エクアドル全国ストライキ2025:キトにおけるノボア政権への抗議デモと軍の封鎖と弾圧

(Photo:Diego Pallero/ EL COMERCIO)

2025年10月12日、エクアドルの首都キトにおいて、先住民族団体および社会運動グループによる平和的な行進が実施された。先住民や社会的団体がキト市内を進むなか、政府は安全確保を理由に軍隊および国家警察を大規模投入していた。このような状況が行進と治安部隊との衝突を招き、一時混乱状態となった。これは、すでに21日間続いている全国ストライキの文脈の中で行われた動きである。

政府はこの行進に先立ち、軍と国家警察を動員して首都内の要所に配置し、警備体制を強化した。報道によれば、主な集結地点キト南部ヴィラ・フローラ(Villa Flora)のラウンドアバウトなどに軍・警察部隊が早朝から戦略的地点に配備された。それ以外にも北部入口、カルデロン地区のサン・ミゲル・デル・コムン付近などに多数の部隊が配置された。警察はキト自治体域内で6,000名以上、軍隊は7,000名以上を治安維持のために動員したという。

行進自体は、南部ヴィラ・フローラを起点とし、午前9時より抗議者たちがロドリゴ・デ・チャベス通り(Av. Rodrigo de Chávez)に集結、伝統的な抗議の集結地点であるエル・アルボリート公園(Parque El Arbolito)を目指す形で実施された。抗議者は午前10時40分に出発したとされている。

この集会には、全国教員連合(Unión Nacional de Educadores:UNE)、先住民族・農村組織連合(Confederación Nacional de Organizaciones Campesinas, Indígenas y Negras :FENOCIN)、全国農村組織連盟(Federación Nacional de Organizaciones Campesinas:FENOC)、キチュア・カヤンビ民族連合(Confederación del Pueblo Kichwa Kayambi)など、複数の団体が参加していた。今回の動員は、平和的な表現活動を意図していたとされるが、軍・警察の配置規模や緊張感の高まりから、局所的な衝突が起きる可能性が当初より懸念されていた。

 

行進中、国家警察とデモ参加者との間で衝突が発生した。行進が始まるや否や、参加者たちは北部のエル・アルボリト公園(Parque de El Arbolito)を目指したが、制服を着た治安部隊がこれを拒んだため、現場の緊張は一気に高まった。暴動鎮圧部隊(antimotines)は催涙ガスや音響弾を使用して参加者を排除しようとし、抗議者側は怒号を飛ばし、物を投げるなどして応じた。治安部隊は「公共秩序維持」を理由に介入したとするが、先住民リーダーたちは「過剰な武力行使」であり、ノボア政権の「侵略的政策(política guerrerista)」と批判している。

新たな衝突を避けるため、行進ルートは午前11時にナポ通り(Av. Napo)へ変更された。多数の参加者がプラカード、旗、さらには大統領ノボア(Daniel Noboa)の人形を掲げながら移動を続けた。「ノボア退陣! (¡Fuera Noboa!)」と叫ぶ声が至る所で響き、一部の自家用車やバスもクラクションを鳴らして支持を示した。キト南部では、国家警察および軍の部隊がデモ隊の周囲を厳重に警戒し、バイク、装甲車、パトカーを駆使して周辺地域を封鎖した。行進中、警察は複数回にわたり催涙ガスを発射し、参加者の叫び声や混乱の声が通りに響いた。

午前11時45分ごろ、抗議者らは通りに分散し始めた。警察はナポ通りを実質的に制圧し、この通りでは治安部隊と市民らの間で複数の衝突が起き、デモ参加者たちは「激しい弾圧を受けた」と訴えている。ある参加者(匿名希望)は、「この政府と戦うためにここに来た。我々の政策は国民すべてに影響を与えている。物価は上がり、生活は困難だ。雇用も賃金も停滞している」と語った。この発言に象徴されるように、今回の行進は単なる一時的な抗議ではなく、政府の経済政策全般に対する根本的な不満の現れであった。

2025年10月12日午後、エクアドルの首都キトでは、先住民族および市民団体による抗議活動が市内各所で続いた。ナポ通り(Av. Napo)では、警察との衝突ののち、午後12時30分時点で一時的な沈静化が見られたものの、地域全体は依然として緊迫した空気に包まれている。

ナポ通り沿い、チンバカジェ駅(Estación Chimbacalle)の角付近では、抗議者の一団が警察によって解散させられた。現場では多くの警官が展開され、一部は「パステリサドーラ(乳製品加工場)」とされる施設の上部に配置されて警戒にあたっている。交通は徐々に回復しつつあり、南北方向の車両通行が再開された。公共交通機関の運行も段階的に正常化に向かっている。一方、ナポ通り沿いでは、帽子やマスク、プラスチック製のホーン、飲料水などを販売する露天商が活動を継続しており、緊張感と日常とが交錯する独特の空間が形成されている。

キト北部でも複数の抗議活動が確認されており、ラ・カロリーナ公園、パトリア通り、12月6日通り、エル・トレボル交差点などが集会の中心地となっている。また、市郊外のパンアメリカーナ北道では、オヤコト橋(Puente de Oyacoto)付近で通行止めが発生し、グアジャバンバ(Guayllabamba)方面へのアクセスが妨げられている。

市中心部に向かっていたデモ隊は、徐々に北部のエル・アルボリト公園へと再集結を始めている。同地ではすでに数百人規模の市民が、ディーゼル補助金撤廃や物価上昇に抗議して集まっている。

午後1時すぎ、パトリア通り(Av. Patria)およびキト文化会館(Casa de las Culturas)前で警察と抗議者の間に再び衝突が発生。国家警察は催涙ガスや音響弾を使用して強制排除を実施し、通りを完全に封鎖した。

抗議者たちはエル・エヒド公園(Parque El Ejido)方面や周囲の通りに分散。現場の緊張は依然として続いている。

5,000人の兵士と1,000人以上の警察官を追加配備した強化された治安部隊は、首都キトの南部および北部から進行する抗議者の列の進入を部分的に阻止することに成功した。それでもなお、数百人の抗議者たちが公園「エル・アルボリート」周辺やパトリア通りに到達し、数時間にわたる衝突が発生した。午後3時30分を過ぎた頃、警察は同エリアの制圧を再び完了したが、一部の小規模なグループは文化会館(Casa de la Cultura)に避難し、軍隊に包囲されたままとなった。

 

政府は、国内の半数の地域(ピチンチャ県を含む)で非常事態宣言を施行しており、これを根拠に軍事的措置を正当化している。エクアドル軍は、自らの存在について「治安の確保と、混乱、暴動、公私財産の破壊の防止が目的である」と説明している。しかし、社会運動団体からはこの軍事化は「抗議の声を封じ込め、地域リーダーを犯罪者扱いする試みだ」として強く非難されている。

 

10月12日、エクアドル軍は首都キトへのアクセス道路に複数の検問所を設置して他地域からの抗議者の進入を阻止するなど、政府による強硬な対応が取られた。検問はキトの北部および南部で実施され、報道関係者の現場取材を妨げる事例も確認されている。この点について、内務大臣ジョン・ラインベルグ(John Reimberg)は、「すべては政府の方針に基づくものである」と述べている。当局によるこの措置は、全国で拡大中の無期限ストライキ(paro nacional indefinido)の一環として計画されていた「10月12日記念抗議行動」を封じ込める政府の対応として位置づけられる。

またジョン・ラインベルグは同日、キト市上空の空中視察を行ったのち、市内で展開された抗議デモに関する政府の立場を明らかにした。大臣は、「市内の大部分は平穏だった」としつつも、「デモ参加者がヘリコプターに向けて爆竹を発射する行為が確認された」として、警察による対応は「必要な措置であった」と主張した。

政府は、特にキト北部の入り口において厳格な交通統制を実施しており、ピックアップトラックの荷台に人を乗せた集団が市内進入を試みていたことを確認したと大臣は述べた。「キトの平和を乱すことは許されない。CONAIEによる“キト占拠”のような試みは、政府が設置したコントロール体制で阻止される」と明言した。また、「4連休明けの移動で不便を被る市民には申し訳ないが、秩序維持のためには必要な措置だ」と付け加えた。

 

この日の抗議行動に対し、エクアドル先住民連盟(Confederación de las Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)はSNS上で次のように声明を発表した:「キトのエル・アルボリート公園および文化の家周辺における、平和的かつ市民によるデモに対する警察の弾圧を非難する」。CONAIEは、行進は平和的に行われていたにもかかわらず、警察が催涙ガスや暴力を用いて、女性、若者、高齢者を含む抗議者らを排除したと主張した。

CONAIEは、国内に存在する14の先住民族および18の先住民集団を代表する最大の社会運動組織であり、今回の抗議行動も含めて3週間以上にわたり無期限の全国ストライキを主導してきた。同団体は、ノボア政権による「過度な武力行使」を非難し、「抗議の権利はエクアドル憲法に明確に保障されている。平和的抗議に対する暴力的対応は、国家の正当性を損なうものであり、政治的責任が問われる」と強調した。また、CONAIE会長マルロン・バルガス(Marlon Vargas)は、「この政府の行動は、対話を拒否し、抗議そのものを犯罪化する“戦争主義的政策(política belicista)”の表れである。」「弾圧によって平和は得られない。国民の怒りと抵抗の意思を強めるだけだ」と語っている。

抗議活動はキトに限らず、全国の主要都市および地域にも広がっている。特に以下の都市において、デモや道路封鎖、集会が確認されている:

  • オタバロ(Otavalo)(イムバブラ州)
  • クエンカ(Cuenca)(アスアイ州)
  • ロハ(Loja)、サモラ(Zamora)、タンボ(Tambo)など南部アンデスおよびアマゾン地域

これらの動きは、ノボア政権に対する国民的な不満と不信感の広がりを象徴している。

 

抗議者への「テロリスト」レッテルに怒りの声

抗議運動の中で、政府関係者が一部の参加者を「テロリスト」とみなす発言を行ったことが、市民らの怒りをさらに煽った。多くの参加者はプラカードを掲げ、平和的な抗議であることを強調した。掲げられたスローガンには「私は主婦、テロリストじゃない(Soy ama de casa, no soy terrorista)」「私たちは母親だ(Somos madres)」「私たちはテロリストではない(No somos terroristas)」などである。

政府はこの抗議行動を「キト占拠(Toma de Quito)」と見なし、行進に先立ち、首都に6,000人以上の軍・警察部隊を配備していた。バイク部隊、装甲車、無人機などを動員し、主要道路の封鎖と監視を強化した。この動員の背景には、アンデス山岳部やアマゾン地域など複数の県で続いている大規模な抗議行動がある。これらの運動はすでに3週間以上続いており、燃料政策の見直しと社会的権利の保障を求めている。

 

抗議の被害状況:死者1人、拘束者多数

全国規模の抗議を主導しているのは、エクアドル先住民連合(CONAIE)であり、現在展開されている無期限全国ストライキ(Paro Nacional Indefinido)はすでに21日目を迎えている。抗議の過程ではすでに次のような事態が発生している:

  • 死亡者:1名(軍による発砲が原因)
  • 負傷者:100名以上(市民・警察含む)
  • 拘束者:100名以上(うち20名超が“テロ容疑”で予防拘禁)

 

CONAIEは、これらの拘束と刑事告発を「言論と表現の自由への重大な脅威」と位置づけ、即時釈放と国家の説明責任を要求している。CONAIEはこれまでも、2019年および2022年の政権に対して大規模な抗議を実施し、いずれも燃料補助金撤廃の撤回を政府に迫ることに成功してきた。これらの補助金政策の見直しは、いずれも国際通貨基金(IMF)との財政合意に基づくものであり、エクアドルにおける繰り返される政権—先住民対立の根幹に関わっている。

この抗議と衝突は、ディーゼル補助金廃止以外の多くの問題を浮かび上がらせている。ノボア政権は、IVA(付加価値税)引き下げや新しい憲法制定、公共サービスの改善も要求されている。また、これまでの抗議運動におけるノボア政権の対応は、過去の政権(モレノ政権、ラッソ政権)と比較されており、それらも同様の燃料補助金削減政策において国民の強い反発を受けて撤回に追い込まれた例がある。

 

価格統制の取締りで拘束者数が増加

エクアドル政府は、ディーゼル補助金撤廃後に強化された価格統制取締りの最新状況を2025年10月11日(土)に発表し、これまでに全国で582人が拘束されたことを明らかにした。取締りは9月13日から10月10日までの間に実施され、25,598件にのぼる。これらの行動には1,805名の公務員が参加し、市場、スーパーマーケット、商店など48,798か所が調査対象となった。結果として、81店舗が閉鎖されている。

燃料やガスの価格における不当な価格操作、いわゆる投機行為を防止するため、炭化水素規制管理庁(Agencia de Regulación y Control de Hidrocarburos:ARCH)は全国規模での監視と取締りを強化している。調査の現場では、販売が定められた数量・品質・価格で行われているかどうかに加え、施設のインフラ状況や顧客対応の適正さなどもチェックされている。

また、政府省庁は、生活必需品やサービスにおける不正な価格上昇や投機的行為を市民が通報できるよう、オンラインポータルを開設した。この措置は、ディーゼル補助金を撤廃する大統領令が発令された直後に導入されたもので、商店やガソリンスタンドに対する監視体制の一環として位置づけられている。政府は、価格の安定と消費者保護のための措置を今後も継続するとしており、必要に応じてさらなる監視の強化も辞さない構えを見せている。

#DanielNoboa #CONAIE #エクアドル全国ストライキ2025 #MarlonVargas

 

参考資料:

1. Aumenta el número de personas detenidas en operativos de control de precios en Ecuador
2. (EN VIVO) Marcha en Quito de este 12 de octubre tuvo tensos enfrentamientos
3. Con gas lacrimógeno, Policía de Ecuador disuelve marcha por el 12 de octubre contra Noboa
4. Cientos de personas marchan en Quito contra Noboa, que impide llegada de más manifestantes
5. La crisis social en Ecuador se intensifica con nuevas protestas contra el gobierno de Noboa

 

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