エクアドル先住民族連盟(Confederación de Naciones Indígenas de Ecuador:CONAIE)が呼びかけた全国規模のストライキに対し、パスタサ県にあるキチュアの主要な二つの前線組織は、参加しない意向を示した。その一つであるサン・ハシント・デ・ピンド自治体(Comuna San Jacinto de Pindo)は、県内に39のコミュニティを擁しており、代表によれば、指導部の全会一致により不参加が決定されたという。住民の安全確保を最優先とする方針によるものである。同自治体の代表であるミルトン・バルガス(Milton Vargas)は、「CONAIEが呼びかける全国ストライキには参加せず、警戒態勢を維持しつつ内部での動員を継続する。国家の政策や決定が領土の安全やコミュニティの尊厳を脅かす場合には、監視体制を強化する」と述べている。
#Urgente Dos frentes indígenas de Pastaza no se van a sumar al paro nacional convocado por la Conaie
— El Dato Ec (@ElDatoEcua) September 19, 2025
Dos de los frentes más representativos de la nacionalidad kichwa anunciaron que no acatarán la disposición de la Confederación de Naciones Indígenas de Ecuador (Conaie). pic.twitter.com/PPoy8YultD
また、もう一つの主要組織である異文化市民連帯前線(Frente Ciudad Intercultural de Pueblos y Nacionalidades:CIPNA)も、同様の立場を取っている。CIPNAはCONAIEの公式組織構造には属していないが、過去の先住民抗議運動においては、その3,000人に及ぶ構成員がパスタサ県内で重要な抵抗の役割を担ってきた。しかし今回は、ストライキへの参加を見送る決定を下した。CIPNAの指導者であるホン・ワジャイ(Jhon Wajay)は、「我々はこれまで支援してきたが、常に自己の利益を優先する一部の集団の思惑には、もはや加担しない」と述べ、今回の不参加の理由を明確にしている。
一方、隣接するナポ県の先住民組織連合(Federación de Organizaciones Indígenas:FOIN)は、現時点でストライキへの参加可否を決定していない。FOINは243のキチュア系コミュニティを統括しており、今後、基盤組織とともに集会を開いて協議を行う予定であるが、日時や開催場所はまだ明らかにされていない。
なお、アマゾン地域においては現在のところ、11の民族および23の先住民組織のいずれも、抗議行動や動員を開始していない状況である。
ダニエル・ノボアの反応
ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領は、2025年9月19日にボリバル県を訪問し、チンボ〜クリスタル道路の改修工事の起工式に出席した。その際、CONAIEが発表した全国ストライキに対し、強い語調で批判を展開した。
大統領は「いつもの扇動者たちが活動を止めようとしている」と述べ、「彼らは自分たちの利益ばかりを考えている。国民の生活を妨げるべきではない」と強調した。さらに、自身の政権に批判的な勢力に対しても反論し、「彼らは我々を不快な人物(personas no gratas)と宣言したが、私も彼らを全国で不快な人物と宣言する」と断言した。ノボア大統領は続けて、「誰も大統領が自国領内で受け入れられるか否かを決めることはできない。法律を尊重することを学ぶべきである。彼らは国の分裂を企てている」と語った。また、国家資源の効率的な活用の必要性にも言及し、「国家の資源は、最も支援を必要とする人々に届くべきであり、燃料の密売業者の手に渡ってはならない」と述べた。これは、ディーゼル燃料補助金の廃止を定めた政令第126号に関連する発言である。
さらに、憲法制定会議の設置に関する国民投票の実施をめぐる議論に触れ、「一部のグループは、国民の意思表示を阻止しようとしている。しかし我々は、民主的手段によって国家の制度強化を推進し続けている」と述べ、「今になって国民に意見を問うことを嫌がるのは、彼ら自身である」と批判した。
なお、共和国大統領は、2025年9月18日よりコトパクシ、インバブラ、チンボラソ、ボリバルおよびカルチの五県に対し、法令第146号により夜間外出禁止令を施行した。移動制限の時間帯は午後10時から翌朝5時までである。この措置は、ディーゼル燃料補助金を廃止する法令第126号に反対して、CONAIEが即時かつ無期限の全国ストライキを宣言したことを受けて採られたものである。ディーゼル補助金廃止で、年間約11億ドルの財政節約が見込んでいるというダニエル・ノボアは、国家の停止を許さず、「テロ行為や違法な道路封鎖、組織的な暴力に関与した者は法律に基づき処罰する」と強く警告している。
今回の補助金撤廃は、2025年9月12日にダニエル・ノボア大統領によって発表されたものであり、翌13日からディーゼル燃料の価格は1ガロンあたり1.80ドルから2.80ドルへと一気に引き上げられた。ノボア大統領は、この政策によって年間約11億ドルの財政支出が削減可能となり、その分を社会補償および生産的インセンティブに再配分できると主張している。この決定は運輸業界からも強い反発を招き、週明けからは複数の地域において道路封鎖などの抗議行動が発生した。これを受けて、ノボア政権は2025年9月16日、「深刻な国内混乱(grave conmoción interna)」を理由として、カルチ、インバブラ、ピチンチャ、アスアイ、ボリバル、コトパクシ、サント・ドミンゴの7県を対象に60日間の非常事態宣言(政令第134号)を発令した。さらに、9月18日には政令の一部を改正し、新たにチンボラソ県も非常事態の対象に加えた。この非常事態宣言により、該当地域における集会の自由は一時的に制限されている。あわせて、コトパクシ、インバブラ、チンボラソ、ボリバル、カルチの5県では、午後10時から午前5時までの夜間外出禁止令(toque de queda)が施行されており、違反者は法的措置の対象となると明記されている。
CONAIEや各社会組織の状況
CONAIEの代表であるマルロン・バルガス(Marlon Vargas)は、政府によるディーゼル燃料補助金の撤廃に強く抗議し、「即時かつ無期限の全国ストライキ」を実施する方針を発表した。バルガスによれば、各加盟組織はそれぞれの地域において動員開始の日時を独自に決定することになっている。たとえば、インバブラ地域では2025年9月21日(日)午後10時よりストライキを開始する予定である。一方、コトパクシ県の先住民族は、同日までに生活必需品の備蓄を呼びかけており、翌日以降に行動を開始する見通しである。この決定は、2025年9月18日にチンボラソ県リオバンバ市で開催された臨時総会において正式に採択された。コトパクシ先住農民運動(Movimiento Indígena Campesino de Cotopaxi:MICC)などは、参加コミュニティに対し9月21日までに食料備蓄を整えるよう呼びかけている。これはストライキに備えるためである。
#URGENTE | El MICC en Asamblea Extraordinaria Provincial, reunida en Latacunga el 18 de septiembre de 2025 con la participación de 33 organizaciones, resuelve alzar la voz contra las medidas antipopulares del gobierno de @DanielNoboaOk.#EnUnidad #SomosMICC #AbajoElPaquetazo pic.twitter.com/utzrH9uw23
— Mov.IndígenaCotopaxi (@Micc_Ec) September 18, 2025
バルガス議長は同総会において、「我々は状況を綿密かつ慎重に分析した結果、全国の基礎組織、社会団体、市民社会に対し、即時かつ無期限のストライキを呼びかけることを決定した」と述べた。さらに、CONAIEは政府による「脅迫や迫害」が存在すると主張し、国際社会に対して監視の強化を求めるとともに、「抵抗する権利(derecho a la resistencia)」を行使する姿勢を明確に示した。また、先住民族の領域内において「コミュニティによる非常事態」を宣言し、国家の治安部隊や軍の立ち入りを禁止する方針も同時に発表している。
CONAIEは過去にも、2019年および2022年に、当時の大統領レニン・モレノ(Lenín Moreno, 2017–2021)およびギジェルモ・ラソ(Guillermo Lasso, 2021–2023)が燃料補助金の撤廃を試みた際、全国規模で抗議行動を主導してきた経緯がある。今回の全国ストライキには、CONAIEに加え、農民・先住民・黒人組織連合(Confederación Nacional de Organizaciones Campesinas, Indígenas y Negras:FENOCIN)、労働者統一戦線(Frente Unitario de Trabajadores:FUT)、全国教育者連合(Unión Nacional de Educadores:UNE)、学生、退職者など、多くの社会団体が参加を表明している。
CONAIEによる全国ストライキの呼びかけを受け、2025年9月19日(金)、先住民族組織は動員の準備を開始した。ただし、この日の時点では道路封鎖や抗議活動の報告はなかった。ECU 911 の報告によると、週の初めに封鎖があったピチンチャ、カルチ、インバブラ各県の道路も現在は通行可能である。PRIMICIASの取材チームによるとキトへの入口やピチンチャ県の主要道路も概ね平常である。ただし、一部の地点では警察や軍の配置が見られた。
アスアイ県の先住民農民組織連合(Federación de Organizaciones Indígenas y Campesinas de Azuay:FOA)は一方、9月23日から道路封鎖を行うことを発表した。彼らはこれを「水のための蜂起(levantamiento por el agua)」と呼び、ロマ・ラルガ(Loma Larga)鉱山プロジェクトに対する環境許可の取り消しを政府に求める運動である。また、FOAは全国的に他の組織と連携して、ディーゼル補助金廃止を撤回するよう求める全国ストライキに参加する予定である。FOAのラウロ・シグチャ会長は、Moteradioのインタビューで、金曜日から土曜日にかけて各組織が集会を開き、具体的な行動計画を決定すると述べた。封鎖予定地点は、タルキ(クエンカ-マチャラ間)、ナボン(ロハ方面)、モジェトゥロ(グアヤキル方面)である。「これは非常に強力なストライキとなり、民衆の要求に応えるものである」と同会長は説明した。
[COMUNICADO] Pese a los anuncios del Gobierno, la licencia ambiental de Kimsakocha no ha sido revocada ni las concesiones mineras anuladas. Y el bloque oficialista se abstuvo en la votación clave de la Asamblea.
— Foa Azuay (@foazuay93) September 19, 2025
📢 Se mantiene la convocatoria al levantamiento 23 de Sept. pic.twitter.com/8wxHLXE5WE
アスアイ県クエンカの中心部では、運輸業者による新たな動員が始まっている。彼ら自身は現在、先住民族組織が呼びかけたストライキに参加するかどうかを検討している。今回はスクールバス、混合輸送、都市バスの代表者も参加した。彼らは、エクアドルにおけるディーゼル補助金廃止の政令撤回を求める声明を知事のハビエル・ベルムデス(Xavier Bermúdez)に提出した。
その他公共交通機関に関しては、現時点でどの運輸組合もストライキへの参加を表明しておらず、むしろ政府との間で、ディーゼル価格引き上げに対する追加的な補償措置を求める交渉を継続している状況である。また、教育当局からは授業の中止に関する公式な発表はなされていない。
参考資料:
1. Dos frentes indígenas de Pastaza no se van a sumar al paro nacional convocado por la Conaie
2. Daniel Noboa a la Conaie: “Que se pongan a trabajar, que dejen de fregar la vida”, tras anuncio de paro nacional
3. Todo lo que debes saber del paro nacional en Ecuador hoy, viernes 19 de septiembre
4. Paro nacional 2025 | Las vías están habilitadas el 19 de septiembre en Ecuador, mientras las organizaciones indígenas se alistan para las movilizaciones
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