エクアドル最高裁判所（Corte Nacional de Justicia：CNJ）は、前大統領レニン・モレノ（Lenín Moreno, 在任2017～2021年）、妻ロシオ・ゴンザレス（Rocío González）、娘イリナ・モレノ（Irina Moreno）、および家族関係者数名に対し、いわゆるシノハイドロ事件（Caso Sinohydro）に関連して正式に公判に付す命令を発した。告発内容は、中国企業シノハイドロにコカ・コド・シンクレア水力発電所（Coca Codo Sinclair）建設契約を授与する過程での贈賄の疑いである。
裁判官は、モレノの汚職関与を推定するに足る要素があると判断している。23人の他の関係者についての決定とあわせ、モレノ本人を裁判に召喚することを12月8日（月）の公聴会で決定した。
また、裁判官は予防拘禁（prisión preventiva）の代替措置として、モレノが居住するパラグアイ・アスンシオンのエクアドル大使館に月2回出頭することを保釈条件に課している。
エクアドル最高裁判所は、前大統領レニン・モレノとその家族に加え、元駐エクアドル中国大使の蔡如国氏（Cai Runguo）も、シノハイドロ事件の公判に呼び出した。検察は蔡を、贈賄の疑いがあるコカ・コド・シンクレア水力発電所建設契約に直接関与した人物の一人と位置付けている。蔡は契約交渉の重要な段階でシノハイドロを代表し、中国国有企業とエクアドル政府関係者との連絡役を務めたとされている。
公判で提示された証拠によれば、蔡の役割はプロジェクト契約の円滑な授与に決定的であったとされ、検察によれば、モレノ家およびパティーニョ（Patiño）家に向けた不正な資金の流れを調整するための役割も果たしていたという。蔡は国外に居住しているため、裁判官は国際刑事警察機構（Interpol）による赤色手配書の発行を命じた。
公判への呼び出しは、特別裁判官オラボ・ヘルナンデス（Olavo Hernández）によって言い渡された。これは、検察がモレノとその家族を、シノハイドロへの契約便宜を図る条件として贈賄の恩恵を受けたと推定するに足る証拠があると判断した手続きに基づくものである。推定されるモレノ周辺への贈賄総額は100万ドルを超えるとされる。
このコカ・コド・シンクレア水力発電所の建設は、ラファエル・コレア（Rafael Correa）政権下の2000年代に始まり、シノハイドロが参加していた。当時は国家の電力供給における戦略的事業と位置付けられたが、現在では過去数十年間で最も注目される汚職スキャンダルの一つとして影を落としている。
エクアドル検察（Fiscalía）は、前大統領レニン・モレノおよびその近親者が関与したとされるシノハイドロ事件に関する告発状の内容を明らかにした。告発状によれば、2009年から2018年の間に、約7,600万米ドルに上る贈賄が、この事業の契約授与に関連する人物に流れたとされている。
検察によると、これらの資金の一部はモレノの近親者に直接渡ったとされる。モレノはかつて副大統領を務め、その後大統領に就任した人物である。資金は、シノハイドロのロビイストである実業家コント・パティーニョ（Conto Patiño）などの仲介者を通じて移動したとされ、見返りとして同社は水力発電所の建設を実行できる契約を受け取ったとされる。
告発状では、銀行振込や小切手、その他の文書が特定されており、これらが不正な支払いの提供を裏付ける証拠であると検察は主張している。
エクアドル最高裁判所（Corte Nacional de Justicia）は、シノハイドロ事件（Caso Sinohydro）の公判に、前大統領レニン・モレノやその家族に加え、元公務員（exfuncionarios）、関係者（allegados）、その他の仲介者も呼び出した。一部は共犯者（cómplices）として指摘されており、捜査がモレノ家族の中心だけでなく、より広範囲に及んでいることを示している。
公判への呼び出しは、裁判段階の正式化を意味する。検察によって収集された証拠は裁判所に提出され、被告人には反論の機会が与えられる。刑事事件の専門家によれば、モレノは贈賄の直接的な関与者とされているため、裁判は最高裁で進行することになる。
この決定は国内で大きな政治的波紋を呼んでいる。野党、市民セクター、メディアの間には、公判の進展を「ついに司法が前進している兆し」と歓迎する声がある。一方、モレノの関係者の中には、彼の無実を擁護し、この手続きを「政治的迫害（persecución política）」と位置付ける者もいる。
シノハイドロ事件の展開は、元公務員や実業家を巻き込みつつ、エクアドルが汚職との闘いにおける重要な局面に直面していることを示すものである。つい最近まで国家の最高位にあった人物に対する公判は、その経済的規模のみならず、政治的・司法的な意味合いにおいても画期的な出来事として位置付けられる。国内外の関係者は、今後の裁判の進展に注目している。
モレノ、シノハイドロ事件を「コレア政権の報復」と主張
12月4日（木）、前大統領レニン・モレノは、副大統領時代に受け取ったとされる賄賂に関する刑事手続きについて、「コレア政権の報復」であると主張した。モレノによれば、この手続きは自身が大統領就任後に反旗を翻したことに端を発するもので、「エクアドルでの永続的独裁政権を防ぎ、もう一つのベネズエラにならないようにした」と説明している。
検察当局は、モレノがコレア政権下で副大統領を務めていた際、モレノとその家族が国家系中国企業シノハイドロから、同国最大の水力発電所コカ・コド・シンクレアの建設に関する賄賂として100万ドル以上を受け取ったと主張している。
モレノはソーシャルメディアで公開したビデオメッセージの中で、「一銭も受け取ったことは証明されていない」と述べ、同様に起訴されている妻ロシオ・ゴンザレスと娘イリナ・モレノの無実も主張した。
さらにモレノは、「この工事を契約したのは誰か？ ラファエル・コレア・デルガド（Rafael Correa Delgado）である。資金調達を管理し、工事を実行したのは誰か？ ホルヘ・グラス（Jorge Glas）である」と指摘し、「なぜコレアやグラス、当時の大臣や公務員はこの訴訟に含まれていないのか」と疑問を呈した。
モレノはまた、「この工事は2016年11月にコレアとグラスの立ち会いのもとで完成式が行われた。その時点で工事は精査されず、無責任にも1億ドル以上の保証金が返還された」と強調している。「私が大統領だったとき、このプロジェクトには1万7,000以上の亀裂があることを確認したため、受け取りを拒否し、直ちに仲裁手続きを開始した」と述べた。現在、モレノはパラグアイで米州機構（Organización de Estados Americanos：OEA）の障害者問題担当特使を務めている。
検察当局は、国家系中国企業シノハイドロがコカ・コド・シンクレア水力発電プロジェクトに関連して支払った賄賂の総額は、推定で7,600万米ドルを超えると発表した。
この事件は2019年に表面化した。報道サイト「ラ・フエンテ（La Fuente）」の調査報道では、モレノ前大統領の兄弟の一人が、タックスヘイブン（租税回避地）の口座やスペインのアリカンテ（Alicante）にある豪華不動産を介した不透明な会社と関与していたことが指摘された。さらに、モレノが国外企業INAインベストメント（INA Investment）との接点を持ち、疑わしい取引に関与していた可能性が示された。これを受け、検察当局は初期捜査を開始した。
検察によれば、モレノは総額66万ドルを不正に受け取ったとされ、そのうち22万ドルがモレノ本人と妻に、住宅や家具の形で渡されたと推定される。残り44万ドルは、兄弟のエドウィン（Edwin）に35万ドル、ギジェルモ（Guillermo）に1万ドル、娘イリナ（Irina）に5万ドル、義理の姉妹ジャクリーン（Jacqueline）に1万ドル、マーサ（Martha）に1万5,000ドル、義母アイダ・グラシエラ（Aída Graciela）に5,000ドルが渡ったとされる。これらの資金の動きについても、現在も捜査が続いている。
さらに、検察は、疑わしい賄賂の大部分がモレノ氏の友人である実業家コント・パティーニョとその家族に渡ったと指摘しており、総額は4,400万ドルに上るとみられる。
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参考資料：
1. La Justicia de Ecuador llevará a juicio al ex presidente Lenín Moreno y a 24 allegados por presunta corrupción
2. La Justicia de Ecuador llamó a juicio al ex presidente Lenín Moreno y a varios allegados por los sobornos del caso Sinohydro
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