コロンビア:行方不明になったロンドーニョ、エクアドルを経てペルーで発見される

エクアドルのエル・オロ(El Oro)県マチャラ(Machala)市にて、インフルエンサーであり衣料品店を経営するアミー・ソラノ(Amy Solano)が撮影した動画が、コロンビアで2年間行方不明となっていた男性の発見につながった。

所在が確認されたのは、ディエゴ・ロンドーニョ(Diego Londoño)である。ロンドーニョは、約5年前に完全な記憶喪失を発症し、現在に至るまで自身の名前や出身地など、基本的な個人情報を思い出すことができない状態にある。自らの素性すら分からなかったこの男性の存在が、ソラノの動画投稿をきっかけに明らかとなった。

事の発端は、ソラノが立ち上げたアパレルブランド「ラファエラ(Rafaela)」の店舗で撮影された日常の一場面である。同店舗は交通量の多い通りに面しており、撮影中には多くの通行人が映り込むことがある。その中で、店の窓越しにソラノを見つめるロンドーニョの姿が確認された。動画には、通りからソラノに向かって挨拶をする男性の様子が収められていた。ソラノはそのジェスチャーを「とてもかわいい」と感じ、映像をそのままTikTokに投稿。投稿には「そして突然幸運な日が訪れ、あなたに出会えた」という歌詞を含むアレハンドラ・グスマン(Alejandra Guzmán)の楽曲「ディア・デ・スエルテ(Día de Suerte)」が添えられていた。

ソラノにとっては日常の自然な行動に過ぎなかったこの投稿が、結果として行方不明者の発見に大きく貢献することとなった。

 

エクアドルで投稿された「バズった動画」

この出来事が世界的な注目を集めた背景には、動画の爆発的な拡散がある。アミー・ソラノによる3部構成の最初の投稿は、わずか1週間で3,200万回以上再生され、2,800万件を超えるコメントが寄せられた。多くのユーザーが動画に登場した男性について冗談を交わしたり、他のTikTokクリエイターと混同したりするなど、エンタメ的な盛り上がりを見せていた。しかし、バイラル化したこの動画は、やがてコロンビアに住むディエゴ・ロンドーニョの家族のもとへも届いた。家族は動画の中の男性が、2年間行方不明となっていたロンドーニョ本人であると即座に認識した。これは、『EL HERALDO』紙によって報じられている。

動画投稿後、ソラノのSNSにはロンドーニョの家族からのメッセージが届き、投稿に対する空気は一変した。家族にとっては、これまで見つけられなかった弟の手がかりが突然現れた瞬間だった。弟を捜し続けていたルシア・ロンドーニョ(Lucía Londoño)は、動画の男性が本当にディエゴであるかを確認するため、ソラノに直接メッセージを送った。その後、他の姉妹たちもやり取りに加わり、詳細な情報を提供するとともに、ソラノに深い感謝の意を伝えた。メデジン(Medellín)に住むマルタ・ロンドーニョ(Marta Londoño)とルシアは、動画に映った男性が、音楽と哲学の教師であり、41歳、ドイツ語・英語・イタリア語を話すディエゴ・ロンドーニョであることを明かした。彼にはドイツに暮らす妻子もいるという。また、オルガ・ジュディス・ロンドーニョ(Olga Judith Londoño)も連絡を取り、再会の可能性を高めるため、ソラノと直接やり取りを希望した。こうした家族からのメッセージによって、当初は「ほっこりする街角の一コマ」として捉えられていた動画が、長年の失踪に関わる現実的な発見の証拠へと変わっていった。

 

ソラノは、その後も状況の進展を記録・共有するため、追加で2本の動画を投稿した。2025年9月20日に公開された3本目の動画では、ロンドーニョの家族から「本人との接触方法や対応の仕方」について助言を受けたことを明かしている。「家族が、彼を見つけたときの対応方法を教えてくれました。彼は攻撃的ではありませんし、危険な行動もしません。ただ記憶を完全に失っており、自分の名前すら分からない状態なのです」とソラノは語っている。この3本目の動画も話題を呼び、現在までに30万回以上再生されている。動画の中でソラノは、地域の人々に向けて協力を呼びかけた。「私は彼を助けたいと思っています。必ず見つけ出します。皆さん、彼を見かけたら教えてください。場所や、可能であれば写真を送ってください」と語りかけ、支援を求めた。

ディエゴ・ロンドーニョは、記憶喪失によって消息を絶った後も、エクアドル国内で楽器を演奏しながら生き延びていた。ネット上には彼が歌を歌ったり、フルートを吹いたりしている映像が数多く投稿されており、その姿に心を打たれる人も少なくない。病を抱え、記憶障害に苦しみながらも、彼の親切な性格や文化的な背景は損なわれていなかった。カルコル・テレビジョン(Caracol Televisión)によれば、家族は彼について「暴力的ではなく、旅行好きで、礼儀正しく教養のある人物である」と強調している。記憶を失ったロンドーニョは、2023年から2年以上にわたり家族との連絡を絶っていたが、アミー・ソラノとの偶然の出会いをきっかけに、その所在が明らかとなった。ソラノは現在、ロンドーニョの家族と連絡を取り合いながら、マチャラ(Machala)市内で安全に接触する方法について具体的な指示を受けていた。

 

ペルーで発見されたディエゴ

2025年9月25日、ロンドーニョの居場所がペルー北部のチクラヨ(Chiclayo)近郊、モクぺ(Mocupe)で確認された。ソラノが自身のInstagramアカウントで明かしたところによれば、ロンドーニョは地元の警察署に保護されており、非常に元気な様子だという。ロンドーニョの家族は、彼の現状をより詳細に把握するため、すでにペルー国家警察(Policía Nacional del Perú)と連絡を取り合っている。ソラノは、『ノティシアス・カラコル(Noticias Caracol)』の取材に対し、「警察が彼の自由を奪うような逮捕はされていません。ただ、私たちは彼ができるだけ早く国境を越えられるよう全力を尽くしています。彼がこちらに来れば、私にできることはたくさんあります」と語っている。

ペルーのラガナス区モクぺにある警察署は、SNS上で拡散された「行方不明者」とされる人物、ディエゴ・ロンドーニョについて、調査の結果、身元確認がとれた上で「危険性はない」と判断したことを明らかにした。また、現在のところ行方不明者としての正式な届け出は存在していないと付け加えている。警察によると、ロンドーニョは一晩とその翌日をモクぺの警察署内で過ごした。その間、アミー・ソラノや家族とのビデオ通話が実現し、その後、本人の意志により署を離れたという。ロンドーニョは「私が他の人たちとは違う状態にあることを説明するのは難しいが、私の家族はそこにいる。ここからリマに行き、そこからコロンビアへ戻る。少し働く必要がある。計画はほとんどない」と述べたとされる。警察側は「彼は自らの意思でコロンビアには帰国したくないと明言しており、家族ともその点について話をしている」と説明。心理評価の実施を提案されたがロンドーニョはこれを拒否したものの、滞在中に健康上の問題や異常は見られなかったという。また、当局は「彼は多言語を操り、国内各地を移動しながらブロンズや銅製の手工芸品を販売して生活している」と生活実態についても言及した。

 

スニェンザ(Suñenza)警察中佐によれば、ロンドーニョは「誰とも一緒にいることを選ばず、自ら旅を続けたい」と語っていたという。コロンビアに住む家族にはペルーへ渡航する経済的余裕がなく、またロンドーニョに対して何らかの法的拘束命令や保護命令も出されていないため、警察は本人の自由意志を尊重し、そのまま釈放する判断を下した。最終的に警察は、ロンドーニョがペルーの首都リマへ向かおうとしていることを確認し、また、定期的に警察署を訪れ、家族と連絡を取り続けるよう助言を行った。そして、今後の誤解や混乱を防ぐためにも、状況の変化があれば警察への報告を怠らないよう呼びかけている。なお、ロンドーニョが保護されたチクラヨからペルーの首都リマまでは、飛行機で約1時間30分、陸路での移動には約13時間を要するとされている。

 

TikTok動画が導いた“再会”の奇跡

この一連の出来事は、最初は偶然撮影されたTikTokの映像から始まった。しかしそれは、短時間ながらも家族や支援者との「バーチャル再会」へと発展し、行方不明だった人物の消息確認へとつながった。

2025年9月25日、ディエゴはモクぺの警察署から母親および姉妹と連絡を取り、2年間に及ぶ音信不通の期間を経て、自身が無事であることを伝えた。彼はテレビ番組などを通じて感謝の意を表し、短いながらも意味のある繋がりを再構築した。最終的に、ロンドーニョは身分証明書と連絡先のメモのみを携えて警察署を後にし、自らの意思で旅を続けることを選んだ。

この物語の発端は、アミー・ソラノによるTikTokへの投稿であった。偶然撮影された一本の動画が、行方不明となっていた人物を明らかにし、彼の家族とつなげる橋渡しとなった。ソラノは、自身の投稿がロンドーニョの家族とのビデオ通話を実現させたことに意義を見出しつつも、「私は彼とは法的なつながりがない。自分の役割は果たしたが、それ以上の支援はできない」と語り、その限界を『EXPRESO』紙の取材で明かしている。

現在、ロンドーニョは認知症と診断されており、記憶の混濁と断続的な明瞭さを伴いながらペルー北部を旅している。彼は自らを「リマへ向かうための本を書いている」と語っており、その語り口には現実と幻想が混在している様子がうかがえる。

事件の時系列

  • 2023年:兄のミゲル(Miguel)がFacebook上で「弟がリマで行方不明になった」と投稿。家族が捜索を始める。

  • 2025年9月13日:エクアドル・マチャラの店舗で撮影されたTikTok動画に、通行人として映った男性が恥ずかしそうに手を振る姿が話題となる。

  • 数日後:動画は5000万回以上再生され、コロンビアに住むロンドーニョの妹が映像の人物が失踪中の兄であると認識。

  • 2025年9月23日:動画を手がかりに、ソラノはアフガンの街やマンコラ(Máncora)を訪ね歩くも、ロンドーニョの発見には至らなかった。

  • 2025年9月25日:ロンドーニョがチクラヨ(Chiclayo)近郊モクぺの警察署で発見され、母親およびソラノとビデオ通話を実施。再会の瞬間が実現する。

  • 2025年9月26日:家族が経済的事情によりペルーへの移動が不可能であると表明。警察も法的拘束の根拠がないため、本人の意思を尊重し、ロンドーニョを釈放。

 

ディエゴ・ロンドーニョの家族は、彼の行方が分からなくなった2023年以降、2年以上にわたり懸命な捜索を続けてきた。手がかりは常に不確かで、ペルー国内のペンテコステ派教会、マンコラ(Máncora)、その他南米各地の都市から断片的な目撃情報が寄せられるばかりであった。この不確かな捜索に、アミー・ソラノが加わったのは、エクアドル・マチャラで偶然撮影された一本のTikTok動画からである。

鏡の前で撮影されたTikTokの映像から始まったマチャラの物語は、予想外の家族の再会の物語へと展開した。アミーは引き続きディエゴと家族の橋渡しをしながら、多くの人々もネット上で支援や希望のメッセージを寄せている。そのため、今後間近に完全な再会が実現する可能性も十分に残されている。マチャラで始まったこの物語は、やがて信頼と連帯の物語へと姿を変え、エクアドル、ペルー、そしてコロンビアの三国をまたぐ人道的なつながりを築くものとなった。現在もディエゴ・ロンドーニョは、ペルー北部を旅し続けている。家族は今も彼と直接再会できる日を願い、情報の発信と支援の呼びかけを続けている。未来は依然として不確定であるが、家族の希望は決して失われていない。

 

認知症の診断により生活が一変する前、ロンドーニョはコロンビアの文化や教育の場で積極的に活動していた。家族は、それまでコロンビアとペルーの当局に対し、捜索のためのプロトコルの発動と、専門的な医療対応を求めてきた。時間が非常に重要であり、早急な対応が必要とされている。

この一連の出来事は、偶然が生んだ奇跡であると同時に、情報の力、地域社会の連帯、そして人間の尊厳を問い直す機会ともなった。マチャラでの映像から始まった物語は、国境を越えて信頼と希望をつなぎ、世界アルツハイマー・デー(Día Mundial del Alzheimer)とも重なる形で、記憶障害に対する理解と支援の重要性を社会に強く訴えかけている。

 

【緊急連絡先】
・ペルー警察(PNP):市民の安全や犯罪、緊急事態に対応し、24時間体制で番号105を運営している。盗難や失踪、騒動、その他の事故・事件を通報できる。
・救急車・医療緊急対応(SAMU):番号106で救急医療や搬送を行い、交通事故や急病、重大な健康事態に迅速に対応している。
・消防:番号116に連絡し、火災、ガス漏れ、救出、家庭や工場などの事故現場に出動する。都市部だけでなく地方もカバーしており、必要に応じて専門部隊が出動する。

#アルツハイマー

 

参考資料:

1. El extraño caso de Diego Londoño: desde un TikTok a una videollamada con su familia
2. Un video grabado en Machala ayudó a una familia colombiana a identificar a su pariente perdido hace dos años
3. Diego Londoño apareció, según la última publicación de Amy Solano
4. Amy Solano está cerca de encontrar a Diego Londoño. La historia del músico y profesor de filosofía desaparecido
5. ¿Estaba desaparecido? La historia del colombiano encontrado en Chiclayo y lo que se sabe del caso

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