中南米3か国:移民が最も幸せを感じる国ランキングの上位に位置づく

「InterNations」が発表した最新の「Expat Insider」2025年版ランキングにおいて、移住者が重視する要素は、生活の質、社会的統合、そして経済状況であることが改めて明らかになった。本調査は、移住者が滞在国でどれだけ快適に暮らしているかを包括的に評価するものであり、今年も多数の国がその魅力や課題を浮き彫りにした。

調査によれば、パナマが2025年版ランキングで第1位に輝いた。自然環境の豊かさ、手ごろな生活費、安定した社会基盤などが高く評価された。また、現地住民との関係構築のしやすさや、外国人に対する寛容さも要因として挙げられている。第2位はコロンビア、第3位はメキシコであり、いずれも中南米の国々が上位を占めた。これらの国々では、地域社会とのつながりや日常生活の幸福度が高い水準で推移しており、移住者にとって「暮らしやすい国」としての地位を確立している。

一方、ランキングの最下位にはクウェート、トルコ、韓国が並んだ。とくに韓国は、前年から21位も順位を落とすという急激な評価低下を記録し、関係者の間でも注目を集めている。調査対象者からは、職場環境の厳しさ、社会的孤立感、言語・文化の壁などが指摘されており、これが全体的な生活満足度の低下につながっているとみられる。

この調査はInterNationsによって毎年実施されており、母国を離れて暮らす駐在員、自由業者、退職者などの国際的な居住者を対象に、生活のあらゆる側面についてアンケートを行っている。評価項目は、生活費、住宅の確保、医療制度、治安、職業満足度、文化的適応など多岐にわたる。

 

パナマ、2年連続で首位に鎮座 —— 移住者の94%が生活に満足

パナマが2年連続で「移住者に最も好まれる国ランキング」の首位を維持した。InterNationsによる最新の報告書によれば、同国に暮らす移住者の94%が「パナマでの生活に満足している」と回答した。この圧倒的な満足度は、中米に位置する同国を、世界で最も移住者にとって魅力的な国として押し上げる結果となった。

報告書によれば、パナマは調査対象となった複数の指標において軒並み高得点を記録しており、「生活の質(Quality of Life)」「旅行のしやすさ(Travel Opportunities)」「手頃な公共交通機関(Affordable Public Transportation)」「恵まれた自然環境(Natural Environment)」など、いずれの項目もトップ3にランクインしている。特に、都市の利便性と自然の豊かさを両立している点が、定年退職後の移住先として高い評価を受けている。調査対象者の35%がすでに退職しており、この割合は世界平均の11%を大きく上回る。また、18%は「退職」が移住の主な動機と答えており、パナマがリタイア後の移住先として高い支持を受けていることが裏付けられている。さらに、移住者の35%が「パナマに永住したい」と回答しており、これも世界平均(24%)を大幅に上回る結果である。

ドイツ出身で、パナマ市(Ciudad de Panamá)に暮らす女性移住者は、InterNationsのインタビューに対し次のように語った。「ここではすべてがとてもリラックスしていて、パナマ人はとても親切だ。この国では安心して暮らせている」。

 

第2位のコロンビア —— 生活費の安さと経済的満足度が鍵

コロンビアは、前年の第5位から順位を上げ、2025年版「移住者にとって最良の国ランキング」第2位にランクインした。InterNationsによる調査では、個人の財政状況(Personal Finances)が最も高く評価されており、81%の移住者が「自らの経済状況に満足している」と回答している。この割合は、世界平均の54%を大きく上回る。特に「生活費の安さ」や「手頃な住居費」(この項目で第2位)が、コロンビアの評価を押し上げる主な要因となった。

コロンビアへの移住動機は多岐にわたっており、17%の回答者が「生活の質の向上」、同じく17%が「恋愛関係」、さらに17%が「仕事上の理由」と答えている。ただし、仕事を理由とする移住者の割合は世界平均を下回っている。また、コロンビアに住む移住者のうち、57%は「有給の仕事をしていない」と回答している。それでも、92%が「世帯収入で快適な生活を送れている」と感じており、退職者やリモートワーカーにとっても魅力的な国であることがうかがえる。

ボゴタ(Bogotá)に暮らすアメリカ合衆国出身の移住者は、InterNationsに対し次のように語った。「私は退職しているので、ここコロンビアではゆったりとした生活のリズムを楽しんでいる」。

一方で、コロンビアの治安や政治の不安定さは、依然として移住者の間で懸念されている。

  • 43%の回答者が「移住前に治安を最も懸念していた」と答え、

  • 25%が「自分の安全に関して否定的な評価」を下している。

  • 加えて、40%が「政治の不安定さ」を問題点として挙げている。

 

第3位はメキシコ ——「友人の多くが地元住民」と回答

第3位に選ばれたのは、メキシコである。メキシコは2014年以降、「定住のしやすさ(Ease of Settling In)」指数で常にトップ3を維持してきた国であり、今回の調査でもその傾向が裏付けられた。調査によると、移住者の多くが「現地文化への適応が容易」「友人関係が築きやすい」と感じており、35%が「友人の大多数が地元住民である」と回答している。これは世界平均の2倍以上にあたる数値である。また、39%の回答者が「メキシコに無期限で滞在する意向がある」と述べており、永住意欲の高さも特徴的である。

ハリスコ州(Estado de Jalisco)アヒヒク(Ajijic)に暮らすカナダ(Canada)出身の移住者は、「私はこの気候が大好きだ。新鮮で手ごろな食材、豊かな文化、そして親しみやすい人々に恵まれている」と語っている。

活発な社会生活や地域とのつながりが評価されている一方で、生活の質(Quality of Life)に関しては課題も残されている。

  • 生活の質:第23位

  • 治安(Security):第33位

  • 大気の質(Air Quality):第39位

  • 環境(Environment):第35位

これらの項目において、メキシコは世界平均を下回る評価を受けており、特に治安と環境面での改善が求められている。一方で、仕事に対する満足度は67%に達し、退職者の割合は31%と、世界平均(11%)を大きく上回っている。

 

最下位:クウェート—— 前年と同様に第46位

ランキングの最下位となったのは、前年と同じくクウェートである。全体の46か国中46位という結果となった。クウェートに暮らす移住者のうち、17%が「1年以内にこの国を離れる予定」と回答しており、これは世界平均より10ポイント高い数字である。

また、93%がフルタイムで就労しているにもかかわらず、

  • 雇用の安定性(Job Security):第45位

  • 仕事と私生活のバランス(Work-Life Balance):第44位

  • 報酬の公平さ(Fair Compensation):第44位

といった職場環境関連の指標で、極めて低い評価を受けている。これにより、生活全般への不満足度も高まり、移住者の定着率が低くなっていると見られる。

クウェートは2025年の移住者満足度ランキングにおいて、生活環境・文化適応・社会参加のすべての面で最低評価を受けた。移住者の38%は「世帯収入が快適な生活を送るには不十分」と回答し、経済的な不安も強い。気候の厳しさ、とりわけ高温は移住前の最大の懸念材料であり、49%が気候を否定的に評価している。また、社会生活は限定的で、地元住民の排他的な態度や文化への適応困難が深刻な課題だ。クウェートは「適応のしやすさ(Ease of Settling In)」指数で最下位に位置づけられ、移住者の孤立感が浮き彫りとなった。クウェート首都南部のアル・フィンタス(Al Fintas)に暮らすアルバニア(Albania)出身の移住者は、現地の問題点について「空気の質と夏の気温が好きではない」と語る。

 

ワースト2位のトルコ —— 言語障壁と経済不安が移住者を苦しめる

トルコは全体で第45位と低評価を受け、移住者にとって困難な環境が続いている。26%が「生活に満足していない」と答え、さらに23%が「1年以内にトルコを離れる予定」である。最大の問題は言語の壁で、54%がこれを主な課題とし、48%が「トルコ語が話せなければ日常生活が難しい」と感じている。経済状況の不安定さも深刻で、仕事への満足度は第44位にとどまった。

イスタンブール(Istanbul)に暮らすインドネシア出身の移住者は、InterNationsに対して「トルコでの日常生活はどんどん厳しくなっている。インフレが非常に深刻だ」と述べている

 

韓国の急激な評価低下 — 移住者満足度が大幅悪化

2025年の調査で、韓国は前年の23位から44位へと大幅に順位を下げ、最も急激な評価低下を記録した。近年の政治的・経済的不安定が、移住者の韓国に対するイメージに悪影響を及ぼし、「住みやすい国」としての評価を大きく損ねている。調査によると、韓国で有給勤務する移住者は約80%にのぼるが、「職業機会」「労働時間」「ワークライフバランス」「全体的な満足度」の各項目で最下位に位置した。さらに、言語障壁も深刻な問題で、移住者の54%が「韓国語が話せなければ労働市場への参入は難しい」と回答している。ソウル(Seoul)在住のイギリス人移住者は「社会的地位への執着が強く、長時間労働が期待される環境だ」と述べている。

 

2025年、アジア諸国の存在感が拡大、ヨーロッパ諸国は評価低迷

InterNationsの分析では、2025年の移住者満足度トップ10のうち半数はアジア諸国が占めており、タイ、ベトナム、中国、アラブ首長国連邦、インドネシアが名を連ねている。これらの国々は特に、個人の経済状況の満足度や住宅の入手しやすさで高評価を得ている。

一方で、低評価の国の多くはヨーロッパ諸国で、イタリア、スウェーデン、ノルウェー、イギリス、ドイツ、フィンランドが含まれている。これらの国では、移住者が適応の難しさや高い生活費、行政手続きの煩雑さに苦慮している。

なおカナダもまた2年連続で低評価に甘んじており、高い生活費、公共交通機関の不便さ、住宅事情の悪さが主な理由となっている。

2025年版のInterNationsの調査により、移住者が渡航先を選ぶ際に最も重要視する要素が改めて明らかになった。特に「生活の質(Quality of Life)」、「社会への統合のしやすさ(Ease of Social Integration)」、「経済状況(Economic Situation)」が主要な決定要因として浮き彫りになった。一方で、安全性や政治の安定、そして言語の壁は、評価の低い国々で共通して最大の課題となっている。

 

参考資料:

1. El ranking de los países donde los emigrantes son más felices: tres naciones de América Latina ocupan el podio
2. InterNations
3. Expat Insider 2025

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