コロンビア:飛行機事故から40日後に救出された子どもたち――あれから1年、彼らはいま

2024年6月9日、コロンビア・アマゾンの熱帯雨林で行方不明となっていた先住民の兄妹4人が救出されてから1年が経過した。彼らは飛行機事故を生き延び、40日間も密林をさまよった末に発見された。この出来事は数週間にわたって世界中を固唾を飲ませ、コロンビア国内では歴史的快挙として称賛された。

この救出劇には「希望作戦(Operación Esperanza)」という名が付けられ、国中が子どもたちの勇敢さとたくましさ、そして彼らの捜索に尽力した先住民と軍の協力に拍手を送った。

1周年を記念して、子どもたちの保護を担うコロンビア家族福祉院(Instituto Colombiano de Bienestar Familiar:ICBF)は、兄妹の写真2枚とともに、この1年間の歩みを振り返るレポートを発表した。そこには

兄妹たちはこの1年間、一度も離ればなれになっていない(…)。現在は学業に励み、彼らの年齢にふさわしい子どもらしい生活を楽しんでいる

と書いてある。

 

40日間の捜索

飛行機事故は2023年5月1日に発生した。当時14歳、9歳、4歳、1歳だった4人の兄妹は、母親マグダレナ・ムクトゥイ(Magdalena Mucutuy)および他の2人の大人と共に乗っていたが、事故で大人3人全員が死亡した。

一家は、父親マヌエル・ラノケ(Manuel Ranoque)と再会するために移動していた。彼は違法武装組織からの脅迫を受けたため、アララウカラ(Araraucara)を離れて避難していた先住民の指導者である。

事故現場に当局が到着したのは事故から2週間後であり、そこには大人たちの遺体しか残されておらず、子どもたちの姿はなかった。このため、子どもたちが所属する先住民コミュニティと国軍による大規模な捜索が開始された。飛行機が墜落し、子どもたちがさまよっていた熱帯雨林は、過酷で密集し、極めてアクセスが困難な地域であった。政府は150人以上の兵士と救助犬の投入を命じ、先住民コミュニティの知識と経験も捜索に大いに役立てられた。捜索の希望は、救助隊が生命の兆候を次々と発見したことで高まっていった。棒や枝で作られた即席の避難所、ハサミ、ヘアゴム、哺乳瓶、墜落現場から離れた場所にあった食べかけの果物などが見つかったのである。

レスリー(Lesly、15歳)、ソレイニー(Soleiny、10歳)、ティエン・ノリエル・ロノケ(Tien Noriel Ronoque、5歳)、クリスティン・ネリマン・ラノケ(Cristin Neriman Ranoque、2歳)のムクトゥイ兄妹は、衰弱し、けがを負い、栄養失調とトラウマの兆候を示していたが、無事に発見された。それ以来、彼らはコロンビア家族福祉院の保護下にある。BBC Mundoは、子どもたち、彼らの法的代理人、コロンビア家族福祉院の職員へのインタビューを申し込んだが、調整は不可能であった。「兄妹たちはコロンビア家族福祉院の保護下にあるが、親権は彼らの両親にある」からだと同機関は回答している。

 

医療および心理的ケア

「ムクトゥイ兄妹は、日々を楽しみ、学びながら過ごしている」とコロンビア家族福祉院は述べた。具体的には、先住民族関連の専門分野を扱う家族保護部門のチームが子どもたちに関わっており、「故郷を離れてもその文化的慣習が損なわれないようにし、すべての権利が保障される」ことを目的に活動している。「彼らの民族に属する教育者、トラウマ治療の専門心理士とともに支援を行ってきた」とコロンビア家族福祉院の声明には記されている。

コロンビア家族福祉院は、子どもたちがジャングルで患った病気はすでに克服されたことを確認した。そして「兄妹は常に互いに支え合っており、家族や彼らを愛し守ってくれる人々と共に過ごしている」と述べた。「ムクトゥイ兄妹は、私たちすべてにとって勇気と希望の象徴である(…)。彼らは、すべてのコロンビア人が一つの目的のもとに団結できることを示し、愛、信仰、献身、信頼、そして責任感を持って共に歩めば、奇跡のようなことが実現できると私たちに教えてくれた」とコロンビア家族福祉院は強調した。

 

秘密に包まれた1年と語り継がれる物語

このコロンビア家族福祉院の声明を除けば、この1年間、子どもたちの状態について知られていることはほとんどない。しかし、この「奇跡」を記録しようとする文学作品やドキュメンタリー作品の制作は相次いでいる。これはコロンビア国民の誇りであり、世界を驚かせた出来事である。

最近では、Amazon Primeで『オペラシオン・エスペランサ:アマゾンに消えた子どもたち(Operación Esperanza: los niños perdidos del Amazonas)』というドキュメンタリーが配信された。そこでは、俳優や家族が当時の出来事を再現している。

ラファエル・レジェス・プリエト陸軍高等学校(Escuela Superior de Guerra General Rafael Reyes Prieto)も「希望作戦(Operación Esperanza)」という名の一冊の書籍を刊行している。この書籍では、子どもたちを生きたまま発見するために、時間と最も過酷な自然との絶望的な戦いに身を投じた軍の特殊部隊員たちが、自らの体験を語っている。

また、コロンビアの調査報道ジャーナリストダニエル・コロネル(Daniel Coronell)も、『アマゾンの子どもたち:密林での40日間(Los niños del Amazonas: 40 días perdidos en la selva)』というタイトルの書籍を発表した。この本では、複数のインタビューを通じて、多くの人が不可能と考えていた救出劇がどのように実現されたのかを詳しく解説している。

 

奇跡か?

コロンビアのメディアでは、いまだにこの出来事を「奇跡」や「英雄的行為」として報じている。40日間にわたってジャングルで生き延びた子どもたちの生還をそのように捉えているのである。しかし、この出来事は、コロンビアにおける先住民の何世紀にもわたる遺産と知恵の価値を浮き彫りにするものでもあった。それが、幸運な結末へとつながった要因の一つである。

子どもたちが発見された直後、BBC Mundoはアレックス・ルフィーノ(Alex Rufino)にインタビューを行った。彼はジャングルでのサバイバルに長けたティクナ(ticuna)の先住民である。この対話の中で、ルフィーノは、コロンビアのメディアや公的機関が用いる英雄譚的な表現は、先住民の世界に対する無知を示すものであると指摘した。彼は「子どもたちは『迷子になっていた』のではなく、『彼らの環境の中にいたのであり、自然と共に生きてきた先住民族の長年の知恵と、ジャングルそのものの保護の下にあった』のだ」と語った。

#OperaciónEsperanza

 

参考資料:

1. Qué fue de los niños indígenas rescatados hace un año tras pasar 40 días perdidos en la Amazonía de Colombia

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