エクアドル全国ストライキ2025:警察の弾圧がストライキ2日目を特徴づける

エクアドル共和国では、政府に対する全国ストライキが本日で2日目を迎えている。複数の県で道路封鎖が続き、治安部隊による弾圧も報告されている。先住民族連盟(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)は、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領の政権に対し、無期限の蜂起を継続するよう呼びかけている。

中央高地に位置するコトパクシ(Cotopaxi)県では、先住民・農民運動(Movimiento Indígena y Campesino)が、サキシリ(Saquisilí)地域において治安部隊が民間車両に発砲したと非難している。この行為は、ディーゼル補助金廃止に反対する抗議活動に対する「弾圧の犯罪化」として糾弾された。

一方、南部のアスアイ(Azuay)県では、地域コミュニティや水資源管理組合がタルキ(Tarqui)の「Y字路」に集結した。軍や警察が動員され、デモの封じ込めを試みている。また、約400名の市民が州知事庁(Gobernación de Azuay)前のカルデロン公園(Parque Calderón)に集まった。

南西部のロス・リオス(Los Ríos)県では、農民たちがババオヨ〜グアランダ間(Babahoyo–Guaranda)の道路を封鎖し、さらにババオヨ〜モンタルボ間(vía Babahoyo–Montalvo)では、農民および農村社会保険(Seguro Social Campesino)の指導者たちによる抗議が実施され、道路は約2時間にわたり封鎖された。現地メディアの報道によれば、この沿岸地域では混乱が発生し、警察官1名が鉈(マチェテ)で負傷、2名が拘束された。

グアヤス(Guayas)県のグアヤキル市(Guayaquil)北部では、市民らがナルシサ・デ・ヘスス通り(Avenida Narcisa de Jesús)でタイヤを燃やし、政府の政策に対する抗議の意志を示した。

ロハ(Loja)県サラグロ(Saraguro)のサン・ルカス教区(Parroquia San Lucas)では、23日夜に地域住民が抗議活動を展開した。ロハ県とアスアイ県を結ぶ主要道路において、デモ参加者がタイヤを焼却し、大型の岩を配置して車両通行を遮断した。現地には国家警察(Policía Nacional)とエクアドル軍(Ejército del Ecuador)が出動し、状況を監視している。

 

オタバロの状態

エクアドル全国ストライキの中でも、インバブラ県のオタバロ市は最も緊迫した地域の一つとなっている。

特に深刻な局面は、オタバロ警察司令部(Comando de Policía de Otavalo)で発生した暴力的衝突である。抗議参加者と治安部隊の激しい対立により、警察施設は甚大な物的損害を被った。オートバイ、パトカー、私有車が焼かれ、警察署(Cuartel de Policía)の建物自体も破壊された。衝突の際、警察官2名が負傷する事態にも至っている。行政当局はこれらの行為を「テロ行為」と非難し、加えて一部の抗議者を国際的な犯罪組織「トレン・デ・アラグア(Tren de Aragua)」と関連づける発言を行っている。これにより治安対策は一層強化され、市内には緊張と不安が拡大している。

現地では多くの市民が安全確保のため外出を控えており、観光および文化の中心地として知られるオタバロ市は、事実上機能を停止している。商業施設、飲食店、公共市場、さらには観光の象徴である「ポンチョ広場(Plaza de los Ponchos)」までもが閉鎖され、本来活気に満ちた市街地は閑散とし、異様な静寂に包まれている。

全国ストライキが続く中、CONAIEは、オタバロにおける軍および警察の過剰な展開を強く批判した。同団体は、地上・空中の補給体制によって抗議参加者への弾圧が強化されていると指摘している。CONAIEの声明によれば、ヘリコプターの到着後、抗議の現場では催涙ガス、爆発物、ゴム弾による攻撃が続いているとされ、政府による治安措置が「武力による抑圧」に転じていると非難している。

一方で、エクアドル副大統領府(Vicepresidencia de la República del Ecuador)は、インバブラ県において抗議参加者が人道的輸送を妨害した事例を発表した。声明によると、透析治療を必要とする患者と、外科手術を控えた患者を搬送中の救急車2台の通行が妨げられたという。また、当該地域では、少なくとも6か所の道路封鎖が報告されており、人道回廊(corredor humanitario)の確保が困難な状況にあると政府は警告している。

さらに防衛大臣ジャン・カルロ・ロフレド(Gian Carlo Loffredo)、内務大臣ジョン・ライムベルグ(John Reimberg)、および軍統合司令官ヘンリー・デルガド・サルバドル(Henry Delgado Salvador)が、オタバロ上空の視察飛行を合同で実施した。防衛省はその後の発表において、航空支援、地上巡回、軍展開により、抗議活動を「制御下にある」と評価した。

 

キト市内での抗議の様子

全国ストライキが続く中、23日午後には、複数の社会運動団体による追加動員が各地で行われた。中でも注目されたのは、青年革命運動(Juventud Revolucionaria del Ecuador:JRE)による抗議行進である。JREは、同日16時よりキト市内で抗議デモを実施すると発表。「ディーゼル価格の上昇は、生活必需品を含むあらゆる生活費の上昇につながり、最も弱い立場にある人々を直撃する」として、政府の補助金撤廃方針を強く批判している。

この行進には、労働戦線(Frente Unitario de Trabajadores:FUT)に所属する複数の労働組合も合流した。デモはキト市アベニーダ10・デ・アゴスト(avenida 10 de Agosto)沿いにあるエクアドル社会保障機構(Caja del Seguro/IESS)本部前から開始された。参加者らが掲げたプラカードには、「闘争こそが道(La lucha es el camino)」というスローガンが記され、これはCONAIEによる全国ストへの明確な支持表明でもある。FUTの会長、エドウィン・ベドヤ(Edwin Bedoya)は「私たちはディーゼル補助金の撤廃に反対するだけでなく、公務員の大量解雇、そして政府の権威主義的体質にも抗議している。状況が改善されない場合、全国ゼネストの実施も検討する」と発言している。

 

この抗議には、全国教育労働組合(UNE)、その他の労働者団体、そしてエクアドル中央大学(Universidad Central del Ecuador:UCE)の学生らも参加した。並行して、抗議者の別の一団がアメリカ通り(Avenida América)沿い、UCE近くに集結し、ノボア政権および補助金撤廃に関する政令への反対を表明している。参加者は赤い旗を掲げ、「大統領退陣」や「補助金返還」といったスローガンを唱えながら行進を行った。掲げられた旗には、エクアドル大学生連盟(FEUE)およびUCEの略称が明記されており、学生運動の明確な政治的立場が示されている。

この場には、国家警察(Policía Nacional del Ecuador)の部隊が出動し、抗議者の排除と交通の正常化を試みたが、記事掲載時点においてもアメリカ通りは封鎖されたまま。抗議者らはタイヤを燃やし、道路封鎖を継続している。現場にはおよそ50名が集まったとされ、警察部隊は数メートル離れて警戒態勢を維持している。

 

午後17時40分すぎ、労働戦線(FUT)および大学生グループはキト歴史地区にあるサント・ドミンゴ広場に到達し、警備用フェンスの撤去を試みた。これがサント・ドミンゴ広場での最初の衝突となった。同広場の周辺では警察との小規模な衝突が発生した。SNS上に投稿された映像によれば、警察は催涙ガスを使用してデモ参加者を排除した。その後、デモ隊はスクレ(Sucre)通りへ移動した。キト・マヌエラ・サエンス(Manuela Sáenz)地区の司令官エマソン・ルナ(Emerson Luna)は、「デモの大部分は平和的であったが、一部がPVC管を用いて家庭用花火を発射するなど簡易爆発物を使用したため、段階的な武力行使が必要になった」と述べた。これらの衝突により、国家警察官5名が負傷し、医療支援を受けた。ただし、この場面において拘束者は確認されていない。

 

キト市では、抗議活動が歴史地区や中央大学周辺に加え、北部のアベニダ・ナシオネス・ウニダス(Avenida Naciones Unidas)やアベニダ・アマソナス(Avenida Amazonas)にも波及した。これらのエリアはエクアドル国家の中枢機関が集まる首都の商業・金融の中心地である。

このエリアは、政府金融庁舎(Plataforma Financiera del Gobierno Nacional)、市民登録局(Registro Civil)、および国家司法裁判所(Corte Nacional de Justicia)などがある。抗議者によるタイヤの焼却が報告され、夕方の交通ラッシュ時に著しい混乱を引き起こした。国家警察(Policía Nacional)は、午後20時頃にデモの強制解散を実施した。また、デモ参加者の一部は、「軍用ヘリコプターが抗議ルートの上空を旋回していた」と報告しており、上空からの威圧的な監視体制に対する懸念を表明している。

 

また、道路封鎖はキト市の北部に位置するピチンチャ県のカヤンベ(Cayambe)市にも及んでいる。抗議者らはパンアメリカン・ハイウェイ北部に丸太や重機を設置し、通行を妨げている。一方、ラタクンガ(Latacunga)市では、先住民族団体による行進が実施された。ラタクンガは現在、臨時の大統領府所在地とされており、象徴的な意味を持つ場所での抗議行動であった。

 

エクアドルにおける全国ストは無期限で継続とCONAIEが発表

9月23日(火)、CONAIEは、パスタサ( Pastaza)県プヨ(Puyo)市にて、パスタサの7つの先住民族代表と共に公式声明を発表した。この記者会見は、前日(月曜日)に行われた全国集会の決議に基づき、CONAIEの会長マルロン・バルガス(Marlon Vargas)によって開かれたものである。バルガスは、政令第126号(Decreto 126)に対して「正当な抵抗」を行っている先住民コミュニティや社会団体に対する、ピチンチャ県およびインバブラ県での弾圧に強く抗議した。また、50名を超える市民が恣意的に拘束されたとし、これは身体的安全および社会的抗議の権利に対する重大な人権侵害であると断じた。拘束者には社会運動家、農民、若者、女性、リーダーが含まれ、彼らは正当な抵抗権を行使していると主張した。

さらに、当局が拘束者の身柄情報を遺族に提供していないことについては、「強制失踪(desaparición forzada)」という犯罪行為であると糾弾し、司法当局に対して拘束された市民の即時釈放と安全確保を命じるよう強く要求した。CONAIEはまた、ダニエル・ノボア大統領(Daniel Noboa)、政府閣僚および治安部隊に対し、「抗議者の生命・身体に対するあらゆる危害の責任は彼らにある」と明確に述べた。加えてバルガスは国際人権機関に対し、エクアドル国内で進行中の弾圧のエスカレートに注視するよう呼びかけるとともに、「抵抗は権利であり、弾圧は犯罪である」と力強く語った。

 

記者会見では、憲法制定議会(Asamblea Constituyente)に関する議論にも言及され、ノボア大統領に対して「国家権力の分立と独立を尊重せよ」と要求した。最後に、CONAIEは、現在も続く先住民組織の指導者、元指導者、およびメディア関係者の銀行口座凍結について、政府による「嫌がらせ・弾圧」であり、「司法弾圧の一環」であると非難した。また、CONAIEは「組織された民衆を犯罪組織の一部と非難するのは、正当な抵抗の力を恐れる弱さの表れである」と強く反発した。

なお、マルロン・バルガスは「もし私が投獄されなければならないならば、ここにCONAIEの会長がいる。私はそのために選ばれたのだ」と語り、さらに、ストライキ初日に発生した警察署放火などの暴力行為を「自作自演」であると評した。

 

アマゾン地域の先住民族団体が抗議要求に加勢

エクアドル・アマゾン地域に拠点を置くキチュア・パスタサ先住民組織(Organización Quichua-Pastaza)およびアマゾン地域の7つの民族団体の指導者たちは、現在進行中の政府による経済・環境政策が全国民に影響を及ぼすものであると指摘した。彼らは、各地で展開されている抗議行動を権利擁護のためのものであるとし、他の先住民族団体や社会組織の動きに対して支持を表明した。これらの団体は、以下の具体的要求を政府に対して示した:

  • 政令第126号(Decreto 126)の即時撤回

  • 第11次石油入札ラウンド(11° ronda petrolera)の中止および撤回

  • 全国における鉱業台帳(catastro minero)の閉鎖

  • 集団的権利、抵抗権、ならびに諸民族・諸国民の尊厳を侵害する法律の適用停止および撤廃

 

さらに、これらの団体は、抗議行動が単にディーゼル補助金の撤廃に対する反対にとどまらず、近年政府が「組織犯罪対策」を口実として推し進めている一連の法制度改革に対する抗議でもあることを強調した。キチュア・パスタサ先住民組織(Organización Quichua-Pastaza)は、全国規模での抗議行動の実施を呼びかけるとともに、段階的かつ領域的に継続する恒常的な動員の継続を再確認した。

サンタクララ(Santa Clara)のカネロス(Canelos)教区では、重機を伴う大規模な警察および軍隊の展開が確認されている。同地では、パスタサのキチュア(Nacionalidad Kichwa de Pastaza)が、本日未明から生命、領土、そして集合的権利の擁護を目的にストライキに参加している。

 

ノボアの反応

コトパクシで行われた融資授与式において、ダニエル・ノボアは、国内の一部道路で抗議活動が続いているにものの、ディーゼル燃料の補助金廃止方針を撤回しないと表明した。ノボアは「2019年や2022年のように後退はしない」と述べ、これらの年に燃料補助金の撤廃に対する抗議活動が発生し、当時の政府が最終的に方針を撤回した経緯を指摘した。また、ノボア大統領によれば、今回の全国ストは参加者が少なく、エクアドル国内の限られた地域での抗議にとどまっているという。さらにノボア大統領は「もし私に後退しろと言うなら、むしろ死を選ぶ。私はここにとどまる」と強調し、憲法制定議会に関する国民投票の実施を擁護した。ノボア大統領はまた、「失敗した連中が、物事をどう進めるべきか教えようとするが、我々はすでに二度勝っている」と述べ、政敵も痛烈に批判した。

 

全国で59名が拘束される

内務省(Ministerio del Interior)の発表によると、2025年9月23日16時時点で、全国の抗議活動に関連して59名が拘束された。先立つ速報では44名の拘束者が報告され、その全員に前科があるとされた。拘束者の中にはベネズエラ国籍の者が2名含まれており、政府は彼らを犯罪組織「トレン・デ・アラグア」と関係があると主張している。

全国スト初日の終わりに、エクアドル教育省(Ministerio de Educación)は、治安上の理由から全国11地域において対面授業の一時停止を発表した。また、政府は抗議活動に対応するため、スクラップ車両補助金(bono de chatarrización)を拡充する方針を示している。特に運輸業界向けに、登録方法に関する案内が発表されている。

#DanielNoboa #CONAIE #エクアドル全国ストライキ2025

 

参考資料:

1. Ecuador: paro nacional contra el gobierno en segundo día con protestas y vías cerradas
2. Protestas en Quito este martes 23 de septiembre en el segundo día del paro convocado por la Conaie
3. Conaie anuncia que el paro en Ecuador se mantiene de manera indefinida
4. Paro nacional 2025 | Marchas y concentraciones se registraron en Quito, Guayaquil, Cuenca y Loja

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