メキシコ:ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンの首領エル・メンチョ死亡で全国的に混乱

(Photo:Armando Solis / AP)

メキシコ国防省(Secretaría de la Defensa Nacional de México)は、ハリスコ州で実施された治安作戦により、ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン・カルテル(Cártel Jalisco Nueva Generación:CJNG)の指導者ネメシオ・オセゲラ・セルバンテス(Nemesio Oseguera Cervantes)、通称エル・メンチョ(El Mencho)が死亡したことを確認した。

作戦は、中央軍事情報局(Inteligencia Militar Central)が長期間にわたりエル・メンチョの側近を追跡し、先週土曜日に首領に関係する女性の移動をタパルパ市(Tapalpa)で確認したことを受けて計画された。作戦は日曜日未明に開始され、陸路・空路で特殊部隊(Fuerzas Especiales del Ejército)、空軍(Fuerza Aérea)、国家警備隊即応特殊部隊(Fuerza Especial de Reacción Inmediata de la Guardia Nacional)が展開した。米国当局は二国間協力の枠組みで情報提供を行なった。

作戦中、指導者の警護員は「非常に激しい攻撃」を仕掛けたが、精鋭部隊はこれを撃退したと言う。この戦闘では8人の容疑者が死亡した。エル・メンチョと側近はキャビン複合施設から森林地帯に逃走したが、再度の包囲戦で首領と2人の護衛が重傷を負った。軍の医療チームが現場で応急処置を行い、ヘリコプターでメキシコシティ(Ciudad de México)に搬送したものの、3人は搬送中に死亡した。作戦中には、ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)の構成員2名も逮捕され、多種の武器や装甲車両が押収された。その中には航空機を撃墜可能で、高い装甲を貫通できるロケットランチャーも含まれていた。

「鶏の支配者(Señor de los gallos)」とも呼ばれるエル・メンチョの死亡は、15年以上にわたりハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)を率いた首領の排除を意味するとともに、全国20州におけるハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)の他の細胞による激しい反応を引き起こした。作戦後数時間で少なくとも21件の道路封鎖が確認され、暴動や車両・商店への放火も発生した。チアパス州(Chiapas)ではOXXO店舗や車両への放火、ボチル市(Bochil)では公共交通機関の車両への攻撃、トゥストラ・グティエレス(Tuxtla Gutiérrez)では店舗への侵入・略奪・放火が報告されている。

国内各州で道路封鎖や武装衝突が発生し、当局の報告では警官、官公庁職員、容疑者を含む60人以上が死亡した。戦闘中には3名の軍人も負傷し、緊急治療のためメキシコシティの医療施設に搬送された。メキシコ当局は住民に対し、不必要な移動を避け、安全な場所に避難し、未確認情報を拡散しないよう呼びかけ、ハリスコ州では予防措置として学校や公共イベントの一時中止も実施された。

首領の排除は、ハリスコ州における麻薬関連の道路封鎖や暴力事件を引き起こし、他州にまで拡大した。国防省は治安強化のため、中央部および周辺地域から陸軍と国家警備隊の増援を派遣した。連邦検察庁(Fiscalía General de la República:FGR)のエルネスティナ・ゴドイ・ラモス長官(Ernestina Godoy Ramos)は、作戦に関連して「必要なすべての検察および鑑定手続きを実施する」とSNSで発表した。国家の行動は法の遵守へのコミットメントを再確認するものであり、陸軍の活動は安全保障会議と連携して行われたことも評価された。「法の枠内での制度的対応は法治を強化する。正義は選択ではない」と強調された。

夜間には、組織犯罪専門検察局に国家警備隊の護衛付きで法医学サービスの救急車が到着している。非公式情報によれば、オセゲラ・セルバンテスおよび他の排除されたハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)構成員の遺体が搬送され、法定の死体解剖が行われる予定である。

 

メキシコ最重要指名手配者「エル・メンチョ」

米国務省(Department of State, Estados Unidos)は2024年12月4日、ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)の首領エル・メンチョに対する懸賞金ポスターを配布した。捕獲につながる情報提供には1,500万ドルが提供され、画像にはフェンタニルなどの規制薬物密輸で指名手配中であることが記載されていた。メキシコの組織犯罪の歴史において、長く記憶される名前はごくわずかである。その中の一人がネメシオ・オセゲラ・セルバンテス、通称エル・メンチョであった。

 

ミチョアカン(Michoacán)州西部の農村出身であった彼は、現代メキシコで最も恐れられ、危険視されるカルテルの一つ、ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)の頂点に昇り詰めた。その過程は猛烈で、攻撃性、野心、残虐性、冷酷さによって成し遂げられた。

メキシコ軍にとって、カルテルの指導者が排除されたことで、理論上、少なくとも一時的には彼が率いた犯罪組織の力は弱体化することになる。しかし、エル・メンチョの配下による反応は迅速であった。道路封鎖が行われ、暴力が太平洋沿岸のゲレロ(Guerrero)州から北東部のタマウリパス(Tamaulipas)州まで、最大で8州に広がった。首都メキシコシティや周辺のメキシコ州(México)でも事件が発生している。

ハリスコ州では、最も激しい暴力が発生している。州都グアダラハラ(Guadalajara)では覆面の武装集団が店舗に放火し、ビーチリゾートのプエルト・バジャルタ(Puerto Vallarta)では観光客や地元住民が暴力の波が過ぎるまで避難するという事態となった。

こうした行為は、エル・メンチョの下部組織員による忠誠の表れであり、指導者を排除した当局に対する抗議でもある。道路封鎖や放火が単なる見せしめなのか、それとも暴力がさらに拡大するのかは、今後数日で明らかになると見られ、法執行機関の対応が極めて重要となる。

エル・メンチョは1980年代に米国に不法移民として渡り、出身州ミチョアカン(Michoacán)のマリファナ畑で最初の犯罪経験を積んだ。その後カリフォルニア州(California)で麻薬犯罪に関与し、複数回逮捕された末、数年間の刑務所刑を受けた。30歳でメキシコに強制送還されると、母州ミチョアカンを拠点とするミレニオ・カルテル(Milenio Cartel)に加わり、冷酷で計算高いボスとして地位を確立した。

カルテルが分裂した際、残党からハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)が誕生し、エル・メンチョが指導者に就任した。領土拡大と新たな違法活動への柔軟な転換を通じて、ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)はメキシコの支配的な犯罪勢力の一つに成長した。彼の指導下で、ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)はシナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)の首領ホアキン・“エル・チャポ”・グスマン(Joaquín “El Chapo” Guzmán)の米国送還後の権力空白を利用し、フェンタニル取引を掌握するなど急速に勢力を拡大した。

エル・メンチョの排除は、メキシコのクラウディア・シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領政権にとって国内での勝利とみなされ、米国でも評価される見込みだ。これは、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がメキシコに対しフェンタニル取引などの麻薬犯罪対策を要求してきた成果としても位置づけられる。米国の情報機関が作戦に関与していた可能性も指摘され、シェインバウム政権はワシントンと協力して同じ目標を追求する姿勢を示している。この協力体制は、共和党やトランプ政権内で議論されていた、メキシコ国内での無人機攻撃や地上部隊派遣といった単独軍事行動を阻止する上でも重要とみられる。

国際的な犯罪組織においては、首領の死亡後も複数の有力副官が控えており、後任体制が整っていることが常識である。そのため、エル・メンチョ不在下でのハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)の暴力は当面続く可能性が高い。すでに国内各地でカルテル構成員による放火や道路封鎖が発生しており、治安回復には法執行機関の迅速かつ厳格な対応が求められる。ハリスコ州とその周辺地域では、観光客や地元住民の安全確保が最優先課題となっている。

 

グアテマラ、メキシコ国境での監視を強化

メキシコでの治安作戦に伴う封鎖・放火・武装攻撃の報告や、麻薬組織エル・メンチョの死亡に関する情報を受け、グアテマラ軍は国境地帯での警戒態勢と監視活動を強化した。これは、地域の安定と安全を脅かす可能性のある事態を未然に防ぎ、迅速に対応するための予防的措置である。

グアテマラの国防大臣エンリ・サエンス(Henry Sáenz)は、政権発足当初から、国境での軍の展開と監視を恒常的に強化するため、「火の帯(Cinturón de Fuego)作戦」を実施していると説明した。作戦は特にサン・マルコス(San Marcos)州とウェウェテナンゴ(Huehuetenango)州に重点を置き、非公認の通過点での監視も強化している。今回の警戒強化は、この恒常的な枠組みを活用して行われたものである。

 

加えて、グアテマラ当局はメキシコ国防省との即時連絡体制を強化し、国境地帯の重要箇所には軍事情報チームを増員した。これにより、憲法上の任務である領土の主権と完全性を守るため、国境線での恒常的な軍展開と戦略的監視が維持されている。

グアテマラ国家警察(Policía Nacional Civil:PNC)も、メキシコの組織犯罪による攻撃や不規則な動きに備え、警戒態勢を継続している。日曜日にメキシコで発生した事件以降、国境地域の部隊は警戒態勢に入り、昨年12月に同地域で報告された武装集団の侵入以降、パトロールは途切れることなく続けられているという。

外務省(Ministerio de Relaciones Exteriores:MINEX)は、メキシコのハリスコ、コリマ(Colima)、グアナフアト(Guanajuato)、ミチョアカン州での騒乱に対応し、グアテマラ領事ネットワークによる常時監視を維持している。特にサン・ルイス・ポトシ(San Luis Potosí)総領事館はあらゆる事態に注意を払っており、現時点で被害を受けたグアテマラ国民の報告はない。一方グアテマラ国民には、メキシコ滞在中や通過時に注意を払い、不必要な移動を避け、公式情報のみを参照するよう呼びかけている。

#CJNG

 

参考資料:

1. Gobernación y Ejército refuerzan vigilancia por violencia en México tras operativo contra “El Mencho”, cabecilla del CJNG
2. En gráficos: las fases de la operación del Ejército de México contra “El Mencho”
3. Golpe histórico al ‘CJNG’: abate el Ejército a ‘El Mencho’
4. Who was El Mencho, Mexico’s most wanted man?

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