米国:世界経済フォーラムで「平和評議会」と「新ガザ計画」を発表、構成国と国際的懸念

(Photo:GETTY IMAGES)

米大統領ドナルド・トランプ(Donald Trump)は2026年1月22日、スイス・ダボスで開催された第56回世界経済フォーラム(World Economic Forum)で、自らの「平和評議会(Board of Peace)」を発表した。この評議会は当初、イスラエルとハマス間で2年間続いたガザでの戦争を終結させ、ガザ地区の再建を監督するために設計された組織とされていた。しかし、トランプは将来的にガザ以外の地域でも活動を広げる可能性があると述べ、これによりフランスなど一部の国は加盟を辞退した。加盟を見送った国々は、平和評議会が国際連合(United Nations:UN)の役割を代替する恐れがあると指摘している。一方で、トランプは平和評議会が国連と協力して活動すると説明し、国連の潜在能力を高く評価していると強調した。

署名式では、トランプは「この規約が発効し、平和評議会はすでに公式な国際組織である」と発表し、自らが会長に任命されたことについて「光栄に思う」と述べ、「これまでに存在した中で最も重要な国際組織の一つになる」と強調した。

平和評議会の枠組みには「ガザ執行評議会(Gaza Executive Board)」が含まれ、ホワイトハウスによれば、ガザにおける現地活動全体を監督する責任を負う管理組織である。また、議長(会長)は決定の拒否権、議題承認、メンバー招請、評議会の完全解散、後任の指名権など広範な権限を有する。

火曜日、トランプが大統領復帰の記念式典のためホワイトハウスに出席した際、記者から「平和評議会はガザでの戦争終結の監督を国連に代わって行うのか」と質問され、「その可能性はある」と回答した。「国連(UN)は正直なところあまり役に立っていない。私はその潜在力を大いに評価しているが、約束を果たしたことは一度もない。本来なら、私が解決したすべての戦争を終わらせるべきは国連であったはずだが、私は彼らに頼むことも考えたこともなかった」と述べ、米国が積極的に支援しているイスラエルによるパレスチナの占領やガザでの大量虐殺にも言及した。

署名式には創設メンバー(アルゼンチン、ハンガリー、パキスタン、パラグアイ)を含む20か国の首脳・代表者が出席したが、米国の主要同盟国の多くは参加していない。署名式の出席者には以下が含まれる:

  • アルゼンチン大統領ハビエル・ミレイ(Javier Milei)
  • アルメニア首相ニコル・パシニャン(Nikol Pashinyan)
  • ハンガリー首相ヴィクトル・オルバーン(Viktor Orban)
  • バーレーン首相府大臣シャイフ・イーサ・ビン・サルマン・ビン・ハマド・アル=ハリファ(Shaikh Isa bin Salman bin Hamad Al Khalifa)
  • モロッコ外相ナッサー・ブリタ(Nasser Bourita)
  • アゼルバイジャン大統領イルハム・アリエフ(Ilham Aliyev)
  • ブルガリア首相ローゼン・ジェリャズコフ(Rosen Zhelyazkov)
  • インドネシア大統領プラボウォ・スビアント(Prabowo Subianto)

その他:

サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、ヨルダン、パキスタン、トルコ、カザフスタン、ウズベキスタン、モンゴル、コソボ、パラグアイ

 

しかし、署名式には一か国が目立って不在であった。それはイスラエルであり、加盟を表明していたにもかかわらず、参加しなかった。イスラエル大統領アイザック・ヘルツォグ(Isaac Herzog)はダボスに滞在していたが、報道官は署名式には出席しないと確認したのみで、詳細は明らかにされていない。

サウジアラビアは以前、ムスリム多数派の国々――サウジアラビア、トルコ、エジプト、ヨルダン、インドネシア、パキスタン、カタール――が、ガザにおける恒久的停戦の確立、再建支援、そして「公正かつ持続可能な平和」の実現という目標を支持していることを示していた。

 

平和評議会にドナルド・トランプが何カ国招待しているかは現時点で不明である。イギリスは招待を受けたが、外務大臣イヴェット・クーパー(Yvette Cooper)は、ロシア大統領ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)の参加を懸念して署名の決定を保留していると述べた。伝統的な西側諸国や世界的大国の多くは慎重な姿勢を示しており、国連(UN)の安全保障理事会の常任理事国のうち、米国以外の国はまだ平和評議会への加盟を表明していない。

平和評議会に加盟する国々の多くはそもそも民主主義国家ではない。米国から参加の招待を受けたロシアのプーチン大統領も現在参加について検討している。ほぼ4年間続くウクライナ侵攻はプーチンによる指示であり、キーウ(Kyiv)が占領地を放棄して軍を縮小しない限り、侵攻を終える意思はないとしている。一方トランプはダボスでの署名式前に、プーチンが「組織への参加を承諾した」と述べた。ロシア国営通信社TASSは、プーチンが平和評議会への参加資金として10億ドル(US$1,000,000,000)相当のロシア資産を移転する用意があると報じた。以前には、この資金が米国で凍結されているロシア資産から拠出される可能性も伝えられていた。

中国も加盟の招待を受けたことを確認しているが、参加の意思は示していない。中国は特に国連の役割に関して平和評議会には重大な懸念を抱いているとされる。中国外務省報道官郭佳坤(Guo Jiakun)は北京で、「中国は常に真の多国間主義を実践してきた。国際情勢がどう変化しようとも、中国は国連中心の国際体制を堅固に擁護する」と述べた。中国の国営メディアも、平和評議会が「本当に平和を目指しているのか」疑問を呈し、トランプ大統領が「10億ドルの費用を要する私的クラブや企業の取締役会を作ろうとしているのではないか」と懸念を示した。

平和評議会に加盟を表明している国々には、イスラエルやアルゼンチン、ハンガリーが含まれる。イスラエルは停戦が2025年10月10日に発効したにもかかわらず、パレスチナ人への攻撃と殺戮を続けており、アルゼンチンの最近の人権対策にも疑問が残る。中東地域からは主要国であるトルコ、エジプト、サウジアラビア、カタール、さらに主要新興国であるインドネシアも本評議会に加盟した。

 

国連との関係に関する懸念

トランプ大統領は平和評議会について「国連(UN)には巨大な潜在能力がある。しかし、平和評議会とここに集まったような人材の組み合わせは、世界にとって非常に特異なものになり得る」と述べた。長年にわたり国連や他の多国間協力機関を軽視してきたトランプの発言は、平和評議会が国連の機能を置き換えようとしているのではないかとの懸念を国際的に広げている。この懸念を受け、フランスに加え、ノルウェー、デンマーク、イギリスは平和評議会への参加を辞退した。

2026年1月20日に声明を発表したフランス外相ジャン=ノエル・バロー(Jean-Noël Barrot)は、自国はトランプが提案したガザ停戦の20項目計画の実施を支持する一方で、国連に対抗する組織の創設には参加も支援も行わないと明言した。

同様に、ノルウェー外務次官アンドレアス・モッツフェルト(Andreas Motzfeldt)も、今週『Aftenposten』紙に対して、「国連の役割や国際法に挑戦する構造には参加できないことは明確である」と述べ、平和評議会への懸念を表明した。

 

平和評議会の構成と活動

平和評議会の創設執行委員会には、アメリカ合衆国国務長官マルコ・ルビオ(Marco Rubio)、ガザ交渉担当者スティーブ・ウィットコフ(Steve Witkoff)、トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner)、元イギリス首相トニー・ブレア(Tony Blair)、世界銀行総裁アジャイ・バンガ(Ajay Banga)ら7人が指名されている。加盟国の任期は3年ごとに更新可能で、10億ドルを拠出した国には常任席が与えられる。トランプ大統領は会長として、また米国代表として執行評議会のメンバーを指名し、補助機関を新設したり解散したりする権限を持つ。署名式や発表時点では、平和評議会の具体的な活動範囲や方法は公表されていない。しかし流出した文書によれば、平和評議会は国際法に基づく平和構築の機能を実行する国際組織として位置付けられ、加盟国3カ国で正式に発効すると規定されている。

米国務長官ルビオは、平和評議会がまずガザにおける「平和計画(plan de paz)」の実施状況を監督することに重点を置くと述べた。さらにルビオは、この評議会の活動は世界の他地域でもモデルとして展開できると説明した。トランプ大統領もダボスで、「これは米国のためではなく世界のための組織であり、ガザで成功すれば他の地域にも展開できる」と述べ、将来的な活動拡大の可能性を示した。

平和評議会は国際連合(UN)と協力して活動する方針であり、完全に発足すればほぼ自由に行動できると強調された。ただし、国連報道官ロランド・ゴメス(Rolando Gómez)によれば、当面は協力の範囲がガザ地区に限定される見込みである。一方、国連の人権調査専門家は、イスラエルやパレスチナ自治区での人権侵害に関する調査へのアクセスが、平和評議会によって改善される可能性を期待している。これまで国連人権理事会が設置した国際独立調査委員会のガザ地区での調査、国際支援を妨げてきたのはイスラエル当局だからである。

ダボスでの署名式では、ルビオが平和評議会を「行動評議会」として紹介した。ルビオは、現在はガザに注目が集まっているものの、評議会は「世界の他の地域でも可能なことのモデルになる」と述べた。式典では、トランプ大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナーも登壇し、ガザの「再都市化(reurbanización)」計画を発表した。クシュナーは、ガザやパレスチナの主権を完全に無視した米国案に基づく「新ガザ(New Gaza)」のイメージを示すスライドを公開し、沿岸に建設される未来的な高層ビルや、将来の海岸観光の可能性を紹介した。

 

新ガザ計画

米国はまた、ガザ地区の再建後の姿に関するデータと画像とともに、ガザ地区の再建と統治を監督する計画を発表した。この計画は、前年にイスラエルとパレスチナのハマス(Hamas)との間で合意された和平協定の一環として実施されるものである。計画の主導は、トランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナーと、特使のスティーブ・ウィットコフが担う。

米国側が提示した計画は、経済再生、段階的な再建、ガザの統治と安全保障、平和評議会による国際的監視という四つの柱から構成されている。財政面では、ガザ地区の国内総生産を今後10年で100億ドル以上に引き上げ、世帯当たりの平均年収を1万3,000ドルに増加させることを目標としている。そのため、まず250億ドルを投じてインフラおよび公共サービスの整備を進め、2035年までにガザを地域経済の中心地として再生させる計画である。

 

ダボスで示された建築ビジョンは、ガザ地区の都市景観を根本的に転換する構想である。提示されたイメージは、湾岸諸国の都市国家や高級観光地をモデルとしており、ガザ沿岸部は「中東のリビエラ」と位置付けられた新都市として再開発される構想である。海岸沿いには広い遊歩道やヨット用マリーナ、現代的なデザインの高級ホテルが並び、ガラス張りの外観や海を望むテラスを備えた高層住宅群が、戦争によって破壊された建物や難民キャンプに代わって建設される計画となっている。

建築イメージによれば、新たに整備される住宅地区は、現代的かつ持続可能な集合住宅で構成される。周囲には高台の緑地、広場、都市型庭園が配置され、レジャー施設や商業施設、遊戯空間も整備される。各エリアは歩行者専用通路や自転車道によって結ばれ、噴水や児童用遊具、地域住民の利用を想定した公共広場も設けられる計画である。

インフラ分野では、物流と交通の整備が重要な柱とされている。模型やデジタルシミュレーションでは、最先端のクレーンや倉庫を備えた深水港の建設が計画されており、国際貿易の促進を目的としている。また、未来的なデザインの空港整備も想定され、国際便の受け入れや、ガザと地域および世界の主要都市との接続が可能になる見込みである。

これらの建設事業に先立ち、5500万トンを超える瓦礫の除去が最優先課題とされている。あわせて、都市環境に統合された発電所や下水処理施設を含む、電力網および上下水道網の全面的な再建も計画されている。

 

産業および技術開発の分野では、イノベーションハブの整備が構想されている。このハブには、企業向けパークや技術系企業のオフィスが設置される予定である。建築イメージでは、現代的なデザインのオフィスビル、コワーキングスペース、会議センターが描かれており、技術者委員会が運営する行政地区も整備される。これらの複合施設は、機能性と制度運営の効率化を重視した簡潔な設計となっている。

ガザは将来の「中東のリヴィエラ」として描かれている一方で、イスラエルによる攻撃規模は極めて大きく、建物の約80%が損壊または破壊されている。このため、緊急措置として、プレハブ住宅や簡易浴室モジュールを大量に設置する計画が盛り込まれている。可視化された図では、白色のモジュール構造が秩序立てて配置され、恒久的な建設が進むまでの間、多数の避難民を一時的に収容できる構成となっている。

署名式の場で自由市場経済の原則を適用し、他地域で成功した開発モデルをガザに導入する意向を示したクシュナーは、同アプローチで住民に繁栄と良質な生活の可能性を提供したいと述べている。また、特使のスティーブ・ウィットコフは、和平合意を受けて、ガザおよび平和評議会が将来活動する地域に希望が生まれたと語った。

 

和平合意およびガザ再建の実施は、ハマスの完全な武装解除、パレスチナ自治政府の正当性、ならびに平和評議会と国際連合との協力に依存している。計画の実現には湾岸諸国からの資金提供が不可欠であり、これらの国々は、信頼できる和平プロセスと正統性を備えた自治体による統治を支援条件としている。また、再建の成否は、ハマスおよびその他武装組織の完全な非武装化が確認されること、ならびに国際社会の調整の下で平和評議会が国際連合と協力し、紛争解決機能の一部を補完できるかどうかにも左右される。一方このような言説に対し数十年に渡り継続して行われるイスラルによる侵攻は含まれていない。

そのような中、営利目的ではなく、地域のために取り組むとしガザ地区の再建には、イスラエルの不動産会社ヤキール・ガバイ(Yakir Gabay)が名乗りを上げている。

 

評議会は次に何をするのか

再建計画によってガザを「希望の地」とし、産業と経済の発展を伴う繁栄の場へと転換させることを目指すと述べたジャレッド・クシュナーは再建計画の最大の課題として、パレスチナ自治区を支配するイスラム主義組織ハマスの武装解除を挙げている。2007年以降、ガザを実効支配してきたハマスの非武装化が進まなければ、計画の進行は停滞すると指摘し、「ハマスが非武装化しなければ、この計画は前に進まない」と強調した。今後100日間は計画の確実な実行に集中し、人道支援や避難支援を継続しながら、前進の条件を整える考えを示した。

 

停戦の第一段階で未解決となっていた事項については、パレスチナの技術系委員会の指導者アリ・シャース(Ali Shaath)が、ガザの主要な出入口であるラファ(Rafah)国境検問所が来週再開される予定であると発表した。ラファはエジプトとの国境に位置し、ガザへの物資輸送や人道物資、人の往来において極めて重要な拠点である。

一方、現地の被害と緊張は続いている。2026年1月21日、南ガザ地区カーンユニス(Khan Younis)では、イスラエル軍の攻撃により息子ムタセム・アル=シュラフィ(Mutasem Al-Shrafi)を失った父親が嘆く姿が報じられた。停戦は2025年10月に発効したが、その後もイスラエルとハマスは度重なる武力衝突の責任を互いに非難し合い、不安定な状況が数か月にわたり続いている。この衝突により、イスラエル兵数名と多数のパレスチナ人が死亡した。

さらに双方は新たな違反行為をめぐっても対立している。イスラエルは、ハマスが最後の人質死亡者の遺体返還を遅らせていると主張している。一方、ハマスは、ユダヤ人多数国家であるイスラエルが、深刻な人道的危機が続く中でもガザへの支援を制限し続けていると反論している。

#Gaza #主権侵害 #DonaldTrump 

 

参考資料:

1. Qué es la Junta de Paz de Trump y quién se ha sumado a este organismo que algunos creen que quiere reemplazar a la ONU
2. Trump lanza la “Junta de Paz”: ¿quiénes la conforman y por qué despierta temores de algunos países?
3. Estados Unidos presentó datos e imágenes de cómo se verá la Franja de Gaza tras su reconstrucción
4. Trump’s Board of Peace a flop? Only 19 out of 60 invited nations join at launch in Davos, major countries including India, China, Russia, EU and others stay away

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