エクアドル:増加する強制失踪と2024年におけるその共通パターン

(Photo: Comité Permanente por la Defensa de los Derechos Humanos)

2025年4月、人権擁護常設委員会(Centro de Derechos Humanos:CDH)は、国家の公共治安維持部隊の構成員によるとされる強制失踪、超法規的殺害、その他重大な人権侵害の報告件数が持続的に増加していることに対し、深い懸念を表明した。エクアドルでは、2024年に33件の強制失踪がCDHによって記録されており、これは政府が国内武力紛争状態を宣言した状況下で発生したものである。

人権擁護常設委員会によって作成されたは報告書『エクアドル沿岸部における軍事化の文脈下での強制失踪(Desapariciones forzadas en contexto de la militarización en la costa en Ecuador)』では2024年に国家によって布告された軍事化の中で、エクアドル軍による巡回中に拘束され、その後失踪した市民の事例を収録したものである。失踪事件は33名に対し起きており、その発生現場はロス・リオス県 17名、グアヤス県 10名、エスメラルダス県 6名でこのうち7名は未成年である。加えて、エクアドルのオンブズマン機関(Defensoría del Pueblo)が記録している9名の失踪者についても検察の捜査対象となっているが、CDHによる文書化は未完了である。したがって、2024年におけるエクアドル沿岸部での強制失踪被害者数は少なくとも42名にのぼると推定される。

 

2024年における強制失踪事件に関連した軍事介入の共通パターン

エクアドル憲法裁判所(Corte Constitucional del Ecuador)および米州人権裁判所(Comisión Interamericana de Derechos Humanos:CIDH)は、治安維持活動における軍隊の関与について、以下の要件を満たす必要があると定めている。

(i)例外的なものであること
(ii)補助的かつ従属的な役割であること
(iii)法律に基づき規制されていること
(iv)適切な監視が行われていること
(v)権限濫用や人権侵害が発生した場合の責任追及および告発のための制度が整備されていること

 

しかしながら、強制失踪を引き起こした多くの軍事作戦は、これらの条件を満たしていない。さらに、拘束の状況、司法へのアクセスの妨害、捜査過程の非効率性に関しても、以下のような共通の問題点が確認されている:

1. 拘束時の恣意的行為

記録された事例においては、以下のような軍事介入のパターンが見られる。

  • 令状なしの家宅侵入
    軍隊が裁判所の許可や住民の同意を得ることなく住居に侵入し、家財を破壊・窃盗し、住民に混乱と恐怖を与えた。

  • 公共の場での無差別な検問作戦
    道路検問などの現場で、無作為かつ無差別に人々が拘束される事例が多発している。

  • 脅迫および暴力の使用
    作戦中、家族に対して催涙ガスなどを用いた威嚇行為が確認されている。

  • 過剰な暴力の行使
    拘束された者の多くが顔面や身体への暴行を受けている。また、同行者が服を脱がされ裸で釈放されるなど、懲罰的と思われる扱いも報告されている。

  • 未成年への対応プロトコルの欠如
    被害者の約半数が未成年であるにもかかわらず、彼らに対する適切な対応手続きや保護措置は適用されていない。

2. 司法アクセスの障害

強制失踪の被害者の家族は、司法へのアクセスにおいて多くの困難に直面している。またこれらの障害は、司法アクセスの権利を侵害するだけでなく、被害者家族に対してさらなる精神的苦痛や再被害化を引き起こしている。

  • 告発受理の遅延
    地域警備監視ユニット(Unidad de Vigilancia Comunitaria:UVC)の担当者は、被害届を提出する前に数日間の待機を家族に指示した。

  • 制度上の非効率
    国家失踪対策局(Dirección Nacional de Delitos Contra la Vida, Muertes Violentas, Desapariciones, Extorsión y Secuestros:DINASED)は初動捜査を適切に実施せず、対応の遅れを招いた。

  • 意図的な遅延
    検察は失踪者の安全確保を理由に告発の受理を故意に遅延させていると指摘されている。

3. 捜査過程の非効率性

捜査の進行状況には、深刻な不備や怠慢が見受けられる。

  • 誤った犯罪分類
    軍隊の関与が明白であるにもかかわらず、検察は事件を「誘拐」や「自発的失踪」として扱い、そのため調査方法に悪影響が生じている。

  • 通知の欠如と家族の不参加
    被害者の家族には捜査の進展が伝えられず、捜索や法的手続きへの参加も認められていない。

  • 心理的支援の欠如
    家族に対する心理的サポートが全く提供されていない。

  • 無神経な発言
    一部の地方当局者からは、「すでに死亡しているだろう」や「調査には15年以上かかる」といった、家族の希望を打ち砕くような発言がなされている。

 

エクアドルにおける強制失踪の実態

これらの事例は国連強制失踪委員会に報告されており、一部については同委員会から以下の緊急措置および予防措置が示されている。

  • 強制失踪および行方不明者の捜索に関する国際的なプロトコルや基準に則った捜査の実施。

  • 即時の捜索と徹底的かつ公平な調査を行うための包括的戦略の策定および行動計画とタイムラインの確立。

  • 失踪者の家族の生命と安全を守るための予防措置を講じ、家族が報復を恐れることなく捜索活動を継続できるよう保障。

  • 捜索・調査の進捗について家族に対し明確な報告の仕組みを保証し、家族が直接関与できる体制の構築。

  • 防犯カメラ映像や通信記録など、証拠の保全と管理のための即時措置の実施。

 

2025年1月〜6月 エクアドルにおける強制失踪関連報道まとめ

2025年1月27日
「マルビナス事件が他の失踪事件と軍の関与を明らかに」

ロスリオス県の人権団体代表ビリー・ナバレテは、2024年からグアヤス県を中心に発生した強制失踪や深刻な人権侵害について国会で説明した。
2024年1月9日以降、検察は強制失踪9件、超法規的処刑15件、拷問80件、捜査145件を記録している。
ナバレテは、軍が十分な訓練を受けず犯罪対策に投入されたことが問題であり、国防省に政治的責任を問う必要があると訴えた。

2025年2月1日
「2024年に16件の強制失踪が沿岸地域で発生」

グアヤキルの人権委員会は、ロスリオス県9件、グアヤス県4件、エスメラルダス県3件、計16件の強制失踪を2024年に報告した。
背景には沿岸地域の軍事化があるとされている。

2025年2月3日
「2024年の軍事作戦で21名が失踪、うち9名は未成年」

人権団体CDHグアヤキルは、軍事作戦の影響で21名が行方不明となり、手続きが守られず家族との連絡が断たれていると発表した。
国連強制失踪委員会は16名に対し緊急措置を命じている。

2025年2月8日
「ノボア政権の強制失踪、フェブレス・コルデロ政権を上回る」

2010年の真実委員会はフェブレス・コルデロ政権時代の強制失踪17件を記録。CDHはノボア政権下で27件を記録した。
過剰な武力行使や児童・青少年への適切対応の欠如が指摘されている。国連委員会の対応が求められている。

2025年2月12日
「エクアドルで23名の男性が失踪、捜索は停滞」

アムネスティ・インターナショナルは、ロスリオス県、グアヤス県、エスメラルダス県で23名が行方不明であり、軍関与が疑われていると報告。
アムネスティ・インターナショナルはCDHの記録を引用し、ノボア政権の「フェニックス計画」に関連した事件と指摘し、検察に捜査徹底を求めている。

2025年2月12日
「アムネスティ・インターナショナルが軍事作戦中の失踪23名の調査を要請」

同日、複数のメディアがアムネスティ・インターナショナルの声明を報じた。

    • エル・コメルシオは、アムネスティ・インターナショナルが検察に対し、軍事作戦中に発生した失踪事件の徹底した調査を求めたと報じた。

    • テレアマゾナスは、アムネスティ・インターナショナルがロスリオス県、グアヤス県、エスメラルダス県において23名の男性が失踪していることを確認し、速やかな捜索を要求したと伝えた。

    • カナル・エクアビサは、アムネスティ・インターナショナルが国家による調査の遅れと対応の不十分さを強く批判したと報じた。

    • プリミシアスは、アムネスティ・インターナショナルが3県における23名の失踪に関して、政府に対して透明性の確保と責任の明確化を求めたと伝えている。

アムネスティ・インターナショナルは、これらの事件がノボア政権による軍事作戦「フェニックス計画」に関連しており、国際法上の強制失踪に該当する可能性があると警告している。

2025年3月25日
「ロスリオス県検察庁前で失踪者の家族が抗議」

CDH代表フェルナンド・バスティアスは、14名の失踪者家族が軍の治安部隊の関与を告発し抗議していると述べた。
2024年の軍事パトロールに関連する失踪は16件で、特にロスリオス県で9件が報告されている。

2025年3月26日
「ババオヨ検察庁で失踪者の家族が抗議活動」

2024年1月9日から2025年2月までに27件の強制失踪が記録され、デイブ・ロールやフアン・サンティリャンも含まれている。家族らは事件解明を求め抗議している。

2025年4月10日
「紛争下の失踪児童:エクアドル内戦の犠牲者」

Plan V紙はCDHの記録として、2024年に沿岸部3県で軍事パトロールにより拘束・失踪した33名(うち7名未成年)を報じた。内訳はロスリオス17名、グアヤス10名、エスメラルダス6名である。

2025年5月9日
「強制失踪被害者家族が政府に透明性を要求」

CDH代表バスティアスは、軍の過剰な武力行使や市民治安の軍事化、内戦状態の不適切な利用が失踪の原因であり、すべての事件が検察で調査中であると強調した。

2025年5月9日
「エクアドルでの強制失踪に対し正義を求める抗議活動」

弁護士バスティアスは、2024年12月にグアヤキル県で軍関与の未成年4名失踪・殺害事件を強調。CDH支援の失踪件数は33件、国民擁護者報告の9件を加え40件超。軍統合司令部は「機密」を理由に捜査情報を拒否している。

2025年5月10日
「失踪者を求める抗議活動」

バスティアス弁護士は軍の情報非協力を批判し、透明性確保を求めている。

2025年5月11日
「命尽きるまで闘う」

CDHは紛争開始以来33件の強制失踪を記録。主にロスリオス県、エスメラルダス県、グアヤス県で多発している。
軍は情報提供を拒否しており、失踪者の家族は切実に真実を求めている。多くは報復を恐れ匿名希望である。

2025年6月5日
「『息子は私の仲間だった』:ロスリオスで20家族が強制失踪の被害を訴える」

エル・ウニベルソ紙によれば、20名の強制失踪がCDHにより調査中で検察に告発されている。
軍の関与が疑われているが、軍は当初否認し後に「拘束後すぐ解放」と主張。拘束中の連絡記録がない場合は強制失踪とされる。
国連委員会の保護措置もあり、迅速な調査と関与軍人の処罰が強く求められている。

2025年6月12日
「エクアドルの強制失踪:真実と正義を求める叫び」

CDHは2024年に33名が軍パトロールにより拘束・失踪したと発表。これは2025年4月までに登録された1000件超の一部。
被害者は多くが貧困層の35歳未満男性、7名が未成年。家族の多くは女性主体で真実を追求。被害多発地域はロスリオス、グアヤス、エスメラルダス。

2025年6月27日
「エクアドルの強制失踪:33件の告発中、裁判準備中は1件のみ」

CDHは33件の強制失踪を記録したが、裁判準備中はラス・マルビナス地区の未成年4人のみ。
ロスリオス17件、グアヤス10件、エスメラルダス6件。軍関与確認後、強制失踪に切り替えられた。
拘束は違法、警察協力なし、記録もない。拷問疑惑もあり、国連拷問禁止委員会が警告。
調査により裁判外処刑の可能性も示唆。国民擁護者はさらに9件を把握、合計42件となっている。

#強制失踪  #DanielNoboa

 

参考資料:

1. “Es una agonía cada día”: CIDH escucha testimonios de familiares de 33 desaparecidos en Ecuador
2. CIDH recibe denuncia de 33 desaparecidos en Ecuador durante el 2024
3. REPORTE DE DESAPARICIONES FORZADAS EN EL ECUADOR 10.04.2025

 



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