トリニダード・トバゴ:米軍が設置するレーダーは何のためのものなのか

ベネズエラから約10キロメートル離れたこの島国トリニダード・トバゴは10月末、アメリカ海軍の戦闘艦USSグレイブリー(USS Gravely)を受け入れた。米海軍のこの軍艦は、地域の麻薬密輸疑惑者に対するワシントンの作戦の一環として、ベネズエラ沿岸近くで合同演習を行うためにトリニダード・トバゴを訪れたものである。両国はまた、11月16日から21日、共同で軍事演習も実施している。トリニダード・トバゴは、米国が自国領を利用してベネズエラを攻撃するつもりはないと否定するも、米国とベネズエラとの緊張が高まる中での動きである。

ワシントンは2025年8月、麻薬密輸対策を名目にカリブ海に艦隊を展開した。この艦隊には世界最大の空母USSジェラルド・フォード(USS Gerald R. Ford)も含まれており、過去数週間で20隻以上のナロランチャ(麻薬密売船)を攻撃、80人以上が死亡したと報告されている。カラカスはこれをニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro)政権排除を目的とした作戦だと非難しているが、トリニダード・トバゴは関与を否定し、安全保障協力のみを行う方針を強調している。

2025年11月28日付の報道によれば、トリニダード・トバゴ首相カムラ・パーサド=ビッセサール(Kamla Persad-Bissessar)は、アメリカ海兵隊が同国の新しい空港の建設支援を行っていることを発表している。これには「計画には滑走路、道路、そしてレーダーが含まれる」。首相は「これにより、我々の水域内外で麻薬密輸業者を監視する能力とレーダー情報を向上させる」と説明している。

トリニダード・トバゴの首相は、米国が同国領をベネズエラ攻撃の拠点として利用するよう要請した事実は一切ないと明言した。首相によれば、米国との協力はあくまで地域の安全保障に限定されており、麻薬密輸や人身・武器密輸といった越境犯罪への対応にとどまる。さらに、自国政府はベネズエラに損害を与える活動には一切関与せず、ベネズエラ国民との関係も平和的であるとソーシャルネットワークを通じ明言した。彼はまた、先日のダン・ケイン(Dan Caine)将軍の訪問は「礼儀上の訪問であり、ありふれた会合で」、ベネズエラやマドゥロ政権に対する軍事的議題は扱われなかった。

トバゴで米軍の航空機が目撃されたとの報道に対して、パーサド=ビセッサー首相は、その存在は訓練と後方支援に限られていると説明した。「滑走路の支援を受けているだけであり、地上に部隊はいない」と述べ、約250名の海兵隊員が演習終了後の11月25日に国内を離れたことを明らかにした。また、トリニダード・トバゴの領海内で米軍の艦船や軍事資産が稼働していることは知らないし、「私の知る限り、これらの艦船のいずれもトリニダード・トバゴの領海に置くよう要請されたことはない…私の知る限り、それらは国際水域である」と述べた。

米国がベネズエラ大統領ニコラス・マドゥロと結びつけている「カルテル・ソレス」をテロ組織に指定したことに関する質問に対して、首相は自国の行政はその件について何ら決定を下していないと述べた。

首相が説明するのはトリニダード・トバゴ国内での米軍の活動は、訓練演習やロジスティクス支援に限られ、常駐部隊は存在しないということだ。米艦船の領海進入も確認されておらず、活動は国際水域で行われている。首相は、こうした発言を通じて、カリブ海における米国とベネズエラの緊張下でも、自国が軍事的対立に巻き込まれない中立姿勢を維持する方針を再確認した。

 

米国大使館は、ダン・ケイン将軍の訪問について、目的は「堅固な二国間関係、地域の安定、および違法取引や国際的な犯罪組織に対する闘いを軸とした地域の統合」を強化することにあったと説明した。また、米空軍によれば、今週、米国のB-52H爆撃機がカリブ海で攻撃展示を実施した。

トリニダード・トバゴ暫定外相バリー・パダラス(Barry Padarath)は、同国は「主権国家として」独自の外交政策を決定すると述べた。首相もトリニダード・トバゴの主権を強調し、米国やカリブ共同体(Caribbean Community:CARICOM)の指示に自動的に従うわけではないと述べた。さらに、同国が直面する麻薬や武器の不法取引の課題を指摘し、完全な平和地帯とはみなせない状況であるとも述べている。このコメントはパーサド=ビッセサール首相が米軍の最近の受け入れを擁護するためのものでもある。その存在が違法取引の抑制に大きく貢献し、トリニダード・トバゴが国際犯罪組織に対抗する上で利益をもたらしていると首相は主張し、米国との軍事協力を正当化している。この協力は、トリニダード防衛隊(Trinidad Defense Forces)との最近の合同演習に反映されており、前首相キース・ローリー(Keith Rowley)時代に締結された軍事協定に基づくものである。この協定により、トリニダード・トバゴは米軍との地域軍事訓練に協力する義務を負っているという。

この声明は、ローリー前首相の批判を受けて出されたものである。ローリーは、現政権が中立性を失い、ワシントンとカラカスの間の対立に巻き込まれることで国を危険にさらしていると主張した。ローリーは、自身の任期中に署名された協定が、国連憲章(United Nations Charter)違反や軍事介入を強制するものではないと述べている。

 

ベネズエラの北約100キロに位置しているグレナダは、米国が同国の空港にもレーダーを設置するよう要請したと報告している。

トバゴ島の議会首席書記官ファーリー・オーガスティン(Farley Augustine)は、「トバゴに設置されるものの詳細を完全に明らかにしてほしい」と求めている。

なお、パーサド=ビッセサール首相は、ドナルド・トランプの熱心な支持者であることはよく知られた事実である。

#DonaldTrump #NicolásMaduro

 

参考資料:

1. Trinidad y Tobago niega la firma de un acuerdo para permitir a EE.UU. utilizar el país como base
2. ¿Trinidad y Tobago será base militar de EE  UU contra Venezuela?

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