人間と動物が特別な絆を結ぶ物語は、映画において繰り返し描かれてきたテーマである。特にペンギンは特別な位置を占めているようだ。ペンギンには陸上での不器用さと言うユーモラス、一方で水中での優美さを兼ね揃える。これらの特徴が、映画製作者を惹きつけ、優しさと深みを織り交ぜた物語の作成を可能とする。
監督のデヴィッド・シュルマンは、実話をもとに、漁師とペンギンのありそうもない友情を正直かつ感動的に描いている。ペンギンは何年も何千キロも離れた土地に友人を訪問するためにやってきた。
ジャン・レノが演じる主人公ジョアンは、悲劇に打ちひしがれた人生を送っていた。村の少女がディンディム (DinDim)と名付けたペンギンが現れたことで、彼の人生には変化がおとづれる。
悲しみから子供のような喜びまで感情の幅を見せているレノの演技はペンギンの交流を的確に伝えており、この映画の大きな功績のひとつである。本作品の最も印象的な特徴のひとつは、シュルマン監督がアニマトロニクスやCGIだけに頼らず、本物のペンギンを使ったことにある。監督によれば、ペンギンのシーンの80%は本物の動物を使って撮影されたそうで、これが映画に本物らしさと魅力を加えている。偉大な撮影監督アンソニー・ドッド・マントルが捉える鮮やかな夕日や広大な海の景色など、自然の美しさも本作に色を添えている。
『My Penguin Friend』は、アザラシと人間の若い友人の物語を描いた『アンドレ(Andre)』のような、人間と海洋動物のありそうもない友情に焦点を当てた他の映画の記憶を呼び起こすのは必至だ。シュルマン監督の映画は、動物が私たちの生活に、特に悲しみの時に、慰めと目的をもたらしてくれる能力を強調している。社会的期待や複雑な人間関係に左右されない人間関係の純粋さとシンプルさを思い出させてくれるからだ。
最初はペンギンが家に来ることに懐疑的だった妻マリアの変化も見逃せない。彼女が伝えるのはたとえ思いがけない生き物であっても、愛とつながりが深い傷を癒すことができるということである。
実話に基づく作品
ブラジルの引退したレンガ職人ジョアン・ペレイラ・デ・ソウザ(João Pereira de Souza)は2011年、マゼランペンギンと出会った。リオデジャネイロ州イリャ・グランデ市のプロベタ(Provetá)海岸でジョアンが彼の命を救ったとき、ディンディムは油まみれでほとんど動けず、栄養失調で、彼の死は避けられないように思えるほどだった。どうやら原油流出による汚染の犠牲になったようで、ベタベタした炭化水素に覆われてしまってた。ジョアンの献身的な看護のおかげでペンギンは海に帰れるほど回復したことから、ジョアンはペンギンを別の島に移動させた。これがペンギンとの別れのはずだった。
この出来事を世に広めた生物学者ジョアン・パウロ・クラジェフスキー(João Paulo Krajewski) が2016年のBBCのインタビューで語ったことによると、ディンディムは毎年2月頃、つまり南半球の夏にジョアンのビーチハウスを去り、毎年6月にブラジル人の友人と再会するために戻ってくると説明した。しかしこの行動は「とても考えられない」ものだった。
イスラ・グランデに住んでいたペンギンがパタゴニア、特にチリの海岸にたどり着くとは思えなかったからである。一方ディンディムのこの行動はマゼランペンギンの性質を考えると、あり得ない話ではない。マゼランペンギンまたはパタゴニアペンギンはアルゼンチンとチリのパタゴニア地方に生息し、通常、冬になると数千キロも北に移動し、暖かいウルグアイやブラジル南東部の海岸にやってくるからだ。もう一つの重要な点として博士が語るのは「ペンギンは夏を過ごす場所にとても忠実な傾向がある。繁殖期には、毎年同じ浜辺に戻り、毎年同じパートナーと同じ穴に巣を作る傾向がある。ほとんどの個体がそうである」ということ、そして「ディンディンはジョアンとプロベタのビーチで長い時間を過ごしたので、それが彼の心に残ったのだろう。彼はここが安全で、夏が終わると必ず行く場所だと学んだ」と言うことである。ディンディムは「ジョアンの近くではいつも落ち着いていて、快適で幸せに暮らしている。その逆もある。ジョアンも(ペンギンの)そばにいることで天国にいるような気分になる。これ以上の友情の定義があるだろうか」と博士は付け加えた。
ディンディムとジョアンは数年来の仲良しだったが、ペンギンは2017年にプロベタへの旅行をやめたと、メイソンは一部メディアに語っている。
他の映画作品等の情報はこちらから。
参考文献:
1. Crítica: Mi amigo el pingüino (My Penguin Friend)
2. “Mi amigo el pingüino”: la increíble historia de una amistad que conmovió al mundo y fue llevada al cine con el actor Jean Reno
作品情報:
名前: MY PENGUIN FRIEND
監督: David Schurmann
脚本: Paulina Lagudi Ulrich, Kristen Lazarian
制作国: Brazil, United States
製作会社:City Hill Arts, Content Studios
時間: 97 minutes
ジャンル:Kids & Family, Drama
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