エクアドル:気候変動による水不足と停電は水の提供まで困難にした

エクアドルにおけるエネルギー危機による停電は、経済、交通、健康、教育、そして2024年9月からはキトのいくつかの地区における飲料水の供給にも影響を及ぼしている。

Empresa Pública Metropolitana de Agua Potable y Saneamiento de Quito(Epmaps)は、昨年からエクアドルで大きな問題となっている電力不足の結果としての停電が水を提供する飲料水の供給にも影響すると述べた。これは水を供給するポンプシステムが電力で稼働することに起因する。川や泉、湿地帯などから汲み上げた水を「ポンプ」と呼ばれる大きな機械で押し上げる。そして、バルブが水の量と行き先を制御する。その後飲料水システムのパイプを通して、水は家庭、企業、学校などに届くようになっている。しかしポンプシステムは、グアプロのような市内の高い場所にあることから、そもそも組み上げることもままならない。

Epmapsは事前に提供スケジュールに基づき、影響の出るセクターで飲料水の供給が停止されると説明した。 Epmapsによると9月27日午後1時から9月28日夕方まで、キトの少なくとも100地区で飲料水の供給が停止される。

 

キト市内のいくつかの地区に給水しているプエンガシ飲料水処理プラントの取水源であるピタ川用水路が破損したのも、もう一つの飲料水供給停止の原因となっている。修理の間、水は「被害を受けた地域にタンカーで」配給されるとコミュニケは述べている。また、地域によっては完全に断水となるところもあるため、Epmapsでは断水が発生する前に、断水のタイムテーブルを確認することを勧めている。

国家緊急事態対策委員会(COE Nacional)は、2024年9月21日夜、65日以上雨が降らなかったため、全国24州のうち19州を赤色警報を出した。この日の委員会で議長を務めたイネス・マンサノ(Inés Manzano)環境・水・生態系移行相によると、この宣言は、水不足、森林火災の拡大、食糧安全保障の3つの理由から行われた。

エクアドルのエネルギー危機は、干ばつ、水力発電所の水位低下、コロンビアからのエネルギー輸入制限により、計画停電が始まった2023年10月以降に悪化した。

2023年末には一定の配給が行われていたが、2024年4月、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領によって電力部門の非常事態宣言が出され、状況はさらに悪化した。6月にはミラグロ-ゾライ送電線の故障により全国的な停電が発生した。2024年9月にも大規模停電が発生し、24州のうち14州が影響を受けている。これらの事象を受け、政府はより厳しい対策を実施し、一部の州では1日最大11時間の停電を行い、9月18日からは計画停電を実施した。猛烈な干ばつによる降雨不足は電力供給に大きな影を落としている。この国の発電システムの70%以上が水力に依存している。そのため、政府は水警報もまた出している。これは発電やエネルギー供給に不可欠な河川や水域の水位が、必要最低限度として設定された水位を上回ったり、下回ったりした場合に発令される。エクアドルでは、国立気象・水文研究所(Inamhi)などのデータをもとに、国家危機管理事務局(National Secretariat of Risk Management)がこれらの制限値を設定し、人々と環境を保護することを目的としている。

現在、エクアドルでは長引く干ばつのため、停電を避けるために必要な電力を発電するために、水力発電所のある地域の川の流量は平年をはるかに下回っている。沿岸工科大学(Escuela Superior Politécnica del Litoral:ESPOL)の海洋学コースのコーディネーターであるジョナサン・セデーニョ(Jonathan Cedeño)によると、例えば、水力発電所と同名の貯水池がある南部のマサルでは、8月の河川の流量は「毎秒30立方メートル」であった。

一方、9月には、同じ水力発電所に供給される河川の流量が「毎秒75立方メートル」であるべきところ、「毎秒20立方メートル」となっていた。つまり、水力発電所は通常使用する水量より70%も少ない水で稼働しなければならない状況に陥った。これは国の需要を満たすのに十分な電力を発電できていないことを表す。

セデーニョによると、政府が19の州で水警報と赤色警報を発令するに至った状況は、気候変動やエルニーニョ現象などの要因の影響を受けており、エクアドルや他の地域の国々では高温で乾燥した状態が続いているという。

政府によって発令された赤色警報がオレンジ色、黄色、緑色に変わるには、河川が通常の水量を回復する必要がある、とESPOLのミハイル・アリアス(Mijail Arias)土木工学研究教授は説明する。セデーニョは、9月末から10月初めにかけて、アマゾン地域と、水力発電所が多く立地するアンデアン間の路地で雨が降ることが予想され、河川の流量が増加し始めるだろうと説明する。

しかし、河川の流量が正常に戻り、水力発電所が需要を満たすために必要なエネルギーを生み出すためには、「2週間から4週間は雨が降り続かなければならない」。

河川流量の低下、降雨不足、干ばつによる水警報に対処するためには、短期的にいえばエネルギーの利用料を減らすしかない。長期的な対策としては、エネルギー源の多様化や電力インフラのメンテナンスの改善が必要となる。2024年6月や9月のような送電線やシステムの障害もまた、電力供給力不足の原因となっている。

ESPOLのアンドレス・ヴェラステギ(Andrés Velastegui)研究教授は、研究者や意思決定者がこれらのデータに直接アクセスし、「この国の水力発電地帯で何が起きているかをX線写真で把握し」、時間内に対策を講じることを可能にする気象ネットワーク(気候変数を定期的に測定・記録する観測所)を持つことも必要だと述べている。

このような状況下においてノボアは2024年9月28日、新法を通じ民間企業による発電量の増加に試みると発表した。これについてはソーシャルネットワーク上でも反対意見が噴出している。3つのパートに分かれたメッセージの中で大統領が緊急経済法プロジェクトと称して発表したのは、民間セクターが最大100メガワット(MW)のエネルギーを発電できるようにするということだった。1月にエネルギー競争力法を提出したノボアだったが、議会は民間部門のエネルギー発電に10メガワットという上限を設けるべきだとしていた。にも関わらずノボアは、「我々は再び主張しており、緊急経済法案を提示した」と述べている。

 

大統領が同時に述べた2つの事項はエクアドル電気公社(Corporación Eléctrica del Ecuador:Celec)の本部移転であり、それはクエンカからキトに移転させるという決断についてだった。また、古くなった大統領専用機(レガシーEMB-135BJ)の売却認可の廃止についてだった。彼が語ったのは、「過去の政権のようなチンバス・オークションを許可するつもりはない」ということであり、「メンテナンスからメンテナンスへ」となる機体であるため、「私たちエクアドル国民が拒否できないような売却のための良い提案を探していただきたい」としている。

今回の乾燥状態は60年間において最も酷いとされている。水不足は気候変動、さらには水力発電所のメンテナンスによる問題とも言える。この観点から行っても人為的災害だと言える。

#電力不足

参考資料:

1. La alerta hídrica, explicada
2. Estos son los horarios de los cortes de agua en Quito
3. Con nueva ley, Noboa quiere que empresas privadas aumenten la generación de energía en medio de cortes de luz

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