ジョージ・クルーニー(George Clooney)監督による作品『ミケランジェロ・プロジェクト(原題:The Monuments Men)』は、第二次世界大戦末期にドイツに入り、ナチスによって盗まれた美術品を救出する連合軍の7人の「モニュメンツ・メン(Monuments Men)」小隊の活躍を描いている。映画は、実在の「モニュメンツ・メン」に基づいており、13か国から集まった300人以上の男女が協力して略奪された文化財を保護・回収した。隊員には美術館館長から建築家まで様々な職業の人々が含まれ、最終的にナチスにより略奪された500万点以上の芸術・文化財が正当な所有者や遺族に返還された。
アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)はナポレオン以降最も熱心な美術コレクターであり、彫刻、絵画、記念碑などを征服した国から略奪する形で収集した。古代美術の一部はオーストリアの故郷リンツ(Linz)の美術館に展示する予定であったが、現代美術、特にユダヤ人の作品は焼却される運命にあった。戦争末期、第三帝国の支配が終わろうとする中、ドイツ軍最高司令部は「ネロ勅令(Nero Decree)」を発布し、ヒトラーが死んだ場合、ナチスが盗んで隠したすべての美術品を破壊することを命じた。
フランクリン・ルーズベルト(Franklin Roosevelt)は、ヒトラーやドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)とは異なり、美術品の価値を重んじた。ヒトラーのヨーロッパでの略奪を防ぐため、ルーズベルトと連合国は「モニュメンツ・ファイン・アーツ・アーカイブ(Monuments, Fine Arts and Archives:MFAA)」を設立した。美術館学芸員や美術史家が従事し、ドイツ軍が侵略した国々や自国のユダヤ市民から盗まれた美術品を取り戻し、保護する任務を担った。365人のMFAA英雄たちにより、多くの美術品が救われ、正当な所有者やその遺族に返還されたのである。
映画では、ジョージ・クルーニー演じるフランク・ストークス(Frank Stokes)らが、戦争による破壊やナチスによる略奪から貴重な美術品を救出する特別軍事部隊を監督する。米国人同僚たち――ビル・マーレイ(Bill Murray)演じるリチャード・キャンベル(Richard Campbell)、ボブ・バラバン(Bob Balaban)演じるプレストン・サヴィッツ(Preston Savitz)、ジョン・グッドマン(John Goodman)演じるウォルター・ガーフィールド(Walter Garfield)――は、兵士としてではなく学者として育てられた人物である。さらに、フランス・レジスタンスのジャン・デュジャルダン(Jean Dujardin)演じるジャン=クロード・クレルモン(Jean-Claude Clermont)と、ヒトラーから逃れアメリカに渡ったディミトリ・レオニダス(Dimitri Leonidas)演じるユダヤ人の若者サム・エプスタイン(Sam Epstein)が加わる。
本作はロバート・エドセル(Robert Edsel)とブレット・ウィッター(Bret Witter)の著作を基にしており、クルーニーは中年の知識人グループが米軍の規則をかいくぐりながらヨーロッパ文化を救う様子を映画化した。脚本はグラント・ヘスロヴ(Grant Heslov)と共同で軽く脚色され、語り口は控えめかつ逸話的である。登場人物たちはフランス、ドイツ、ベルギーを駆け回り、ピカソ、マティス、ミケランジェロのマドンナ像などを追跡する「アーティー・ダズン(Arty Dozen)」として描かれる。
ハリウッドはこのテーマに、ほぼ半世紀前から取り組んできた。ジョン・フランケンハイマー(John Frankenheimer)の1965年の映画『ザ・トレイン(The Train)』では、フランス・レジスタンスの指導者を演じたバート・ランカスター(Burt Lancaster)がナチスから祖国の美術品を取り戻す任務を担った。両作品は文化と惨劇の綱渡りを描いており、ランカスターは「絵のために命を浪費しはしない」と叫び、クルーニーは「どんな芸術作品も、人の命の価値には及ばない」と述べる。勇敢な人々が次世代のために芸術を守るという行為を描いた映画として、どちらも価値ある作品である。
『ミケランジェロ・プロジェクト』には、印象派作品の隠し場所に導く歯科医訪問や、絶滅させられたユダヤ人の歯から奪われたドイツの金塊の発見、マット・デイモン演じるキャラクターの地雷に関わる危機などの場面がある。しかし、クルーニーはそれらを大げさに描くのではなく、学者の講義のような温かくゆったりとした口調で伝えている。身体的な勇気に慣れていなかった隊員たちは、驚くべき粘り強さ、持久力、独創力を発揮した。何世紀にもわたる文化を守るために命を賭け、その献身によって文化は長く生き続けるのである。
映画は、命をかけて美術品を守る価値があったのかという問いに執着するが、少なくとも国家の宝や美術品の保護が人々や国の遺産を守るうえで重要であることを示している。
ナチス略奪美術品の回収、アルゼンチンで肖像画発見
ナチスによって奪われた美術品の回収作業は現在も続いており、2025年には刺激的なニュースが報じられた。1946年以来行方不明となっていた肖像画がアルゼンチン当局により回収されたのである。
この発見は、オランダのジャーナリスト、シリル・ローズマン(Cyril Roseman)とピーター・スクーヘン(Peter Schouten)、およびリサーチャーのポール・ポスト(Paul Post)が『Algemeen Dagblad(AD)』のために行った約10年に及ぶ調査の成果によるもので、フリードリッヒ・カドギエン(Friedrich Kadgien)のアルゼンチンでの生活を追跡する過程で、マル・デル・プラタ(Mar del Plata)の不動産広告に絵画が写っているのを特定したことがきっかけである。
回収されたのは、1710年にイタリアの巨匠ジュゼッペ・ギスランディ(Giuseppe Ghislandi)が描いた「貴婦人の肖像(Contessa Colleoni)」。オランダのユダヤ人美術商ジャック・ゴウストリッカー(Jacques Goudstikker)からナチスが略奪したもので、首都ブエノスアイレスから南へ約260キロの海辺の都市マル・デル・プラタにあるカドギエン家の物件に長年保管されていた。ゴウストリッカーは1,100点以上のコレクションを所有していたが、1940年、ナチスから逃れる途中に船のホールドに落ちて死亡。彼のコレクションは強制的に売却され、「貴婦人の肖像」も盗品として扱われた。
2025年8月26日、マル・デル・プラタ連邦検察官カルロス・マルティネス(Carlos Martínez)は、Algemeen Dagbladの報告に基づき物件捜索を命じた。絵画は現場では発見されなかったが、警察は無許可の銃2丁と携帯電話2台を押収。9月1日にはカドギエン家に関連する4つの追加物件が捜索され、2点の絵画と19世紀と推定される素描・版画が発見された。さらに、9月2日にはパトリシア・カドギエン(Patricia Kadgien)と夫フアン・カルロス・コルテゴソ(Juan Carlos Cortegoso)が72時間の自宅軟禁を命じられ、絵画の隠匿や司法妨害の疑いがかけられた。場合によっては「ジェノサイド(大量虐殺)の文脈での窃盗隠匿」の罪に問われる可能性もある。
翌9月3日、カドギエンの弁護士が絵画をアルゼンチン司法当局に引き渡し、ジュゼッペ・ギスランディ作「貴婦人の肖像」であることが確認された。美術専門家アリエル・バッサーノ(Ariel Bassano)は「年齢の割に良好な状態である」と評価し、同紙『ラ・カピタル・マル・デル・プラタ』によれば額縁込みでの価値は約5万ドルとされた。肖像画は記者会見で金色の額縁に入れて展示された。Algemeen Dagblad公表後、不動産広告の絵画画像は馬や自然を描いたタペストリーに差し替えられた。警察は、この差し替えが以前に何か別のものが掛かっていたことを示唆すると述べている。
フリードリッヒ・カドギエンは、第三帝国崩壊後の1946年にオランダを離れ、スイス、ブラジルを経てアルゼンチンに定住した。二人の娘を持ち、1978年にブエノスアイレスで死亡。絵画は逃亡の際に同行し、その後数十年間、家族と共に保管されていた。ペロン政権下では、ナチスの逃亡者が略奪したユダヤ人財産をアルゼンチンに持ち込み、絵画や彫刻、家具、金、銀行預金などが含まれていた。
「貴婦人の肖像」は、ゴウストリッカー・コレクションの一部であり、2006年には義理の娘マレイ・フォン・ザー(Marei von Saher)が202点の作品を回収している。彼女は1990年代後半から捜索を始め、追加の美術品を取り戻す努力を続けており、家族の目標は、ゴウストリッカー・コレクションから盗まれたすべての作品を回収し、ジャック・ゴウストリッカーの遺産を回復することである。オランダ文化遺産庁は、回収された肖像画がコレクションに属することを確認した。
ナチス略奪美術品、オハイオでも発見 返還団体が介入
2025年、ナチスによって略奪された美術品の話題はアルゼンチンだけでなく、米国でも報じられた。オハイオ州ニューアーク(Newark)のApple Treeオークションセンターで販売予定だった2点の絵画が、フランスのドイツ系ユダヤ人コレクションからの略奪品であることが判明し、ホロコースト・アート返還団体「モニュメンツ・メン(Hombres y Mujeres de Monumentos)財団」の介入によりオークションから取り下げられた。
同財団は、第二次世界大戦中にヨーロッパで盗まれた美術品の回収に取り組んでおり、団体名は連合軍特殊部隊にちなんでいる。今回回収された作品はオランダの画家アンブロシウス・ボッシャート(Ambrosius Bosschaert)の静物画2点で、アドルフ・シュロス(Adolphe Schloss)一家に属していた。シュロスは333点の作品を所蔵していたが、第二次世界大戦中にナチスによって押収・分散された。オハイオで発見された2点は、戦争末期に連合軍がミュンヘンに進軍した際、ヒトラー本部に保管されていた作品である。
財団によると、2点の花を描いた油彩静物画はオークションハウスのウェブサイト上で「未請求所有物」として掲載されていたが、委託者の名前は明らかにされていない。略奪された美術品は、ナチス解放後に米兵の手に渡ったり、複数の経路で市場に流れたりした可能性がある。
モニュメンツ・メン財団の創設者で会長のロバート・エドセル(Robert Edsel)によると、オークションサイト上での絵画の最高入札額はそれぞれ3,250ドルと225ドルで記載されていたが、実際の価値は50万ドルを超える可能性があるという。会長アンナ・ボッティネッリ(Anna Bottinelli)は「これら2点の絵画は中西部の小さなオークションハウスに現れたが、どこで起こってもおかしくはなかった。第二次世界大戦中に略奪された文化財は数十万点に上り、いまだ行方不明である」と声明を出している。
ナチスによる略奪から80年を経た今も、多くのユダヤ人家族は文化財の返還を待ち続けている。ドイツ連邦政府、州政府、地方自治体協会は共同で、ナチスに略奪された財産の取り扱いに関するガイドラインを2025年12月1日に発表。迫害で不正取得された文化遺産の特定と返還を容易にすることを目的としている。
1998年には、44か国がワシントン原則(Washington Principles)に署名し、歴史的責任を認めた。署名国の一つであるドイツは、所蔵品調査の義務化や、ナチスによる盗品の被害者・相続人との公正な解決を求める原則を順守してきた。これまでにドイツ国内では7,700点以上の美術品、27,500冊の書籍、その他アーカイブ資料が正当な所有者または相続人に返還されている。
新たに改訂された指針では、詳細な助言のほか、主要な連絡先一覧も初めて掲載され、ナチスに盗まれた財産に関する仲裁機関も対象に含まれることになった。
第二次世界大戦終結から80年が経過した今も、多くのユダヤ人家族は、ナチスによって略奪された美術品の返還を待ち続けている。こうした状況を受けて、ドイツ連邦政府、州政府、地方自治体協会は共同で、ナチス略奪財産の取り扱いに関するガイドラインを策定し、2025年12月1日に発表した。この指針は、迫害により不正に取得された文化財の特定や返還をより容易にすることを目的としている。
歴史的には、1998年に44か国が署名した**ワシントン原則(Washington Principles)**により、ナチスによる略奪の歴史的責任が認められた。ドイツも署名国の一つであり、原則は公的な文化財保存機関に対し、所蔵品の調査を義務付けている。ナチスによって盗まれたことが確認された場合、被害者やその相続人とともに、公正かつ適切な解決策を見出すことが求められる。これまでに、ドイツ国内では7,700点以上の美術品、27,500冊の書籍、数え切れないほどのアーカイブ資料が、正当な所有者またはその相続人に返還されるか、公正な解決策が講じられてきた。
今回の改訂版ガイドラインでは、より詳細な助言が含まれるだけでなく、初めて主要な連絡先一覧も掲載された。また、ナチスに盗まれた財産に関する仲裁機関(institution for arbitration in cases of Nazi stolen property)についても明記されており、被害者の救済手続きが一層明確化されている。
他の映画作品等の情報はこちらから。
参考文献:
1. The Monuments Men Is George Clooney’s Art of War
2. Nazi-Looted Portrait Of A Lady Recovered In Argentina After 80 Years
3. Retiran de subasta en Ohio dos pinturas “no reclamadas” sustraídas por nazis a su propietario judío
4. Germany renews Commitment to Fair Treatment of Property looted by Nazis
作品情報:
名前: The Monuments Men(邦題:ミケランジェロ・プロジェクト)
監督: ジョージ・クルーニー
脚本: ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロフ(Grant Heslov)
制作国: アメリカ合衆国、ドイツ(共同制作)
製作会社: コロンビア・ピクチャーズ(Columbia Pictures)、フォックス2000ピクチャーズ(Fox 2000 Pictures)、スモークハウス・ピクチャーズ(Smokehouse Pictures)、スタジオ・バベルスベルク(Studio Babelsberg)
時間: 118 minutes
ジャンル: 歴史、ドラマ、戦争

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