エクアドル:国連強制失踪委員会がエクアドルにおける強制失踪の傾向を審査

(Photo: United Nations)

スイス・ジュネーブにおいて、国連の強制失踪委員会(Committee against Enforced Disappearances:CED)は、エクアドルが強制失踪の防止、調査、被害者の捜索、さらに包括的な補償に関する義務をどの程度履行しているかを評価するため、同国政府に対する審査を実施した。この審査は、「すべての者を強制失踪から保護するための国際条約(International Convention for the Protection of All Persons from Enforced Disappearance)」の履行状況を確認する枠組みの中で行われており、国際的な監視のもとで行われている。

2026年3月12日、エクアドルはジュネーブで開催された委員会の審査に出席し、治安戦略の文脈における強制失踪の防止と人権尊重を確保するための措置を説明した。エクアドル代表団は、安全担当副大臣アンドレス・デ・ラ・ベガ(Andrés de la Vega)が率い、内務省の国内安全次官カリナ・アルゲジョ(Carina Argüello)が参加した。代表団には、国防省(Ministerio de Defensa)、内務省(Ministerio del Interior)、自由剝奪者国家対応庁(Servicio Nacional de Atención a Personas Privadas de Libertad)、および人権次官室(Subsecretaría de Derechos Humanos)など複数の政府機関の代表者が含まれている。

 

国連側が提示した懸念

審査の中で、国連側は強制失踪の増加や受刑者移送の手続き、さらには軍事情報の機密扱いについてエクアドル政府に対して説明を求めた。特に、カルメン・ロサ・ビジャ・キンタナ(Carmen Rosa Villa Quintana)報告担当委員は、強制失踪の事例や家族への通知を伴わない受刑者の移送、軍事情報の非公開などについて具体的な疑問を投げかけた。委員会は、エクアドルが失踪事件をどのように捜査し対応しているのかについて強い関心を示した。

委員会の専門家は、組織犯罪対策として実施されているフェニックス計画(Plan Fénix)についても情報提供を求めた。この計画はエクアドルの現在の治安政策の基盤となっているが、その詳細が公開されていないことについて疑問が呈された。委員会は、この戦略の基本方針が委員会や市民にアクセス可能であるべきだと指摘している。キンタナはまた、フェニックス計画が実在する文書であるのか、あるいは単なる構想に過ぎないのかを確認する必要があると述べている。また委員は、貧困地域での治安作戦における「人種的プロファイリング」の可能性や、非常事態宣言が長期間継続することが米州の法規範に反することについても懸念を示した。

審査では、ラス・マルビナス事件(Caso Las Malvinas)についても言及されている。この事件は、治安部隊の関与のもとで発生した強制失踪事件であり、エクアドル憲法裁判所はこれを違法であると認定し、国家に対して補償措置を実施するよう命じた。この事件では、4人の未成年者が軍に拘束された後に殺害されたことが問題視され、国際的にも大きな関心を集めた。

2025年12月8日、事件発生から1年を迎えた際、グアヤキル南部で遺族と人権団体が追悼の集会を行い、事件に対する国際的な関心が再び注がれた。

強制失踪委員会(CED)の専門家らは、エクアドル政府が行った組織犯罪対策において発生した人権侵害に関する申し立てについても懸念を表明した。非常事態宣言の反復的な発令や、国内治安任務における軍の関与が常態化している点も、委員会によって指摘された。

審査は2026年3月13日金曜日に続き、エクアドルにおける強制失踪事件の捜査体制や国家機関の対応について議論が行われる予定である。その後、強制失踪委員会(CED)は最終的な所見および勧告を公表することとなる。

 

人権団体による警告

エクアドルの人権団体であるグアヤキル人権擁護常設委員会(Comité Permanente por la Defensa de los Derechos Humanos de Guayaquil)もジュネーブで行われた強制失踪委員会(CED)の審査に直接参加している。同団体はこの事実を委員会にも報告しているのは、同国で発生している組織的な強制失踪の問題、つまり強制失踪は、軍関係者によって実行され、政府高官の認識のもとで行われているというものだ。

組織的な強制失踪と不処罰

グアヤキル人権擁護常設委員会は、エクアドル国家検察庁(Fiscalía General del Estado)の統計に基づき、強制失踪の被害者数がすでに51人以上に達していると指摘している。さらに、国防省が捜査に必要な重要情報の提供を「機密情報」を理由に拒否していることについても説明した。この情報提供の拒否は、構造的な不処罰を助長し、失踪事件の捜査における進展を妨げている状況を作り出しているとされている。

このような状況は、米州人権委員会(Comisión Interamericana de Derechos Humanos:CIDH)や国連強制失踪委員会(CED)が求めた緊急措置やハベアス・コーパス(habeas corpus)手続きに基づく司法命令が出されているにもかかわらず、依然として解決されていないという問題が指摘されている。

被害者家族への脅迫とスティグマ化

さらに、グアヤキル人権擁護常設委員会は、強制失踪の被害者家族に対する脅迫やスティグマ化が行われていると告発している。これらの行為は、すでに米州人権委員会(CIDH)によって暫定措置の中で認定されており、同委員会はエクアドル政府に対してこれらの問題を解決するよう強く求めている。しかし、エクアドル政府は現時点でその履行を行っていないとされ、被害者家族は依然として安全と正義の保証を得ていない状況に置かれている。

グアヤキル人権擁護常設委員会の指摘は、エクアドル国内における強制失踪問題が依然として解決されていないことを強調しており、国際社会からの圧力と監視が引き続き求められる状況である。

 

エクアドル、強制失踪防止に向けた取り組みを国連に報告

国際連合強制失踪委員会(CED)の審査に出席したエクアドル政府は、強制失踪防止のための進展と取り組みを報告した。代表団は、アンドレス・デ・ラ・ベガ安全担当副大臣が率い、カリナ・アルゲジョ内務省国内安全次官が参加した。

2007年以降の取り組み

アンドレス・デ・ラ・ベガ副大臣は、2007年以降、エクアドルが人権侵害や人道に対する罪を調査し、真相を解明するために設立した「真実委員会(Comisión de la Verdad)」について説明した。この委員会は、2010年に「真実なくして正義なし(Sin Verdad no hay Justicia)」という報告書を発表し、456人の被害者を記録している。その中で、17件が強制失踪に関する事例であったと述べた。

さらに、アンドレス・デ・ラ・ベガ副大臣は、「エクアドル共和国憲法(Constitución de la República)および関連する法律・規則は、すべての者を強制失踪から保護するための国際条約(International Convention for the Protection of All Persons from Enforced Disappearance)に規定された原則を反映している。なぜなら新しいエクアドル国家は人間をその中心に据えているからである」と強調した。

強制失踪防止に向けた国家政策

内務省のカリナ・アルゲジョ安全担当副大臣は、失踪事件における国家警察(Policía Nacional)および国家検察庁(Fiscalía)における対応手順や司法手続きについて説明した。

また、エクアドルは強制失踪に対抗するため、「生命犯罪・暴力死・失踪・恐喝・誘拐対策国家局(Dirección Nacional de Delitos Contra la Vida, Muertes Violentas, Desapariciones, Extorsión y Secuestros:DINASED)」を設立したと説明している。この部局は、強制失踪を含む暴力犯罪への対応を専門とし、全国規模で分散配置された警察人員を活用して捜査を行う。さらに、専門的な捜査官や人骨捜索チーム(警察犬含む)を配備し、迅速な捜査を進めるための装備を備えている。

その上で、エクアドル代表団は、強制失踪防止に向けた自国の戦略を強調し、人権保護への無条件のコミットメントを再確認した。

エクアドル代表団の団長で国防省法律顧問であるレオナルド・アルメイダ(Leonardo Almeida)大尉は、エクアドル政府が人権の促進と保護、ならびに国際的な義務の履行に対して「無条件のコミットメント」を維持していると述べ、同国が強制失踪を防止するための法的および運用上の枠組みを強化していることを強調した。

アルメイダは次のように説明した。「エクアドル軍は、世界的な監視の下で責任を果たしている。我々は、人権侵害を防ぐために必要に応じて人員の制度整備と訓練を行う準備がある。」

アルメイダの説明によると、エクアドル政府は非常事態宣言の状況においても治安体制を強化しており、今後さらなる措置を取る可能性を排除していない。しかし、国家としての基本的方針はあくまで人権を尊重し、強制失踪を防ぐことに注力していると述べた。

市民協力の呼びかけと成果

エクアドル政府は、失踪者に関する情報を市民から提供してもらうための広報活動を行っていると説明した。内務省は、失踪者の発見を支援するためのキャンペーン「私たちは彼らを見つける手助けをする(Ayudamos a Encontrarlos)」を展開しており、このキャンペーンは国内の主要メディアで失踪者の写真や個人情報を公開する形で実施されている。

このキャンペーンでは、市民が確かな情報を提供した場合、最大20万ドルの報奨金が支払われる仕組みが設けられており、市民の協力を促進している。この報奨金制度により、失踪者に関する通報の94%が解決に繋がったと報告されており、警察の迅速な対応が評価されている。

エクアドル警察による迅速な捜査により、17,230件の通報のうち、16,247件が解決され、残りの案件についても引き続き捜査が行われている。政府は、これらの取り組みを通じて、失踪者の早期発見と解決に向けた努力を続けていると強調している。

強制失踪の被害者への補償法

エクアドル政府は、強制失踪の問題に対して、2007年から政治的な取り組みを開始した。この取り組みの一環として、2013年には「被害者補償法(Ley de Reparación a las Víctimas de Desapariciones Forzadas)」が制定され、強制失踪の被害者およびその家族には法的な補償が提供されるようになった。この法律は、被害者の権利を守り、失踪の犠牲者に対して公正な処遇を保証する重要な枠組みとなっている。

エクアドルでは、強制失踪が多発している国ではないものの、政府はこの問題に対して積極的に取り組んでいると言う。特に人権問題への意識が高まり、強制失踪の防止策の強化とともに、被害者やその家族への支援体制が整備されてきた。政府は、強制失踪を防ぐための法的枠組みを強化し、また被害者支援を手厚くするためにさまざまな施策を導入している。

捜査の重要性と家族の協力

生命犯罪・暴力死・失踪・恐喝・誘拐対策国家局(DINASED)の失踪者対策部門責任者であるリチャード・コエジャル(Richard Coellar)大佐は、失踪事件の解決において家族の協力が不可欠であると強調した。コエジャル大佐は、家族が提供する情報が捜査の進展において重要な役割を果たすと述べ、捜査の全過程において家族が関与する必要性を訴えた。家族の協力を得ることで、より迅速で効果的な解決が可能となるとされている。

失踪事件の捜査は、国家検察庁が主導して行っており、検察が捜査の指導的な役割を担っていることが強調された。捜査の過程で警察官が関与する場合には、検察が警察の支援を受けない方針を採ることが明言されている。これにより、捜査の透明性や公正性が保たれることが期待されている。

 

パウロ・デ・タルソ委員、フェニックス計画の実態を疑問視

強制失踪委員会(CED)の報告担当委員であるパウロ・デ・タルソ(Paulo de Tarso)は、エクアドル政府が実施しているフェニックス計画(Plan Fénix)が実際に存在する文書なのか、それとも単なる構想に過ぎないのかを確認する必要があると強調した。タルソ委員は、この計画がエクアドルの治安戦略の中で重要な位置を占めているとされているが、その詳細な内容が明らかにされていないことに疑問を呈し、計画の具体的な実態を知る必要があると述べた。

タルソ委員はまた、エクアドルの刑務所制度に関しても質問をし、特に刑務所内での結核の流行に懸念を示した。彼は、刑務所内での衛生状況や病気の拡大を防ぐための改善措置が必要だと指摘した。さらに、ラス・マルビナス事件(Caso Las Malvinas)を挙げ、これがエクアドルにおける強制失踪問題の深刻さを示す事例であることを強調した。この事件では、治安部隊によって4人の未成年者が失踪状態に置かれ、その後殺害された。

タルソ委員は、貧困地域での治安作戦において人種的プロファイリングが行われている可能性にも懸念を示した。治安活動が貧困層をターゲットにしており、その結果として特定の人種的・社会的グループが不当に扱われる危険性があると指摘した。この問題が拡大すれば、人権侵害がより深刻な問題となる恐れがあるため、エクアドル政府に対して適切な対応を求めた。

最後に、タルソ委員が懸念を表明したのは非常事態宣言の継続である。米州の法規範では、非常事態の長期継続を禁じており、エクアドルの非常事態宣言が常態化していることに対して、継続的な監視と改善が求められると指摘した。

Photo:Carlos Noriega / AP

 

エクアドル政府、強制失踪対策と人権保護に関する戦略を擁護

エクアドル代表団の団長であるレオナルド・アルメイダ大尉は、エクアドルが人権の促進と保護、国際的義務の履行に対して「無条件のコミットメント」を維持していると強調した。彼の説明によれば、同国は強制失踪を防止するための法的枠組みと運用上の体制を強化してきたという。

特に、非常事態宣言の発令時に強化される体制についても言及し、「今後、さらなる人権侵害を防ぐための新たな措置を取る可能性がある」と述べ、エクアドル政府の強い意図を示した。アルメイダは、「エクアドル軍は世界的な監視の下で責任を果たしている」とし、人権侵害を防ぐために必要な制度整備と訓練を行う準備が整っていると語った。

アルメイダはまた、特定の失踪事件においてエクアドル軍が関与した疑いがあることにも言及している。具体的には、マリア・フェルナンダ(María Fernanda)、フスティン(Justin)、マイコル(Maikol)という人物の失踪事例を取り上げ、これらの事例に関しては現在も調査が行われていると報告した。アルメイダは、「国家の政策は強制失踪を促進するものではない」と強調し、拘束が特定の人種をターゲットにしているとの誤解を排除した。

軍の介入と治安戦略

エクアドル軍の介入が治安回復と組織犯罪との闘いにおいて必要不可欠であると説明するアルメイダは、その介入は、公共秩序を維持し、治安を改善するために欠かせないものであると強調した。アルメイダによると、軍の役割が特に組織犯罪との闘いにおいて重要であり、公共秩序の回復に貢献している。

エクアドル政府は、2022年に施行された「正当な武力行使を規制する組織法(Ley Orgánica que regula el uso legítimo de la fuerza)」に基づき、軍や警察による武力行使に関するガイドラインを定めている。この法規は、治安機関が人権を尊重し、適切に行動するための枠組みを提供しており、エクアドル政府はこの法律に基づいて、軍や警察が適切に行動することを保証していると述べた。

ゼロ・トレランス政策と人権教育

ゼロ・トレランス方針は、軍や警察内での人権侵害を未然に防ぐための重要な施策として強調された。ゼロ・トレランスとは、軽微な違反や問題行動であっても一切の例外なく、厳格に罰則を適用する「不寛容」な指導・管理方針を言う。人権侵害が疑われる軍人に対しては法的支援を提供しない方針を明言したアルメイダによると、これにより人権保護の強化につながる。

アルメイダはまた、2024年から2025年にかけて、数千人の治安機関職員を対象に、人権および武力行使に関する研修プログラムが実施されたことを報告した。この取り組みは、治安機関の職員が法の枠組みと人権保護に基づいて行動するための教育の一環として行われ、継続的な教育が重要であると強調された。

これらの措置を通じて、エクアドル政府は強制失踪を防止し、人権を尊重する体制を構築し、法的枠組みを強化していく方針を示している。

 

失踪事件の現在の状況

エクアドルにおける失踪事件に関する報告によると、30,096件の失踪者のうち、26,321人は生存して発見され、1,627人は死亡した状態で発見された。現在も捜査中の案件は2,148件に上り、引き続き警察と関連機関による調査が行われている。

エクアドル保健省(Ministerio de Salud)によれば、2025年にエクアドルでの結核による死亡が127%増加したと報告されている。この増加は医療体制や社会的な課題が影響していると考えられている。

一方、グアヤキルに拠点を置く人権擁護常設委員会が指摘するように現政権下で少なくとも51件の強制失踪被害が記録されている。このような主張は、ダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領の政権の治安政策に関する疑問を提起している。ジュネーブで行われた会合では、強制失踪に関する公式統計が発表され、2024年に27件、2025年に7件の強制失踪事件が報告されていることが確認された。

 

国連の強制失踪委員会(CED)は、エクアドル政府との対話を通じて、国際条約の履行状況を評価している。この対話は2026年3月13日にも継続される予定であり、その後、強制失踪委員会(CED)はエクアドル政府に対する最終的な所見および勧告を発表する予定である。

強制失踪問題はエクアドル国内で深刻な課題となっており、国際社会からの監視と評価が引き続き重要な意味を持っている。

 

3月12日(木)エクアドル時間:08:00|ジュネーブ時間:15:00

 

3月13日(金)エクアドル時間:08:00|ジュネーブ時間:15:00

#DanielNoboa #PlanFenix #CIDH #IACHR #DINASED #強制失踪

 

参考資料:

1. Ecuador participa en el Comité Desapariciones Forzadas de la ONU
2. Comité contra la Desaparición Forzada
3. Comité de la ONU examina a Ecuador por desapariciones forzadas y emite alerta por toque de queda
4. Defender los Derechos del Pueblo, es Defender los Derechos humanos.

 

 

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