(Photo:NATI SHOHAT/FLASH90)
イスラエル競争庁(Israel Competition Authority)は、国営航空会社エル・アル・イスラエル航空(El Al Israel Airlines)が、ガザ戦争の期間中に過度かつ不公正な航空運賃を設定していたとして、1億2,100万シェケル(約3,900万ドル)の罰金を科す方針を明らかにした。これは、同国の競争法で認められている上限額に相当する。
競争庁の発表によると、調査対象期間中、エル・アルは運航する53路線のうち38路線で実質的な独占状態にあったと認定された。航空券価格は平均で16%、一部路線では最大31%上昇しており、競争環境を欠いた状況下で価格が不当に引き上げられたと判断された。
調査は、ガザ戦争が始まった2023年10月7日から2024年5月までの約7か月間を対象に実施された。この期間、多くの国際航空会社が安全上の理由からイスラエルへの運航を停止しており、エル・アルが国内外の航空輸送を事実上掌握する状況が続いていた。
競争庁は、エル・アルがこうした支配的地位を利用し、戦時下という特殊な環境の中で異常に高い運賃水準を維持していたと結論づけている。
ただし、この罰金は現時点では確定していない。今後、正式な審理を経て最終判断が下される予定で、罰金が確定した場合、その全額は国家財政に組み入れられる。
これに対し、エル・アル側は声明を発表し、戦争という非常事態の中で「過剰な価格設定を行ったとの指摘は事実ではない」として、競争庁の認定を全面的に否定しており、審理の場で強く反論する構えを見せている。
競争当局の調査結果とエル・アルの反論
イスラエル競争庁は、2023年10月7日から2024年5月までを調査対象期間とし、エル・アル・イスラエル航空が運航していた53路線のうち、38路線で実質的な独占状態にあったと認定している。
対象路線には、ニューヨーク、ロンドン、パリ、バンコクをはじめ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの主要都市が含まれる。調査期間中は、多くの外国航空会社が安全上の理由からイスラエルへの運航を停止しており、競争庁は、この状況下でエル・アルが市場支配力を握っていたと結論づけた。
競争庁によると、同期間の航空券価格は平均で16%、一部路線では最大31%上昇していた。同庁は、こうした価格動向について、支配的地位を背景にした過度かつ不公正な運賃設定に該当すると判断し、法執行措置を正当化できるとの見解を示している。
また、証拠分析の結果、一部の外国航空会社が段階的に運航を再開した後も、航空運賃は低下しなかったと指摘した。多くの消費者が欠航のリスクを回避するため、運航の安定性が高いとみられたエル・アルの航空券を選好したことが、価格維持につながったとしている。
競争庁はさらに、「過剰な価格つり上げ(excessive price gouging)」の認定は、世界の競争当局においてもまれであり、極めて慎重に用いられる判断基準だと説明した。その上で、今回の事案は、その厳格な要件を満たすと結論づけている。
調査期間中には、イスラエルの小規模航空会社であるアルキア航空(Arkia)およびイスライル航空(Israir)も運航を継続していたが、競争庁は、路線網や輸送力の規模から、エル・アルに対する実質的な競争圧力にはなり得なかったとみている。
これに対し、エル・アルは、戦時中に過剰な価格設定を行ったとの指摘を全面的に否定した。声明では、「仮に競争庁が示す平均16%の価格上昇という前提を受け入れたとしても――この数値自体、当社は誤りだと考えているが――その程度の上昇を過剰価格と認定した前例は存在しない」と主張している。さらに、「今後の審理およびすべての適切な法的手続きの場で、当社の立場を全面的に示す」と述べ、判断に対して反論する姿勢を明確にした。
一方、競争庁は別の声明で、移動の自由、すなわちイスラエルに出入りする権利は基本的人権であると強調した。その上で、「戦時下においてこの権利の重要性は極めて大きく、とりわけ戦闘初期の数か月間、消費者は不可欠な航空輸送サービスについて、ほぼ完全にエル・アルに依存する状況に置かれていた」と指摘している。
こうした状況の中、エル・アルは2024年に過去最高となる5億4,500万ドルの純利益を計上し、前年からほぼ5倍に拡大した。売上高も34億ドルと過去最高を更新し、前年比で約37%増加した。さらに2025年最初の9か月間においても、3億6,410万ドルの利益を計上している。
競争庁は、同社の好業績の主因として、北米路線における圧倒的な支配力を挙げている。同路線では市場シェアが97.5%に達し、外国航空会社の運航停止を背景に、搭乗率は96%という極めて高い水準に達していた。
こうした収益動向を受け、多くの乗客や消費者団体からは、エル・アルが戦時下の特殊な状況を利用して価格をつり上げたのではないかとの批判が強まっている。
エル・アル、世界9都市への新規路線を発表
こうした状況の中、エル・アル・イスラエル航空は2月8日(日)、世界9都市への新規路線を開設する計画を発表した。新規就航地には、ベトナムの首都ハノイ、韓国の首都ソウル、フィリピンの首都マニラへの直行便が含まれている。
また、同社の子会社であるサン・ドール(Sun d’Or)は、シチリア島カターニア、サルデーニャ島カリアリ、バーゼル、ザグレブ、ドゥブロヴニク、コペンハーゲンへの直行便を運航する予定だ。
これらの新路線は、2026年から2027年にかけて段階的に開設される。エル・アルは声明で、「過去約3年間、アジア、北米、ヨーロッパの主要都市に焦点を当て、イスラエルを世界につなぐ航空ハブとしての役割を拡大してきた。今後は次の成長と拡大の段階に移行する」と説明した。
ハノイ、ソウル、マニラの各路線は、いずれも週3便での運航を予定している。同社は、これらの路線について「観光需要に応えるだけでなく、ビジネス利用にも適しており、イスラエルとアジア諸国との経済的結びつきを強化する」としている。
さらに、直行便の運航に加え、複数の航空会社との提携を通じて、アジア各地の追加都市への乗り継ぎ便の提供も行う方針だ。
エル・アルとサン・ドール、新規路線の詳細
新路線は、エル・アルの最新鋭機ドリームライナー(Dreamliner)を使用して運航される。機内サービスは、エコノミー、プレミアム、ビジネスクラスの3クラスが提供される。
- ハノイ行き:2026年10月運航開始、チケット販売は日曜日午後に公式サイトおよび旅行代理店で開始。往復運賃は899ドルから。
- ソウル行き:2027年3月運航開始予定で、チケット販売は5月開始予定。
- マニラ行き:販売開始日は後日発表。
エル・アルは、東アジア路線の拡大に加え、子会社サン・ドールが近距離レジャー路線を刷新・追加しており、今回6都市の新規路線を発表した。直近ではザルツブルク、ナポリ、ヴァルナへの路線も開設済みである。
- イタリア:シチリア島カターニア、サルデーニャ島カリアリ
- スイス:バーゼル
- クロアチア:ザグレブ、ドゥブロヴニク
- デンマーク:コペンハーゲン(2001年以来の復活)
往復運賃の目安は以下の通り:
- サルデーニャ・クロアチア路線:339ドル
- シチリア路線:389ドル
- バーゼル路線:439ドル
- コペンハーゲン路線:529ドル
サン・ドールの新規路線チケットも、日曜日よりエル・アル公式サイトおよび旅行代理店で販売開始される予定である。
エル・アルの路線拡大と運航強化
エル・アルは新規路線の開設に加え、既存の主要路線で運航便数を増便し、需要の高い路線でのサービスを強化している。
- 北米路線:史上最大規模の運航スケジュールで、週最大55便を運航予定。
- 極東路線:日本へ週最大5便、タイへ週16便を含む増便を実施。
- ヨーロッパ主要路線でも運航便数を拡大。
全体として、エル・アルは今後、世界で週約900便を運航する体制となる見込みだ。路線ネットワーク拡大と成長戦略の深化の一環として、国際的な大手航空会社との追加提携も発表される予定で、これにより、より便利で柔軟な乗り継ぎの実現や、目的地の選択肢拡大、同社のグローバルプレゼンス強化を目指すとしている。
一方、子会社サン・ドールに加え、ハンガリーの格安航空会社ウィズ・エア(Wizz Air)も、イスラエルとシチリアを結ぶ直行便の開設を進めている。ウィズ・エアは、イスラエルから西シチリアの州都パレルモ(Palermo)への直行便を、7月27日から週3便(月・水・土)で運航する予定で、片道運賃は149シェケルから販売されている。
この新路線は、約2週間前に就航したカターニア線に続くもので、これにより、イスラエルとイタリアを結ぶ直行路線は計6路線に拡大することになる。
参考資料:
1. Israeli antitrust body to fine El Al $39 million for price gouging during war
2. El Al faces record $39 million fine for wartime price gouging
3. Shiny new destinations: El Al announces 9 new routes

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