(Photo:CONAIE)
エクアドル先住民連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)は、2025年7月18日から20日にかけて、キト市内の「諸(先住民)プエブロ統合センター(Centro de Integración de los Pueblos)」で第8回全国大会(VIII Congreso Nacional)を開催する。
この会議では、2021年の第7回大会で選出されたレオニダス・イサ(Leonidas Iza)の任期終了に伴い、新たな全国議長の選出が最終日の20日に行われる予定である。イサは2021年6月、先住民族18民族および15の国民的集団から集まった1,000人以上の代表のうち821票を獲得し、CONAIEの代表として選出されていた。なお現会長であるイサが大統領決選投票(本人は第1回投票で落選)においてルイサ・ゴンサレス(Luisa González)を支持するとして表明したことは、組織内部で明白な不一致を引き起こしたことも事実である。
法的背景と代表決定に関する内部規定
CONAIEは、「第二級組織(organización de segundo grado)」として法的に設立されており、内部規約に基づく自治的な運営を行っている。組織規約では以下のように決められている:
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全国議長の任期は3年であり、全国大会(Congreso Nacional)にて選出される。
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組織構造は以下の3つの地域単位で構成されている:
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エクアドル・アマゾン先住民族連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas de la Amazonia Ecuatoriana:CONFENIAE)
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エクアドル・キチュア民族連合(Confederación de Pueblos de la Nacionalidad Kichwa del Ecuador/Ecuador Runakunapak Rikcharimuy:ECUARUNARI)
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エクアドル沿岸部先住民族連合(Confederación de Nacionalidades y Pueblos Indígenas de la Costa Ecuatoriana:CONAICE)
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代表の再選(連続任期)禁止。
候補者と主要論点
2025年7月18日時点で、以下候補者が立候補を表明している:
マルロン・バルガス(Marlon Vargas)
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出身組織:前アマゾン地域連合(CONFENIAE)会長、サラヤク・キチュア出身
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政治的傾向:現職路線の継承・レオニダス・イサに近い
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主要支持層:アマゾン地域(特にシュアル、アチュアル、キチュア)、対抗運動の継続を求める急進派
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立場・方針:
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資源開発(石油・鉱業)に対する全面的反対と先住民族領域の防衛
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闘争型の社会運動路線の継続
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政党パチャクティック(Pachakutik)との距離を保ちつつ、社会運動としてのCONAIEの独立性を強調
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FPIC(自由で事前の情報に基づく同意)を「不可侵の権利」として防衛
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- その他:
- 6月21日に開催されたアマゾン地域連合の大会において立候補を正式に承認された。
- 2019年と2022年の全国的な抗議行動においてイサと共に活動していた。
- 14日時点でECUARUNARIはマルロン・バルガス支持。これはECUARUNARIとして独自候補を擁立しないことによる。この結果、CONFENIAEの支持と併せて、バルガスは主要な2つの地域組織からの支持を得る形となった。
エルシリア・カスタニェダ(Ercilia Castañeda)
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出身地域:北部シエラのキチュア系共同体
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政治的傾向:非党派、地域基盤重視の草の根路線
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主要支持層:女性団体、地域の年長者評議会、青年運動、一部の非政党系活動家
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立場・方針:
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党派性よりも「領域の再生」と「自治の強化」が主軸
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Pachakutikとの明確な距離取り、CONAIEの政党化への批判
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ジェンダー平等や女性リーダーシップの拡大を強調
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「抵抗」から「再建」への転換を提唱(例:教育、保健、土地管理における自治制度づくり)
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- その他
- 地域基盤からの支持が強い
- インバブラ県オタバロで7月14日に開催された拡大評議会にて正式に決定された。
フェルナンド・グアマン(Fernando Guamán)
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出身組織:チンボラソ先住民族運動(Movimiento Indígena de Chimborazo:MICC)会長、プルハ(Puruhá)出身
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政治的傾向:穏健中道、政府との対話志向
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主要支持層:一部の山岳部組織、パチャクティック党内穏健派、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)政権と連携を模索する地域勢力
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立場・方針:
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対政府交渉路線の強化(教育予算、医療アクセス、農村開発に焦点)
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FPICは重視するが、「対話による実現」を提唱
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国家機関とのパートナーシップ構築(例:教育省・保健省との協定)
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CONAIEを「地域・経済開発の触媒」として再定義する姿勢
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- その他:
- 2025年4月13日の大統領選決選投票で現職大統領ノボアを支持した。
エルフレン・ナンゴ・ツェツェキプ(Efrén Nango Tsetsekip)
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出身組織:CONFENIAE所属、シウィアル(Shiwiar)出身
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政治的傾向:穏健的・構造改革志向
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主要支持層:
- シエラ南部およびオリエンテ地方のいくつかの草の根組織
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立場・方針:
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先住民族運動の内部改革
CONAIE内部の民主主義を重視し、再選の慣習を批判。世代交代による「新しいリーダーシップ」の必要性を訴える。規約に基づいた透明な選出を重視する。 -
環境と領土の保護
環境エンジニアの視点から、アマゾン先住民の土地と自然環境を守る方針を強調。石油・鉱業開発に対して慎重。若年時代のスピーチなどから、「人類の環境破壊がもたらす社会・政治・環境危機への対応」を訴えている。 -
草の根からの構築
シエラ南部やアマゾン地域の基層組織(comunidades de base)との連携を重視し、中央からのトップダウン的統治に批判的。 -
若者・次世代の登用
若年層の政治参加を重視し、「若者の声が無視されてきた」と指摘。CONAIEを若返らせる意志を表明。 -
政党との距離
特定政党に属さず、コレア派(Correísmo)や保守派との明確な距離を保ち、「運動の自律性」を尊重。CONAIEを政党政治から独立した組織として再構築しようとする立場。 -
対話志向と国際性
国際会議や青年気候フォーラムにも参加し、グローバルな視野で環境・先住民権を語る姿勢を持つ。先住民族の権利は国家の枠を越えて議論すべきとする。
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承認待ちの追加候補(2名):
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レオニダス・イサ(Leonidas Iza)
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現会長だが、規約上の再選制限をめぐり、再立候補を議会で検討中
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ゼナイダ・ヤサカマ(Zenaida Yasacama)
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現副会長、Pakkiru(Pastazaのキチュアコミュニティ)から推薦され立候補予定
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選挙結果の実務的影響と対象主体
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CONAIE内部
この選挙結果は、2025〜2028年期における組織の戦略的方向性を左右し、政府との対決または協調の姿勢を決定づける。 -
地域組織・加盟民族集団
新指導部は、代表権の配分や各地の要求事項の優先度に直接影響する。 -
国家政治
選出された代表は、ノボア政権との関係性において中核的な役割を果たすことになり、特に先住民族の権利、事前協議(Free, Prior and Informed Consent:FPIC)、教育の多文化主義、自律権の拡張などの議題で重要な発言力を持つことになる。
社会闘争と過去の指導者たち
これまでCONAIEの議長を務めた人物には、ルイス・マカス・アンブルディ(Luis Macas Ambuludí)、マルロン・サンティ(Marlon Santi)、ハイメ・バルガス(Jaime Vargas)、そして2025年6月29日に死去したアントニオ・バルガス(Antonio Vargas)などがいる。
同組織はこれまで複数の政権下で重要な社会闘争を主導してきた。最近では2022年6月に、当時のギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)政権に対する抗議運動を展開し、その中でイサは一時拘束された。また2019年には、レニン・モレノ(Lenín Moreno)政権による「政令883号」に抗議して大規模な動員を行った。さらに1990年には、ロドリゴ・ボルハ(Rodrigo Borja)政権に対し「インティ・ライミ蜂起」を主導している。
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参考資料:
1. Conaie tiene tres candidatos para elegir a su nuevo presidente
2. Conaie está lista para su Congreso de tres días donde definirá su rumbo y elegirá a su nuevo líder
3. Efren Chumbi Nango Tsetsekip (Ecuador)
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