エクアドル全国ストライキ2025:13日目、キトの「占拠」と全国ストの過激化への警告

エクアドル先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)が呼びかけ、複数の社会団体が支持する全国ストライキにより、エクアドルでは13日間にわたり抗議行動が続いている。

抗議の中心は主にインバブラ(Imbabura)県であり、これまでに死者1名、負傷者50人以上が出ている。2025年10月3日にエクアドル内務省が発表した最新報告によると、102人が逮捕され、その中には5人のベネズエラ人と3人のコロンビア人が含まれている。さらに、10月1日に抗議の中心地インバブラ県で逮捕されたアルゼンチン人1名は既に母国に送還されたと国家省が伝えている。逮捕者102人の内訳は、93人が男性、9人が女性、11人が未成年である。内務省の報告では、逮捕後に勾留が決まったのは21人で、そのうち12人はオタバロ市の抗議者で、検察からテロ行為の容疑で訴追されている。その他46人は代替措置がとられ、29人は保釈され、4人は今後の聴聞会を待っている状態である。

 

全国ストライキの主な要求は、ディーゼル燃料補助金の撤廃を取りやめることである。補助金廃止により、燃料価格は1ガロンあたり1.80ドルから2.80ドル以上へと大幅に上昇した。また、付加価値税(IVA)を12%に引き下げることも求められている。

政府はこれらの経済措置について「財政赤字の是正と公共支出削減に不可欠である」と説明している。しかし、街頭での緊張は社会的不満のさらなる拡大を示唆しており、交渉が進まなければ事態は一層深刻化する恐れがある。ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)政権は依然として交渉に応じる姿勢を示しておらず、補助金は最貧困層の利益にはならず、むしろ密輸業者や違法採掘者を利していると主張している。

CONAIEは、ダニエル・ノボア大統領が推進する憲法制定会議に反対の意を示し、国民投票では「反対(NO)」の立場で運動を展開するとも発表している。

 

CONAIE代表のマルロン・バルガス(Marlon Vargas)は、10月3日(金)夜にチンボラソ県アラウシ(Alausí)管区ニサグ(Nizag)のコミュニティを訪問し、先住民族基盤組織と会合を行った。会合では国内情勢および政府の経済政策に関するストライキの要求について分析が行われた。

バルガスは、近時複数の県で発生した軍による弾圧行為に言及するとともに、代替燃料補助金(軽油補助金)廃止に反対する抗議の一環として、アラウシでの会合から政府に対し強い警告を発した。彼は、政府がコミュニティの要求に応じない場合は首都キト(Quito)への動員も辞さない旨を明言した。

集会でバルガスはダニエル・ノボア大統領に向けて、「もし政府が聞き入れなければ、私たちはキトを占拠することを確信している。アメリカの光(Luz de América)、同志たちよ。もうこれ以上我慢を続けることはできない」と述べ、強硬な姿勢を示した。

 

集会における演説の中で、マルロン・バルガスはアブダラ・ブカラム(Abdalá Bucaram)、ハミル・マワド(Jamil Mahuad)、ルシオ・グティエレス(Lucio Gutiérrez)といった元大統領らが大規模な社会的動員によって政権を追われた事例に言及し、現政権も民衆の要求に耳を傾けなければ同様の事態に直面し得ると警告した。さらに「2019年と2022年のストライキで何が起きたのかを学ばねばならない」と断言した。

バルガスは会場に集まった数十名を前にして「我々の忍耐は尽きるであろう、大統領閣下。用心せよ、用心せよ。もし過激化が必要ならば、我々は全国ストを過激化する。もしキトの街を占拠しなければならないなら、我々はキトを占拠するだろう」と述べた。バルガスはまた、政府が対話に応じない場合には対抗措置を取る「決断を下す準備ができている」と表明した。同氏によれば、コムナ(村落共同体)、民族団体、連盟といったCONAIEの組織構造は既に行動の準備が整っているという。

 

バルガスは10月4日(土)、チュンチ(Chunchi)に滞在し、「ストライキの要求を再確認するため」と説明した。同氏は、「ディーゼル補助金廃止を定めた政令126号(Decreto 126)や、新自由主義的政策のように人民を貧困に追いやる政策が続く限り、我々の抵抗は維持される」と述べた。

 

元グアランダ市長の拘束

アンデス山岳地帯に位置するボリバル(Bolívar)県の県都グアランダ(Guaranda)の元市長のメダルド・チンボレマ(Medardo Chimbolema)は、CONAIEが呼びかけたストライキの中で逮捕された100人以上のうちの一人となった。内務省(Ministerio del Interior)はチンボレマを、先住民族のデモ中に「破壊行為」を行った疑いで拘束したと述べている。一方この県における動員の資金提供者の一人として特定し、封鎖活動に対する物流支援を行っていたと断言している。内務省によると、デモ参加者の中には外国人8人も拘束されている。

チンボレマは抗議行動で負傷者の容態を確認するためグアランダ市内の病院外にいたところ逮捕されたとされている。しかし治安部隊の情報筋によると、チンボレマがグアランダとリオバンバ(Riobamba)を結ぶヴィンチョア橋周辺での排除作戦中、爆竹を投げる抗議者とともに逃走した後、病院で逮捕されたとメディア「プリミシアス(PRIMICIAS)」に語っており、状況に食い違いがある。また、この情報筋によれば、当該先住民族指導者はガジョルミ(Gallorumi)道路の16キロ地点にある石材採掘場を経営しているが、合法的な操業許可は持っていない。現場には重機があり、4台のダンプトラック、バックホー(後方掘削機)、大型ブルドーザーを所有し、これらを用いてグアランダ–アンバト(Ambato)間やガジョルミ–リオバンバ間の道路封鎖を行っていると言う。

先住民族連盟はチンボレマのほか、抗議行動でさらに13人が逮捕されたと発表している。内務省によれば、メダルド・チンボレマ元市長のほかに拘束されいるのは、同市の職員や国営電力公社(Corporación Nacional de Electricidad:CNEL)の労働者たちである。彼らは、公共サービスの停止を扇動した疑いで逮捕された。内務省は、拘束者らがボリバル県内での道路封鎖や公共物の破壊など暴力行為に積極的に関与しているとみている。さらに、声明では「道路封鎖のために石材を使用し、グアランダへの食料輸送を妨害した」と明らかにしている。

2019年から2023年まで、CONAIEの政治的翼であるパチャクティク運動(Movimiento Pachakutik)の支援を受けてグアランダ市長を務めていたチンボレマの拘束についてCONAIEは、ダニエル・ノボア政権による「政治的弾圧および迫害の行為」と非難している。また同連盟の前代表であるレオニダス・イサ(Leonidas Iza)は、自身のX(旧Twitter)アカウントで、チンボレマが「金曜日にボリバルでの非道な弾圧の被害者を支援している最中に不当に逮捕された」と非難した。イサは「この事件は権力による虐待であり、先住民族運動に対する政治的迫害の一環である」と強く批判し、直ちに釈放するよう要求している。

内務省はこの事件を受け、国営監査院(Contraloría General del Estado)に対し、地方自治体における公的資金の不正使用の有無について特別監査を実施するよう要請する意向を明らかにした。これは、抗議活動への資金提供や物流支援が行われた可能性を調査する目的によるものである。

国家警察および国軍による先住民族プエブロ ワランカ(Pueblo Waranka)に対する強硬な弾圧は、10月3日(金)朝から続いており、地元住民に対する暴力的な制圧が報告されている。

ボリバル県は、CONAIEがディーゼル価格引き上げに抗議して呼びかけた全国規模のデモを受け、ダニエル・ノボア大統領が非常事態宣言と夜間外出禁止令を発令した7県のうちの一つであった。しかし、憲法裁判所は同年10月3日(金)夜、この非常事態宣言のうち5県での適用を無効とする判断を下し、ボリバル県もその対象に含まれた。

 

キトでの新たな動員の告知

エクアドル共産党は、SNSを通じて2025年10月5日(日)午前9時より、エル・アルボリト公園(Parque El Arbolito)における抗議活動への参加を呼びかけている。

一方、キトにおける先住民族組織のコーディネーターであるマルセロ・トゥパニャ(Marcelo Tupaña)は、10月12日にラ・ビジャフロラ(La Villaflora)からエル・アルボリト公園までの抗議行進を計画していることを発表した。

 

アムネスティ・インターナショナル、人権アライアンスによる人権侵害への警告

アムネスティ・インターナショナル(Amnistía Internacional)は、2025年の全国ストライキに関連し、深刻な人権侵害が発生していると非難している。同団体は、以下のような事例を挙げている:

  • 過剰な武力行使
  • 恣意的な拘束
  • 政治的迫害
  • 社会運動指導者の犯罪化

さらに、「フェニックス計画(Plan Fénix)」の下で、司法の独立性の危機や強制失踪といった深刻な懸念が指摘されている。同報告書では、特に以下の二つの事例が「国家犯罪」である可能性があるとして強調されている:

  • エフライン・フエレス(Efraín Fuérez)の殺害
  • 「オタバロの12人(los 12 de Otavalo)」の拘束

 

エクアドル人権アライアンス(Alianza de Derechos Humanos de Ecuador)も全国ストライキの期間中に追跡・記録した人権侵害に関する報告を公表した。同団体によれば、2025年9月22日から10月2日のあいだに、合計183件の人権侵害が記録されたという。被害件数の内訳は以下のとおりである:

  • インバブーラ県(Imbabura):90件
  • ピチンチャ県(Pichincha):41件
  • コトパクシ県(Cotopaxi):12件
  • アスアイ県(Azuay):12件

このほか、他の複数の県からも人権侵害の事例が報告されている。

 

インバブラ、ピチンチャで新たな道路封鎖が発生

2025年10月4日(土)早朝、エクアドルの緊急対策機関であるECU 911は、インバブラ県およびピチンチャ県において、先住民による抗議行動に伴う主要道路の断続的な封鎖が確認されたと発表した。インバブラ県は依然として抗議行動の主要な集結地であり、同機関によれば、戦略的に重要な7地点で交通が遮断されている。

インバブラ県で封鎖が確認されているのは以下の区間である:

  • ウルクキ – チリヤク間(Pigunchuela橋付近)
  • イバラ – インバヤ – ウルクキ間(コニャキ付近)
  • ナタブエラ – アントニオ・アンテ間(ナタブエラの信号機付近)
  • オタバロ – カハス間(全面封鎖)
  • イバラ – スレタ – カジェンベ間(サン・フランシスコ地区[ラ・エスペランサ]およびルミパンバ橋での遮断)
  • オタバロ – コタカチ間(カラブエラおよびペグチェでの封鎖)
  • オタバロ – キロガ間の地方道路(完全に封鎖)

ピチンチャ県では引き続き、3か所の道路において部分的な封鎖が発生している。封鎖されているのは、以下の区間である:

  • キト〜カラカリ間の道路
  • カヤンベ〜カハスを結ぶ幹線道路(ロマ・グランデ付近)
  • ミタ・デル・ムンド〜カラカリ間の道路(カスピガシ地区付近)

 

これらの地点では、デモ参加者によるバリケードの設置がなされている。国家警察および運輸省の職員が現場を監視しており、市民の安全な通行を確保するため、一時的な交通誘導および迂回措置を実施している。当局は、抗議活動が続いている間はこれらのルートの使用を避け、代替ルートの利用を検討するよう勧告している。農村部では集会や封鎖の動きが激化しており、移動の際には最新の交通情報を確認することが不可欠である。特にキト北部へのアクセス路においては交通への影響が顕著である。

#DanielNoboa #CONAIE #エクアドル全国ストライキ2025 #MarlonVargas

 

参考資料:

1. Marlon Vargas advierte con “tomarse Quito” y radicalizar el paro nacional
2. Paro 2025: estas son las vías cerradas este sábado 4 de octubre
3. Lo que se sabe del paro este sábado 4 de octubre
4. Detienen en Ecuador a un exalcalde por «actos vandálicos» durante las protestas indígenas

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