(Photo:Juancho Torres / AFP / Profimedia Images)
ソランヘ・マルティネス(Solange Martínez)は、ラヌス国立大学(Universidad Nacional de Lanús)国際問題・政治研究所(Instituto de Asuntos Internacionales y Estudios Políticos Manuel Ugarte)に所属する研究者であり、ラジオUNLaの番組「エスキナ・アメリカ(Esquina América)」および「ノダル・セ・プレンデ(NODAL Se Prende)」の司会を務める。NODALおよび中南米戦略分析センター(Centro Latinoamericano de Análisis Estratégico/CLAE)のアナリストでもある。
近年のコロンビアの歴史において初めて、元大統領が刑事事件により有罪判決を受けた。アルバロ・ウリベ・ベレス(Álvaro Uribe Vélez)は、ラテンアメリカ右派の中核的存在であり、軍事化された権力の象徴でもある人物であるが、訴訟詐欺および証人買収の罪により有罪とされた。この判決は、準軍事勢力(パラミリタリズム)との結びつき、国内弾圧、国際的同盟関係によって支えられてきた政治構造の根幹に疑問を投げかけるものである。本裁判は、コロンビアの歴史を血と暴力で塗り替えた権力モデルの構築過程を明らかにしている。
7月28日月曜日、判事のサンドラ・エレディア(Sandra Heredia)は、弁護士を通じて証人の操作を指揮したとして、アルバロ・ウリベ元大統領に対し、第一審で有罪判決を言い渡した。この訴訟の発端は2012年に遡る。当時上院議員であったウリベは、イバン・セペダ(Iván Cepeda)に対し、司法的な捏造を仕組んだとして告発した。しかし、コロンビア最高裁判所はこの訴えを退け、実際には証人の証言に干渉しようとしていたのはウリベ自身であったと判断した。
この判決は司法史上の画期的な出来事であり、コロンビア史上初めて国家元首経験者が刑事犯罪で有罪とされた例である。有罪による刑罰は最長で12年に達する可能性があり、自宅軟禁が適用される見通しである。現在この裁判は控訴段階にあり、最終的には最高裁が介入する可能性がある。
アルバロ・ウリベは2002年から2010年まで大統領を務めただけでなく、アンティオキア県知事、上院議員としても政治的地位を築き、現在に至るまで国内外で強い影響力を保持してきた。その政治的経歴は、特に彼の出身地において、準軍事勢力との継続的な関係を指摘する数多くの告発に晒されてきた。
現在の裁判の根拠の一つとなっているのは、元準軍事組織構成員であるフアン・ギジェルモ・モンサルベ(Juan Guillermo Monsalve)の証言である。彼はウリベが、「コルドバ農民自衛軍(Autodefensas Campesinas de Córdoba)」の「ブロケ・メトロ(Bloque Metro)」設立に関与していたと証言している。ラ・グランハ(1996年)、エル・アロ(1997年)、およびサン・ロケ(1996年〜1997年)における虐殺事件では、数十人の犠牲者が出ただけでなく、違法武装組織、国家権力、そしてウリベに結びつく政治構造との癒着の実態が浮き彫りとなった。
ウリベの大統領在任中の2期において、「民主的治安政策(Seguridad Democrática)」は国内の軍事化を加速させ、いわゆる「偽陽性事件(falsos positivos)」を急増させた。これらは、民間人をゲリラ戦闘員と偽って殺害し、軍の戦果として報告する事件である。発生件数は、おおよそ4,500件から6,200件にのぼると推定されている。
この判決に対する政治的反応は、国内に存在する深刻な分断を浮き彫りにした。大統領のペトロ(Gustavo Petro)は、この判決を「真実に向かう前進」として擁護し、「コロンビアは脅しには屈しない」と自身のSNSで発言した。一方、告発の原動力であり、かつて政治的迫害を受けたセペダは、「私は他の者たちと同様、政治的ジェノサイドから生き延びた。今回の裁判はその償いの一環である」と述べた。
これに対し、政党「セントロ・デモクラティコ(Centro Democrático)」の一部勢力や、ウリベの国際的な支援者たちは、この裁判を「政治的迫害」と非難した。アメリカ合衆国では、マルコ・ルビオ(Marco Rubio)およびカルロス・ヒメネス(Carlos Giménez)ら共和党の議員が「ローマ時代の剣闘ショー」「魔女狩り」と評した。ウリベ派の議員96名は連名で書簡を発表し、「彼の無実は、決して封じ込めることのできない真実の叫びである」と訴えた。
ウリベの権力は、コロンビア国内のみならず、国際的な支援によっても維持されてきた。彼の大統領在任期間(2002年〜2010年)において、コロンビアはイスラエルとの軍事的同盟を強化し、武器、無人機(ドローン)、および部隊訓練に関する協定を締結した。また、北大西洋条約機構(NATO)との関係強化も進められ、2018年には、コロンビアはラテンアメリカで初めて「グローバル・パートナー」として認定された。
こうした国際的支援のネットワークは、長年にわたりウリベを保護してきたが、現在ではその防衛線の一部が、少なくとも国内司法においては崩れつつある。
しかし、前例のない今回の判決にもかかわらず、政治的暴力は依然として続いている。2025年の年初から現在にかけて、少なくとも92名の社会運動指導者および人権擁護者が殺害されたと、「平和のための開発研究所(Instituto de Estudios para el Desarrollo y la Paz/INDEPAZ)」は報告している。最新の犠牲者は、アンティオキア県ダベイバにて消防隊長を務めていた、エンベラ族出身の先住民でありトランス女性であるフェルナンダ・ドミコである。
🔴 #92LíderesAsesinados
— INDEPAZ (@Indepaz) July 25, 2025
👥 Nombre: Fernanda Domicó
📆 Fecha:25/07/2025
📍 Lugar: Dabeiba, Antioquia.
➡️Fernanda Domicó, renocida líder social e indígena del pueblo Embera, mujer trans y jefa del cuerpo de bomberos de Dabeiba (Antioquia), fue una destacada defensora de los… pic.twitter.com/zfkuDtoqxz
コロンビアにおける不処罰の構造は、この一件の判決によって終わるものではない。しかし、本判決は象徴的な転換点となり得る。というのも、国で最も権力を持つ人物の一人が、特権や免責なしに司法の場に立たされたのは今回が初めてであるからである。
アルバロ・ウリベ・ベレスが被告席に座ることによって、コロンビア右派は再編の段階に入った。明確な指導者を欠き、その正当性の一部が損なわれた状況の中で、右派勢力は自らの政治的プロジェクトを再構築せねばならない。同時に、現政権にとっても、今回の司法的進展を単なる例外として終わらせず、これを機にそのような状況を生み出した制度そのものの変革に取り組むという課題が課されている。
問われているのは、単にウリベが今後どうなるかではない。コロンビアが裁こうとしているのは、一人の人間ではなく、彼が体現してきた「体制」そのものであるのかが問われているのである。
アルバロ・ウリベはこの自らに対する裁判を「不正な司法プロセス」と呼び、いくつかの判事が自身に偏見を持ち、違法に電話を盗聴したと主張していた。しかし、サンドラ・エレディア判事は、その盗聴は合法であったと判断した。
一部の法律の専門家やウリベに批判的な人々は、このプロセスがコロンビアの法制度が権力者に責任を問うために機能している証拠だと指摘している。その中には、ボゴタのロサリオ大学(Universidad del Rosario)で刑法を専門とするフランシスコ・ベルナテ(Francisco Bernate)教授もおり、彼はこの裁判がコロンビアの法制度の強さを示していると述べた。
「これは独立した司法制度であり、政治的な計算に基づいて行動することはない」とベルナテ教授は言った。「ウリベ元大統領は政治的な人物であり、おそらくコロンビアの今世紀で最も重要な人物だが、当然彼は政治的な解釈を行う。しかし、現実にはこれは厳密に法律的な事例である」。しかし、ウリベの支持者たち、特にアメリカ合衆国の一部の共和党員は、この司法制度が保守的な元リーダーに対して武器化されていると主張している。
参考資料:
1. Fallo histórico: Colombia condena a Uribe
2. Ex-President Álvaro Uribe of Colombia Is Convicted of Bribery
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