エクアドル:治安協力の欠如を理由にコロンビアへ30%関税、両国関係に波紋

(Photo:Gian Ehrenzeller / EFE, EPA)

エクアドルがコロンビアに対して課した30%の関税は、両国に大きな反響を呼んでいる。「協力体制は解体された」との指摘も出ており、治安と貿易の両面で緊張が高まっている。

エクアドル大統領のダニエル・ノボア(Daniel Noboa)は、コロンビア産品に対するこの特別関税について、麻薬密売および違法鉱業への対策をめぐり、両国が実質的な合意に達するまで継続すると説明した。関税は2026年2月1日から適用され、エクアドルに輸入されるすべてのコロンビア産品が対象となる。

この措置は、世界経済フォーラム年次総会に出席するためスイス・ダボスに滞在していたノボア大統領によって発表された。大統領は自身のXのアカウントを通じ、「国境地帯における麻薬密売と違法鉱業への対応において、コロンビア政府の協力が不十分である」との認識を示した。

@DanielNoboaOk / X

 

エクアドルとコロンビアは、太平洋沿岸からアマゾンの熱帯雨林に至る約600キロの国境線を共有している。この地域では、コロンビアの武装勢力を含む犯罪組織が、麻薬や武器の密輸、違法鉱業に関与している。

ノボア大統領はダボスからの発信で、「我が国の軍は、麻薬密売と結びついた犯罪組織と戦い続けているが、コロンビア側からいかなる協力も得られていない」と述べた。その上で、「相互性と断固たる行動が欠如している以上、エクアドルは治安目的の関税を適用せざるを得ない」と強調した。

2024年に麻薬密売との「戦争」を宣言したノボア大統領は、今回の関税措置について、「国境地帯における麻薬密売と違法鉱業に対し、エクアドルが現在示しているのと同等の真剣さと決意をもって、両国が共に立ち向かうという実質的な約束がなされるまで維持される」と改めて述べた。

また同大統領は、「我々は年間10億ドルを超える貿易赤字を抱えながらも、コロンビアとの協力に向けた実質的な努力を続けてきた」と主張した。一方で、ボゴタとの対話を繰り返し呼びかけてきたにもかかわらず、不安定な国境地帯ではエクアドルが単独で犯罪と対峙しているとし、暴力への共同対応が実現していない現状に強い不満を示している。

ノボア大統領とコロンビアのグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)大統領は、2024年10月にコロンビアで開催された国連気候変動会議(COP16)の場で会談しているが、治安協力をめぐる両国の溝はいまだ埋まっていない。

 

エクアドル内務相、コロンビアを批判

エクアドル政府内からも、コロンビアの治安対応に対する厳しい批判が相次いでいる。キトでの視察中、内務相のジョン・ラインベルグ(John Reimberg)は報道陣に対し、コロンビア当局が「エクアドルに向かう麻薬の栽培、加工、輸送を防ぐための適切な措置を講じていない」と述べ、強い不満を示した。

ラインベルグ内務相はまた、コロンビア当局に対し、国境付近から約50キロ後退するよう命令が出されたとの情報を把握していると明らかにした。その上で、「組織犯罪との戦いは、関係国すべてが責任を負うべき課題である。しかし、コロンビアはその責任を果たしていない。今回の関税措置は、まさに必要な対応として講じられたものだ」と説明した。

エクアドル政府はすでに昨年12月、安全保障上の理由から国境管理を大幅に強化している。現在、コロンビアとの国境ではルミチャカ(Rumichaca)の一箇所、ペルーとの国境ではフアキジャス(Huaquillas)の一箇所のみが、正式な通行地点として開放されている。

もっとも、エクアドルの国境地帯は河川や熱帯雨林を含む広大な地域に及び、非公式な通路が無数に存在する。これらの違法ルートは密輸や犯罪組織の移動に利用されやすく、治安当局にとって大きな課題となっている。

2023年11月に就任したダニエル・ノボア大統領は、国際的な麻薬カルテルと結びつく20以上の犯罪組織に対して「戦争」を宣言した。犯罪組織同士の激しい抗争の結果、エクアドルは2025年に人口10万人当たり52件の殺人を記録し、地域で最も暴力的な国となった。これは1時間に1件の殺人に相当し、エクアドル犯罪組織監視機関(Observatorio Ecuatoriano de Crimen Organizado)が明らかにしている。

エクアドルは、世界最大のコカイン生産国であるコロンビアとペルーの間に位置している。その地理的条件から、米国、欧州、オセアニア市場に向かうコカインの約70%が同国領内を通過しているとされ、治安悪化の背景要因となっている。

 

コロンビア国内の反応――政権批判と経済的懸念

今回の関税措置をめぐっては、コロンビア国内からもさまざまな反応が示された。エクアドル国内の暴力を十分に抑えられていないにもかかわらず、自国の失策を棚上げする形で措置を打ち出したノボア大統領の決定に便乗するかのように、コロンビア政権を批判する声も上がっている。

その一人が、コロンビアの元大統領であるイバン・ドゥケ(Iván Duque)である。ドゥケは、今回の関税措置は前任大統領グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)が推進してきた政策の不備に起因するものだと指摘した。ドゥケは、エクアドルのメディアであるテレアマソナス(Teleamazonas)のインタビューを引用する形で自身のSNSに投稿し、「コロンビアが麻薬密売に対して寛容であるとき、その代償を支払うのはエクアドルである。協力体制は解体され、犯罪組織が勢力を拡大した。今こそ断固とした姿勢と、犯罪に対する実効的な行動が必要だ」と述べた。

@IvanDuque / X

 

同様に、コロンビアの上院議員であるマリア・フェルナンダ・カバル(María Fernanda Cabal)も、今回の関税措置の責任はペトロ大統領にあると主張し、その影響が主としてコロンビアの生産者に及ぶ点を問題視した。カバルは、「これはコロンビアの生産者を直撃する厳しい決定であり、彼らはペトロ政権の失敗に責任を負う立場にはない。国境で活動する違法組織に対する実効的で断固たる行動は見られない」と述べ、エクアドルが組織犯罪と強硬に対峙している一方で、コロンビアでは寛容さが支配していると批判した。さらにカバルは、ペトロ大統領がダニエル・ノボア大統領の就任式出席後にエクアドルのマンタを訪問したことにも言及し、「治安協力の調整ではなく、書籍執筆のための訪問だったとされている。犯罪に対して弱腰な政府の代償を、真面目に働く市民が支払うのは不当である」と述べた。

@MariaFdaCabal / X

 

民主中道党(Centro Democratico)所属の大統領候補であるパロマ・バレンシア(Paloma Valencia)も、エクアドル政府の決定に遺憾の意を示した。バレンシアは、「いったいどれほど多くの証拠があれば、ペトロ政権が『包括的和平』政策を通じて国を犯罪組織に明け渡した事実を理解できるのか」と疑問を呈し、イバン・セペダ(Iván Cepeda)がこの失敗の主要な設計者であり実行者の一人であると批判した。

@PalomaValenciaL / X

 

また、同党所属の上院議員パオラ・オルギン(Paola Holguín)も、エクアドルによる対コロンビア関税措置を「極めて深刻な問題」と評した。オルギンはSNS上で、「エクアドル大統領ダニエル・ノボアが、国境地帯における麻薬密売対策でコロンビアの協力が欠如していると告発したことは、看過できない深刻な指摘である」と書き込んだ。

@PaolaHolguin / X

 

一方、経済界からは冷静な懸念の声も上がっている。コロンビア経済研究センター(Centro de Estudios Económicos de Colombia:ANIF)の会長であるホセ・イグナシオ・ロペス(José Ignacio López)は、エクアドルによる30%の関税は両国にとって悪影響を及ぼすと指摘した。ロペスは、「自動車、医薬品、油脂、砂糖といったコロンビアの主要輸出品の一部は、エクアドル向けが各製品の総輸出量の10%を超えており、その影響は小さくない」と述べ、貿易摩擦の長期化に警鐘を鳴らしている。

@JoseILopez / X

 

コロンビア政府の反応

コロンビアは、ボリビアおよびペルーとともに構成されるアンデス共同体(Comunidad Andina:CAN)の枠組みにおいて、エクアドルにとって最大の貿易相手国である。エクアドル中央銀行によれば、2024年のエクアドルの対コロンビア輸出額は約8億5,000万ドルであった一方、輸入額は21億1,200万ドルに達し、エクアドル側の大幅な貿易赤字が続いている。

また、2025年1月から10月までの両国間の貿易総額は22億900万ドルに上り、この期間においてはコロンビアが8億4,900万ドルの貿易黒字を計上した。コロンビアの輸出額は15億2,900万ドルで、その72.3%は非鉱業・非エネルギー製品が占めている。主な輸出品目には、電力、医薬品、殺虫剤、トラックなどが含まれる。

こうした中、エクアドルがコロンビア製品に対して30%の関税を課すと発表したことを受け、コロンビア政府も迅速に対抗措置を打ち出した。コロンビア政府は、エクアドルからの輸入品20品目に対し、30%の関税を課す方針を明らかにした。今回の措置は、エクアドルが治安協力の不足を理由に一方的な関税導入を決定したことへの対応である。

これに先立ち、コロンビア国防省は、エクアドル側が主張する安全保障協力の欠如を否定した。国防省は、両国当局による共同作戦の成果として、国境地帯でマリファナ2.24トンを押収した実績を挙げ、「情報共有と現地での連携によって、37万1,000回分以上の流通を防ぎ、国際的な麻薬取引に関与する組織に1,300万ドル超の経済的打撃を与えた」と説明している。さらに、麻薬の国際的な密輸に対抗し、地域社会と地域の安定を守るため、安全保障分野での協力、情報交換、国境地域での協調行動を継続する姿勢を改めて強調した。

関税措置の具体的内容について、ダイアナ・マルセラ・モラレス(Diana Marcela Morales)商工観光相は、今回の関税は制裁や対立を目的としたものではなく、貿易条件の歪みを是正し、両国間の貿易の均衡を回復するための是正措置であると説明した。関税は一時的かつ比例的で、見直し可能な性質を持ち、必要に応じて対象品目を拡大する可能性もあるという。

また、コロンビア政府は、国家開発計画(Plan Nacional de Desarrollo)に基づく「スマート関税」や、アンデス共同体(CAN)が定める紛争解決制度など、制度的枠組みを通じて問題解決を図る方針を示した。関税適用の最終的な可否については、関税・通関問題を所管する委員会(Comité de Asuntos Aduaneros y Arancelarios)で審議される予定である。

一方、今回の関税措置の対象となるエクアドルからコロンビアへの輸出額は約2億5,000万ドルに達しており、決定が両国間の貿易関係に与える影響は小さくない。コロンビア政府は最後に、共有ルールの枠組みを確立し、安定した貿易関係を維持するため、対話と交渉による解決を引き続き模索する姿勢を強調した。

#DanielNoboa #GustavoPetro

 

参考資料:

1. Ecuador impondrá un arancel del 30% a Colombia por seguridad, anuncia el presidente Daniel Noboa
2. Los aranceles del 30% impuestos por Ecuador a Colombia generaron fuertes reacciones: “La cooperación se desmanteló”

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