ボリビア:アルベルティナ・サカカ、『VOGUE』から先住民の誇りと声を発信

ボリビア出身の人気TikToker、アルベルティナ・サカカ(Albertina Sacaca)が、『VOGUE México y Latinoamérica(ヴォーグ・メキシコ&ラテンアメリカ版)』による特別企画に登場した。今回の出演は、ボリビア独立200周年(Bicentenario de Bolivia)を記念する特集の一環であり、彼女のデジタルキャリアにおける新たな章の幕開けを象徴するものである。これまでSNSを舞台に活動してきたサカカが、モデルとしての領域に本格的に足を踏み入れた格好だ。

ボリビア、ポトシ(Potosí)県チャヤンタ(Chayanta)の高地から、アルベルティナ・サカカ(Albertina Sacaca)は、誇り高き先住民の姿をデジタル空間で発信し続けている。TikTokでは900万人以上、Instagramでも100万人超のフォロワーを持つ彼女は、今回の特集内で2本の異なる企画に登場している。ひとつは、国際的に注目を集める現代のボリビア人たちに焦点を当てた人物特集であり、もうひとつは、ボリビアのファッションブランド「フアン・デ・ラ・パス(Juan de La Paz)」のメインモデルとして参加したファッション企画である。

このファッション企画は、デザイナーのフアン・カルロス・ペレイラ(Juan Carlos Pereira)によってディレクションされ、伝統と革新を融合させたスタイリングが高く評価されている。サカカは、伝統衣装と現代的感性を融合させた衣装を纏い、先住民文化の誇りとモダンな自己表現とを見事に両立させた姿を披露した。

サカカのデジタル上における存在は、単なる「バズ」や一過性の「バイラル現象」を超越している。彼女の発信は、先住民族の文化的豊かさを肯定するものであり、長年にわたり社会に根付いてきたステレオタイプへの挑戦でもある。ファッションや公共空間における先住民の表現を積極的に推し進め、その可視化に貢献している点で、サカカの活動は文化的かつ政治的な意義を持っている。

彼女は、活動家であり、新進のモデルであり、同時にコンテンツクリエイターでもある。こうした多面的な役割を通じて、現代における先住民女性の姿を体現している。伝統的なルーツに深く根ざしながらも、世界各地の多様なオーディエンスと真摯に、そして誇りと魅力をもって向き合うその姿は、多文化社会における新たな存在の在り方を示している。

そのアルベルティナが、このたび『VOGUE Latinoamérica(ヴォーグ・ラテンアメリカ版)』に登場したことは、まさに歴史的な出来事である。彼女は、先住民としてのルーツを背景に、ファッションや芸術、そして祖先から受け継いだアイデンティティを、現代の感性で再解釈し、力強く提示してみせた。

撮影は、ボリビアのファッションブランド「フアン・デ・ラ・パス」、写真家バレンティナ・ルイサガ(Valentina Luizaga)、プロデューサーのハニエル・ドゥエリ(Haniel Dueri)との協働により実現した。ロケ地には、スクレ市の歴史的建造物「ホテル・パラドール・サンタ・マリア・ラ・レアル(Hotel Parador Santa María la Real)」が選ばれ、ボリビアの文化的重層性が視覚的にも表現されている。

アルベルティナが今回身にまとったのは、最大で300年前に織られたアンデス地域の伝統的な布「アワイユ(awayu)」である。一本一本の糸には物語が織り込まれており、色ごとに記憶や意味が宿る。このアワイユを纏うことで、彼女は祖先とのつながりを可視化し、文化の継承を身体で語っている。

アルベルティナ・サカカは、ただのインフルエンサーではない。彼女は、現代に生きる先住民女性の象徴であり、力強く、創造的で、自由な存在である。そして何より、自身のルーツと深く結びついたアイデンティティを、誇りを持って世界に発信し続けているのだ。

 

『VOGUE』のデジタル版では、アルベルティナ・サカカを「スペイン語圏における最も影響力のある先住民の声のひとり」として紹介している。アイマラ(Aymara)のルーツに深く根ざした彼女の語り口には、多くの人々の心と共鳴する力があると評価されており、数百万のフォロワーとのつながりが、単なるインターネット現象を超えた文化的意義を持つものとして捉えられている。

今回の一連の特集は、ドキュメンタリー兼リアリティ・ビデオブログ企画の一部として制作されており、アルベルティナがプロのモデルとして成長していく過程を描いている。演出はプロデューサーのハニエル・ドゥエリ(Haniel Dueri)、撮影は写真家バレンティナ・ルイサガ(Valentina Luizaga)が担当した。彼らの手によって、サカカの個人としての姿、そして文化の担い手としての存在が、リアルかつ丁寧に映し出されている。アルベルティナは、自身のInstagramに次のように投稿している。

信じられない……私が『VOGUE』に載った。世界で最も有名な雑誌のひとつが、私の物語――夢を追い続ける先住民女性の物語を取り上げてくれた。

この投稿には、数十万件の「いいね!」と祝福のコメントが寄せられ、サカカの歩みが多くの人々にとって希望の象徴となっていることを物語っている。

 

アルベルティナ・サカカとは誰なのか

アルベルティナ・サカカは、ボリビアで最も注目を集めているインフルエンサーである。わずか1年の間に、TikTokのフォロワー数は87万人から600万人超へと5倍以上に急増。その人気は国境を越え、世界中に広がっている。彼女のフォロワーには、スペインの人気アーティスト、ロサリア(Rosalía)のような著名人も名を連ねる。

アルベルティナの人気は、単なる数字の伸びでは語り尽くせない。2022年6月、突如としてTikTokのアカウントが削除されるという事態が発生したが、その後、ファンの熱心なサポートによってサブアカウントが立ち上げられ、わずか数日で100万フォロワーを突破。その影響力を重く見たTikTok側は、最終的に元のアカウントを復旧させた。この出来事は、彼女の影響力の大きさ、そしてファンの忠誠心の強さを改めて証明するものとなった。

しばしば「チュキサカ(Chuquisaca)出身のTikToker」として紹介されることが多いが、実際にはポトシ県チャヤンタ郡の出身である。1999年7月1日に生まれた彼女は首都スクレ(Sucre)には、学業のために移り住んだと本人が語っている。彼女は、ボリビアのラジオ局「ラジオ・グローバル(Radio Global)」のインタビューでSNSの活用について「最初は遊び感覚で始めたものだった。こんなに注目されるとは思っていなかった」と語っている。また、テレビ番組『La Revista』(Unitel)への出演時には、かつて動画投稿をやめようかと悩んだことがあったと明かしている。「動画をやめようかと思ったこともあるけれど、他の国の人たちから『どこに行ったの?』『また動画出して』と言われた。スペイン、ブラジル、メキシコなど、いろんな国から応援してもらっている」と述べている。

 

名声の代償と、フェイクニュースとの闘い

急速な人気の高まりの裏には、誹謗中傷や偽情報といった“負の側面”もついて回った。彼女はある動画の中で、「私はフォロワーに支えられている」と語り、自身に関するフェイクニュースへの対応にも言及している。匿名の人物らが、実在する報道機関のロゴを用いて偽の記事を捏造していたことなどを告発していた。たとえば「アルベルティナが『プロになるよりTikTokerになる方が偉い』と語った」とされる情報は、完全な虚偽である。このような虚報にもかかわらず、彼女の人気が大きく揺らぐことはなかった。

 

「アルベルティナ現象」が意味するもの

ボリビア国内外のデジタルマーケティング専門家やインフルエンサーの間で、「アルベルティナ現象」と呼ばれる動きが語られている。TikTokの枠を超え、Twitterのような“硬派”なプラットフォームにおいても議論が交わされ、彼女への支持は多くの層で一致している。その魅力は、飾らない素朴さと確かなカリスマ性に加え、何よりもアイマラのルーツを誇りとして前面に押し出す姿勢にある。アルベルティナ・サカカは、自己表現と文化的アイデンティティを融合させながら、先住民女性としての存在感をデジタル時代において力強く体現している。

 

インフルエンサーという仕事

彼女の人気は、やがて実際の仕事の機会へとつながった。ラパス市やコチャバンバ市で開催されたビジネスフェア(例:Feicobol)に出演し、ボリビア国内の他のインフルエンサーたちとともに通信会社の広告キャンペーンにも参加した。すなわち、アルベルティナはコンテンツクリエイターとして収入を得る段階に達しているのである。この点について、情報技術の講師でありコンサルタントのマルセロ・ドゥラン(Marcelo Durán)は次のように指摘している。

アルベルティナの成功に驚く人が多いのは、業界への理解が浅いからである。人々はインターネットが無料だから全てが無料だと思い込んでいるし、ボリビアでは何でも安く済ませるべきだという誤った認識がある。しかし、この分野は今や高度にプロフェッショナル化されたビジネスである。

また、インフルエンサー「カルダモマソス(Cardamomasos)」も次のように述べている。

アルベルティナには、自分の価値に見合った報酬を求める正当な権利がある。彼女はもはや巨大な広告看板のような存在であり、それには当然高額な費用がかかるという認識が必要だ。

 

自分を守る権利さえ認められないのか?

最近の動画の中で、アルベルティナは次のように嘆いている。

私はマネージャーを持つ権利もないの? 自分ひとりで対応していた頃には、よくこう言われた。『なんで君に金を払わなきゃいけないの? 田舎じゃそんなの必要ないよ』って。

これは、若い先住民女性として成功を収めた彼女が、依然として社会の偏見や軽視と闘っている現実を物語るエピソードである。

#インフルエンサー

 

参考資料:

1. Bolivianos en el Bicentenario: Voces de un país entre la tradición y el futuro
2. De Bolivia al mundo: Albertina Sacaca debuta en Vogue
3. ¿Quién es Albertina Sacaca?: la historia de la influencer boliviana que es un fenómeno en TikTok
4. ¿Tiktoker y ahora modelo?: Albertina Sacaca se reinventa con una sesión de fotos que causa sensación

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