ガルベス(Tomás Aladino Gálvez)はこの捜査を却下(archivo)する決定を下した。
ホセ・ヘリ議員は、2021年の総選挙で選出されたマルティン・ビスカラ(Martín Vizcarra)前大統領の補欠(accesitario)として国会入りした。これは、ビスカラが公職への就任を禁じられていたため、議員に就任できなかったことによるものである。ヘリはまた、2022年12月から2023年3月にかけて起きた抗議行動での「故殺および重軽傷害」の疑いに対する最高検察官フアン・ビジェナ(Juan Villena)による憲法訴追を棄却するよう勧告した最終報告書を作成した代表者でもあった。
ホセ・ヘリは共和国大統領に就任後、ソモス・ペルーの党員として、犯罪との戦争を宣言した。また、Z世代に言及し、「国に変化があると示す」と述べた。
参考資料:
1. José Jerí juró como presidente de la República tras la vacancia de Dina Boluarte
2. Dina Boluarte en Mensaje a la Nación: “Recibí la banda presidencial por el Congreso, el mismo que el día de hoy votó por la vacancia”
3. Congreso destituye a Dina Boluarte: José Jerí es el nuevo presidente
4. Congreso aprueba la vacancia de Dina Boluarte
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